中途半端に遠い山。
それが私の太平山に対するイメージだ。
日帰りするには移動時間が長く、さりとて泊まりがけで行くほど遠くもない…。
この中途半端な距離が長らく太平山へ足が向かない原因になっていた。

6月21日、この日も当初は地元の山に登るつもりだったのだが
天気予報を見ると秋田側のほうが天気が安定していそうだった。
2回連続で天気が悪く山行を中止していただけに今回は何としてでも山に行きたい。
であればいっそのこと秋田方面へ行こう!
そういう強い動機が、我々をやっとこさ太平山に向かわせたのであった。

しかし、やっぱり遠かった(笑
盛岡を出発して登山口に着くまで3時間かかった。
片道3時間は日帰りで行く山としては限界かなと思う。

9時に到着したのだが駐車場にはすでにたくさんの車が停まっていた。
さすが秋田市民であれば誰もが一度は登ると言われる山である。
(ホントか?)

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準備を整え出発。
最初は薄暗い森の中の急坂だ。
常に水が流れているようでジメジメしている。
まだ足が歩きに馴れていないので転倒に注意しながら進む。

しかしすぐに道は広くフラットになり歩きやすくなった。
傾斜も緩く…登山道としては緩すぎるくらいだ。
あとで知ったことだが、実はこのあたりの登山道は
昔の森林鉄道の軌道跡を再利用したものであった。
道理で傾斜もカーブも緩いわけだ。

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太平山にはいくつもの登山道が整備されている。
さっそく一つ目の分岐があらわれる。
前を歩いていた登山者は分岐側に入っていったが我々は直進である。

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沢をまたぐコンクリート橋を渡る。
橋の上から見る沢は澄んだ水が蕩々と流れていた。
魚でもいないかなとのぞき込んだが、魚影は見えなかった。

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橋を渡るとすぐ水場がある。

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ゆるゆると進んできた登山道がいきなり傾斜を増す場所がある。
そこが宝蔵岳コースへの分岐となる。
直進する旭又コースにくらべて、ものすごくか細い道なので見落としに注意である。

ちなみに一直線に登っていく旭又コースだが、
これもかつての森林鉄道の遺構のようである。
この部分は傾斜が急すぎるため、貨車をワイヤーに繋げて上げ下げする
「インクライン」という設備があったということである。
ケーブルカーを思い浮かべてもらえばわかりやすいだろうか。
ちなみに路面にしかれているのは木の階段ではなく、当時の枕木のようである。

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宝蔵岳コースにはいると道はいきなり登山道らしくなる。
随所に鼻を擦るような急傾斜があり、どっと汗が噴き出す。
さっきまでの遊歩道然とした道とのギャップに体が悲鳴を上げた。

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しばらく登ると、一瞬傾斜が緩み歩きやすい道となる。
あまり歩く人が多くないのか道床は落ち葉でふかふかしている。
ブナや天然杉が入り交じった自然林は明るく雰囲気が良い。

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しかしこの平穏も長くは続かない。
すぐにまた急傾斜となり汗を搾られる。
急傾斜→たまに踊場→急傾斜…
このコースはだいたいこんな感じで登っていく。


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だいだい1時間半くらいで軽井沢尾根分岐に到達。
ここで国民の森からのルートと合流となる。

…はずであったが、
分岐のすぐ先で国民の森へのルートは立ち入り禁止になっていた。

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何年か前の山行記録はあったから、封鎖はここ数年の事であろうと思うが
なにか問題があったのだろうか? 登山道の崩壊とか? 
最近、集中豪雨とか多いからねぇ…。
(帰宅後調べると、やっぱり登山道の崩壊があるらしい。
しかも下のほうは藪化が進み山ヒル地獄なのだとか…ぞわわっ!)

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奥岳方面は刈り払いがなされており、細いながらもしっかりとした道がついている。
ここまでよりも傾斜も緩い場所が多く歩く足どりも軽い。
非常に気持ちの良い林間の道なのだが、
花が少ないのがツートン的には少し物足りないようだ。

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さらに30分くらい歩くと宝蔵岳山頂となり、主稜線の縦走路とぶつかる。
宝蔵岳山頂は灌木に覆われ、分岐を示す道標があるだけなので
あまり山頂という感じがしない。

しかし宝蔵岳から先は景色が一変する。
まずは今まであまり姿を見せなかった花が一気に数を増やした。

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もちろんツートンのテンションは爆上げである。
反比例して進行速度は爆下げである。
言うまでもなく撮影タイムが頻繁に入るからだ。

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登山道の周囲の木も低くなるため視界が開ける。
目指す奥岳山頂のお社も見えている。
その手前の難所っぽいところも…。
…あれ…かなりの岩場じゃね?

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というわけで早速難所が始まる。
まずは2mくらいの岩場の下降だ。
潅木のおかげで高度感はないが、勢いつけて落ちたらそのまま谷底へまっしぐらだ。

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そしてコース最大の難所、弟子還だ。
確かにこのコースの入り口に弟子還付近は通行注意とは書いてあったが
これほどの岩場だとは思わなかった。

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弟子還のピークに向けて鎖場は三箇所ある。
どれもホールドやスタンスは豊富にあるのでそれほど難しくは無い。
あせらず登る。

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ただし、斜度はこんな感じ。
滑ったら一気に行くだろうな、と思うとちょっと緊張する。

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草木が豊富に生えているので高度感は薄れるが
落ち葉や泥がホールドに堆積していたりしてスリップが怖い。
登りはともかく下りは嫌だな…。

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鎖場を無事に通過すると、あとはいよいよ奥岳山頂を目指すのみだ。

…と、その前に、難所を通過したご褒美ということでお花タイム。
いろいろな花が寄せ植えのごとく咲き乱れていた。
とくにアカモノは宝蔵岳からずっと咲いておりアカモノロードの様相。
アカモノ大好きのツートンは大喜びであった。

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山頂直下はえぐれた土道。
日差しが遮られて涼しい。
ちょっと疲れてきたころあいだったのでありがたい。

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山頂まであと少し。
腹へってきた~。

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3時間ちょうどで山頂に到着。
ほぼコースタイムどおり。

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とりあえず山頂の神社に参拝。
そのあとは景色の前に昼食(笑
行動食を食べるタイミングを逸したまま岩場に突入したため
結局ここまで小さな羊羹一個しか口にしていなかった。

昼食を食べながら見ていると、ほとんどの登山者が旭又コースから登ってくる。
そのうちの半数以上がそのまま来た道を戻っていく。
で、あとの人は宝蔵岳方面へ下っていった。
我々がたどった道順を歩いている人は皆無であった。

弟子還の鎖場を考えると、どう考えても登りのほうが楽なのに…
と不思議に思っていると、隣に座ったご夫婦が
「ガイドブックの道順に従うと弟子還を下ることになる」
と教えてくれた。
なるほど、それでみんな判で押したように右回りなのね。

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山頂からの眺めはいまひとつ。
ガスっているわけではないがすっきりしない。

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近場の山は見えるが、ちょっと遠方の山となると判別が厳しい。
この写真の方角には岩手山が見えるはずなのだが。

条件がよければ岩木山・岩手山・鳥海などが綺麗に見えるようだ。
もちろん、西側を眺めれば日本海が望めるし、
日本海に突き出す男鹿半島もバッチリ見える。
日本海に沈む夕日は格別…らしい。

夕日を見るからには山泊しないとならないわけだが
なんと太平山の山頂小屋は夏季は小屋番が常駐しており
予約すれば宿泊者に食事の提供もしているとのこと。
小屋の中を見せてもらうと冷蔵庫も完備しておりビールやお酒も購入可能だ。
完璧に営業小屋のスタイルじゃないですか!
し、知らなかった…。

小屋番の方いわく、
一応宗教施設のため(山小屋としては)あまりPRしていないのだとか。
建前としては信者の方のための施設ということらしい。
けれども登山客大歓迎なので、ぜひ今度は泊りで…とパンフレットをいただいた。
小屋があることは知っていたけど、まさか営業小屋だったとは…。
今度はこの小屋に泊まりつつ、主稜線完全縦走なんてのもいいかも…と妄想が捗る。

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下山は旭又コースを行く。
まずは主稜線沿いに進んでいく。
下のほうに見える銀色の物体は多きな鳥居である。

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ツートンはまたしても花に引っかかる。

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私は小屋に後ろ髪を引かれる。
夕日を眺めながらビール…。

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稜線を歩き続けたいが、この分岐から下降を開始する。


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樹林帯に入っても新たな花達がツートンの足を止める。
最初「花が無い山だなぁ」と不満げにしていたツートンだが
今はすっかりホクホク顔になっていた。

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旭又コースは太平山のメイン登山道とあってよく踏まれた道であった。
道幅も広いし、九十九折を駆使して勾配も少なめに抑えられている。
このコースなら初心者やファミリーハイクでも安心して歩けそうだ。
少々浮石が多いのが難点といえば難点か。

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コース中ほどに休憩ポイントの御手洗。
もちろん「おてあらい」ではなく「みたらし」だ。
写真はお地蔵さんを人間だと思いビビるツートンの図、だ。

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水場もある。
あるのだが、なんか花が手向けてあるのが気になる…。

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さらに下って御滝神社。
登山道らしい登山道はここまでとなる。

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なぜかと言うと、この先は森林鉄道の跡地を利用した道になるからだ。
よく見るとあちこちに枕木が埋まっており、かつての痕跡をとどめている。
こんな山奥を小さな鉄道が走っていたなんて…。
ちょっとロマンを感じる。

朝に見たインクライン跡を下るとぐるっと周回してきたことになる。
あとは往路と同じ道をたどり、ゴールの駐車場まで歩くだけだ。

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無事下山した後は、近くの温泉施設で汗を流し帰路についた。
風呂あがりの運転3時間は堪えた(^^;
やっぱりちょっと遠いな。

とはいえ、太平山、良い山でした♪
さて、次はどこの山に登ろうかね~。

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