2020年6月12日、東北百名山の一座、戸来岳に登ってきました。
この山も計画するたびに天気が悪かったり、道が通行止めになったりで挑戦すらさせてもらえない山だったのですが、この度ようやく登るチャンスを得ました。
ただ、できれば休日に挑戦したかったんですよね。
というのも、熊が怖いので少しでも登山者が多く居れば心強いと思ったからです。

みなさん覚えてらっしゃいますかね?
何年か前に山菜採りに入った人が相次いで熊に襲われて食べられてしまった事件。
ヒグマならともかくツキノワグマが人を襲い、あまつさえ食べてしまうなんて衝撃的な出来事でした。
その現場がこの近くらしいんです。



期待はしていなかったですが、登山口の駐車場に着いてみると…誰もいません(笑
駐車場は広すぎるほどで、広大な敷地にポツンと一台自分の車だけが停めてある様子は不安を誘いますね…。
メジャーな山ではないし、平日だしこんなものだろうと自分を納得させるしかありません。
ちなみに登山口にはトイレや水場は無いので、手前の道の駅を利用することをお勧めします。






それでは行ってみましょう!
画面左奥に続く林道を先へ進むと中腹まで行けるようですが、今回は林道の様子は未確認です。
※途中で会った登山者は林道に車で入ってきたようなので、通行は可能なようです。



  

傾斜の緩い歩きやすい道です。
徒歩道としては冗長な作りなので、元は作業道かなにかだったのではないでしょうか。



 

唐突にパイプから水が出ていました。
「ヨガイバ沢の岩清水」とあります。
わざわざ引き水してきているようです。



  

昨晩降った雨に濡れた木々の葉が我々の靴やパンツを濡らしていきます…。
スパッツつけたくらいでは間に合いませんでした(;_;)



  

コケイラン。
いっぱい咲いていました。



  

ヤマオダマキ。



  

登山道は一旦林道と合流します。
この区間を見た限りではフラットな林道です。
普通車でも走れそうかな。



  

しばらく林道を歩くと分岐点があり、登山道は林道を離れて登りに転じます。
分岐点から見える範囲には車を停められるような場所がありません。
ガイドブックには「P」のマークがあったような気がしたんですが…。


  



林道と分かれてしばらく進むとT字路が現れます。
右に進むと大駒ケ岳、左へ進むと兎平Pと表記してあります。
なるほど、林道まで侵入した場合の駐車場は兎平と呼ばれる別の場所にあるようです。



  

このあたりから笹の勢いがよくなってきます。
見通しが利かない笹薮の中では熊との遭遇が危ぶまれます。
二人で鈴を鳴らしたり大声を出したりしながら進みました。
岩手なんて熊だらけなので、今さら熊をいちいち怖がったりはしませんが、相手が人食い熊かもしれないと思うと話は別です。



  

ブナが大きく枝葉を茂らせているようなところは、林床の笹も薄いのですが…



  

少し日当たりが良くなるとこれですよ。
刈払もなんのその。両側から笹のハイタッチを受けます。
しかも濡れてるんですよね、これが。

  




うっぷ!
振り返って確かめてはいませんが、ツートンが顔をしかめているのが目に見えるようです(笑



  

笹薮の切れ間から外界が見えてきました。
いつの間にか結構な高度に達していたようです。



  

日本一のダケカンバ…だそうで。



  

うねうね~っと。
確かに立派なダケカンバではあります。



  

いよいよ森林限界を越えました…が、空は見えません。
天気予報では雨は夜半までで、その後は晴れてくるはずだったのですが、山の上は天気の回復が遅れているのかも。




足元は湿った土道となり不意のスリップに警戒が必要になってきました。
ここの大きな裸地は特に滑りやすく、行きで一回、帰りに一回、転ばされました。
同じ場所で二度も転ぶなんて…。
帰りなんて警戒していたのにもかかわらず転びましたからね…。



  

大駒ケ岳の山頂に着きました。
展望、無し。
うーん、それなりに苦労して登ってきたんですがねぇ…。



  

更に先の三ツ岳へ行って戸来岳踏破になるんですが…。
すぐ隣りにある三ツ岳もまったく見えません。
正直なところ、これでは気持ちが萎えます。





しかし、ここまで来て引き返すという選択肢は無いので先へ進みます。
これが暴風雨とかなから話は別ですが。



  

眺望は残念なことになっていますが、ツートンは足元の花に楽しみを見出したようです。
ヒロハヘビノボラズ


  

ノウゴウイチゴ


  

時折雲が切れて景色がチラリと見えたり、また隠れたり。
強風によって次々と新たな雲が運ばれてきて一進一退のコンディションです。
気を持たせるような真似をしますなぁ。


  

鞍部から三ツ岳を見上げます。
かなりの急登だと聞いていますが、果たして実際のところはどうでしょうか?



  

おお…これは、なかなか。
九十九折を刻むこともなく一直線に登っていきますね。



  

山頂直下に至っても、まだ見上げるような高度差があります。


  

最後はもう、ほとんど這うようにして登っていきます。
いや~、これ下りも怖いわ。
何が怖いって急なのに足がかりになるものが無いってことですね。
濡れた草付きの泥斜面とか嫌過ぎる。



  
山頂直下の鼻こすりの急登を登りきると視界が開けます。
矮化木が辺り一帯を覆い、晴れていれば眺望が良さそうな場所。
今はただ、ガスと強風が周囲を支配しています。



  

数年来の念願だった山頂に立ちましたが…ご覧の通りガッスガス。
十和田湖や八甲田などが一望できるという展望の山頂だったはずですが残念な結果になりました。


  



ガスと強風でゆっくり休むこともできません。
体が冷える前に早々に退散です。



  

山頂のすぐ近くに十和利山方面への縦走路を示す道標が立っています。
この道が通行可能であれば登りと下りで別の道を歩くこともできたのですが…


  



ご覧のありさま。
残念ながらすっかり廃道になってしまっています。
残雪期でもないと、このルートを取るのは厳しいようです。



  

我々が三ツ岳を下り始めると、にわかに空が明るくなってきました。
降りたら晴れる法則発動!
せっかく早起きして登ってきたのですがねぇ…。
早起きは三文の徳とは行かないのが山の天気の難しいところです。


  



麓の風車群やお隣の十和利山もその姿を確認できるようになりました。
やはり晴れると眺めがいい山のようです。


  

ツマトリソウ



  

オオバキスミレ



  

大駒ケ岳に戻ってきた頃には八甲田の山々も姿を現していました。
雛岳や高田大岳が特徴的な三角錐の姿で立ち上がっています。



  

なんていうか…タイミング悪っ!
完全に下山する前に晴れたのは良かったと思うべきなのかもしれませんが、なんか悔しい。


  

天気ばかりはどうしようもないので諦めて下山の途に着きます。
また笹のハイタッチを浴びなければならんのか。
麓まで飛んで帰りたいです(笑


  

日が射してきたら一気に気温が上がってきて、ハルゼミが「アぢー、アぢー」と騒ぎ始めました。
朝方の薄ら寒い天気とは打って変わって、初夏の空気が辺りを包みます。

下山の最中に相次いで他の登山者とすれ違いました。
てっきり貸し切りかと思っていたのですが、平日でもそれなりに入山する人はいるようです。
最初に出会った方はパトロールに登ってきた自然保護官の方で「熊に注意」のチラシを手渡されました。
やはり近年この山域では事故が多いとのことで、啓発活動をされているのだそうです。
「早朝・夕方、ガスが出ている、風が強い」時は遭遇率が高いのだとか。
…あれ? 今朝の状態じゃないの、それ。
危ない危ない、熊に遭わなくてよかったわ~。



  

途中、一回派手に転びましたが、特に怪我もなく無事に下山しました。
お疲れさまでした。

ちょっとスッキリしない感じになりましたが、懸案の戸来岳、初登頂できました。
やっぱり晴れないと山の印象は希薄になりますよね。
特に山頂付近の眺めが雄大だと聞いていたので、それを見ることができず残念です。

しかし兎にも角にも、これで青森県の東北百名山、完全踏破です!


ところで戸来岳の麓の新郷村にはすごい伝説があるのをご存知でしょうか?
それはなんと「キリスト渡来伝説」(笑
十字架に架けられて処刑されたことになっているキリストですが、実は生き延びていて日本に渡来。
ここ新郷の地で末永く暮らした…とまぁそんな感じの話のようです。
戸来岳の「ヘライ」も実は「ヘブライ」からの転訛だとか、地域に伝わる「ナニャドヤラ」という踊りも元はヘブライ語であるとか。
うーん、夢のある話ではあります(笑

この伝説に因んで、新郷村には「キリストの墓」や「ピラミッド」などの観光スポットがあるので帰りに寄ってみるのもいいかも。
「キリストップ」という「ミ○ストップ」に酷似した攻めたネーミングのお土産屋さんなどもあり、好事家の間では人気のようですよ。



おまけ:帰りの道中、十和田湖越しに見た戸来岳などの十和田の山々。

おしまい