午前中に秋田白神の小岳に登った我々ですが、目論見通りに早い時間に降りてくることができました。となるとやはり帰路に藤里駒ヶ岳に登っていくのが効率的だろうということで登山口に向かいます。なにせ藤里駒ヶ岳の登山口も、素波里園地から未舗装林道を走ること12km。小岳よりはマシだけど、それでも長い林道走行を必要とするのですから。



そんなわけで小岳から下山した我々は、そのまま藤里駒ヶ岳の登山口へと向かうのであった。

粕毛林道から駒ヶ岳樺岱林道(仮称)へ左折。写真は行きに撮ったものなので、左の道から看板がある右の方向へと車を進める。

分岐から先、一気に急な坂を登って行く。植林地の中を通る林道は小岳方面より交通量が少ないのか浮石や落ち葉で覆われ若干走りづらい。坂が急なのもあって、四駆モードにしていても時折タイヤが空転する。

やがて駐車場に到着するが、三台分くらいの駐車スペースがあるだけでトイレなどの設備は無い。



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小岳下山後、今度は藤里駒ヶ岳へ




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粕毛林道から駒ヶ岳樺岱林道(仮称)へ





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植林地の中の急坂を登っていく





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駐車場が見えてきた





さて、我々は藤里駒ヶ岳に登りに来たわけだが、どういうわけか駐車場の近くにある標識には「樺岱登山口」と書いてある。そして駐車場の少し手前には「駒ヶ岳登山口」という標識が立った別の入口もあるのである。もともと樺岱を経由して駒ヶ岳の山頂に至るのは知っていたが、こんな至近距離に二つの登山口??? なんだかよくわからないが、とりあえず樺岱登山口から登ってみることにした。

登山道は明るいブナの林の中をジグザグを描きながら登って行く。あまり踏まれていないのか地面は柔らかく、フカフカした感触が足の裏に帰ってくる。ところどころ丸太などで法面や段差を押さえているが、周囲の黒土がむき出しで最近整備された感じがする。

微妙に不自然なこの登山道、途中で何度も別の道と交差したり分岐したりを繰り返す。初めは作業道なのかなと思ったが、どうやら駒ヶ岳登山口から登ってきた道だと途中で気が付いた。単純に合流したのではなく、もともとあった登山道を無視して別の道を作ったらしい。試しにツートンと別々の道に進んでみたが、すぐに合流を果たす。片方の道が直登気味なのに対して、もう一方がジグザグを大きく取った道形になっている。新しい道の方が勾配を緩和した作りになっているようだ。旧道がそれほど荒れているようにも見えないし、なぜわざわざ新道を?と思ったが、これはどうやら観光開発の一環のようだ。樺岱付近のブナ林まで歩いてもらおうということらしくツアーなども企画されているようだ。白神山地の区域内では自由に開発できないので周辺地域で、ということだろうか(笑



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樺岱登山口から登る




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ブナの林の中をジグザグを描きながら登って行く




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途中で何度も別の道と交差と分岐を繰り返す




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二本の道は絡み合うように登って行く




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なめこ祭り開催中!
持って帰られないのでスルー…





絡まりあうように登ってきた二本の登山道はいつの間にか一本に収束していた。傾斜が緩くなったからだろう。やはり新道は勾配緩和のために作られたようだ。この辺りまで来ると、あちこちにブナの巨木が見られるようになる。なかなか見ごたえのある景観ではある。なるほど、これを観光客に見せたいのだな。

ふいに「28」番と書かれた標識が現れた。小岳と同じく山頂に向かってカウントダウンされていく形式のようだ。何番から始まっているのか定かでないが、とりあえずこの数字が1になると山頂なのだろう。続いて「25」「23」と着実に数字は減って行くが景色に変化が少ないため同じところをグルグル歩いているんではないかという気になってくる(笑




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やがて二本の登山道は一本になる




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28番、この数字は山頂までカウントダウンされていく




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25番、代わり映えのしない景色が続く




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同じところを歩いているんじゃないかと錯覚しそう…





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倒木がいたるところにある
先日の台風の影響だろうか





広い緩斜面はやがて一本の尾根筋に収束していく。長閑なブナ林歩きもそろそろおしまいだ。1076ピークの西斜面をトラバースしていくが、この頃になると行く手に藤里駒ヶ岳本体が見えてくる。藤里駒ヶ岳の山肌は雪崩に削られたのか急峻な姿をさらしている。えー、あそこを登るんすか? かなりの急斜面、しかもガレてるように見えるんですけどー。




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広い緩斜面はやがて一本の尾根筋に





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行く手に藤里駒ヶ岳本体が見えてきた





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森林限界を越え周囲の景色が良く見えるようになってきた





藤里駒ヶ岳へは「吊尾根」と呼べそうな細長い尾根が続いている。いやらしいことに吊尾根に向かう下り坂に雪が残っているではないか。凍結しているわけではないが落ち葉との共同作業で我々を転ばせにかかってくる。やーめーてー。これは、朝一で雪が固まっていたらもっと怖かったかも…。やっぱりこの時期は万が一の時のためにアイゼンなりスパイクなり持ってあるかねば。

あれ? そういえば「樺岱」とやらはどこのことだったんだ? 目印の一つもなかったように思うんだが…。見落としただけかもしれないが、樺岱登山口などというものを作っておきながら山名標識が無いとは。




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駒ヶ岳へ続く痩せ尾根




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下り坂に着いた雪がイヤラシイ…






山頂直下はヤセ尾根の急登だ。ここまで比較的なだらかな地形だったものが一気に険しくなった。遠目に見てもなかなか厳しい地形に見えたが、やっぱりなぁ。

特にガレ場が難関であった。浮き石が多く、うっかり変な場所に足をおいたら滑落する危険がある。一応、補助ロープや鎖も設置されているのだが、設置された位置が微妙で使いづらい。ロープを掴もうとすると灌木の枝葉の部分に顔が当たるってどういうことよ…。

ガレ場上部には木のハシゴが設置されている。ここも一見たいしたことが無いように見えるが、ガレ場とその上の土の地面との間には小さくない段差がある。もしハシゴが無ければよじ登るのはかなり厳しいだろう。

梯子の上の斜面もさらに角度を増して天へと向かって続いている。今度は落石の心配は無いが、木の根・草の根でのスリップが怖い。以前整備された木段かなにかの残骸なのか、ところどころに丸太が埋まっているのも厄介だ。これは登りの時以上に、下りの時にトラップと化す気がする。




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山頂直下の急登




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浮石多数のガレ場




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使いづらいロープや鎖
あまり頼りにならない




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ガレ場上部のハシゴ




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梯子の上には急な土の斜面
とにかくスリップに要注意!





難所を登りきったら山頂なのかと思いきや、実はまだ先があったりする。山頂付近は左右どちらも見渡しても切れ落ちており、周囲とは隔絶された空間になっているようだ。藤里駒ヶ岳に対しては、あまり険しいイメージは無かったのだが、こと山頂周辺に限ってはかなり険しい地形の山だった。

細長い回廊のような場所を通り山頂に到着。直前の狭くて険しい地形からすると意外なほどに広くて平坦な山頂である。休憩する場所にも困るような狭い山頂でなくて良かった。そろそろゆっくり休憩したいと思っていた頃合いなのだ。




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難所を通過!って、まだ先があった。



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意外に広い山頂広場





山頂からの眺望はなかなか良く、一部灌木などに遮られはするものの、ほぼ360度の視界が得られる。その中でもやはり目を引くのは秀麗な三角錐の岩木山。午前中は雲がまとわりついていたが、今はそれも取れ端正な姿を見ることができる。

一方、小さなピークが無数に存在し、どれがどれだか判然としないのが白神山地方向。午前中に登った小岳も今一つ自信を持ってコレだと言えない。核心地域の奥の一際大きな山塊が白神岳だろうとは思うものの、これも自信がもてない。

山頂に方位盤が設置されていたので山座同定しようと思ったのだが、これがなんと方角が示されているだけで山の名前が書いていなかった。いやいや、普通こういうのには書くでしょ、山名。しかもこの方位盤、固定されていないので方位すら正しいかどうか怪しいという代物(笑 触ったら動いてしまったので、もし仮に正しい方位だったとしても私がずらしてしまったことになる。

広大なブナの森を挟んで田代岳が。足元には素波里湖が山の肩からチラッと姿を見せ、さらに遠くの平野の向こうには日本海が鈍く光っている。眺めの良い山頂で飲んだコーヒーが最高に旨かった。




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秀麗な岩木山
津軽富士の異名は伊達じゃない





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このどれかが小岳のはず…




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白神山地核心部とその向こうに白神岳




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田代岳とその周辺の山々




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素波里湖がチラ見え




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鈍色に光る日本海




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あてにならない方位盤




一休みした後は元来た道を下山する。やはり山頂直下の急斜面とガレ場は緊張させられたが、それ以外は特に難しい場所は無い。

最後はせっかくだからと「駒ケ岳登山口」の方に降りてみたが、時間的にはそれほど差は無いようだ。駒ヶ岳登山口の方は薄暗い針葉樹の森の中を行くので「樺岱口」の方が眺望がいいとは思うが。


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違う登山口に無事下山





今回、初めて登った藤里駒ヶ岳ですが、美しいブナ林と山頂からの眺望の良さと併せて楽しい山行となりました。同日二座目だったので少々体力的には厳しかったですが(それでも二つ合わせて6時間くらいか)充実した一日でした。小岳と併せて登るために比較的マイナーな樺岱コースを歩きましたが、道が不明瞭なわけでもなく安心して歩けるコースです。登山口から山頂直下まで、ブナ林の連続で若干冗長な感じもありますが、新緑の時期や紅葉の時期などに合わせて歩くと、また違った雰囲気でしょう。白神山地の好展望地でもあり、広大な手付かずの自然を眺めることができます。

下山後は、素波里園地から県道317号湯の沢温泉へ抜ける新しい道を使うと10分ほどで湯の沢温泉へ抜けることができます。この道、まだネットの地図にも載っていない新しい道のようで、現地に行くまではノーマークだったのですが、おかげで温泉へ向かう時間が大幅に短縮できました。湯ノ沢温泉ではゆとりあ藤沢という施設が400円で入浴できるので、登山の疲れを取るのに良いかと思います。

おしまい

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