潮風トレイル洋野エリア2日目の朝は寒かった。
おそらく最低気温は0℃近くまで下がったのではないだろうか。
そろそろ車中泊も限界だなぁ…。



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昨日の轍を踏まないように早めに出発し陸中中野駅へ。
ここから昨日のゴール地点である宿戸へ列車に乗って行く。




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で、昨日のゴール地点、宿戸駅へ再びやってきた。
昨日は我々以外に乗降する人はいなかったのだが、
朝の列車と言うことでそれなりの人数が列車に乗り込んでいった。




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宿戸駅を出発。トレイルコースは一旦国道45に出る。
大きな道を歩く部分はトレイルコースの中で最も嫌な場所だ。
復興関係の車両だろうか、大きなダンプが何台も通る。
その排気ガスを浴びながら黙々と進むのだ。




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我々を浜へ導く道標があらわれた。
よかった、すぐに国道45号とはおさらばできた。




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一歩裏通りへ入ると車の騒音は遠のき、あたりを潮騒が包み込んだ。
今日は終日晴天の予報。波も穏やかだ。
朝日に輝く海が綺麗だ。




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ビューポイントの一つ、大浜通踏切にやってきた。
一見なんの変哲もない踏切なのだが、踏切の向こう側には道がない。
ただ浜が続いているだけである。
道も無いのに踏切がある…よく考えると不思議な話だが
海に作業に出る人などが通るために設置された踏切というのがその正体のようだ。
海辺を行く八戸線の一つの象徴である。


小さな丘を越え八木の集落へと向かう。
…と、ここで重大なミスをしたことに気がついた。
うっかりスタンプラリーのポイントを通過してしまったのだ。
結局、500mほど戻ってスタンプを回収してきた。
往復1㎞のアルバイトとなった…。




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ちなみにスタンプポイントの松橋商店はこんな感じのお店。
45号沿いの山手にあるので海ばかりに気をとられていると見落としてしまう。




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近くにこのような大きな鳥居が立っているので、これを目印にすれば迷わない。
浜の側を通る道からも、松橋商店は直接見ることはできないが鳥居は見える。




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なお、お店が休みの日や配達で留守にしている時は
店の側にある待合室のような場所にスタンプが置かれているので
いつ通過してもスタンプを押しはぐれることはなさそうだ。
松橋商店さんの気遣いに感謝である。


出発前に次のスタンプポイントを確認しておこうと
改めてスタンプ帳を確認した我々は重大な事実に気がついた。
次のスタンプポイント「大久保商店」さんは毎月第一日曜日が定休日なのである。
今日は11月1日(日)。つまり第一日曜日で定休日である。
なんてこったぁ! 一難去ってまた一難…。
せっかく歩いて行っても、スタンプを押すことができないのか…。


すっかり意気消沈の我々だったが、とりあえず行くだけ行ってみるべと
気を取り直して先へ進むことにした。
もしかしたら軒先にスタンプを置いていてくれたり…とかするかもしれないし…。




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で、八木集落に入る。
この付近には昭和8年の津波記念碑があることになっているのだが見あたらない。
記念碑があることになっている場所は現在堤防を作る作業の真っ最中だ。
まさか撤去されるということはないだろうから移転したのかもしれない。



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陸中八木駅を通過。



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駅近くの丘に金山神社があるので立ち寄ってみる。




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神社の由来を書いた看板が色あせていて全文を読むことはできなかったが
このあたりは昔砂鉄が採れ、八木はその砂鉄を船に運び出す基地として栄えた…
とかなんとか、そのような事が書かれていたような気がする。
ちがったらごめんなさい。




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神社からは八木の港が一望できる。
一見平和な景色だが、よく見ると防波堤の一部が破損しているのがわかる。
また、海の近くの更地ももともとは何か建物があったようである。
言うまでもなく津波にやられたのだろう。

八戸を出発して、ここまではあまり具体的な津波の被害を見ていないが
この先、南下するに従って大きな被害を被った地域を通過することになる。




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八木の駅前通を歩く。
ささやかな商店街だが理容店が2軒もあったのが印象的だった。
競合しないのだろうか?




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一山…というか一丘越えると小子内の集落に入る。
ここには「清光館跡」の記念碑がある。
柳田国男が徒歩で三陸沿岸を旅した時に立ち寄った旅館の跡だということだ。
柳田の清光館哀史という作品に登場するので興味のある方はご一読下され。
全文かどうかはわからないが、ネット上でも検索すると出てくる。
ちょっともの悲しい話なのだけれども。


再び45号線に出て一丘越える。
丘を越えたらまたすぐに海岸方面に下りていくわけだが
降り口に標識らしきものがないので今ひとつどこから曲がればいいのかわからない。




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我々はなんとなく坂を下りすぎてしまい、危なく迂回路に迷い込むところだったが



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実際はこの階段で45号から離脱するのが一番効率がよい道のようだ。



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海へと下る集落道を行く。



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八戸線の鉄橋と防波堤の水門が見えてきたら正解だ。


ここはサーフィンを楽しむ人が訪れるようで、
この日も多くのサーファーが浜で遊んでいた。
サーファーは水門をくぐって海へ向かうのだが我々は足元を濡らしたくない。




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そういう場合は水門の階段を登り…



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制御室の脇を通り抜け…



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浜へと下りる。
これで堤防と小川を濡れることなく通過することができる。



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堤防を越えると一面に海が広がっていた。
大きな堤防に遮られよくわからなかったが、
いつの間にかものすごく海に近い場所にいた。



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ここから有家の浜までは海岸線を歩いていく。
文字通りの海岸線で道ではない。
いいね、この非日常な感じ。



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最初は砂浜だが有家に近づくにつれガレ場になってくる。
このあたりはトレイルマップによると「露頭」と案内されているが
それが具体的になんなのかまでは説明されていない。



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地盤の岩石が露出しているってことだろうか?
よくわからん。



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ちなみにこの区間は波が高い時などは迂回路を通るように進められている。
波が穏やかな今日ですら一番狭いところで海と崖の間が10mくらいなので
波が高い日は確かに危険だ。
ただ、迂回路の分岐と海岸までは結構距離があるので戻るのは大変だ。
手前で海の様子を確認し、荒れていたら最初から迂回路に進んだ方がいいだろう。



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露頭地帯を通過すると有家の浜に出る。
こちらでも大勢のサーファーが波と戯れていた。
うーむ、寒くないのだろうか?と余計な心配をしてしまう。




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さて、美しい海岸が続いているのでこのまま海沿いを進みたいところだが
トレイルコースはここから大きく内陸に入っていく。
踏切のところには今まで見たことのない大きさの道標が立っていた。

是が非でも海岸部を歩かせたくない強い意志を感じる(笑
なんだろう、道が無いのか?とその理由をあれこれ想像してみたが
帰宅後【こんな文書】を見つけた。

どうやら八戸線を踏切がない場所で横断する道になるため
コースとして認定できなかったらしい。はは~、なるほど。
生活道として半ば黙認されている線路の横断はあるが
公にコースとしては認定できないということか。
まぁ、今の世の中、いろいろうるさいからねぇ…。

それはそうと上記の文章だが想定する「歩いてほしい人」という項目に
「お金を落としてくれる人」と明記してあるのだが、生々しいなぁ(笑
まぁたしかに本音だろうけど、公式サイトに堂々と記述してあるというのは(笑
いや、いっそすがすがしいか?(笑
というわけで、復興支援にお金を落としに行きましょう!




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有家駅は秘境駅としても有名だ。
すこし離れた場所に人家はあるので秘境度はそれほどでもないが
やはりこの海のすぐ側というロケーションが有名になった理由だろう。
わざわざ遠くからこの駅を目当てに訪ねてくる人も多いようだ。



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さて、我々はトレイルコースに従って45号へ向かう。



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で、国道の歩道歩きという楽しくない区間へ…。
たまたま車がいない瞬間にシャッターを切ったが
ほとんどひっきりなしに車がやってくる。



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有家大橋を渡る。
深い谷を一気に跨いで越えていく。
橋の上から見る紅葉が良い感じだった。




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橋を渡ると間もなく左手へ入る道が現れる。
中野の集落へ入る道だ。
もうすぐ次のスタンプポイントだ。
どうかな~? 押せるかなぁ?
ちょっとドキドキしてきた。





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とりあえず中野熊野神社に立ち寄り神様にお願いでもしてみようか…。




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神様、神様、どうかスタンプが押せますように…。
そんな事を頼まれても神様も困るだろうけどな(笑

少し歩き疲れたので境内で休憩させてもらっていると、
突然「こんにちわ」と声をかけられた。
見ると一人のおじさんが階段を登って来たところだった。
最初地元の方がお参りに来たのかなと思ったのだが
「潮風トレイルやってる方?」
と思わぬ声がかかった。

そうです、と答えると
「今歩いてくるのが見えたからスタンプ押すかと思って。お店開けておいたから。」
なんとその人は次のスタンプポイントの大久保商店の方だった!

お話を伺うと車で通りかかった娘さんが我々の姿を見て
家にいたおじさんに電話で連絡を入れて店を開けてくれたのだとか。
さらに、
「コースは手前で海手に曲がるから、もしかしたら行っちゃったかと思って」
なかなか姿を見せない我々をわざわざスクーターに乗って探しに来てくれたのだ。
なんてありがたい話なんだ…。




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そんなわけで本来押せなかったはずのスタンプを押すことができた。
これで洋野区間のスタンプはコンプリート。
踏破証明書とピンバッジをゲットすることができた。

アンケートなどを記入している間、店の方とお話をした。
トレイルをやっている人はよく来るんですか?と聞くと
「たまに来るよ。そんなに多くはないけれど。」
ということだった。

「団体で来る人もいる。
そういう人はバスで来て景色がいいところを歩いて
スタンプ押して帰るっていうのが多いかな。
一人で来る人はストイックな人が多いね。
そこまで送ろうか?というとたいてい自分の足で歩き通したいからって断るね。」

などなど、潮風トレイルについての貴重なお話も伺うことができた。

丁重にお礼を言って大久保商店を後にする。
出掛けにも「道はわかるかい?」と懇切丁寧に説明してくれた。
知らない土地で受けた人情はことさら身にしみる。
たぶんこの思いではしばらくのあいだ我々二人の心を暖かくしてくれることだろう。
この場を借りて改めて御礼を申し上げたいと思う。




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少し神社方向に戻って海手に下る。



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何箇所か分岐点があるが例の道標は姿を見せない。
まぁ、基本的に海へ向かう方向に進めば間違いはない。



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やがて、今日何度目になるか忘れたが海が見えてきた。




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八戸線を渡り…




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松林を抜けると海に出た。
波は穏やかなはずだが、時折岩に砕けた波が
ズズーンという重低音サウンドを響かせる。




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ここまで来れば、あとは陸中中野駅に戻れば
本日のトレイルは終了となる。
松林に隠れて見えないが、右手の丘の上には八戸線が並走しているはずだ。

ところが行けども行けども駅方面に向かう道が見当たらない。
そうこうしているうちに駅舎らしき建物を通り過ぎてしまった。
姿見れども道は無し…。




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これ以上進んでは駅に戻れなくなるんじゃないか?と心配になってきた頃
一本の砂利道が出てきたので一か八かそっちに進んでみることにした。




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この判断は正しく、砂利道の先には踏切があり
その踏切を越えて陸中中野の駅に戻ることができた。
これで今回の潮風トレイルは終了である。

昨年の今頃、八戸を出発して通算5日間歩いた。
だいぶ長い距離を歩いたような気もするが合計で70㎞ほどになるようだ。
最終的なゴール地点の福島県相馬町までは700㎞を越えるらしいから
これでようやく10分の1ということか。まだまだ先は長い。

まぁ、あせって先に進むことばかりを考えると苦しいばかりで楽しくないので
今回のように美味しいものを食べたりしながら少しずつ前に進めればいいかな。
ついつい効率を追求してしまいがちなヘロヘロ隊だが(主に休みの関係で…)
ここにきて、ようやくロングトレイルという楽しみ方に慣れてきた気がする。

というわけで、帰る前に種市の「喜利屋」というお店に寄って
三陸の海の味を楽しんできましたよ。

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おしまい




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