昨年から始めた「みちのく潮風トレイル」。
山の端境期に歩くのに、うってつけなトレイルコースである。
そんなわけで冬と春の狭間のこの時期、第二弾にチャレンジしてきた。
今回は階上町のエリアを踏破する予定だ。

前回の八戸エリアは【こちら】から。

八戸エリアは一日(というより半日程度)で踏破できたが
今回の階上エリアは距離が長く、二日程かかると思われる。
そんなわけで、今回は途中で「テント泊」をする予定だ。
装備が格段に重くなったが…、
これも夏のアルプス縦走に向けたトレーニングと思って頑張ろうと思う。

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そんなわけで、数ヶ月ぶりに大久喜駅に戻ってきた。
今日はここから歩き始めることになる。
ちなみに、大久喜駅には車を止める場所が無いため、
車は種差海岸ビジターセンターの駐車場に置いてきている。

大久喜駅を出発し、県道1号を南進する。
この区間は主に車道歩きになる。
地図から知っていたが、やはり車道を歩くのはあまり楽しいものではない。

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しばらく歩いているとツートンが道標を発見した。
道からかなり奥まった場所に設置されており見つけられたのは偶然である。
経験上分かっていたことではあるが、潮風トレイルの道標はあまり親切ではない。

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道標に導かれ海岸に出てきた。
相変わらず私有地かなにかのような場所へ平気で誘導してくれる(笑
美しい海の風景だが、ぽつねんと置かれたイスとテーブルが怪しい(笑

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せっかく海岸に出たのだが、すぐに車道に引き戻された。
再びアスファルトの上をぽくぽく歩く。
土曜日ではあるが、時間的に通勤と思われる車が多くなってきた。
あきらかに邪魔そうに我々の横を通過していく。
なんだか肩身が狭いなぁ。

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時々漁港に出るも、八戸区間のように簡単に海端には近づけない。
上から眺めるだけである。

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スタートから1時間。
市町村境界を越え階上町に入る。
いよいよここからが階上町エリア本番という事になる。
(言い換えれば、ここまでの区間は単なる繋ぎということに…)

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階上エリアに入ってからすぐに、さりげなーく道標が設置されていた。
どうやらここから海岸に近づいても良いようだ。
見落とすと車道歩きが続く。

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やはり土の上は足に優しい。
海風も肌に心地良い。
こういう道がずっと続けば良いのだが、国内でロングトレイルを設定するのに
完全に舗装路を避けるのはほとんど不可能だろうからなぁ。

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道ばたに唐突にウニが落ちていた。
もちろん、中身は無い(笑
道ばたにさりげなくウニが落ちているなんて、さすが北三陸やで(笑

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磯で何か獲っているようだ。
ウニかな?
帰りに何か海の幸を入手したいものだ。

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第一のチェックポイント、坂下商店に到着。
ここでスタンプを押す。

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潮風トレイルではチェックポイントでスタンプを集めると
踏破証明書とピンバッジがもらえるのだ。

坂下商店を出発すると、道ゆく地元の人から声をかけられた。
「今日はどこまで?」
「階上岳を目指しています」
「まだまだ遠いよ~。がんばって」
他愛もない会話だが、長い道中の励みになる。

なにせ日常生活の空間に、こんな場違いな重装備で歩いているのだ。
怪しまれかねないのだが、こんなふうに声をかけてもらえると安心する。
潮風トレイルが地元にもある程度浸透してきている証だろう。

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道ばたを彩る花に癒される。

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北東北にもようやく春が訪れたようだ。
(そうは言っても今年はずいぶん早い春だが…)

8時を回ると、それまで静かだった海沿いの町が一転騒がしくなった。
あちこちから拡声器を使ってがなり立てる声が聞こえる。
何事かと思ったが、どうやら明日が投票日の選挙があるらしい。
ううむ…。選挙活動を「うるさい」と切って捨てるワケにはいかないが
この「名前を連呼する」だけって、いいかげんどうにかならないものなのか。

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三陸大津波の記念碑があった。
ここに限らず三陸海岸一帯には大小様々な津波記念碑がある。
それだけ何度も津波の被害にあっているという事なんだろう。

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泊川神社に到着。
この神社は通行人を襲う大蛸を鎮めるために建立されたという謂われと
海に落ちて亡くなった庄屋の娘の鎮魂のためという謂われがあるようだ。
いずれにしても海で亡くなった人を供養する事に端を発しているっぽい。
蛸は目が丈夫だという事から、眼病予防・快癒のご利益があるようだ。
私も目が悪いのでお参りしておくことにしよう。

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神社の裏手からは遮る物なく大海原が見渡せる。
初日の出スポットとして元旦には賑わうようだ。
確かにここから眺める日の出は荘厳なことだろうと思う。

ここまで海沿いを通って来たトレイルコースだが
泊川神社から先は大きく内陸部へ入っていく。
階上岳が三陸復興国立公園の飛び地として設定されたための措置らしい。

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八戸線の踏切を渡り、階上駅前商店街へ出る。
なにか飲食店とか、お土産を買えそうな店はないかと思ったが
時間が早いこともあってか、そういったお店を見つけることはできなかった。
早朝の商店街をでかいザック背負って歩く不審者二人…。

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階上駅は全国のJR線で、腕木式信号機が最後まで残っていた駅だ。
しかし何年か前に自動信号機に変わってしまい、駅も無人化されてしまった。
今は駅前に腕木式信号機と転轍機のモニュメントが残されている。
ところで、この写真には実はツートンが隠れています。
どこにいるでしょう?

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駅前からさらに内陸へと続く道へ進む。
ここは道標などはなかったように思う。
町中だから設置しづらいのかもしれない。
なんの変哲もない交差点だから道標が欲しいところだ。

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道は緩やかに登りながら階上岳を目指す。
国道45号線も越えていく。

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時々現れる頼りない道標に従い進んでいく。
ゴミステーションの横に小さく設置された道標…。
実に生活感漂うトレッキングルートだ(笑

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重い荷物とアスファルト歩きにやられ、ちょっと気持ちが折れてきた。
いやいや、こんな事ではイカンと気合いを入れ直し歩みを進める。
しかし、次のポイントである舘神社が現れない。
写真に見えている坂を登り切っても、館神社への入り口が見あたらなかった。

仕方がないので、もと来た道を戻る。
するとコンクリートの壁にこのような看板を発見した。

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道仏「館」跡。
旧西光「寺」跡、ともある。
どこにも「神社」とは書いていないが、場所を考えるとおそらくこいつだろう。

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ちなみにその看板があるのはこんな場所だ。
例の道標は無い。
奥に続く未舗装の道の奥にはお墓がある。
なのでさっきはお墓へと続く道なのかと思い、スルーしたのだった。

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で、墓の奥に例の道標を発見。
おせーよ! 頼むから分岐点に設置してくれよ!
ただでさえ歩行距離が長くて疲れてきているのに、
思いっきり無駄歩きしちゃったじゃないか。

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紆余曲折の末、ようやく館神社に到着。
さすがに疲れたので境内で小休止させてもらう。
木立に囲まれた静かな場所だった。

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再び歩き出す。
トレイルコースは国道45号線へと躍り出た。
多くの車が行き交う交通の大動脈だ。
それだけにトレッキングには非常に不向きだ。
心が、心が折れかけている…。

短い区間とはいえ45号でたっぷり排気ガスを吸いこみ、消耗に拍車がかかる。
県道42号に入ると交通量は減ったが、歩道が無くなった。
そして、相変わらずの舗装路歩きである。

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このあたりはガイドマップでは「眺めがよい」と紹介されているが
それだけに目指す階上岳の遠さが際立つ(笑

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階上岳…11㎞…だと!?
一瞬気が遠くなったが、階上岳はかなり上の方まで車道が通じているので
そこまでの距離であろうとすぐに気付く。
…だよね? そうだよね?
さすがにここから登山口までの距離だったら死んでしまう…。

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荷物を背負って歩くゾンビの図(笑
海岸線を離れてからのルートはとにかく単調で冗長だった。
荷物が重いのも災いして、足やら腰やらが痛くなってきた。
おまけに一日快晴の天気予報に反して、なにやら雲行きも怪しくなってきた。
時々、頬に水滴を感じるのだが…。

まっすぐ県道42号を歩いていけば、階上岳にたどり着くのであるが
あまりにも単調なため沿線の見どころを探しながら歩く。
当然、多少なりとも距離が増えるので自爆ではあるのだが、
単調な舗装路歩きだけではくじけてしまうのが目に見える。

地図を広げていると通りかかったトラックから声をかけられた。
「道、わがるかぁ? あっちが役場だどぉ」
「大丈夫でーす。ありがとうございます~」
たったこれだけのやりとりだが、疲れた体には大きな活力になった。
疲れている時は、人の親切が身にしみる。

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牧場風景や…

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トチの大木などを見ながら進む。

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しかし、ついに疲れが限界に達した。
バス停があったので休憩させてもらう。
階上駅から階上岳までの区間、何が辛いかと言えば
景色の単調さもさることながら、休憩場所がほとんど無いことだ。
女性にとってはトイレに困ることも深刻な問題だろう。

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舗装路からはずれて、久し振りの土道を歩く。
館神社いらい数㎞ぶりだ。
やはり土道は足に優しい。

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熊ノ堂に到着。
鬱蒼とした木立に囲まれた静かな場所だった。
地域の素朴な信仰を感じられる。

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こういう道ならずっと歩いていたいんだが…。
実際は階上駅からここまで、99%は舗装路歩きである。
あぜ道のようなところでもいいから、
もう少し歩いて心地良いルートを選定できなかったものか。

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スタートからおよそ6時間。
ようやく階上岳登山口に到着した。
長かった…。すでに足腰がガタガタである。

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フォレストピア階上に設置してあるスタンプを押す。
階上エリア2つ目のスタンプ。まだ2つ…。

本日の予定は、ここから階上岳に登り
山頂近くにあるキャンプ場で宿泊の予定だ。
時刻は12時を回ったばかりなので、時間的な問題はない。

しかし、先ほどからパラついていた雨が時折大粒になり
おまけにけっこうな強風が吹き荒れ始めた。
ううむ…。

結局、今日はこの辺で切り上げて、明日続きを歩こうということになった。
重いテン泊装備を背負って歩いたものの本日は車に戻って車中泊である。

しかし、車に戻るのも結構大変なのである。
勿論、種差海岸に直接戻る方法は無い。
ならば階上駅に戻る手段は、というとこれまた直接行ける手段がない。

コミニュティバスで役場まで行き、そこから駅に行き
八戸線に乗り継いで種差海岸まで戻るか
遠回りだが八戸市内へ向かい、やはりそこから八戸線に乗り継ぐか…。
いずれにしろ、公共交通機関で移動するのが難しい場所だ。

とりあえず階上の町に出るかとバスを待っていると一台の車が停まった。
我々の行き先を聞くと乗せていってくれるとのこと。
正直、かなり疲労していたので、とてもありがたかった。

その方曰く、昔自分も登山をしていたことがあり、
(冬の槍、北岳あたりにも登ったというからかなりやり手だ!)
我々の格好を見て乗せていこうと思ったのだとか。
「自分も昔、見ず知らずの人に乗せて貰ったからねぇ」
とさりげなく仰る。
かっこええ。

車に戻るのに何時間かかる事やらと思ったのだが
おかげで1時過ぎには戻ることができ、ゆっくり休むことができた。
乗せてくれた男性には大感謝である。
この場を借りて、もう一度お礼したい。

さて、1日目にしてヘロヘロになった我々だが
2日目はどうなってしまうのか?
つづく…。