みちのく潮風トレイル釜石エリア、釜石駅から唐丹駅まで歩いてきました。
ここは前回、雨にたたられて途中で打ち切った区間の続きとなります。

この区間の焦眉は平田~唐丹間の石塚峠越え。
旧浜街道の跡を歩く部分なのですが、街道の面影に昔日の思いを馳せ…などという気持ちで臨むと痛い目にあいます(笑
なぜそんなことになっているのか?
それは本編をお読みいただくこととして、まずは2020年5月3日の釜石駅前に時を戻します。






閑散とした早朝の釜石駅前にやってきました。
前回は雨のため、ここで行動を打ち切ったので再スタートとなります。
一ヶ月ぶりの再訪ですが、静かですね…。
コロナ騒動で非常事態宣言が出ているとはいえ、駅前に人っ子ひとり居ないのは異様な感じがします。
前回はオリンピックの聖火を運ぶイベントで賑わっていたのですが、その賑わいが嘘のようです。



 

鉄の街釜石の面影を伝える工場群を横目にトレイルに踏み出します。
往時に比べればかなり規模は縮小されているとは言え釜石らしさを象徴する景色。



  

しばらく国道45号線沿いに進みますが、嬉石町の外れで進行方向右手の山手に折れます。
このあたりはかなり津波の被害を受けたようで、道路も建物もすっかり新しくなっています。


 


住宅街の坂道を登っていきます。



 

坂の町。
異国情緒こそありませんが、なんとなく港町っぽい雰囲気を醸し出しているような気がしませんか?
海沿いの壊滅した町とは異なり、古い建物もたくさん残っているので昔の面影を今に伝えている町並みといってもいいかもしれません。



 

指定されたトレイルコースは住宅街の中を右へ左へ進路を変えていきます。
別にまっすぐ道なりに進んでも最終的には同じ場所に出るのですがね。
コースを設定した人は、何か見せたいものでもあったのでしょうか。





なんの変哲もない市街地なので、正規のルートをしっかりたどろうとすると結構難しいです。 
時々、思い出したように道標が出てはきますが、こればかりに頼っていると確実にルートから外れます(笑
ちゃんと地図を用意したほうがいいですよ。



  

住宅地を抜けると墓地公園に出ます。
墓地公園…あまりにストレートなネーミング(笑
ちなみに、道路脇に見える斜面を上っていく小道が正規ルートです。
山の向こうですぐに合流するんですけどね。





公園の中はキレイに整備されています。
しかし人気はなく閑散として、なんだか淋しげではあります。
その代わり、なにか小動物がガサゴソと動き回っている音が聞こえてきました。
人間が居なくなって動物たちが活発に活動しているようです。





ツツジが開花し始めています♪ 





フデリンドウ見つけた!



  

山の頂上付近にある墓地公園を越えると「鉄の博物館」があります。
残念ながら休業中。
本当ならば、こういう地域の歴史や文化を知ることができる施設にも立ち寄りたいのですが時勢がそれを許してくれません。





岬の突端には釜石大観音のお姿も。
後ろ姿ですけどね。





海が見えてきました。
天気はいいのだけど、なんだか霞がかってますね。
予想以上の晴天に気温もぐんぐん上がってきています。



 

シジュウカラ、ぴよぴよ。
最近、野鳥観察にハマっています。





遠くにこれから越えていく山並みが見えてきました。
石塚峠という三陸浜街道の峠越えがあるのですが…さて、峠道はあの山のどこを通っているんでしょうね。
常識的には一番低い場所を越えていくはずです。 





コースは国道45号線に出ました。
広い歩道があるのが救いですが国道歩きはテンション下がるんですよねぇ。
今日は交通量はかなり少ないので歩きやすいです。
少ない交通量の99.9%は地元ナンバー。
県境を跨いだ移動自粛の効果は出ているようです。
でもこれ、経済には大打撃だよね…。



 

春ですなぁ~。
八重桜がこの世の春を謳歌していました。





国道のすぐそばに鹿がいました。
うーん、なんだか見慣れてしまいました(笑
釜石エリアに入ってからずいぶんたくさん見かけます。 
向こうも人など怖くもないようで、平気な顔で食事を続けています。





平田の町まで下りてきました。
ちなみに「へいた」と読みます。
ずっと「ひらた」だと思ってた…。 





三陸鉄道平田駅を確認。
この周辺にはコンビニやスーパーなどがあり、補給や休憩が可能です。 





平田の町を過ぎ、引き続き45号線を歩きます。
平田通過後、再度登りへと転じています。



 

高台に大規模な仮設住宅がありました。
ほとんどの住民が退去したようで閑散としています。 
今後、次第に撤去され姿を消していく風景なのでしょう。





ルートは平田総合公園に入っていきます。
ここから先は国道45号線と決別し、旧三陸浜街道の古道を歩いていきます。



 

公園の一角に道標があります。
画面奥に行けと指示があります…が、道があるようには見えないのですが…。 





ここ?(笑
まぁ、潮風トレイルでは「本当にここを行くの?」という場所に導かれるのは慣れっこになってますけどね。




  

…あれ?
思いっきり伐採地ですね。
なんか思っていた風景と違うなぁ。 





周辺の山肌が皆伐を受けていて街道の面影もなにもあったものではなくなっています。
地面はすっかり乾いた苔で覆われています。
おそらく皆伐前は鬱蒼とした森の中だったのでしょう。


 


いたるところで小規模な土砂崩れが発生。
台風の影響もあるのでしょうが、伐採後に適切な処置をしていないんじゃないかな、これ。
このままの状態でまた大雨が降ったら山ごと崩れそう。



 


崩壊が進み古道の影も形もなくなってますね。
滑落の危険すら感じます。
ここは慎重に…。 





小さな尾根を越えて南斜面に入ると樹林帯が復活。
地面の様子も安定しました。
やっぱり樹木の保水力ってすごいですよね。





作業道のような道を下っていきます。
まだ石塚峠を越えていないのに下らなくていいんだけどな…。 






作業道は我々を沢筋に導きます。
そのまま砂防ダムの脇を通り抜け… 






再び登りに転じると、なんとなく昔の街道の面影を残した道になります。
ブルドーザーとかで無理やり開削した感じじゃないと思いませんか? 





しかし、そんな穏やかな風景の長くは続きません。





かなり大きな雨裂が道を引き裂き、その上を押し流されてきた土砂が覆っていました。
荒れてるなぁ…。 





もはや昔日の面影を留めているのは水が通らなかったところだけのようです。 
国の重要文化財だとか世界遺産だとか、そういうものに指定されているわけでもないので修復はされないんだろうなぁ。





お、ようやく峠でしょうか? 
小さな切通の向こうに明るい空が見えています。





石塚峠に着きました。
案内看板などが立っていますが、残念ながら昔の道標などは失われてしまったようです。
残った一部が郷土資料館で保存されているようです。 
山道に入ってから、ずっと道の状態が良くなかったので思ったより疲労しました。
路傍に座り込んでしばしの休息を取ります。
昔日の旅人たちもここで一服したのでしょうか。





一人静かにヒトリシズカ。
この方、名前に反して一人でいるところを見たことがありませんでした(笑
初めて一人で咲いているのを見つけましたよ。
  





当たり前ですが、峠を堺に道は下りに転じます。
登りと比べて傾斜も緩く、穏やかに下っていきますが、歩きやすいのは最初だけで… 





下るほど道は荒れていきます。 
表土が剥がれてしまって沢みたいになっています。
隣に本物の沢が並行しているので、どっちが道でどっちが沢か本気でわからなくなりそうでした。




 


いやぁ、ひどいな…。
山の北斜面、南斜面関係なく、まんべんなく被害を受けているようですな。
今後、豪雨災害が多くなると山道や登山道の荒廃が心配されます。 





道の両側に人工的な盛土があるのが見えてきました。



 

街道時代の七里塚とのこと。
一里塚じゃないんですね? 

説明板が設置されていました。
ふむふむ…



えっと、主要街道は三十六丁が一里で、脇街道は六丁で一里だから七里で四十二丁。
よって七里塚=一里塚である???
え、なんで?
六里三十六丁=一里塚ならわからなくもないけど…。
ちょっと意味がわからないです。





明確な史跡である七里塚付近は台風被害を免れていましたが、その後もボッコボコに破壊された道が続きました。
なんか各地の災害現場で、暗渠が破壊されて道が決壊しているのをよく見かけますね。
施工が安価で済むんでしょうけど、災害に弱いですよね。



 

被災からほとんど手がつけられていない状況がうかがわれます。
奥に史跡があるとはいえ、こんな作業道の復旧は一番後回しのようですな。
仕方のないことですが。



 

石ガラの道に苦労しましたが、それもようやく終わりが見えてきたようです。 
今更ながらバリゲードで入口が塞いであります。
いや、釜石側には通行止めの標識一つなかったんですけど(笑
とりあえず、徒歩での通行は可能ということを身を以て証明してきました。





逆コースの場合、ここから石塚峠に入っていきますよ。
この入口の雰囲気では、まさかあんな荒れた道が控えていようとは思うまい…。 





久々に見る海は唐丹湾。
また一つ、三陸の湾に足跡を刻みました。
さてさて、この「山越えて、海越えて、また山越えて…」の繰り返しは、あとどのくらい続くんですかねぇ。


 


本郷という小さな集落の入り口に津波記念碑が立ち並んでいました。
ちなみにこの近くに「星座石」というものもあるそうで案内板も立っています。
よく調べないで行ったので「星座石ぃ? また胡散臭いスピリチュアル系の何かか?」と思ってスルーしたんですが、実はかの伊能忠敬がこの地で測量を行ったのを記念して建立された石碑とのこと。
なんと、ガチな文化財だったのでした。
ちゃんと見てくればよかったよ…。





明治の津波やチリ地震津波など歴代の記念碑の横に新しい東日本大震災の津波記念碑。
これ以上津波記念碑が増えなければいいのですが、こればかりはねぇ…。





本郷の集落は公園のようにキレイに整備されています。
沿岸の漁村でこういう雰囲気の集落って珍しい気がします。
ここの桜並木はちょっとした景勝地なのだそうですが、残念ながら今年の桜は終わっていました。



 

しかし、そんな歩きやすい道が最後まで続いているわけもなく(笑
再び山道が始まります。 





ニョイスミレ? 





うーん、もとは林道かなにかだったんでしょうか。
今はもう廃道同然。
すぐ隣に立派な道路ができていますから、もしかしたらそれの旧道にあたる道だったのかもしれません。





舗装路に出ましたが、ここは横切るだけ。
向かいに見える作業道に再度突入です。 





急な坂でぐんぐん高度を上げていきます。 





あっという間に本郷の集落を見下ろせる高台に立ちました。



 

小さな峠を越えると急に視界が開けて小白浜の漁港が見えてきます。
なかなか海が見えない潮風トレイルですが、ここの峠越えはいいですね。
いかにも海沿いを旅している気分になれます。





「森林鉄道の跡じゃないか?」と妄想を抱かせるような、おおらかなカーブを描いて道は続きます。


  

道はやがて舗装路になり、高台の集落を越えて海へ下りていく狭い道になります。
この辺りに住んでいる方だと思うのですが、丁寧に道を教えていただきました。
「浜街道歩いてるの? 私も何回も歩いてるんだよねぇ」
と楽しげに話しかけてくれたのですが、歩いてきた道のりからすぐにそうだと分かったらしく(笑



 

小白浜漁港に到着。
最近復旧工事が終わったばかりなのか、全てが真新しく生活感の無い風景。
停泊している船も少なく見えます。
設備は復旧しても、生業は復活しない…なんて事になっていなければいいのですが。



 

港の最奥部には新しい防潮堤が完成していました。
津波の時に閘門を閉じようとした消防団員が大勢亡くなった反省から、非常時には自動的に閘門が閉じるようになっているようです。



  

防潮堤をくぐると更地になった内陸部へと道は続きます。



 

凛々しいチュンさん。 





築堤に登り、45号線を横断すると唐丹駅です。
今回の潮風トレイルはここまで。
お疲れさまでした。


みちのく潮風トレイル、釜石区間の最終章。
いかがだったでしょうか。
この区間のハイライトは言うまでもなく旧浜街道の石塚峠なわけですが、ちょっと思い描いていたものと違い戸惑いました。
前年の台風で大きな被害を受けて一時通行止めになったのは知っていましたが、通行止めが解除になった今でもこれほど荒れているとは…。

今回、非常事態宣言の中で散歩の延長で歩きにきたつもりだったんですが、思ったよりも難度が高い道で、結果的には登山と変わらなかったかなと。
これから挑戦する人は気を引き締めて挑んでくださいね。

おしまい