⎯⎯情熱(Leidenschaft)
⎯⎯責任感(Verantwortungsgefühl)
⎯⎯判断力(Augenmaß)
の三つの資質が重要であるといえよう。
ここで情熱とは、事柄に即するという意味での情熱、つまり「事柄:ザッへ」(「仕事」「問題」「対象」「現実」)への情熱的献身、その事柄を司っている神ないしデーモンへの情熱的献身のことである。
(マックス・ヴェーバー『職業としての政治』P.77)
豊橋市長、長坂氏がこれまで繰り返してきた、およそ心がこもっているとは思えない言葉の数々。そこに、政治家としての「情熱」、有りや無しや、と問わずにいられません。
私個人の意見としては、実際、致し方ない側面もあるとはいえ、「あらら」といったところです。
●多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」の継続の賛否を問う住民投票
全国ではどうなのか分かりませんが、東海地方ローカルでは、民放含めほぼ全てのテレビ局で報道されたようです。
愛知県豊橋市で建設予定だった新たなアリーナを含む多目的屋内施設について、15日開かれた臨時議会で建設の継続の賛否を問う住民投票の条例案が提出され賛成多数で可決されました。
豊橋市では、市中心部にある豊橋公園に新たなアリーナを含む多目的屋内施設の建設が予定されていましたが、去年11月に建設中止を訴えて当選した長坂市長と、建設を推進してきた議員が多数派を占める議会との間で対立が続いています。
あくまでも私が受ける印象ではありますが、長坂氏が市長に当選した直後の、反対派に肩入れしていることが透けてみえるような報道に比べれば、まずまず冷静、それなりに公平になってきたように思います。
「新たなアリーナを含む多目的屋内施設」と繰り返してもらえるだけでも、真実に近づくというもの。
ただ、度々指摘していることですが、「去年11月に建設中止を訴えて当選した長坂市長」というのは事実であるにしても、それがイコール「建設中止が支持された」にはならないことを匂わせてくれたらもっと良いのに、とは思います。
ま、それはね、これまでの報道を自己否定することになりますし、さすがに、ちょっと無理なお願いですかね。
ともあれ、住民投票の実施はもう決まったこと。
その文言が「『新アリーナ』の建設の賛否」ではなく「『〜〜〜整備・運営事業』の継続の賛否」となったことは、当たり前とはいえ、評価します。
「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」の継続の賛否を問う住民投票条例.pdf( 547KB )
残る懸念材料は、事業の継続に賛成(=契約履行)の場合と、事業の継続に反対(=契約解除≒契約不履行・破棄)の場合とで、何がどう違ってくるのか、そこら辺の情報、それぞれのメリット・デメリットについて、どの程度提示されるのか、ですね。
●謙虚なのか傲慢なのか
ところで、条例施行に先立ち、中日新聞東三河版に長坂氏のインタビュー記事が掲載されました。
その内容が、ちょっとね、いろんな意味でスゴイので、私の「感想」を交えつつ、一問一答の、その一部を紹介しておきます。
(中日新聞5/14-14東三河版)
-市長選で新アリーナ計画中止を訴えた以上、解約を進めるのは当然。ただ、解約に向かう際、「市民にもう一度説明すべきではないか」との声がある。
それは多分、計画を進めたい人の声だ。市長選に向けてしっかりと説明をしてきたし、その上で市民の判断を仰がせてもらった。
いやいや、解約を進める理由なんて、「前市長の公約違反」「計画の説明不足」「手続き上の瑕疵」等、契約の中身以外のことしか聞いた覚えがありませんよ。
ご本人的に、それらだけで十分に損失補償や損害賠償・裁判まで覚悟して契約を解除する理由になる、というなら、ま、話は別ですが・・・十分なんですかね。
-あらためて説明を具体的にする考えは。
今の段階では特に考えてない。十分に議論した上での市長選だった。いろんなところで報告会や説明会を行い、チラシも全戸配布に近いような形で出した。
「十分に議論した」? いつ、どこで、誰と?
長坂氏の報告会や説明会に、一体どれだけの人が出向いたのかは分かりませんし、「全戸配布に近いような形で出した」チラシは、契約解除の手順や支出に関する説明はほとんどなく、それよりも他候補批判に重点が置かれたモノでしたけど?
-市長選では、計画中止、解約を訴えた。逆に言うと、解約後に新たにアリーナを造ることには反対していないのか。
解約後に考えるべきことだ。本当に必要なのかどうかを考える可能性はある。だが、契約がある現段階で、もう一つどこか別の場所に造る、造らないという議論はあり得ない。
えーと、当選直後には、どこであれ5,000人規模の施設を造る気はない、くらいに言ってたはずですが、考えが変わったのかな?
「契約がある現段階で」云々は、例によって議論しないための言い訳ですね。
-解約後、豊橋公園をどう整備していくか、イメージや考えはあるのか。
市としては特にない。
-市長としては。
あるかもしれないが、コメントは控える。
「あるかもしれないが、コメントは控える」?・・・???
-住民投票を市長が提案する考えはないのか。
議案を出すのは難しい。(前市長時代の23年2月と24年2月に市民団体が直接請求した)住民投票を、議会はやらないと議決を下した。24年12月定例会でもノーという決断だった。市長が提案しても、可決される可能性は低い。
そんな言い訳が通るなら・・・市長と市議会が計画推進で一致している時に住民投票を直接請求しても「可決される可能性は低い」わけで、そう言って市民団体の方々の署名活動を止めて差し上げれば良かったのに、です。
-住民投票そのものは望ましいと考えるか。
総論として、大きい市政課題について市民が直接判断できるのは良いことだ。仮に前回市長選の前に新アリーナ計画の賛否を問う住民投票が行われていたら、立候補しなかったと思う。住民投票が行われないから、市長選で新アリーナ賛否をはっきりさせましょうというつもりで立候補した。
その割に、(基本支持者の参加が多い)報告会や説明会以外の、(有権者一般を対象とする)選挙ポスター、選挙公報、法定ビラ、街頭演説等では、あえて「アリーナ反対」と書かなかったり、書いてもめっちゃ小さい文字だったり、優先度が低かったり、ほとんど言及しなかったり、でしたよね。
-住民投票の結果をどう扱うか。賛成が反対を上回れば、自身が当選した市長選の結果とのねじれに葛藤が生まれるか。
基本的には、市民の考えを市政に反映させるのが私、私たちの仕事。住民投票が行われたら、結果を尊重する考えは変わらない。市民の選択として今の私の立場がある、という前提で新アリーナ契約の中止、解除に進んでいるわけで、(住民投票で)市民が別の選択を示せば、その選択に基づいて市政運営をしていくことに何の葛藤もない。
ええっ!?
つまり、住民投票で市民が事業継続を選んだ場合、「新アリーナ計画の中止(契約解除等)」という公約を違えることになるのだけれども、それでも「何の葛藤もない」ということ、ですか?
就任直後、議会への連絡も相談もなしに契約解除の方針で動き出し、以降、近隣市長の意見も、市内だけで5万9千弱の署名を添えた請願も、スポーツ関連団体の要望も、全て完全スルーで突き進んできたのに、ですか?
-前市長のパワハラ疑惑を指摘した長坂さん陣営の選挙ビラを巡る問題で、第三者機関による再調査をする意向を示している。どう進めるのか。
まず情報提供者を守りながら、市役所内で情報共有できるようにする。その両立を図った上で進める。
「情報提供者を守りながら」は言い訳。実際、再調査の意向を示したのはもう随分前のことですが何もしてません。
とまあ、そんな感じで。
全体通して、そうね、謙遜と傲慢は紙一重?
いつぞやの、ご本人の議会答弁になぞらえて「不誠実かどうかは、お読みになった方の御判断」と言うしかありません。
●公約、一丁目一番地を変更?
さて、長坂氏は、条例可決、施行を受けて、こんなポストをしています。
おやおや、これは・・・
「新アリーナ計画の中止(契約解除等)」という公約を掲げて当選した、とそればかりを強調してきた長坂氏ですが、
たとえ住民投票の結果を受けてであったとしても、新アリーナを含む多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業を継続するとなると「公約違反」の誹りを免れるはずもなく、
今のうちに、シレッと「自分たちのことを自分たちで決められるまちに。」こそが公約「一丁目一番地」だったんですよ、アピールでしょうか?
そういうことにしておけば、住民投票で事業継続賛成多数となり、新アリーナ計画の中止を断念しても「公約違反」と言われずに済むから?
もっとはっきり言えば、市長を辞めなくても済むから?
そんなわけないっ!!
事業継続賛成が多数となったならば、それはすなわち「先の市長選挙の結果」について「新アリーナ計画の中止が支持された」と解釈していたこと自体が間違いだった、という証明になるわけで。
となれば、その間違った解釈に基づいて、市政を停滞・混乱させ、時間とお金を無駄にしたという、その責任を免れないわけで。
しかしながら、長坂氏のこれまでの言動を振り返るに・・・
「新アリーナ計画の中止(契約解除等)」は選挙で市民が選択したこと、
「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業の継続」は住民投票で市民が選択したこと、
いずれも自分が決めたことではなく、自分が責任を取るいわれはない。
・・・とでも言い出しかねない気配を感じます。
何しろ、説明をしない、情報を提示しない、対案を出さない、ビジョンを示さない、それら「〜〜〜しない」の理由(言い訳)を捻り出すことに関しては、天才的(秀才的?)な人ですし。
結局、他者に対してやいのやいの批判することでしか存在を示すことが出来ない、自ら何かを提案し、仲間を増やして、根回しもして、そうして何かを成し遂げるということが出来ない、ということでしょう。
全くもって、市長という職業には向いてません。
まあ、そこら辺は、いくら言い募っても詮無いこと。
何はともあれ、長坂氏がどうあれ、
●かくなるうえは!
今、自分にできることを頑張るしかありません。
民主主義の理想を騙って衆を惑わしつつ、本音では、住民投票を「反対運動の道具」くらいにしか思っていない人達の鼻を明かすためにも。
(『職業としての政治』P.105~106)
長坂氏の議会答弁について、ちょっと前に上げた動画です。
「かくなるうえは」ではあるのだけれども、私自身は、基本、住民投票に批判的であることを再度お伝えしておきます。