新潟遠征最終日は二王子岳に登ることにした。
二王子岳には勝手に地味な山という印象を抱いていた。
登山レポートもそれほど多くないし静かな山なのだろうと思っていたのだが、朝の六時ですでに10台程度車が停まっていて驚いた。
実は人気のある山なのだろうか。



二王子岳の登山口へは二王子神社を目指して進むとわかりやすい。
カーナビも対応している。
ただし道は狭隘で全線舗装だが、すれ違い困難箇所が多くある。
登山口は二王子神社境内にあるが登山者は近くの市営駐車場(無料)へ車を停める。



登山者用駐車場から登山口までは5分ほど歩く。
二王子神社は山奥の神社にしては立派な建物でまたまたびっくり。
神社の境内にはキャンプ場があり神社に断りを入れればテント泊や火器の使用もできるようだ。
水場やトイレも完備されている。



境内の脇に登山口がある。
掲示板などが備えられた立派な登山届ポストがあった。
支度を済ませて入山する。



始めのうちは杉木立の中をゆるゆると登っていく。
登山道というより社寺仏閣の参道といった雰囲気だ。



杉木立が終わると広葉樹の灌木帯に入る。
時折大きな岩が横たわる中を縫って歩く道だ。
このあたりから少し傾斜が増して体が温まっていく。



30分ほど登ると一王寺避難小屋にたどり着いた。



ちなみに小屋の手前で登山道は右へ90度折れて「3合目」の表記がある。
ここをまっすぐ進むと水場に行くようだ。
うっかりすると真っすぐ進んでしまいそうな場所だ。
写真奥が登山口方向となる。



3合目から先は再び樹林帯の急登となる。
しかし登山道は階段状にガッチリと整備され足元に不安はない。
階段も段差が小さな「登山を分かっている」階段である。



ガサガサと音がしてそれなりに大きな動物が動く気配がした。
一瞬緊張したが出てきたのは猿だった。
大人の猿2頭と子猿数頭という小さな群れで人間を気にするでもなく樹の実を食べている。



多少の緩急をつけながらも急な登りは続く。
ゆっくりとしか移動できない人間の頭上を軽々と猿が移動していく。
一頭の猿が女性の単独登山者ばかり狙って威嚇して回っていた。
猿も相手を見てオラつくんだなー。



粘土質の土が深く抉れた場所が時々出てくる。
おそらくもともとは昨日登った守門岳のようにひどい泥濘だったのだろう。
しかしご覧の通りガッチリ整備され非常に歩きやすい道になっていた。



六合目あたりまで来ると頭上が開け明るくなってくる。
急な登りも影を潜め楽になってきた。



とはいえ先はまだ長い。
うーん、どれが二王子岳本峰なんだろう。



行く手にヌメッとした印象の岩場が現れた。
なるほど、これが「油こぼし」と呼ばれる場所か。
言い得て妙だな。
ちなみに本当にヌメっているわけではなくザラザラしたフリクションの効きやすい岩場だった。



登りならば鎖が無くてもなんとかなる…かも。
それくらいの難易度だ。



油こぼしを過ぎるといよいよ視界が広がってくる。
今日は晴れの予報だが実際は高曇りといったところ。



小さな支尾根を越えると眼前に湿原が広がった。
標高はわずかに1200mを越えたくらいだが豊富な雪に支えられて広がる湿原は高山の趣だ。



湿原の上部斜面からはこの季節でも絶える事なく水が湧き出している。
きっと初夏には花が咲き乱れるのだろう。
誇らしげに「お花畑」という標識が…。

ん?
お花…田火???



お花田火を過ぎるとムワッと湧いてきたガスに包まれてしまった。
今日は山頂からの眺望は望めないのだろうか。
いささかテンションが下がる。



登山道周辺の木々も色づいてきたが天気がこれでは色がイマイチだ。



唐突に「二王子神社」と書かれた標識が現れた。
(文字が消えかけていたので見誤ったが実際は三王子神社のようだ)
登山道を左に分け少し奥まった場所に祠が鎮座している。



うーん、晴れないかなぁ。
ガスは一進一退を繰り返している。



このあたりまで来ると道はほとんど標高を同一に保ったまま先へ先へと進む。
尾根や丘陵があるため平行移動ではないが、それほど大きなアップダウンは無い。
小さな丘陵を越えると突然池塘が現れたりと景色に変化があって楽しい。



登山道脇に突然人工物が現れた。
雨量計が付いていることからロボット雨量計だと思われる。
現役で稼働しているロボット雨量計は久々に見た気がする。
確か気象庁では廃止する方向だったはずだが所管が違う雨量計なのだろうか。



雨量計のすぐ近くに「奥の宮」と書かれた祠があった。
こちらは台座も作られておりなかなか立派な祠だ。
二王子神社最奥の祠ということだろうか。
ここは丁寧に参拝しておこう。



奥宮付近からはいよいよ二王子岳の山頂が指呼の間だ。
山頂避難小屋や鳥居のようなものが見えている。
あと一息だ。



山頂手前で二本木山方面への道を右手に分ける。
踏み跡はやや薄いが刈払されているようだ。
二本木山まで足を延ばすか否か、少し考えよう。



分岐を過ぎれば山頂はすぐだ。
広々とした山頂広場には数人の登山者が憩っていた。
避難小屋の床の張替え工事とかで山頂には資材が積まれている。
これがなければもっと広々とした山頂なのだろう。



飯豊連峰をバックに記念写真。
鳥居に見えたのは「青春の鐘」をぶら下げた梁だった。
もちろんカランカラーンと景気よく鳴らしておく。



二王子岳の山頂は本当に絶好の飯豊連峰展望所だ。
長大な飯豊の峰々をあまねく見渡すことができる。
少し雲がかかってしまったが概ね満足の行く景色を見ることができた。



飯豊の北端には杁差岳…があるはず。
今年計画して果たせなかった山だ。
来年こそは!



鞍部を挟んで二本木山がこんもりと盛り上がっている。
片道1.0km。往復1時間といったところらしい。



道なき北側の尾根は色づき始めていた。
もう少しすれば見ごたえのある紅葉になりそう。



村上市とその奥には日本海。



たっぷり景色を堪能した後、下山の途に着いた。
下山後の長い運転を考えて二本木山はパスすることにした。
少し疲れが出てきていた。



山頂で休んでいる間に晴れてきた。
往路ではどんよりと灰色に沈んでいた池塘も青空を映してキラキラと光っている。



下山路では広大な新潟の平野部が見渡せる。
さすが米どころ、平野部全体が黄金色に染まっている。
帰りに新米を買っていこうと心に誓った。



帰り道、再び猿に遭遇。
もう完全に人間の事など無視して堂々と登山道でくつろいでいた。



往路で見逃した一王寺神社の大イチイを見るため脇道にそれる。
立派な木だなぁ。



イチイの大木に囲まれた石祠。
これが一王寺神社なんかな?



途中寄り道したりしたが無事に下山してきた。
お疲れさまでした。



朝は閉まっていた神社の扉が開いていた。



帰ってきたら駐車場がすごいことになっていた。
勝手に地味で静かな山だと思っていた二王子岳だがその人気の程に驚かされた。


初めて登った二王子岳。
いくら連休最終日とはいえ朝の六時ですでに複数台の車が来ており、その後も続々と登山者がやってきた。
累積標高差1000m以上と結構ガッツリ登る山だが老若男女様々な人が登っている。
コースが良く整備され危険箇所も無いのでとっつきやすいのだろう。

同じ理由でトレランに来ている人も多かった。
偶然だとは思うがトレランは早朝、ファミリーハイクはお昼と棲み分けされていたのが面白い。

静謐な感じのする杉木立から始まり、広葉樹の林で森林浴。
標高が上がれば高層湿原と眺望が楽しめ、山頂からは飯豊連峰をあまねく見渡すことができる…といった変化に富んだ楽しい登山道だ。
それなりに長い距離を歩かなければならないが飽きることがなかった。
なるほど人気があるわけだ。
時間の都合で二本木山をパスしてしまったのが若干心残りだ。
再訪の機会があれば今度は是非足をのばしたいものだ。

帰りに「二王子温泉」という看板に誘われて車を進めたが、二王子温泉は老人保健施設に改装され一般の入浴はできないようだ。
思わせぶりな看板を撤去していただきたい…。

おしまい