2020年6月21日、秋田県の大白森・小白森に登ってきました。
かなり昔に、雨に降られて途中敗退して以来、ご無沙汰になっていた山です。
一度敗退すると、なかなか足が向かなくなるのがヘロヘロ隊の悪い癖であります。

で、満を持して挑もうと決めた日の朝、不覚にも寝坊しまして(笑
登山開始が10時を回ってしまいました。
一年で最も日が長い今の季節だから入山しますが、あまり褒められたものではありません。
最初からダメダメな感じになってしまいましたが、巻き返すべく張り切って行ってみましょう!



スタートが遅くなったので駐車場には先行者の車がズラリ。
熊多発地帯なので他の登山者がいるというのは心強いです。
静かな山域なので、登山者ゼロというのも覚悟してきてましたから。
では、行ってきまーす。



  

明るい林道から鬱蒼とした樹林帯へ入っていきます。
入口にはおなじみの「熊に注意」看板。
脅しではなく、本気でウジャウジャ居るらしいですよ。





ここ数日、乾いた日が続いているはずですが、日の射さない森の中はしっとり湿っています。 
このコース、とにかく全体的に湿っぽいのが特徴です。
豪雪地帯だからなのか、山頂に広大な湿原を持っているからなのか、理由は定かではないですが。





湧き水が登山道に注がれている場所もあり、ここの道は乾くことがあるんだろうか…という感じ。
傾斜が急で水はけが良さそうな場所でも、上からどんどん泥が運ばれてくるらしく常にヌタヌタしています。
粘土質の路面の上に泥が覆いかぶさり、接地感に乏しい歩きづらい道が続きます。



 

湿った急坂を登っていくと一瞬頭上が開放されました。
ほんの一時、乾いた歩きやすい道になりました。
そうそう、めったに人の姿を見ないためか、この辺りでは動物たちも油断しているようです。
小鳥が道の真ん中で日向ぼっこしてました。
1mくらいまで近寄っても動かないので死んでるのかと思いましたよ。
油断しすぎ(笑





一時間強で鶴の湯分岐に到着です。
我々は直進して大白森を目指しますが、右の道は6kmの道程を経て乳頭山へ続いています。



 

分岐の先は酷い泥濘が続きます。
道幅すべてが田んぼのようになっていて靴を汚さないで通過するのはかなりの無理ゲー。
前回来た時も、この辺りの泥濘には苦しめられたなぁという遠い記憶が蘇ってきました。



  

しかし、その泥濘地帯を抜けると道は一変。
木道の快適な登山道となります。
この木道、もうちょっと延長してくれよ…と思ったりします。



  

ほとんどの傾斜のない木道を軽快に歩いていくと分岐点が見えてきます。
おや? 地図にない分岐か?と思ったら小白森の山頂でした。
道標かと思ったのは山名標識でした。
ほとんど真っ平らな山頂のため、標識がなければそれと気が付かないでしょう。



  

山頂付近には大きな湿原が広がっています。
登山道から横手に入る短い木道に入ると、その湿原の全容を見ることができますよ。



 

南には今まで背にして歩いてきた秋田駒が。


  

奥の池塘の周りにはワタスゲの群落。


  

なかなかすごい密度であります。


  

池塘を縁取るようにミツガシワの花が咲いています。



  

今年初のコバイケイソウ。 




これまた今年初のハクサンチドリ。
確実に季節は夏へと移ろっているようです。 





さて以前来た時はこの小白森周辺で土砂降りに見舞われ引き返したのでした。
ですのでこの先は初めて歩く区間となります。
今日は天気に問題はありませんので大白森を目指そうと思います。





小白森と大白森の間の鞍部は再び泥濘地獄。
右足が沈まないうちに左足を出し、左足が沈まないうちに右足を出す作戦で突破(笑
靴は泥だらけになりました。


  



泥濘地獄と、その後のヌルヌル急坂地獄で心を折られそうになりましたが、そこを抜けると再びのご褒美タイムがやってきます。



  

小白森よりも遥かに広大な湿原が目の前に広がります。
まさしく雲上の楽園。
なによりも、その只中を木道で突っ切って歩けるというのが気持ちいいですね。



  

そのおおらかな景色の中にぽつんと目印が立っている場所が大白森の山頂。
正直、ここが一番高い場所と言われても目視ではさっぱりわかりませんでした。
最初の挑戦から十年近くの時を経て極めた山頂は格別です。


  

遮るもののない山頂は眺望抜群。
森吉山が思ったより近くに見え、ここは秋田なんだなぁと実感。


  

秋田駒から乳頭山に続くおおらかな山並み。
あそこの縦走路もいいんですよね~。


  

山頂は踏みましたが木道と湿原はさらに先へ続いています。
ここで引き返すのはもったいないので、ちょっと先まで行ってみましょう。



  

花や景色を楽しみながら進んでいくと木道が茂みの中に消えていました。 





そっと茂みの中を覗いてみると…
あ、だめだこれ。また泥濘地獄だわ。
回れ右! 撤収! 




山頂付近の湿原を端から端まで楽しんで、もと来た道を戻ります。
いや~、本当にいい景色だわ。



  

スタートが遅くなった割には早い時間に山頂に立つことができたので池塘のそばで小休止していきます。
ゆっくりとコーヒーなどをいただいて、しばし憩いのひととき。
すぐに下山してしまうには、あまりに惜しいこの景色。



  

池塘の周りではヒメシャクナゲ祭りが開催中でした。
湿原がほんのりピンクに染まるほど、たくさん咲いていました。
ヒメシャクナゲって一輪か二輪、ポツンの咲いているのしか見たことがなかったのでこれには感動。



  

天気も良いし風も無いので1時間でも2時間でものんびりできそうですが適当なところで切り上げて帰路に就きます。
今日はスタートが遅かったので順調に下っても3時過ぎ下山ですからね。
あまりのんびりできません。


  


最後にもういちど秋田駒を眺めてから下ります。
この天国から、また泥濘地獄に落とされるわけですよ。



  

で、泥だらけになりながらも無事に下山です。
楽しかったですが、靴を洗うのが憂鬱(笑


さて無事に登頂を果たした大白森でしたがいかがだったでしょうか。
久しぶりに訪れましたが泥濘が酷いのは相変わらずでした。

しかしその分、山頂に出たときの感動は大きく、広大な湿原とそこに咲く花たちには感動しっぱなし。
以前来た時は雨でひたすら不快だったのですが、今回その印象は大きく変わりました。
もっと登山道の状況が良ければ足繁く通うのに…と思ったほどです。
もっとも、登山道があまり良くないので、この静寂が保たれているのだとおもうとむやみに「整備してほしい」とも言い難いものがありますな(笑

帰り際にタケノコ採りに来ていた人とお話させていただいたんですが、その方は前日に入山して熊に遭遇。
威嚇されて下山できず、山中に一泊したのだとか。
「会わなくてよかったね。でも、たぶんそのへんにいるよ。」
と脅かされて帰ってきました。

泥濘地獄と熊に守られた雲上の楽園、大白森…でした。

  

おまけ:本日出会った鳥さん。
ぴーぴー鳴き声が聞こえていたので見上げると、巣穴から雛鳥が顔をのぞかせていました。何の雛だろう? 無事に育てよ~。

おしまい

 

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