誰も傷つかない、何処からも批判されない、そんな言葉は毒にも薬にもなりはしない。どれほど批判の矢を浴びようとも、書かれたモノとコトとを、届けて、伝える。出版に携わる人々が気概を失う時、それこそ本は昇火され消えていくのだろう。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322307000250/
刊行を知らせるページは削除され、
もはや、何が書かれていたのか分からない。
来年1月24日の発売を予定しておりました書籍『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』の刊行を中止いたします。
刊行の告知直後から、多くの方々より本書の内容および刊行の是非について様々なご意見を賜りました。
本書は、ジェンダーに関する欧米での事象等を通じて国内読者で議論を深めていくきっかけになればと刊行を予定しておりましたが、タイトルやキャッチコピーの内容により結果的に当事者の方を傷つけることとなり、誠に申し訳ございません。
皆様よりいただいたご意見のひとつひとつを真摯に受け止め、編集部としてこのテーマについて知見を積み重ねてまいります。
この度の件につきまして、重ねてお詫び申し上げます。
2023年12月5日
株式会社KADOKAWA
学芸ノンフィクション編集部
そして刊行中止の理由は明示しない。
ただ「結果的に当事者の方を傷つけることとなり」とあるだけ。
いずれにせよ、
やりかけて、途中で止めるのはサイアクだ。
(関係各方面に阿った)経営判断なのかもしれなが、
外圧に屈して止めさせる上層部もナサケナイ。
確かに、傷ついた人はいるのだろう。
けれど、そういう理由でいちいち刊行中止にしていたら、
世に出ている本のほとんどで、同じことをしなければならなくなる。
アタシが「傷ついた」と言えば、
あの本やその本を絶版にしてくれるのかい?
『あの子もトランスジェンダーになった』刊行に関して、KADOKAWAへ「トランスジェンダー差別助長につながる書籍刊行に関しての意見書」を国内外の出版関係者24名による賛同コメントをつけて提出しました。@kadokawahonyaku@kadokawa_san@kadokawa_PR https://t.co/PBNHsiCybj pic.twitter.com/HBrFgY4zjv
— 小林えみ:Emi Kobayashi,editor KOBAYASHI MAPLE (@koba_editor) December 4, 2023
本来「出版の自由だけは守る」と言わねばならないはずの、
出版関係者がコレをやってしまうのか・・・である。
著者は「扇動的なヘイター」だと言う。
そういう物言いこそ「レッテル貼りのヘイト」でなくて何だろう。
米国で問題視されているとしても、
その一方で勇気ある告発だと評する人もいる。
当事者の安全・人権を脅かすとしたら、
その原因は本自体にではなく、
それを剽窃・曲解する(アナタ達のような)人にあるのではないか。
「なんらかの対策をとられることを望んでおります」
この得も言われぬイヤラシさは何だろう。
出版社勤務・書店勤務・著者等として、
アナタ達には、一体どんな志が有ると言うのか。
『華氏451度』の昇火士が言う。
本には価値がない。だから焼く。
嘘である。
本当は本を恐れている。だから焼く。
それは近未来のお話。
けれど、今日の我が国に昇火士は必要ない。
出版社自らが本を焼いてしまうから。
言葉を扱う身でありながら、
その強さを、弱さを、
言葉の力を信じていないから。
「トランスジェンダーに批判的な(?ほとんどのひとが本を読んでもいないので、どこがどう批判的であるかすら、本当はわからない)本を企画したら、どうなるかわかっているだろうな」という「見せしめ」の効果はじゅうぶんにあった。今後、類書を出す勇気のある出版社はさらに減るだろう。
若い女性の性別移行が問題となり、海外ではトランスを後悔したひとたちからのクリニックへの訴訟が連発されている現在、こうした本が翻訳されることは、性別違和に苦しむ当事者たちにとっても重要なことだったのではないか。批判するにしても、せめて読んでからするべきなのではないか。こうした行動が、どのような社会を導き出すのかについて、あらためて考えて欲しい。
「活動家」や「市民団体」は、
これを成功体験として、繰り返し繰り返し「声」を上げるのだろう。
それは良い。自由であり権利だ。
けれど、出版業界が刊行の可否を、
そういった声(のみ)に「配慮」し「忖度」して決めるようになるとしたら、
本までもが、
はっきりと経済(スポンサー)の論理に支配されてしまう。
新聞・テレビや、いわゆるビッグテック等が媒介するコンテンツと同類になる。
良いのか、それで。
アメリカのワシントンD.C.のホロコースト博物館で、ナチスによる焚書の記録を見たことがある。闇夜に本に火が放たれ、大きな炎と共に燃えていくシーンは、誤解を恐れずに言えば、とても美しかった。きっとアーリア人の優越性を信じ、純粋なドイツの文化を守ろうと考えたひとたちには、もっと美しく映っただろう。自分の意に沿わない意見、とくに間違っていると信じている意見がこの世から消え、自分の「正しさ」を確信する行為は、ときにひとを魅了する。それは理解できる。しかし、ひとは間違うのだ。すべてのひとが、間違い得る。だからこそ自説の正しさを証明するには、まさに言説によって、対抗的な言説を丁寧に批判していくことによってなされるしかないのである。冷静になって、議論によって合意を作り上げる社会を望みたい。
「本を焼く者は、やがて人も焼くようになる」
と書いたのはハイネだったか。
この「予言」はやがて現実になったわけだけれども、
幸いにも、全てを焼き尽くされることはなかった。
気付いた人がいた。抵抗した人もいた。
だからこそ、
本は今も在る。
著書は米国などでトランスジェンダーを称する少女が急増した背景について、当事者や医師、心理カウンセラーらを丹念に取材されている。思春期特有の不安や症状について、「流行り」にのっとった形で、「性自認の違和感」を訴えれば周囲の大人からヒロイン扱いされる。乳房の切除やホルモン治療を選択した結果、その先に後悔や体の不調を訴える事態が待っている。
常識的な性別の捉え方を古い偏見と位置づけることで従来の家族制度を壊し、伝統社会を切り崩そうと考える人々にとっては、不都合な真実が描かれている。
日本社会はこうした事態には至っていない。トランスジェンダーイデオロギーが浸透する前に警鐘を鳴らす上でも出版すべき本だった。KADOKAWAは発売を告知していたのだから、急転直下取りやめとした理由をより丁寧に説明すべきだ。ぜひどこかほかの出版社で出してほしいと思う。
今の日本にも抗う人々は確かにいる。
本を愛してもいる。
けれど、その「声」を大きくし、
現実の世を動かすことが絶望的に下手だ。
これは、著者レイ・ブラッドベリの願望だろうか。
これこそ、それこそ基本である。
KADOKAWAに代わって邦訳を刊行する出版社があることを、
切に願っている。
何なら、真なる「有志」が集い、
クラウド・ファンディングを起案するのも良いかもしれない。
憶測と思い込みでKADOKAWAに抗議し、
デモを企ててさえいた(しばしば目にする特定の)者達など、
比較にならない程不特定多数の人々が、
「1ページの欠けもない本」を求めて訪ねて行くことだろう。
私は行きます。
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本書をめぐっては、トランスジェンダーの差別に繋がる「ヘイト本」という批判がある一方で、どれだけの人が読んで批判をしているのかという声もある。この問題をめぐっては、KADOKAWAが事前に保守系知識人にゲラを送付して宣伝協力を依頼していたことなども明らかになり、様々な方向で炎上している。しかし、読んだ人の感想はわずかだ。ただ原書を読んだ一部の人が概要を述べているに過ぎない。では、実際に本書はなにが書かれているのか。その内容を紹介しよう。
原書出版社のサイトから(紺字は機械翻訳)。
Irreversible Damage
The Transgender Craze Seducing Our Daughters
NAMED ONE OF THE BEST BOOKS OF 2021 BY THE TIMES AND THE SUNDAY TIMES
Until just a few years ago, gender dysphoria—severe discomfort in one’s biological sex—was vanishingly rare. It was typically found in less than .01 percent of the population, emerged in early childhood, and afflicted males almost exclusively.
But today whole groups of female friends in colleges, high schools, and even middle schools across the country are coming out as “transgender.” These are girls who had never experienced any discomfort in their biological sex until they heard a coming-out story from a speaker at a school assembly or discovered the internet community of trans “influencers.”
Unsuspecting parents are awakening to find their daughters in thrall to hip trans YouTube stars and “gender-affirming” educators and therapists who push life-changing interventions on young girls—including medically unnecessary double mastectomies and puberty blockers that can cause permanent infertility.
Abigail Shrier, a writer for the Wall Street Journal, has dug deep into the trans epidemic, talking to the girls, their agonized parents, and the counselors and doctors who enable gender transitions, as well as to “detransitioners”—young women who bitterly regret what they have done to themselves.
Coming out as transgender immediately boosts these girls’ social status, Shrier finds, but once they take the first steps of transition, it is not easy to walk back. She offers urgently needed advice about how parents can protect their daughters.
A generation of girls is at risk. Abigail Shrier’s essential book will help you understand what the trans craze is and how you can inoculate your child against it—or how to retrieve her from this dangerous path.
取り返しのつかないダメージ
娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行アビゲイル・シュライアー
タイムズ紙とサンデー・タイムズ紙で2021年のベストブックの1冊に選ばれた。
ほんの数年前まで、性別違和-生物学的性別に対する深刻な不快感-は、驚くほど稀なものだった。通常、性別違和は人口の0.01%未満に見られ、幼少期に現れ、ほとんど男性にしか悩まされなかった。
しかし今日、全国の大学、高校、さらには中学校の女友達グループ全体が「トランスジェンダー」であることをカミングアウトしている。彼女たちは、全校集会で講演者からカミングアウトの話を聞いたり、トランスの "インフルエンサー "たちのインターネット・コミュニティを発見したりするまで、生物学的性別に違和感を覚えたことがなかった少女たちだ。
疑うことを知らない親たちは、自分の娘がヒップなトランス系ユーチューバーや、医学的に不必要な二重乳房切除術や永久不妊を引き起こす可能性のある思春期ブロッカーなど、人生を変えるような介入を若い少女たちに押し付ける「ジェンダーを肯定する」教育者やセラピストに虜になっていることに気づいて目覚める。
ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のライター、アビゲイル・シュリアーは、トランスジェンダーの流行について深く掘り下げ、少女たちや苦悩する両親、性別移行を可能にするカウンセラーや医師たち、そして "脱移行者"--自分がしたことを痛烈に後悔している若い女性たち--に話を聞いた。
トランスジェンダーであることをカミングアウトすることで、彼女たちの社会的地位は一気に高まるが、いったん移行の第一歩を踏み出すと、後戻りするのは容易ではないことをシュリアーは発見した。シュリアーは、親が娘を守るために緊急に必要なアドバイスを提供している。
少女たちの世代が危険にさらされている。アビゲイル・シュリアーの本書は、トランス・ブームが何であるかを理解し、どうすれば自分の子供をトランス・ブームから守ることができるのか、あるいはどうすれば子供をこの危険な道から救い出すことができるのかを教えてくれる。
時代を感じさせない、けれど、時代を感じさせもする小説。
華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!
「みんなが同じ方向を見てるときに、そうじゃないぞって声を上げるってとても大事なことで」
「こういうものを放置しておくと、表現であったり、民主主義であったり、自由というものがむしばまれかねない」
いや、ごもっともです。
上は映画監督・森達也さん、下はジャーナリスト・青木理さんのお言葉。
ただし、演説中のヤジを「迷惑」や「邪魔」で「排除」するのはオカシイだろうという文脈で言ってます。
ならば、誰かが「傷ついた」で刊行中止となった此度の顛末について、お2人は、一体どのようにお考えなのか、是非ともお聞かせ願いたいところです。