前日に登った平ヶ岳で体力を使い果たしてしまった我々…。
しかし遠路遥々でかけてきているし、天気は良いしでこのまま帰るのはもったいない!
そんなわけでガイドブックを探り、近場で短時間で登れそうな山をチョイス。
奥会津の奇山、志津倉山に登ることにしました。

さて志津倉山ですが、山容こそ小ぶりですが奥会津のさらに山奥にありアクセスだけでも結構大変な山です。
国道252号の会津宮下付近から県道59号に入り、さらに県道153に乗り継ぎ最後は林道へ。
舗装こそされているものの、一車線の狭い場所も多く運転に気を使います。




登山口には駐車場があると聞いていたのですが、その駐車場とは林道の路肩を広げたという風情のもので、うっかり通り過ぎそうになりました。
行き違いのための退避スペースかと思ったんですよね。
危ない危ない。




ただの広い路肩のような駐車場ではありますが、周辺の草は最近刈払われたばかりのようで綺麗に整備されていました。
一角には無人販売所があり「カシャ猫の笛」というお守りが売られています。
こんな奥深い山の中ですが地元の人?の手が入っている気配があり、なんとなく嬉しい気持ちになりました。
 




せっかくですし子供や女性のお守りとのことでツートンが一つ購入してみました。
これで山の魔物から身を守れるかな?
奥深い場所ゆえか、志津倉山には遺体を盗んで食らうというカシャ猫がいるとか、入ったら気が狂ってしまう洞窟があるとか気味の悪い伝説がたくさんあるようです。 





さて、それでは入山しますか。
登山道の入口には簡単な案内図と道標。
これが無かったら登山口を通り過ぎるところでした。
 



そして少し入ったところに登山届ポストと志津倉の鐘が設置されています。
熊よけと魔除けを兼ねて思いっきり鳴らしておきましょうか。
カーン!という小気味良い音が辺りに響き渡りました。 




入山してすぐに分岐が現れますが、ここは直進して大沢に沿って進みます。
右手の細ヒドコースは下山で使用する予定。
 



左手に美しい渓流を眺めながら進んでいきます。
ここ数日は雨は降っていないはずですが水量が多いように感じます。
水が豊富な山なのでしょうか。
 



沢沿いの登山道には涼風が吹き樹の葉に遮られた日光は淡く優しい光を投げかけてきます。
涼しくて助かります♪
しかし平和なのはこのあたりまででした。
 




渡渉点が現れましたが辺りの石は全て水中の中。
足の置き所に困ります。
結局、片足を犠牲にして渡らざるをえませんでした。
今日は水が多いのでしょうか?
 




渡渉した先に待ち構えていたのは一面の藪!
一瞬道を間違えたかと思いましたが道標も有るし、ここで間違いないようです。
まじかー!
 



どうやら日当たりの良い場所はすっかり藪化しているようです。
沢沿いの滑りやすい岩場だというのに足元もよく見えない状態になりました。
しかも、なんか棘があって痛い!
ママコノシリヌグイという花を見ましたが、その棘かな?
他にも何種類か棘が痛そうなやつが生えているようで…正直ゲンナリ…。





ふと顔を上げると志津倉山の象徴とも言える雨乞い岩の大スラブが見えていました。
なかなか迫力があります。
これは見る価値ありでしょう。
ただし、これが見えるのはほんの一瞬だけです。
足元に気を取られて見逃すところだったよ…。




大沢はいくつかの滝を交えて上流へと続いていきます。

 

 



そのため登山道は滝の高巻きなどでアップダウンが連続します。
藪で足元がよく見えないのと、苔などで滑るのとでなかなか難儀な道のりが続きます。
いやもう…完全に入山する季節を間違えました。
盛夏に来る山じゃないっすね、ここ。
 

 




沢の源頭部で再度渡渉します。
ようやく藪の沢歩きから開放される模様。
助かった…。
 




ここから先はシャクナゲ坂の急登が始まるので一息入れます。
ヤブにやられたツートンの後ろ姿に哀愁を感じます(笑
途中から無言になってましたからね。
 



ただね、この先が藪でないとも限らないのですよ。
空が明るいことにかえって不安を覚えます。
今までの調子だと「日当たりが良い場所=藪」なんでね…。





しばらくは急なだけの平穏?な道ですが… 





地面がスラブ状の岩になってくると難易度が格段に上がります。
っていうか、木の根があるので辛うじて足場が確保できるような感じ。
最低限の鎖はかけられているものの、どうにも心もとない感じがします。





途中に一箇所だけどうしても木の根に頼れない場所がありました。
意を決して岩の出っ張りに体重を載せた瞬間、ボロリと岩が剥がれ足が宙に投げ出されます。
「あ、死んだ」
一瞬そう思いましたが、鎖を握った両手がなんとか体重を支えてくれて間一髪踏みとどまりました。




こんなところ、落ちたらただでは済みませんからね。
何事もなくて本当に良かった…。



 

いつの間にか、ずいぶんと高いところまで登ってきていました。
沢を離れて以来、ほとんど上方向にしか進んでませんからねぇ。

 



シャクナゲ坂の看板を過ぎると、確かに周囲の植生にシャクナゲが目立つようになります。
花の時期はきれいなことでしょう。
ただし足元は相変わらず木の根とスラブ岩の急斜面。
じっくり花を愛でることができるかどうかはわかりません。





屏風岩の看板が出てきましたが…




向こうに見える岩壁が屏風岩? 





それとも足元のこの岩? 
そこら中に大きな岩壁が目につくのでどれが「屏風岩」なのかわかりません。
帰ってから地図を確認すると、登山道の東側に崖表記があり、そこに「屏風岩」と書かれていました。
しかし現地ではその方向は木が生い茂っていて見えなかったので確認できてません。





その後も険しい道程は続きます。
この木の根が剥がれたらどうなっちゃうんだ?などと余計な事が頭をよぎったりします。
なにせさっき足を乗せた岩が剥がれましたからね。 





ウルトラマンの頭みたいにやせ細った尾根をトラバースしたり…。 





つま先だけが辛うじて引っかかるような小さな隙間を使ってよじ登ったり…。
短い区間の間にも緊張を強いられる場面が連続します。
嫌な汗が全身を濡らし疲労感を覚えてきました。 





三本松まで登れば難所は通過したということ。
どうやら生き延びました(笑
ホッとしたらドッと疲れが襲ってきましたよ…。



 

嘘のように穏やかになった登山道を山頂目指して歩きます。
しかし疲労感に襲われた私はさっぱりペースが上がらず、ついにはツートンに置いていかれました(笑
無情にも消えていく後ろ姿を見送ることしかできません…。





ようやく稜線まで上がってこれました。
道標があってT字路のように見えますが…



 

左方向は激藪で突入する気になれません。
志津倉本峰はこの先に有るのですが根性なしの我々はパス!
藪が薄い時期ならあるいは…。

 

 



そんなわけで、我々は無難に右手へ進み、三角点ピークを目指すことにします。
こちらも笹薮に登山道が浸食されつつあるような気はしますが、今の所問題なく歩けます。

 

 



暫く歩くと樹林帯の中に明るい一角が見えてきました。
どうやら山頂のようです。 




志津倉山、登頂成功~。
1234mとは、覚えやすい標高ですね。
地形図によると1234.2mとあります。
惜しい!
どうせならあと30センチ土を盛って1234.5mしてしまえばいいのに(笑


お茶「…30センチって、意外と簡単なんじゃ…。やって、みようか?」
ペンギン「怒られるからやめときなさいって」





眺望は北側に開けるのみ。
天気が良ければ飯豊連峰などが見えたりするんでしょうか。
今日は雲が多めで足元の山くらいしか見えませんでした。




スマホが雨雲接近を告げたので、少し休んで下山にかかります。
下りもそれなりに険しいのだとしたら雨が降る前に下ってしまいたいところ。
濡れた岩場の下降など御免こうむりたい。




山頂から稜線沿いに少し西へ進んだところに下山コースという看板があります。
看板の矢印は藪の中を指していて一瞬戸惑いましたが、看板の裏にちゃんと道がありました(笑
ここからは一気に高度を下げていきます。 




登りのシャクナゲ坂ほどではないですが、こちらもかなりの急傾斜。
湿った土の斜面が、いかにも滑りそうで恐る恐る下っていきます。
ここでトラブル発生。
足元に気を取られすぎたのか、前々日の蒲生岳と同じようにカメラを落としてしまったのです。
今度こそ逝ったと思ったのですが、またしてもほとんど無傷で回収することができました。
強運のカメラです。





途中、沢の源頭部を渡渉。
渡渉というか沢の中を歩きます。
ここはほとんど傾斜が無く歩きやすい場所ですが、まさか沢の中を歩かされるとは思いませんでした。
 



沢から上がり、純然たる登山道になると再び急な下り坂が始まりました。
 



沢とはお別れしたはずなのに、なんだか水音がします。
ふと横を見るとさっき袂を分かった沢が滝になって流れ落ちているではありませんか。
ということは、さっき歩いた沢はこの滝の滝口だったか。
万が一間違ってそのまま沢を下ったら、この滝にドボンってことですか。




この滝、白糸の滝というらしいですが、倒木のために下からはほとんど見えなくなってました。
残念。 
かなり大きな倒木ですから撤去するといっても難しいでしょうし…。
自然に朽ちるかするまでは滝見は無理ということでしょうね。





工事現場の足場のような金具が設置された場所を慎重に下ります。
下草と落ち葉に隠れて見えませんが、実は一面岩場だったりします。
金具が無かったら通れないなぁ。 





平場が現れたときが一時の心休まる時間です。
このコース、急坂・平場・急坂・平場とが交互に現れます。
中庸な斜面というものが見当たらないですな。
それだけ険しい地形ということなんでしょう。
 




ナメ滝を渡渉します。
足を滑らせたらウォータースライダー状態だなぁ。
またこの下に滝とか有ったりするんですかね。
 



色々怖い思いもしましたが登山口付近の分岐点まで戻ってきました。
これで、志津倉山をぐるっと一周してきたことになります。
生還できました~。 




分岐から5分ほどで駐車場に戻ってきました。
相変わらず駐車場には我がジム爺だけがぽつんと停まっていました。
結局、本日の志津倉山は我々の貸し切りだったようです。


志津倉山、初めて登りましたが、なかなか手強い山でした。
周回できる登山道になってますが、時計回りで歩くことを推奨されているようです。
実際私もそのように歩きました。
というか、逆周りにした場合シャクナゲ坂が下りになりますが、あそこを下るのは考えたくないですね…。
岩場に自信の無い人は細ヒドコースのピストンをおすすめします。
それでも十分険しいので、くれぐれもご注意のほどを。
里山とはいえ侮れない山です。

おしまい