たとえ、家族の反対を押し切って旅立ったのだとしても、
「何があっても自己責任」だと本人が言っていたとしても、

自分の夫、あるいは父、あるいは息子が、
遠い異国の地で危機に陥っていることを知れば、
何としてでも救いたいと考えるのは、
ごく自然なことです。

「情」としては。

けれど、そのために、
自分では到底背負いきれない額の金を要求されたら、
自分の国の首相や、国民全てが脅迫されるとしたら、

・・・ ・・・ ・・・

仮に、
ISILの要求通り身代金を払って二人の命が救われるとしても、
その2億ドル(236億円)は、間違いなく、新たな武器購入、戦闘に使われることになります。
一体、どれほどの命が失われることでしょうか。

今、現実に危機にある二人の生と、
将来、確実に危険に晒されるであろう、より多くの命と、
事実上、どちらかを選ばなければならないのが、
我が国の首相です。

金額を示して要求されてしまった以上、
政府としてお金を払うことは、おそらく出来ないでしょう。
実力行使は、もっと出来ません。
現状、安倍さんが取り得るオプションはほとんど有りません。

なのに、いえ、だからこそ、ですか?

意見を言うのは良いとして、
ここぞとばかり、総理を罵倒したり揶揄したりする人たちは、
一体、どういう立ち位置に在るのでしょうか。

今、具体的な救出方法を提言しないままに、政府を批判している人々は、
厳しい結果が出た時になって、
ああすれば良かった、こんな手があった、などど言ってまた批判するに違いありません。

あるいは、政府の努力が実って二人が無事解放されたとしても、
裏で金を払ったのか、その金が何に使われるか考えたのか、とやっぱり批難するはずです。

・・・ ・・・ ・・・

首相の中東歴訪が、今回の事件を招いたという人もいます。
ISILが、そのタイミングを狙ったのは確かでしょうが、
ならば、
そもそもISILの脅威にも我関せずで、放っておけば良かったとでも言うのでしょうか。

あるいは、
それ自体、見当違いだと私は考えますが、
「欧米の価値観とイスラムの信仰が衝突している」という見立てをして、
日本は中立を貫くべきだったと言う人もいます。

1月17日、エジプトにおけるスピーチで、
安倍さんが反ISILの立場を表明したのが悪い、という理屈です。

確かに首相は、そこで「2億ドル」に言及しています。
日エジプト経済合同委員会合における安倍内閣総理大臣政策スピーチ
けれど、このスピーチ全体を実際に見た(読んだ)人はどれ位いるでしょうか。

首相はこう言っています。

以下、引用
イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。
地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。
イラクでは、全党派を含む、国民融和内閣による安定的な統治が絶対に必要です。日本は、そのための努力を支援し続けます。
地域から暴力の芽を摘むには、たとえ時間がかかっても、民生を安定させ、中間層を育てる以外、早道はありません。
「中庸が最善(ハイルル・ウムーリ・アウサトハー)」。日本はそこに、果たすべき大いなる役割があると考えています。
引用、終わり

ISILと、その周辺にあって脅威に曝されている人々との間に、中立が有り得るでしょうか。
そんなラクチンな立ち位置が許されるとでも?

格好のネタができたとはしゃいでいる(ように見える)マスメディアやネット上の人々に聞きたい。
あなた自身、脅迫されている日本国民の一人として、
一体どういう選択をするのですか?

あなた自身も、テロリストに試されているんです。

もう少し、真面目に考えてモノを言って欲しいと思います。