みちのく120名山に名を連ねる胎蔵山に登ってきた。
この山は山全体が薬師神社の御神域になっているようで、麓の村にある神社からずっと道標が繋がっている。
登山口周辺までの林道は分岐もあるが、この道標に従って進んでいけば迷うことはないだろう。



登山口近くの林道の路肩に車を停める。
はっきりとした駐車場は無いらしく、周辺の空いたスペースに車を停める感じになる。



登山口は木々の葉の中に埋没気味。
道標を見落とすと気が付かないで先へ進んでしまいそうだ。 



登山道はいきなりの急登だ。
今朝方までの雨で泥濘んでもいる。
ゆっくり登っていこう。 



可愛らしい蝶が飛んできた。
そういえばガイドブックになんとかという蝶の生息地だと書いてあった気がする。 



登山道は一旦林道に出て、またすぐに分かれる。
ここの部分は下山時分かりにくいので注意が必要。 



尾根まで登ってしまうと、ほとんど水平移動と言っていいようななだらかな道となる。
登山道はよく整備されている。
要所に道標があるしピンクテープの類も豊富だ。 



6月に入って急に緑が濃くなった。
すっかり木々の葉も生い茂り眺望が得られる場所は少ない。 



鳥居松という標識が出てきた。
特に目立つような松があるわけではないが、よく見ると登山道の両脇に松の幼木が植えられている。
枯死して再生中…とかかな? 



鳥居松の前は木々が開かれていて麓の里が見渡せる。
こういうのは偶然の産物なのか、それとも何か意図があるものなのか。 



鳥居松を過ぎると道は再び急な登りに転じる。
急なだけで危険な場所ではないが要所に頑丈な鉄鎖が設置してある。
これは参道でもある道の性格上、登山慣れしていない人が歩くための便を図っているのだろう。 



道は一筋の沢を何度も横断しながら九十九折を描く。
その沢の上流には弘法清水という清水が湧き出ている。
いったい全国にいくつあるんだろうね、弘法清水。 



弘法清水の先には薬師神社の「中の宮」がある。
左に建っているのは避難小屋を兼ねた休憩舎のようで、先行者が二人ほど憩っていた。 



お社の扉は閉ざされているが、参拝者が自由に開け閉めして良いようだ。
燈明を灯したりすることもできるようで、かなり本格的な作法で参拝できる。 



中の宮を過ぎると道は再び穏やかな登りとなった。
幾分冗長に感じないでもないが、初心者でも無理なく登れるハイキング向きのコースだ。 



おっと、これは…。
まるで親の仇と言わんばかりに看板がズタズタにされている。
そしてその残骸の上には巨大な糞が盛り付けてあった。
言うまでもなく「ヤツ」の仕業だろう。 



赤剥という展望地に向かう分岐である。
ここの標識もズタボロだ。
登山口からここまでの間に、いくつも熊の糞をみかけてきた。
全域が熊の巣窟のようだ。 



赤剥の展望地に寄り道した。
道の突端が開けていて山の南側が180度くらい見渡せる。 



眼下には緑の絨毯が広がる。
特筆すべき顕著なピークは無いが意外と奥深い里山が連なっているのがわかる。 



もしかしたら月山や朝日連峰が見えるかと思ったのだが…意外と低い位置に雲が広がり、遠望を妨げていた。
残念。 



赤剥の分岐から山頂までは指呼の間だ。
小さな鞍部をひと跨ぎすればすぐに到着する。 



薬師神社奥宮、すなわち胎蔵山の山頂だ。
山頂は木立に囲まれた穏やかな空間になっている。 



奥の宮も参拝者が自由に開け閉めしても良いことになっている。
さして信心深くない我々だが、せっかくなのでお参りしていこうと思う。
薬師神社だから、コロナ退散を願っておこう。 



山頂からの眺望はお社の正面のみ。
神様が通る道とか、そういう意味で切り開いているのだろうか。
やはり意図的なものを感じる。 



お社の後ろには道が続いていて三角点がある。
三角点より先にも道は続いている。
この先、展望地というものがあるようだ。
行ってみるか。 



展望地…だと?
道の行き止まりまで行ってみたが、林に囲まれて何も見えなかった。
おいおい。
山頂からここまで片道10分くらいだが、なんだか損をした気分になった。



一箇所だけ、かろうじて木立の隙間から景色が見えそうな場所がある。
しかしこれを展望地というのは無理があるだろう。
落葉の季節ならば景色が良いのだろうか。



帰りは往路と同じ道を辿って下山する。
途中、ようやく雲が取れてきた鳥海山を眺めることができた。


初めて登った胎蔵山だがハイキング向けの良い山だった。
登山道はよく整備されていてまったく不安は感じない。
山慣れない参拝者も歩くことを考慮しているのだろう。
コースやお社の整備状況を見るに、今でも参拝する人の姿は絶えないようだ。

そのかわり熊の心配はしなくてはならないようだ。
登山口から山頂に至るまで、全域に熊の痕跡がある。
激しく縄張りを主張しているので、とにかく不意の遭遇に注意が必要だ。
風が強い日などは入山しないほうが懸命かもしれない。

景色については残念ながら特筆すべきところは無い。
初春や晩秋など、落葉の季節ならまた違った感想になるかもしれないけれど。
ちょっと登る季節を間違ったかなぁ。

おしまい