コロンブスはもちろん、世の中、あらゆるヒト・モノ・コトに光と影がある。

 

同時代を生きている人でさえ毀誉褒貶相半ばするだから、歴史上の人物についての評価はいよいよ錯綜し、何なら政治絡みの流行り廃りだってある。

 

ならば、誰かがある人物を好き(嫌い)と言うことと、自分が彼・彼女を好き(嫌い)と思うこととが、同じである必要なんてない。

 

皆が皆、意識高い系の人や目覚めた人、他者を傷つけないよう不快にさせないよう、どこまでも先回りする優しい人を目指せば目指すほど、文化・芸術は、緩やかに死んで行くのだろうなと思う。

 

 

今世紀に入ってすぐの頃、こんな本を買いました。小学生の子供を持つ親(当時のワタクシ、それでした)としては、まあまあ、定番の一冊でしょう。

 

 

 

勇気をくれる、元気になれる!
今こそ出会ってほしい、101人の物語。

【知識と心を豊かにする、本書の4大特色】
●「子どもが共感できる」をテーマに人物・逸話を厳選。
時代や地域をこえて、さまざまな個性に出会えます。
●「親子のふれあい」のエピソードも多数収録。
“子育てのヒント”もかくされています。
●現代の一流作家・画家による質の高い文章と絵で構成。
お子さまの豊かな感性をはぐくみます。
●業績をコンパクトにまとめたコラムつき。
写真資料も豊富で、必要な知識が身につきます。

どんな時代にも、夢と希望にむかっていきいきと生きた人がいます。今に伝えられる、その人たちの生き方はこれからの未来を生きていく、わたしたちを勇気づけ、元気づけてくれます。
坂本竜馬は泣き虫の弱虫でした。エジソンは学校へ行きませんでした。ナイチンゲールが看護婦になったのは30歳をすぎてからでした。キュリー夫人は子育てをしながらノーベル賞をもらう発見をしています。
「夢と希望をもつこと」「誰かを愛し、やさしくすること」「努力すること」のたいせつさを、お子さまに伝える1冊として、本書をお届けします。

 

 

 

●「すごい発明・発見をした人」

 

さて、その表紙なんですが・・・

 

 

コロンブスさん(「101人」の左に描かれた人物)が、一番大きいですね。

 

 

彼についての記述は「すごい発明・発見をした人」という分類の中、「あたらしい陸地をめざして海をわたった、ゆうかんな人」という副題で、6ページ分になります。

 

 

 

 

 

締めは、以下の文章。

 

   コロンブスが上陸したのは、バハマ諸島だったのです。黄金は見つかりませんでしたが、コロンブスはここで、ヨーロッパにはないものをたくさん発見しました。じゃがいもやトマトやたばこです。サン=サルバドルの人たちは、コロンブスからさとうきびづくりをおそわりました。黄金を見つけるよりもずっと人のやくにたつことを、コロンブスはやりとげたのでした。

「ここがジパングでないのなら、つぎの島をめざせばいい。ゆめをみつけるまで、すすみつづけるだけだ。」

 コロンブスのほおに、わらいがうかんでいました。どんなこともおそれない、ゆうきいっぱいのわらいです。

 

全体を、少年少女の純真な心で読めば「へ〜、すごい人だな〜」という話です。

 

 

けれど一部を、大人の汚れちまった悲しみとともに読めば「これはビミョー」という表現もあります。

 

「白人」を物珍しげに触ったりする原住民のイラストと合わせ・・・

 

   上陸したコロンブスをむかえたのは、はだかのからだに、赤や白の絵の具をぬりつけた人々でした。

 

 

・・・などといった描写です。

 

 

ちなみにこの本、2001年11月06日の発行です。

 

実は、2022年10月27日に「改訂版」が出まして。

 

 

●20年余の栄枯盛衰

 

それがこちら。

 

 

子どもが夢中になる人物のお話がいっぱい!

20年もの間売れ続けている伝記アンソロジーのロングセラーを全面改訂。
子どもたちに、いま出会ってほしい、101人の物語を収録しました。


【知識と心を豊かにする、本書の5大特色】

●子どもが共感できる人物・エピソードを厳選。

●いっしょに読むとさらに楽しい!親子のエピソードも多数収録。

●一流の作家・画家による質の高い文章と絵で
小さい子どもにも読みやすく、心にのこる物語に。

●業績をコンパクトにまとめたコラムつき。
写真資料もあり、子どもの質問におうちの方が答えることができます。

●すべての漢字にふりがなつき。
興味をもったら自分で読み返すことができます。


【主な収録人物】収録順 ☆=改訂版で新たに加わった人

<愛と平和のためにつくした人>
☆杉原千畝/マザー・テレサ/☆中村 哲/ナイチンゲール/シュバイツァー

<おどろくべき発明で人々の生活をかえた人>
☆スティーブ・ジョブズ/エジソン/フォード/ライト兄弟/豊田佐吉/☆糸川英夫

<すごい発見・研究をした人>
マリー・キュリー/☆ダーウィン/アインシュタイン/ノーベル/ニュートン/ガリレオ・ガリレイ/☆北里柴三郎

<くるしくてもきぼうをすてなかった人>
ヘレン・ケラー/野口英世/ベートーベン/アンネ・フランク/☆ルイ・ブライユ

<みんなのリーダーになった人>
坂本竜馬/リンカーン/☆渋沢栄一/ガンジー/徳川家康/☆ハリエット・タブマン/豊臣秀吉

<ひとつのことをやりとげた人>
植村直己/ファーブル/津田梅子/福沢諭吉/☆牧野富太郎/本田宗一郎/☆田部井淳子/☆金栗四三

<芸術・文化をうみだした人>
レオナルド・ダ・ヴィンチ/☆アンナ・パブロワ/サン・テグジュペリ/滝 廉太郎/☆知里幸恵/手塚治虫

<もっと知りたい 日本・世界の偉人>
紫式部/☆岡本太郎/☆柳 宗悦/葛飾北斎/☆古関裕而/☆アメリア・イアハートほか

 

 

 

「改訂版で新たに加わった人」がいるのだから、当然、いなくなった人もいるわけですが・・・

 

ま、ご興味とお時間のある方は、目次を見比べてみてください。上が旧版、下が改訂版です。

 

 

 

 

お気づきでしょうか。

 

コロンブスさんが「もっと知りたい」の項目へと“格下げ”されてますね。

 

分量は、6ページから1/3ページへと縮小。マゼラン、ザビエルと同じページというのも、何か意味深ではあります。

 

 

 

全文は、以下のとおり。

 

  大航海時代に活躍した冒険家

 クリストファー・コロンブスはイタリアで生まれました。お父さんは商人で、コロンブスは、その仕事を手伝って船に乗るようになりました。地球が丸いことを学んだコロンブスは、ヨーロッパから西へ船で進めばアジアに着き、高価な香辛料や黄金を発見できると考えました。

 1942年、スペイン女王の助けを得て、アジアをめざす航海に出ます。船旅が長引き、乗組員に不満が出はじめたころ、カリブ海の島を発見、これがヨーロッパから初めてのアメリカ大陸への到達となりました。その後3回にわたって、カリブ海を探検、最初の目的であった香辛料も黄金も発見することはできませんでしたが、死ぬまで自分が見つけた場所がアジアだと信じていました。

 

血は湧かないし肉も躍らないけど、とりあえず、最低限の事実関係を淡々と「説明」してます。

 

初めてコロンブスを知る子供達にとって(←これ重要)、こりゃ毒にも薬にもならないね、くらいのものでしょうか。

 

 

ともあれ、引っ掛かるのはそこではなく。

 

旧版と改訂版、その間20年余で何があったのか、というところでして。

 

 

●左からの歴史修正主義

 

コロンブスさん自身は、既に亡くなっているのですから、何か変わるはずもありません。

 

ただ、(真実かどうかは置くとして)新たな「発見」等によって、彼に対する評価が変わりました。

 

曰く、後のネイティブ・アメリカン迫害のきっかけになった、後々の奴隷貿易に繋がる元凶だった、等々。

 

ワタクシに言わせれば、それらの理屈自体「何じゃそりゃ」なものが多いですが、それはともかく。

 

要は、アメリカ合衆国建国における影の部分、その先駆けにあたる人物として攻撃対象とする動きがあったのですね。

 

 

ソコからの、「ミセス、コロンブス騒動」です。
 

 

クリストファー・コロンブスは大航海時代の探検家として知られ、1492年にバハマ諸島に到着して、アメリカ大陸を「発見」した人物と呼ばれてきた。

 

長年「ヒーロー」扱いされてきたコロンブスだが、近年は侵略者や奴隷商人としての側面が知られ、問題視されるようになっている。

 

コロンブスの一団は、カリブ海の島々の先住民を武力で制圧し、植民地化して奴隷制を導入

 

先住民族を虐殺し、女性たちをレイプして性的搾取の人身取引を始めたほか、一団が持ち込んだ病気によって多くの人が亡くなったことがわかっている。

 

アメリカでは10月第2月曜日はコロンブス最初の航海を記念する「コロンブスデー」の祝日になっているが、近年はさまざまな都市がこの祝日を「先住民の日」に置き換えているほか、各地でコロンブスの像が取り除かれてきた

 

 

 

〈コロンブスの一団は、カリブ海の島々の先住民を武力で制圧し、植民地化して奴隷制を導入〉とか〈先住民族を虐殺し、女性たちをレイプして性的搾取の人身取引を始めたほか、一団が持ち込んだ病気によって多くの人が亡くなったことがわかっている〉とか、自信満々に言い切っているのだけれど、そうなの? なんですが・・・

 

こういった米国内での(左からの!)「歴史修正主義」の流れ自体、日本ではあまり知られていなかったわけで。

 

件のPVにおいて、コロンブスを無邪気に称揚しているところが云々と言われても、多くの人にとっては「へ?」だったのではないでしょうか。

 

 

事の経緯としては、一応、以下のとおりなんですが。

 

 

「コロンブス」は、日本のグループMrs. GREEN APPLEが Coca-ColaCoke Studio音楽プロジェクトとのコラボレーションで制作された曲です。この曲は、2024年6月5日に15秒のテレビCMで最初に予告され、その後、ソーシャルメディアで公開されました。

 

しかし、2024年6月12日にPVが公開された直後、差別、人種的な先入観によるイメージ化、植民地支配の描写に対してオンライン上で大きな批判が集まりました。ビデオでは、グループのメンバー3人が、類人猿に似たキャラクターにより馬車で引かれ、彼らに敬礼する様子が描かれています。この曲の歌詞とビジュアルは、クリストファー・コロンブスという歴史的な人物を賛美することに対して、彼が先住民コミュニティを侵略し、彼らの故郷を破壊したことで知られていることから、強い批判を浴びました。

 

この騒動に対応して、ミュージックビデオと関連するCMは翌日に速やかに取り下げられ、メンバーの大森元貴と所属レーベルであるユニバーサル ミュージック ジャパンから公式な声明が発表されました。その声明では、ビデオ内の「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていたため」を認め、謝罪しています。

 

 

 

ちなみに、2024.06.13 Mrs. GREEN APPLE 大森元貴さんの声明。

 

 

 

同日、ユニバーサル ミュージック合同会社 EMI Records / Project-MGAの声明。

 

 


いずれにせよ、またひとつ、「寛容を強いる不寛容勢力」「多様性を求める画一的集団」に成功体験を与えてしまったなあという感じです。

 

米国内の、しかもその一部、本質的な部分で米国を嫌いな人々が押し立ててきただけ(なので、近頃は見直す動きもある)のコロンブス抹消ムーブメントを、多少なりとも日本に輸入できたわけだから。

 

そうして、本質的に日本が嫌いな日本人が、その他ボンヤリしている多くの日本人に向けて「歴史的偉人」見直しの気分を拡散することに成功したわけだから。

 

 

●「正しい」人達

 

それにしても・・・

 

キャンセル・カルチャーやら、ポリティカル・コレクトネスやら、いちいち「正しい」人達は、ホント、厄介だなあと思います。

 

偉人、有名人、上に立つ人、の、何か一つでも悪いところを見つけ出し、そこだけを見て全否定する。

 

その積み重ねで、世の中、生き易くなるのですか?

 

彼等・彼女等・彼のどちらでもない人等は、身を修めることを嫌い、家を斉えることを拒否し、国を治めることを拒絶して、もって天下を乱そうとしている、としか思えません。

 

その先に、共産革命を意図しているのか、全体主義地球政府を夢想しているのか知りませんが、甚だ迷惑、端的に不愉快です。

 

 

同じものを見ても、そこに差別や支配を読み取る人と、単純に愉しむ人とがいる。

 

前者が賢者で、後者が無知なる罪人だと決まっているわけじゃない。

 

むしろ、前者の中に差別する心や支配欲が潜んでいるからこそ、そう見えるのだろうと勘ぐりたくもなる。

 

 

己の卑小を隠したくて、優しさを、気配りを、心遣いをアピールするために、せっせと断り書きを入れる。

 

「誘拐・監禁を扱っています」「障害者を扱っています」。

 

「地震を扱っています」「津波を扱っています」「原発事故を扱っています」。

 

「傷つく人がいるかもしれません」「不快に思う人がいるかもしれません」。

 

お節介な先回りを繰返して、それで文化が育つのですか?


 

 

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「知らなかった」で済まされないのは、そうなのでしょうけれども・・・

 

 

 

ワタクシとしては、むしろ「知っててやらせた」の系譜になるんじゃないかなと思わないでもない。

 

本当に「知らなかった」にしては、コカ・コーラとしての対応が速過ぎるし、かつ、いささか卑怯な態度のはずななのに、それを感じさせない狡猾さもある。

 

「国」が嫌いな人達と、基本的に馬が合うのかな?

 

何しろ、国境が無くなり、世界中で同じものを同じように売り捌けるようになるのを良しとするグローバル企業ですから。

 

地球人として、皆、同じ嗜好、同じ感覚・感性に収斂してくれたら、こんな便利なことはないということで。

 

 

それでも、もともと、米国建国自体を批判する人達に共感しているっぽい、日本の成り立ちを嫌いな人達が一所懸命喧伝するほどには、ミセス批判は広がらなかったように思います。

 

そこは、まあ、良かったなと。

 

結局「炎上」言うても、そうさせたい人が騒いでただけ、なのでしょう。実際、大元のコロンブス批判自体が、色々とツッコミどころがありそうですし。

 

 

 

それでも、いやいや、あくまでもPVがダメだったのよ、と言い張る人だっていることでしょう。

 

けれど、ほとんどの人がそれを観てないし、今も観られません。観られないものについては、問題かどうか論じることもできないわけで。

 

一部静止画像を見せられ説明を加えられても、音楽に乗せて動くソレを観るのとでは、やはり印象も違ってきますからね。

 

 

 

「神曲」かどうかは別として。