2017年4月30日。
強風と豪雨に揉まれながら一夜を過ごしましたが、夜が明けてみると抜けるような青空が広がっていました。天気次第では登山から観光に変更だなとか思っていたんですが、どうやら山に登れそうです。

猪苗代湖畔から郡山市街を抜け阿武隈山地へ足を延ばします。
国道49号を南進し「ジュピアランド平田」へ。
このジュピアランド平田が蓬田岳のメインの登山口になっているのです。
広い駐車場やトイレが完備されているので、安心して入山できるのです。

…が、ここの駐車場、春先の芝桜祭りの期間中のみ有料となるのでした。
すっかり失念しており、現地まで行って気が付きました。
正直、半日かからない里山に登るのに500円払って車を停めるのはバカバカしい…。
それに汗だくになって大勢の観光客が闊歩する観光地に下山してくる…というのも、あまり気持ちの良い話ではありません…。

よって、急遽ではありますが転進!
別の登山口から登ることにします。
事前の情報がまったくありませんが…、まぁなんとかなるでしょう(笑

手元の地図を頼りに田母神登山口へ向かいます。
国道49号から細い農道に入り、その農道からさらに小さな作業道の中に入っていきます。なにも手掛かりが無ければ見落としてしまいそうな道ですが、あちこちに立派な案内標識が立てられていました。
福島は概して登山道やその周辺の整備に熱心ですよね。福島百名山などというものがあるくらいなので、地元の関係者が熱心なんでしょうね。

本当にこの道でいいのかな?と思うような作業道の終点に登山口はあります。
10台くらい車を停めるスペースはありますが我々の他には登山者の姿はありません。
やはりマイナーなコースなのか。

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あまり登る人が多そうな雰囲気ではありませんが、わりと近年に整備されたと思われる立派な看板類が立ち並んでおり、定期的に整備の手が入っていることをうかがわせます。良かった。とりあえず藪藪でどうしようもない、ということはなさそうです。
ただ、登山道の入口の道標に「糠塚登山口」という表記を見つけて???となりました。ここは田母神登山口じゃないの? 田母神口という看板を辿ってきたつもりなんですが…。
まぁ、いいか? 蓬田岳の登山口であることには変わりないし…。

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コース案内の看板を見ておもわず笑ってしまいました。
なんていうかネーミングセンスが秀逸です。ただ、モスラとかウルトラマンとかゴジラとか版権的に大丈夫なのかとは思いますが(笑
あと個人的には「カンガール」が気になります。どんな少女なんだ? しかも「カンガールのしっぱり下がり」って…。なんかこう、妄想が膨らみません?(笑

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登山口の段階でいろいろ疑問が浮かんできますが、ひとまず先へ進むことにします。
最初、登山道は薄暗い植林地の中を進みます。
下草の刈り払いがされているし、枝打ちもしてあるようなので荒れた感じはしません。近年、登山口付近の植林地が荒れ放題になっているところが多く見られるので、人の手が入っていることがわかるだけでホッとしますね。

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すぐに分岐点が現れます。
直進すると岩登りコース、右へ行くと一般コース。
岩場の下りはイヤなので登りに岩コースを歩くことにします。

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分岐点をすぎると踏み跡が細くなりました。
あれ? あまり歩かれていないのかな?

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ただ整備はされているようで道はしっかりしています。

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いや、そうでもないかな?
これはちょっとどう評価していいかわからない感じの道です。

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一気に斜度が増した道をゆっくり登って行きます。



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水場がありました。
「うまい!!」
らしいですよ。

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植林地を過ぎ雑木林に抜けました。
景色が明るくなり良い雰囲気なんですが、落ち葉がごっそりと降り積もり踏み跡が一層不明瞭になりました。

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ペンキマークがついており誘導してくれますが、急登ということもあり足元ばかり見ていると道を外しそうです。要注意。

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だんだん「岩登り」コースらしくなってきました。
今のところ4WD歩行を必要とするような場所は出てきていませんが、両側が切り立った場所もあり油断はできません。

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あと里山の岩場にありがちな「岩の上に落ち葉」という場面も多く、思わぬところで足が滑ったり隠れていた浮石を踏んだりとまかり間違うと怪我につながるような要素も多くあります。

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いたる所に名前がついていそうな大岩が点在しています。
入り口の看板に書かれているゴジラ岩だかなんだかが、これらのどれかなのでしょう。
ただ、木や岩にペンキで「くじら岩」とか、さっき下で見てきたのとは違う名前が罹れていたりします。どっちが本当???

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展望岩と書かれた大岩が出現。せっかくなので登ってみましょうか。
ところで、岩の右下あたりに子供用の椅子が置いてあるのがわかるでしょうか?
はじめ「なんでこんなところに椅子が?」と少し気味悪く感じたのですが、どうやらこれは岩に登るための足置き場として設置されたようです。
ただすっかり錆びついており椅子を構成する金属パイプも不自然な方向に曲がりつつあります。ちょっとコレに体重を預けるのは…。
登山道で怖いものの一つに「老朽化したまま放置されている人為的な工作物」がありますが、まさにコレがそんな感じ。





恐る恐る登った展望岩ですが登った甲斐はありました。
那須連峰から磐梯山、安達太良山、吾妻山など南東北の名だたる名山が一望できます。今日は天気もいいし、ここから望みうる最高の景色なのではないでしょうか。

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那須の山々…かな?


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磐梯山。



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安達太良山。




さて絶景も堪能したことですし山頂へ向かいますか。
展望岩を下り、登山道へ復帰しようとした我々をペンキマークが導いた先はこちら。

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いやいやいや、これは狭すぎるでしょう。
ザック無しの空身なら通り抜けられなくもない…かもしれませんが、カメラ持ってザックを背負ってという今の出で立ちではまず無理。
ツートンも半身だけ入れるのが精いっぱいで引き返してきました。
とんでもないところに誘導してくれるな、おい。

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しかたがないので一度戻り、展望岩の付け根あたりをトラバースし先を目指します。
このあたりには多くの踏み跡が残っており、あの「穴」を通過できなかったのが我々だけではないことを教えてくれます。

ようやく「穴」の向こう側にたどり着きました。
迂回路もなかなかの隘路でしたが、この「穴」ほどではありますまい。「穴」の前には看板が有り「ここを通り抜けないと展望岩へは行けません」とあります。

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嘘つけ!(笑
なに、この「何が何でも穴の中を通したい」感。





我々の登山史上最狭の「メタボ返し」を通過すると(いや、通過してませんけど…)、またしても特徴的な岩が現れます。
これは…ドナルドダック的な何かだろうか?

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この岩を通過すると道は穏やかな傾斜となり空が近くなってきます。
山頂近し。

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登山開始から1時間と少しで山頂に到達しました。
かかった時間のわりには
密度の濃い登山ができたような気がします。
変化に富んでいて楽しいですよ、岩登りコース。

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山頂には山名標識の他ベンチが据えつけられ休憩するのによさげな空間がひろがっています。方向によっては樹木に邪魔されますが、見晴らしもなかなかのもの。
広場の一角にある大きな岩の上に登れば、東西南北様々な角度の展望が得られます。

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東側に大滝根山が見えています。
自衛隊のレーダー基地があるので一目でそれとわかります。
午後はあちらへ行く予定。
本日はダブルヘッダーでガンガン山を登って行きますよぉ。

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さすがに登山開始から一時間少々では、山頂でお昼を食べようという気にもならず、軽く休憩した程度で下山を開始します。
最初はさっきと同じ道を下って行きます。


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登りで見たドナルドダック岩(勝手に命名)の頭の上には、よく見ると何かが祀ってあるようです。遠目には錆びついた何かとしかわからないのですが、カメラで寄ってみるとなかなか精巧な仏像が祀ってあるのがわかりました。

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この岩の先あたりで「下山路」と書かれた道が分岐している場所があります。
それなりに踏み跡も濃い道ではありますが、手持ちの地図には載っていない道です。
登山口で見た看板にも「下山路」という表記は見当たらなかったし…。
とりあえず、変な場所に下ろされても困るのでここはスルー。
登ってきた道を素直にたどることにします。



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展望岩の少し手前あたりで道が分岐しています。
この分岐は地図にあるもので下へ降りていくのが「一般コース」。
最終的には今朝一つ目に分岐した地点へと戻るコースです。
下りはこちらを選択。

岩の付け根を滑り落ちるような急坂で下って行きます。
足元の岩に土がかぶっていてズルズル滑ります。
転んだら岩に頭打ちそう…。

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そびえたつ岩壁を下から眺めます。
おそらくこの岩の上が展望岩であり、登ってきた岩登りコースなんでしょう。
上に居たときは周りに木々があることもあって、それほど険しい場所にいる自覚がなかったのですが、なかなか大変な場所を歩いてきたのかもしれません。

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この岩より下は急な斜面ながらも普通の土道となります。
特に危険個所はありませんが地味に足にダメージが来る激下りの道です。
こういうところって足の筋が伸びちゃってねぇ…。

無事に登山口まで帰ってきてびっくり。
朝、我々の車一台だけだった駐車場には多くの車が停まっており、その後も続々と新たな登山者がやってきました。
コース中では一人とすれ違ったのみだったんですが…。
予想以上に多くの人がこのコースを登りにきたようです。

蓬田岳、田母神(糠塚)コースですが短いコースながらも変化に富んでいて楽しい山歩きとなりました。一気呵成に山頂を目指す感じは、昨日の稜線漫歩とは真逆ですが、自分の足で「高度を上げていく」という登山の醍醐味に満ちた良コースだと感じます。

あとはコースが整備されていく過程に興味ありますね、この道。
田母神と糠塚という名前が混在していること、看板に描かれた「○○岩」という名前と山中でペンキ書きされた「○○岩」がまるで一致しない事。そこにどのようないきさつがあったのか。
整備主体の変遷があったのか、あるいは地元民と管理者の意見の相違なのかとか。単に親しみやすいニックネームを後付けで付けただけなのかもしれませんが、そこになんとなく「物語性」を勝手に感じてしまい、色々想像して楽しんでいます。
こういうのって町史とかを紐解いてみると、意外と簡単に答えがわかったりするんですが…。まぁ、そこまではやりますまい。もし何かご存じの方がいたら、そっと教えていただければ幸いです。

東北百名山が一座、蓬田岳。無事に登了!

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