思いつきの下北遠征、二日目は大尽山と同じく東北百名山の一座、縫道石山に登ってきました。
個人的な話になりますが、この山は以前登りにきたときに道を間違えて登山道にたどり着けず、時間切れ敗退という苦い思い出がある山でした。
10年越しの再チャレンジ、ということになります。
10年の間に周辺の道路も大きく改良されたようで、もはや迷いようがないほどに立派な道に生まれ変わっていて誰でも簡単に訪れることができます。
まぁ、最寄りの都市であるむつ市からでも1時間半、県都青森市からだと4時間半かかる僻遠の地ですので「簡単に」訪れることができるというのは語弊があるかもしれませんが。

国道338と青森県道253が交差する地点から林道(ガイドブックには林道とあったが、もしかしたら現在は村道になっているかもしれない)に入る。
この林道は完全舗装、2車線の立派な道路になっています。
峠付近に駐車場があり10台~15台ほどの駐車スペースがありますが、トイレなどの設備はありません。

珍しいのは熊鈴貸し出しボックスが有り、熊鈴を借りることができることでしょう。
全国的に見ても珍しいサービス?ではないでしょうかね。
少なくとも私は初めて見ました。

縫道石山では以前カメラマンが熊に襲われた事故がありましたからね。
用心に越したことはありません。
我々は自前の熊鈴を出して入山します。




午前8時、縫道石山登山口、我々意外誰も居ない




熊鈴の貸し出しサービスがある
登山届もこの中に入れておけばいいだろうか?


  

終わりかけの紅葉を眺めながらゆる~く歩く


 

入山してすぐに左手に岩塔が見えてきます。
しかしそれは縫道石山ではなくババ岩とよばれるもののようです。
ババ岩に向かう踏み跡らしきものもありましたが我々はスルーしてさらに奥を目指していきます。

林道を思わせる幅広の道から一本脇道へ入ると登山道らしくなってきました。
その道の脇に展望が開ける場所があり、今度は本物の縫道石山が見えます。
天を衝く巨大な岩山で、いったいどうやって登るのかと不安になってきます。
少なくとも今見える範囲では徒手空拳で登れるような場所があるようには思えません。





何やら岩塔が見えてきた


  

さらに奥へと進む


  

縫道石山

  


縫道石山の登山道は地元が力を入れて整備しているらしく、明瞭でピンクテープも随所に設置されています。
ただ、地形図には複数描かれている道はほとんどが廃道化したらしく、現在まともに通行が可能なのは一本のみのようです。
かつては森林鉄道が通じ、幾多の作業道が通じていた周辺も少しずつ自然に還って行っている様子。

縫道石山の足元には三方向からの道が合流するジャンクションがある…ことになっています。
一応道標は健在なのですが我々が歩いてきたルート意外はほぼ廃道になっているということです。
さらに昔は森林鉄道のジャンクションだったらしいのですがすでに面影は無くただ薄暗い森が広がっているだけになっています。



一旦鞍部に降りる 



他のルートからの合流点



さて、いよいよ縫道石山の足元に迫ってきました。
行く手には見上げるような絶壁が立ちふさがります。
うーん、絵面だけ見るとまったく登れる気がしないのですが(笑

もちろん直登などできないので右へ右へと山腹を巻くように登っていきます。
この区間は少々山が荒れていて倒木や小規模ながけ崩れが目立ちます。
跨いだりくぐったり、アスレチック気分で楽しめる範囲ではありますが。


 

いよいよ縫道石山の足元に迫ってきた
  


登山道は山腹を巻いていく

  

倒木のアスレチックを楽しむ



気が付くと見上げるようだった縫道石山の頭が低くなっています。
少しずつでも着実に山頂に近づいてきているようです。
ただし、巻いて登るのも限界に近づいたようで、いよいよ岩登りが始まります。

…そうは言っても標高が低い山のこと、岩だけでなく木の根や落ち葉がミックスされた急登。
変な場所を踏んでスリップしないようにしないと…。

山頂直下ではいよいよ岩が覆いかぶさるように迫ってきました。
岩の下をくぐり、岩の割れ目をよじ登ります。
ただでさえ狭い登山道に倒木も加わり体をよじるようにしないと通れない場所もあり、無駄にでかい私は一苦労でした。




だんだん山頂が近づいてきた

 

クライムオン!

  

岩と木の根ミックスの急登 



山頂直下、最後の急登!




突然、ぽっかりと開けた空間に飛び出しました。
山頂かな?

  

山頂か? 



いや、まだでした。
もう一つ、最後の大岩を越えると縫道石山の山頂です。
山頂はイメージ通り岩の先端の小さな空間でしたが、周辺にはテーブル状になった空間が開けていて思いの外広々としています。
今日は我々の貸し切り空間ですが、これならば他に人がいても順番待ちとか気にせずにのんびりしていられそうですね。





もうちょいだった

  

最後の大岩を越えると…

  

縫道石山の山頂に到着!

  

やっほぉ!

  

登頂記念♪



縫道石山は標高600m強の山ですが、下北半島の深奥部という特殊な立地にあることと突き出た岩峰ということがあり非常に眺望に優れています。
西側には平舘海峡と津軽半島が横たわっているのが見えます。
平舘海峡は本当に足元にあると言って差し支えなく、往来するたくさんの船もつぶさに見ることができます。
なんとなくワクワクする風景ですね。

北には津軽海峡が青黒く広がり、その先には北海道の姿もうっすら見えています。
もう少し条件が良ければ肉眼でもその姿をはっきり捉えることができるようです。
うっすらと見える島影のようなものは、もしかしたら函館山かもしれません。

山頂付近の岩場にはなにやら乾燥キクラゲみたいなものが張り付いていました。
これが天然記念物のオオウラヒダイワタケでしょうか?
この地衣類を保護するために縫道石山はロッククライミングが禁止になっています。



  

足元が切れ落ちていて抜群の高度感!


 

平舘海峡と津軽半島


  

北には津軽海峡、そして北海道


  

もしかして函館山だろうか?


  

本州と北海道を結ぶ海峡には何隻もの大型船が


  

天然記念物のオオウラヒダイワタケ?




岩の突端にある山頂は風が強く、あっという間に体が冷えてしまいました。
本当はもう少しゆっくりしたかったのですが退散することにします。
下山も同じ道を戻りますが転げ落ちないように注意、ですね。


  

転落に注意 




無事下山




縫道石山は突き出た岩峰の上にある山頂ということで眺望が素晴らしい山でした。
陸奥湾こそ見えにくいですが平舘海峡から津軽海峡、そして北海道まで、海を隔てて雄大な景色を楽しむことができます。
短い距離ですが岩場があるので登降には若干の注意が必要ですがちょっとした冒険気分を味わえるのもこの山の醍醐味かなぁと思います。
3時間に満たない時間で登れる山ですが、アスレチック感あふれる登山道、山頂からの素晴らしい眺めと楽しめるポイントが多い良い山でした。
個人的には十年来の宿題を片付けることもできて喜び倍増でした(笑

おしまい