初冬の関東遠征、二日目は浅間隠山に登ってきました。
関東? 信州じゃないの?という気もしますが、県境なのでギリギリ関東?
東北人の私にはどの辺が境界なのかイマイチよくわかっておりません。

この山の主要なコースは二つありますが、今回は二度上峠をスタート地点とします。前日の宿泊地から近いのと所要時間が短かったのでこちらをチョイス。今回は完全に省エネモードですなぁ。





前日に世界遺産の富岡製糸場を見学、そのまま富岡に宿泊した我々は暗いうちから起き出し二度上峠へ向かった。途中、道を間違えたりしてウロウロしてしまったので予定より一時間押しで登山口到着。県道を直進していたはずがいつの間にか住宅地の路地に突入していたり、分岐点を見逃して一山越えそうになったり…どうも関東の道はわかりにくい。

ナビ? そんな文明の利器は積んどらんですよ。
スマホ? 格安中華フォンなので、ちょっと郊外に出るとGPS狂いまくりで役に立たんのですよ(笑
不便? 逆に考えるんだ! 国内でも探検気分を味わえるんだと!

で、二度上峠登山口である。道路のカーブする部分にそれはある。路肩に4~5台程度駐車可能だが、少し離れた場所に簡易トイレ付の広い駐車場もあるので、そっちを利用するのも手だ。登山口にはよくある山のマナーを啓発する看板なんかがあるが、ここのはセンスがいい。要約すると山肌が荒れるからコース外を歩くなということなのだが、最後に一言「山のお肌を大切に」とある。説教臭くなりがちなこの手のマナー啓発はちょっとしたユーモアがあるとかえって心に届くものだ。「そうだね、お肌は大切にしなきゃね!」と大きく頷くツートン。ほら、しっかり心に届いたみたいよ。

イメージ 1

登山口を出発




イメージ 2

注意事項を熟読!




イメージ 3

肌荒れ、ダメ、絶対!




今日は朝から天気がいい。そのかわり放射冷却で朝はかなり冷え込んだ。麓の高崎周辺で道路の温度計が3度とかになっていたので、おそらくこの辺りは氷点下だっただろう。冬枯れの林の中はあちこちに大きな霜柱ができている。それをサクサク踏みながら歩くのはなんだか気持ちがいい。

登山道は非常によく整備されている。上手い具合にジグが切られていてあまり急勾配にならないように設定されている。ただ、これをまだるっこしいと感じる御仁が要るようでショートカットする踏み跡が目立つ。これが登山口に書いていた「肌荒れ」の原因なのだろう。

しばらく歩くと「第一地点」と書かれた小さな広場に出た。この後も「第二地点」「第三地点」と続くので、これは所謂「一合目」などと同じ意味合いか。しかし、第三地点を最後にこうした表記が見られなくなったので結局なんだったのかよくわからない。単に我々が見過ごしただけなのかもしれないが。


イメージ 4

すっかり冬枯れしたカラマツの林を登って行く




イメージ 5

「第一地点」に到着




イメージ 6

サクサク霜柱




イメージ 7

第二地点




イメージ 8

空が青くて気持ちいい♪




イメージ 9

第三地点到着
登山道が鋭角に曲がるため道標が設置されている





中腹付近まで登ってくるとあちこちで洗掘が進んでいるのが目に入る。土質のせいなのかオーバーユースのせいなのか、それともその両方なのか。原因はわからないが管理者が「お肌を大切に!」と言いたくなるのもわかる。念押しのためか、登山口にあった啓発看板と同じものがもう一度設置してあった。

イメージ 10

あちこちで洗掘が進んでいる




イメージ 11

「肌荒れ注意」の念押し




イメージ 12

傾斜が緩むと洗掘も緩和される




イメージ 13

北軽井沢方面への分岐




ところで浅間隠山の山名の由来だが、これはもう読んで字のごとく浅間山を隠してしまうから…なのだそうだ。上州側から見てのことなので、実は我々が歩いている二度上峠からのコースからは浅間山が見えてしまっている。樹間からチラホラという程度だが、三名の由来に敬意を評したい場合は反対側のシャクナゲ尾根のコースを登ると良いようだ。山頂に出るまで文字通り浅間山は隠されているのだそうだ。山頂に立って初めて目に飛び込んでくる浅間山の威容に感動すること請け合い…らしい。

イメージ 14

実は浅間山は隠されていなかった





このコース、基本的には一本道なのだがあちこちに分岐がある。もちろん、どこか別の場所へ続いているわけではなく、しばらくすると合流するのだ。比較的なだらかな地形のためどこでも歩けてしまう。それが多数の踏み跡を生んだ原因だろう。たしかに下りではコースを無視して一直線に下った方が早く降りれるような気になるかもしれない。

イメージ 15

無数の踏み跡が山肌を荒らす…





やがて木々の隙間から山頂が見えてくる。はやる気持ちを抑えながら一歩一歩進んでいく。山頂直下はやや笹がうるさいが、このくらい昨日の榛名山に比べれば大したことはない。時々現れるビューポイントからは周辺の山々の姿が見え始めた。なかなか良い眺めではないか。これは山頂からの眺望が楽しみである。


イメージ 16

木々の隙間を通してピークが見えてきた




イメージ 17

山頂直下は少々笹薮が煩わしい




イメージ 18

アレは八ヶ岳かな?




イメージ 20

胸がすくような開放感





イメージ 19

これは山頂からの眺望が楽しみだ





道が青空に突き当たり絶頂を迎える。山頂だ。こぢんまりとした山頂だがフラットで居心地は良さそうだ。祠と山名標、そして方位盤が設置されている。おし、これで山座同定ができるかな? 遠征先ではなかなか難しいので方位盤があると楽しいのだ。

イメージ 22

山頂に到着





イメージ 21

まずは浅間山がどどんと眼の前に
浅間山が無いとこの山の名前は成立しないからな(笑




イメージ 23

真っ白に雪を頂いているのは谷川連峰か
それほど遠くない場所だがあっちはもう真冬の装い




イメージ 24

同じように雪を頂いている特徴的な山
方角からして四阿山とかなのだろうか
これは確信を持てなかった




イメージ 25

白いといえば浅間山の向こうに真っ白なラインが見える
これは北アルプスの山々であろう




イメージ 26

足元に目を落とす
特徴的なギザギザの山は妙義山
標高は低いが難易度は高いらしい




イメージ 27

上州の盟主…と言っていいのだろうか?
水上の町を挟んで赤城山が無数にピークを連ねている




イメージ 28

昨日登った榛名山とそのはるか向こうに日光の山々
明日登る予定の袈裟丸山もあのどこかにあるのだろう




この景色の良さだ。さっさと下山するにはあまりにももったいない。荷物をおろしてコーヒーを飲みながら一休みだ。至福のひととき♪

しかし、こうして名だたる山々を眺めるのは飽きることはないねぇ…。ずっと見ていられる。日々の小さな鬱屈やくだらん悩みが空に溶けていく気がする。

イメージ 29

一休み
至福のコーヒータイム♪




飽きることは無いが次の予定がある。切りの良いところで下山しよう。それに最初は空いていた山頂が時間の経過とともにドンドン混んできたのである。いつまでも狭い山頂の一角を占領しているのも悪いような雰囲気になってきた。


イメージ 30

浅間山を眺め去り難く…




イメージ 31

本当に気持ちの良い景色だ





下山時、上から見ると本当に縦横無尽に踏み跡がついているのが分かった。下から見たときはこれほどと思わなかったが、場合によってはそこらじゅう道のようになっている。肌荒れ防止のために正規のルートを歩こうと思うのだが、自分が歩いているのが正規のルートなのかどうか判断がつかないほどだ。どうしてこうなった?

イメージ 32

どれが正しいルート?



わりと静かな山だと思っていた浅間隠山だが、単に我々が登った時間が早かっただけのようだ。下山時にはびっくりするほど多くの登山者とすれ違うこととなった。いやぁ、そりゃそうだよね。90分登ってあの景色見れるならなぁ。もし麓に住んでいたら通ってしまうわ。

静かな山も良いが多くの人と挨拶を交わせる賑やかな山もまた良し。特に今日みたいに天気がいいと「山頂どうでした?」「最高でしたよ。あと少しなので頑張って!」などと会話も弾む。

特に印象に残ったのは60歳を過ぎてから山を初めて300名山を踏破したというスーパーおじいちゃん。聞けば岩手山にも何度も登ったとのことである。「岩手県にも知り合いがいるよ~」とのこと。なんていうか、すごいな。見習いたい、というかあやかりたいものだ。一期一会の山の縁、お願いして記念写真を撮らせてもらった。またどこかの山で会えるかな。

イメージ 33

スーパーおじいちゃんと記念写真




下山の行程も終わりに近づいた頃、木の幹に書かれた文字を見て思わず笑ってしまった。
「←出口」
山で「出口」なんて書かれているのは初めて見た気がする。登山道の「入り口」なんていうふうに言ったりするから間違いではないのだが、なんとなく違和感を覚える。肌荒れの看板といい、このあたりを整備している人たちはユーモアがあるよね。嫌いじゃないです、こういうの。

イメージ 34

出口…だと?




イメージ 35

無事下山





というわけで、初冬の浅間隠山に登ってきました。二度上峠からの登山道は危険な場所もキツイ場所もなく、この時期だとすっかり落葉した明るい森の中を散歩気分で登ることができます。

朝一こそ静かな山歩きでしたが、あれよあれよと言う間に大勢の登山者が登ってきて下りでは行き違いに苦労するほどになりました。山頂からの景色が良い山ですし、そこへ90分で登れるとなれば人気が高いのもうなずけます。

「浅間隠」だなんて、浅間山のついでのような扱いなので最初はあまり期待していなかったのですが、なかなかどうして素晴らしい山でした。

おしまい

イメージ 36

イメージ 37