此頃都ニハヤル物、自己矛盾、論理破綻、支離滅裂・・・求められるのは「科学」でなく「合理性」でなく、ただ「やってる感」のみ。♪理屈じゃないのよマスクは HA HA〜N てなもんです。

 

 

唐突ながら、知り合いくん(!)が勤める会社でのこと。

 

 

⚫「ルールはルール」?

 

先日、社長のアリガタイお話があったそうで。

 

何でも、将棋の対局中片方の棋士がマスクを外したことで反則負けとなったという、例のニュースをマクラに・・・

 

 

「どの業界でも決められたルールを守ることが大切であることを痛感しました」と。

 

「人間はミスをしますので、それを防ぐためのルールがあります。ルールを守っていれば間違いが無いという仕組みを作ることが重要です」と。

 

 

いやいや、マスクをしていても「間違い(感染すること?)」は起きるわけで。

 

件の「事件」から繋げていくのなら「世の中“ルール”が溢れているけれども、その“ルール”は必要なのか、適切なのか、不断の見直しが必要ですよ」という方向じゃないんですか、とワタクシなんぞは思ったわけで。

 

さすが、ルール大好き、いや、ルールを守らせるのが大好き、と噂される社長様だけに、不思議な思考回路をお持ちですな。

 

 

さて、当の将棋連盟曰く、

 

同規定を設けた経緯としましては、新型コロナウイルスが蔓延する中、至近距離で盤を挟む対局において、マスク未着用の対局相手からの感染リスクに不安を覚え、対局への集中が削がれると感じる棋士の声が多数上がっていたこと、また対局者がマスク未着用で感染者となった場合、濃厚接触者認定によって記録係を務める奨励会員が奨励会で対局する機会を奪われかねないこと等を考慮し、常務会にて慎重に審議の上で理事会の決定を踏まえて施行に至ったものです。

 

つまり(マスメディアの煽り報道に惑わされた)「不安」の声が「多数」あったことと、加えて(その必要もない2類相当扱いによる)「濃厚接触者」隔離政策への対処もあっての「ルール」だということですね。

 

 

さらに曰く、

 

最後に、昨今の社会情勢を鑑みた場合、対局中のマスク着用義務の有無については議論があるところ、所属する棋士・女流棋士には、高い公共性を求められる公益法人として政府の方針・基準に則った対応をする旨を定例報告会の場で示しております。今後につきましても、コロナ禍の最新状況を見極めつつ、同規定の改善や改廃について適切に判断して参ります。

 

一応、世間の「流れ」も読んではいるようですが、いや、何ともかんとも。

 

 

 

我が国では「多数」の人が黒髪・ストレートであるがゆえに、それを「ルール」とする、いわゆるブラック校則なるものもあったりするのだけれども、そこに「少数」とはいえ、体質として薄色素・巻毛の人に対する配慮がない、として問題になったりもします。

 

したら、たとえ「多数」の人は「不安」の方が大きくとも、「少数」であれ、体質的にマスク着用による「苦痛」の方がより大きい、という人だっているわけで。

 

その存在に頓着しないというのは、一体、どうしたことかと思います。

 

 

かつて米長邦雄さん(永世棋聖)は「兄達は頭が悪いから東大へ行った。自分は頭が良いから将棋指しになった」なんてことを言ったとか言わなかったとか。

 

そういう人が会長を務めたこともある将棋連盟なのに、ツマラナイ話です。

 

 

そもそも、厚生労働省(≒政府の方針・基準)は、あくまでも「お願い」「推奨」ベース。「本人の意に反してマスクの着脱を無理強いすることにならないよう」に、と言ってきたわけで。

 

それを、こっそり「言っただけでオシマイ」にしてた(してる)罪は大きいのだけれども。

 

 

*【事務連絡】マスクの着用に関するリーフレットについて(更なる周知のお願い)

https://www.mhlw.go.jp/content/001001581.pdf

 

「公益法人として」しっかりと、それに「則った対応を」してくださいよ、です。

 

 

ちなみに、知り合いくん、上のアリガタイ話がある前のことですが「トラックの助手席に乗っている時、マスクをしていなかった」ことを社長に(中間管理職を通じて)に注意されたそうな。

 

いやいや、その二人、互いに「マスクしなくても気にしないよね」と双方合意したから着けてなかったんですけれども。

 

それでも「トラックを運転している時は外して良い→二人で乗っている時は着けなければならない」という決まりなんだそうで。

 

「ルールはルール」なんですかね。

 

 

と、ここまでをマクラに、本題。

 

前回(「科学的」ということ。:スティーブン・ピンカー『21世紀の啓蒙』の中から「科学」に関するところを拾い読み)・・・

 

 

の続きです。

 

ちゃんと繋がります。

 

 

⚫「第三部 理性、科学、ヒューマニズム」

 

「第二二章 科学軽視の横行」から

 

   まずはっきりさせておきたいのは、科学的思考を擁護することと、「科学」という同職ギルドの会員を特別賢く立派な存在だと考えることはまったく別だという点である。科学という文化はむしろそれとは真逆の考え方に基づいている。開かれた議論、査読、二重盲検法といった科学に特徴的な慣行は、科学者が人間であって、間違いを犯しやすいという前提に立ち、その間違いを防ぐために考案された。リチャード・ファインマンがいったように、科学の第一原則は、「自分を騙してはいけない――自分というのはいちばん騙しやすい相手だ」である。

 同じ理由から、もっと科学的に考えようという呼びかけを、科学者に意思決定を任せようという呼びかけと混同してはならない。政策や法律のこととなると多くの科学者は世間知らずで、すぐに世界政府だの、親になる免許の取得を義務化するだの、汚染された地球を出て他の惑星に移住するなどと、途方もない話に飛びつく。だがそれはかまわない。今問題にしていいるのは、誰に権限を委ねるべきか、ではなく、どうやったら集団での意思決定がもっとも賢くできるか、なのだから。

 科学的思考を大事にすることは、その時点での科学的仮説がすべて正しいと考えることでもない。新しい仮説のほとんどは間違いだとわかる定めにある。推測と反駁の繰り返しこそ科学の推進力であり、だからこそ仮設を立て、それが反論に耐えて生き残るかどうかを見る方法がとられている。覆された仮説を取り上げて、これだから科学は信用できないと批判する人はこの点を忘れている。(否定論者はどのように科学を非難してきたか P.302~303)

 

〈科学的思考を擁護することと、「科学」という同職ギルドの会員を特別賢く立派な存在だと考えることはまったく別だ〉

 

そう。「科学」という同職ギルドの会員=「専門家」に置き換えたら・・・もはや「皆まで言うな」ってところですね。

 

 

〈もっと科学的に考えようという呼びかけを、科学者に意思決定を任せようという呼びかけと混同してはならない〉

 

うん、混同してた(している)。むしろ政治家こそが、コレ幸いとばかりにいろんなことを「専門家」に丸投げしてた(している)感、アリアリです。

 

 

〈新しい仮説のほとんどは間違いだとわかる定めにある〉

 

ホント、それ。ウイルスとか感染とか免疫とか、これまで積み上げられてきた学問的知識、おばあちゃんの知恵みたいな基本が、「最新の論文」とやらに、どれほど狂わされたことか。

 

 

   政治やジャーナリズムの文化は、だいたいにおいて科学的な物の見方を知らないので、人々の生死にかかわるような重大問題であっても、エラーを起こすとわかっている方法で答を出そうとする。逸話や大見出し、レトリック、エンジニアがHiPPO(高給取りの意見)と呼ぶものなどを手がかりにする方法のことだ。こうした統計音痴の手法からどれほど危険な誤解が生じるかについては、すでに述べたとおりである。今多くの人が、犯罪や戦争が増加して制御不能になりつつあると考えているが、実際には殺人や戦闘による死者数は減少している。今多くの人が、イスラム過激派のテロがわたしたちにとって重大な脅威になっていると考えているが、実際にはスズメバチやミツバチの攻撃の方が可能性が高い。今多くの人が、イスラム過激派組織がアメリカの存在と存続を脅かしていると考えているが、実際にはテロ活動がその戦略目標を達成することはめったにない。(バイアスを正すには科学的知識が不可欠 P.326~327)

 

〈人々の生死にかかわるような重大問題であっても、エラーを起こすとわかっている方法で答を出そうとする〉

 

う〜む、言うなれば・・・

 

「新型コロナウイルス感染症パンデミック」と呼ばれているもの、それ自体が、壮大なエラーなのかも。

 

何しろ、2020年頭から〈逸話や大見出し、レトリック、エンジニアがHiPPO(高給取りの意見)と呼ぶものなどを手がかりにする方法〉が横行してましたからね。

 

何なら(我が国においてだけは!)今もって続けられているわけで。

 

というか、厚生労働省自体が、ソレに近いことをしているという・・・

 

 

そして(我が国でだけ!)終わらない「新型コロナ狂騒曲」。

 

もうね、結局、人それぞれだし、

 

狂うのも騒ぐのも良いけどさ、

 

とにかく、

 

ワタクシ(と、世の子供達)を巻き込むのはやめて。

 

です。

 

 

⚫改めて『21世紀の啓蒙』

 

ここにきて、新型コロナに対する恐怖感、それに伴うマスク着用の必要性、経験からくるマスクの予防効果期待度、等々、広く合意を得ることは、もはや不可能と言って良いでしょう。

 

そんな状況の中、

 

マスク着脱の「ルール化」なんて、今更、できるはずないじゃないですか。

 

実際、岸田さん自身ウヤムヤにしようとしてる気配濃厚ですし。

 

 

というわけで(?)、

 

スティーブン・ピンカーさん言うところの、人を啓蒙し得る、人が啓蒙され得る、ということを、科学的姿勢として、首の皮一枚、信じてみようかな?

 

知り合いくんが勤めてる会社社長のソレは欠片も信じられないけど。

 

 

こちら、長いですが。

 

 

 

『21世紀の啓蒙』、参考までに、再度目次(今度は節タイトルを含めた詳細なもの)を(これだけでも、何となく全体読んだ気になれます。ならなくても良いです)。

 

 

【上巻】

 

序文

第一部 啓蒙主義とは何か
 人が生きる意味と、啓蒙主義の理念
 啓蒙主義の理念は今こそ擁護を必要としている
 啓蒙主義の理念は繰り返し語られねばならない

第一章 啓蒙のモットー「知る勇気をもて」
 啓蒙とは何か。啓蒙主義とは何か
 「理性」とは本来、交渉や駆け引きとは無縁のもの
 「科学」による無知と迷信からの脱却
 感覚をもつ者への共感が「ヒューマニズム」を支持する
 啓蒙主義の「進歩」の理念とは何か
 いかに富は創造され、「繁栄」が実現するか
 「平和」は実現不可能なものではない

第二章 人間を理解する鍵「エントロピー」「進化」「情報」
 人間を理解する第一の鍵「エントロピー」
 人間を理解する第二の鍵「進化」
 人間を理解する第三の鍵「情報」
 三つの鍵で人類は呪術的世界観を葬った
 認知力と規範・制度が、人間の不完全さを補う

第三章 西洋を二分する反啓蒙主義
 西洋生まれの啓蒙主義を批判したのも西洋
 現在もなお続くロマン主義による抵抗
 所属する集合体の栄光を優先する人々
 進歩あるいは平和を批判する衰退主義
 科学批判による反啓蒙主義

第二部 進歩

第四章 世にはびこる進歩恐怖症
 世界が良くなっていることを認めない人々
 ニュースと認知バイアスが誤った悲観的世界観を生む
 世界を正しく認識するには「数えること」が大事
 前著『暴力の人類史』への反論の典型
 過去の進歩の実績を認識することはなぜ重要か
 悪いことを想像するほうが簡単なのはなぜか
 知識人とメディアが過度な悲観論に傾く理由
 事実、世界は目を瞠る進歩を遂げてきた

第五章 寿命は大きく延びている
 平均寿命は世界的に延びている
 乳幼児死亡率と妊産婦死亡率は著しく低下
 長生きする人も増加、健康寿命も延びている
 寿命が延びることに文句をつける人たち

第六章 健康の改善と医学の進歩
 医学の進歩が一つずつ問題を解決してきた
 疾病制圧の功労者たちを忘れてはならない
 今も感染症根絶の努力が続けられている

第七章 人口が増えても食糧事情は改善
 飢餓は長いあいだ当たり前の出来事だった
 急激な人口増加でも飢餓率は減少した
 科学技術の進歩がマルサス人口論を無効化した
 農業の技術革新は不当に攻撃されている
 二〇世紀の飢餓の最大要因は共産主義と政府の無策

第八章 富が増大し貧困は減少した
 世界総生産は二〇〇年でほぼ一〇〇倍に
 実は総生産の増大以上に我々は豊かになった
 貧困からの大脱出を可能にした三大イノベーション
 「極度の貧困」にある人の比率も絶対数も減少
 「毛沢東の死」が象徴する三つの貧困削減要因
 グローバル化が貧しかった国を豊かにした
 科学技術の発展がより良い生活をより安く実現

第九章 不平等は本当の問題ではない
 不平等は過度に注目され問題視されている
 所得格差は幸福を左右する基本要素ではない
 「不平等が悪を生む」という考えは間違っている
 不平等と不公正を混同してはならない
 経済発展に伴い格差はどう推移するか
 二〇世紀以降の格差縮小の最大要因は戦争
 資本主義経済の発展とともに社会移転は増えた
 先進国の空洞化した中間層とエレファントカーブ
 エレファントカーブは事態を過大に見せている
 先進国の下位層・下位中間層も生活は向上した
 「中間層の空洞化」という誤解が生じる理由
 実はアメリカの貧困は撲滅されつつある
 優先課題は経済成長、次はベーシック・インカム
 所得格差は人類の後退の証拠ではない

第一〇章 環境問題は解決できる問題だ
 環境問題の事実を科学的に認めることが必要
 半宗教的イデオロギー「グリーニズム」の誤り
 グリーニズムの黙示録的予言はすべてはずれた
 さまざまな面で地球環境は改善されている
 生活や生産活動の高密度化・脱物質化が重要
 間違いなく憂慮すべき事態にある「気候変動」
 気候変動予想に人々はどう反応してきたか
 自己犠牲の精神ではこの問題が解決しない理由
 解決のため途上国に犠牲を強いるのは間違い
 世界の「脱炭素化」はこれまでも進んできた
 「カーボンプライシング」が脱炭素化の第一の鍵
 脱炭素化の第二の鍵は原子力発電
 脱炭素化はエネルギー技術の進歩にかかっている
 大気中の二酸化炭素を減少させるにはどうするか
 「気候工学」の手法も条件付きでは使っていい
 悲観的にならず解決する方法を模索し実行する

第一一章 世界はさらに平和になった
 『暴力の人類史』刊行以降、暴力は増加したか
 長期的な戦死率の減少傾向は続いている
 多くの内戦が終結、難民数も虐殺規模も縮小
 国際的商取引と国益重視が戦争を遠ざけた
 戦争を違法とする国際合意の功績は大きい
 ロマン主義的軍国主義の価値観から脱却
 かつての軍国主義を勢いづけた反啓蒙主義

第一二章 世界はいかにして安全になったか
 事件・事故を低減する努力は軽視されがち
 「国家の統治」「商取引」は殺人を減少させる
 「根本原因の解決なしに暴力減少は無理」の噓
 「世界の殺人発生率を今後三〇年で半減」は可能
 殺人発生率を半減させるための方法
 自動車事故による死亡率は六〇年で六分の一に
 歩行者の死亡事故も大きく減少してきた
 火事・転落・溺死の減少率も非常に大きい
 薬物過剰摂取事故による死者は増えている
 かつて「進歩の代償」とされた労働災害も減少
 地震・噴火・台風などの被害緩和策も効果発揮
 事故も殺人も減らせる。その減少にもっと感謝を

第一三章 テロリズムへの過剰反応
 テロの危険は非常に過大評価されている
 テロによる死者の大半は内戦地域に集中している
 テロの目的は注目を集めること。実際は無力だ
 テロへの恐怖は、世界が安全である証しでもある

第一四章 民主化を進歩といえる理由
 民主化を進歩の証しと見なせるのはなぜか
 「世界の民主化は後退している」という悲観論の噓
 選挙こそ民主主義の本質、というわけでもない
 民主主義とは国民が非暴力的に政権を替えられること
 国家による人権侵害は徐々に減っている
 国家による究極の暴力行使、死刑の減少
 アメリカにおいても死刑は消滅前夜にある

第一五章 偏見・差別の減少と平等の権利
 平等の権利獲得の輝かしい歴史は忘れられがち
 ネット検索の履歴データに表れた偏見減少の趨勢
 アメリカのヘイトクライムは減少傾向にある
 西洋以外の国々でも偏見と差別は減っている
 現代化が進むと「解放的な価値観」が根づく
 「先進国の価値観は保守化している」の噓
 先進国以外の国々も価値観は解放的になった
 アメリカでは子どもの虐待やいじめは減少
 世界の児童労働の比率は減少、教育機会は拡大

原 注

 
 
【下巻】
 

第一六章 知識を得て人間は賢くなっている
 教育は社会を豊かにし、平和で民主的にする
 教育は世界中に広まりつつあり、男女格差も縮小
 世界的なIQの上昇「フリン効果」の原因は何か
 フリン効果は世界を豊かにした要因の一つ
 「人間開発指数」の改善は進歩の実在を証明する

第一七章 生活の質と選択の自由
 好きなものを手に入れられるのは良いことだ
 労働に費やさなければならない時間が減少
 家事や生活維持のためにかかる時間も減少
 家族の時間は増え、遠くの人との交流は便利に
 食べ物が国際的になり食事の選択肢が増加
 文化に触れ学ぶことが簡単・便利・安価に

第一八章 幸福感が豊かさに比例しない理由
 わたしたちは豊かになっても幸福を感じないか
 客観的な意味での幸福を形づくるものは何か
 主観的な幸福はどのように測られるか
 人々の幸福感は本当に向上していないのか
 裕福でも幸福感が高くない国アメリカの実態
 現代人はより孤独になっているというのは誤り
 自殺率と不幸度の関係についても誤解が多い
 鬱病と診断される人が増えているのはなぜか
 本当に鬱病に苦しむ人は増えているのか
 自由の獲得が幸福感の伸びない理由の一つ
 神や権威から離れ自らの責任で生きる不安

第一九章 存亡に関わる脅威を考える
 科学者が提示する数々の「脅威」は本物か
 むやみに脅威を語ることが危機をつくり出す
 低確率事象のリスク評価は過大になりがち
 二〇〇〇年問題に見る科学者のバイアス
 科学技術は人間を災害から守っている
 人工知能は進化しても人間を滅ぼさない
 AIの暴走も人類への脅威とならない
 悪意ある個人が世界を滅ぼせるようになるか
 世界を滅ぼせるテロリストは存在しえない
 バイオテロは非常に困難で効率も悪い
 核の脅威は本物だが過大に喧伝されている
 核戦争を防いできたのは何かを考えるべき
 核は究極兵器でも究極の抑止力でもない
 世界の核兵器は近年減少しつづけている
 まずは核の運用法を安全にする必要がある

第二〇章 進歩は続くと期待できる
 この二世紀半のあいだにもたらされた進歩
 進歩は自動的にもたらされるものではない
 進歩の継続を信じる合理的理由は歴史に
 成長の停滞は進歩の継続を妨げるか
 将来の進歩をもたらしうる技術の数々
 ポピュリズムは進歩をはばむ脅威となるか
 ポピュリズムの支持層は「文化競争の敗者」
 ポピュリズムは老人の運動。衰退の可能性大
 進歩の継続を支持し、前向きに取り組む

第三部 理性、科学、ヒューマニズム

第二一章 理性を失わずに議論する方法
 理性や客観性を否定したら議論は不可能になる
 人間の理性を使う能力は進化によって磨かれてきた
 不合理な主張を信じるのは無知だからではない
 人は評判を気にして集団内の主流意見に同調する
 知識が深まるほどに意見が二極化することさえある
 知能が高くても偏見があると誤った結論に飛びつく
 左派の右派への、右派の左派への偏見を検証
 右も左もイデオロギーのせいで人類に貢献し損ねた
 右・左・中道で選ぶのではなく、合理性で選択する
 専門家を予測の正確さで評価すると多くが落第
 驚くべき精度で予測を当てる「超予測者」の特徴
 政治の二極化と大学の左傾化は確かに進んでいる
 政治と大学の二極化・偏向は何をもたらしたか
 「ファクトチェック」が理性的な人々に力を与える
 長期的に見れば理性は今まで真実を広めてきた
 認知バイアスに関する教育で「脱バイアス」は可能
 党派性の克服には理性的議論のルールも必要
 人間はたいていの状況下では十分に理性的
 物事が「政治問題化」すると人は理性を失う
 理性的な政治の実現をあきらめてはならない

第二二章 科学軽視の横行
 科学の偉業は否定しようもなく大きく普遍的だ
 アメリカの政治家による科学軽視の事例
 多くの知識人たちも科学を軽視・敵視してきた
 否定論者はどのように科学を非難してきたか
 科学支持者が広めたいと考える二つの理想
 「科学は領分を守るべし」という論の誤り
 科学や科学論の誤用・誤解・曲解が横行
 科学的人種主義の罪を科学は負うべきか
 科学の悪者扱いが大学でまかり通っている
 バイアスを正すには科学的知識が不可欠
 科学と人文学の協力は双方の得になる
 知の統合を妨げる「第二の文化」の警察官

第二三章 ヒューマニズムを改めて擁護する
 ヒューマニズムとは人類の繁栄を最大化すること
 道徳の非宗教的基盤は「公平性」だけでは不足
 道徳の基盤となる人間の身体・理性・共感
 功利主義的道徳は必ずしも悪いものではない
 ヒューマニズムの功利主義的主張がもつ利点
 ヒューマニズムを否定したがる二つの勢力
 有神論的道徳からのヒューマニズム批判の中身
 「基礎物理定数」は神の存在の証拠?
 「意識のハードプロブレム」は神の存在の証拠?
 有神論的道徳が抱える第二の欠陥
 信仰擁護無神論者「信仰を否定するな」
 神がいなくても人が生きる意味は見出せる
 「宗教は巻き返している」という見解は誤り
 宗教復興と見誤らせる「出生率」「投票率」
 イスラム諸国の停滞の原因は明らかに宗教
 イスラム世界でもヒューマニズム革命は進む
 ヒューマニズムの敵を育てたニーチェの思想
 ニーチェに感化され独裁者を支持した知識人たち
 ニーチェからトランプに至る二つのイデオロギー
 トランピズムの思想基盤は論理的に破綻している
 啓蒙主義の理念はつねに擁護を必要としている

原 注
参考文献
索 引

 

 

 

 

 

 

ということで、

 

『21世紀の啓蒙』、基本的に「前向き」にしてくれます。たぶん。

 

🍥🍥🍥 🍥🍥🍥 🍥🍥🍥 🍥🍥🍥 🍥🍥🍥 🍥🍥🍥 🍥🍥🍥

 

いい加減、普通に(!)イベントとかライブとか、楽しめるようにならないかなあ。

 

 

 

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スティーブン・ピンカーさん、確かに、そのはずでした・・・

 

 

⚫ところが!

 

そのピンカーさん、2021年(新型コロナ「出現」後)に、こういう本を出しまして。

 

 

 

■『21世紀の啓蒙』『暴力の人類史』の著者による最新作。全米ベストセラー

 本書は2021年に刊行された全米ベストセラー、Rationality: What It Is, Why It Seems Scarce, Why It Mattersの邦訳です。

 

 近年、フェイクニュースや陰謀論がはびこり、党派的議論も横行していると、多くの人が嘆くようになりました。その一方で、IT、人工知能、医療などの科学技術は急速な進歩を遂げ、新型コロナワクチンはわずか1年足らずで開発されました。この状況は、2つのことを示しています。

 

 1つは、人間の合理性には、確かにとても大きな力があるということ。もう1つは、人間はつねに合理的なわけではなく、注意を怠ればたちまち非合理に陥るということ。どうすれば、私たちは、非合理に陥らず、より合理的に思考できるようになるのでしょうか。

 

 

 

という内容なんですが、これまた大部です。

 

なので、とりあえず、目次だけで読んだ気になってもらって(ならなくても良いですが)・・・

 

■上巻目次
序文
第1章 人間という動物はどのくらい合理的か

■狩猟採集民は驚くほど合理的である
■「なぜ人間は時に非合理になるか」は研究されている
■人間の非合理さを露呈させる簡単な数学の問題
■人間の非合理さを露呈させる簡単な論理学の問題
■人間の非合理さを露呈させる簡単な確率の問題
■人間の非合理さを露呈させる簡単な予測の問題
■認知的錯覚と「目の錯覚」の類似点

第2章 合理性と非合理性の意外な関係

■「理性に従う」ことはかっこ悪いのか
■理性なしにはあらゆる議論が不可能
■理性は妥当かつ必要だと考えられる理由
■理性は情念の奴隷? 情念が理性の奴隷?
■自分の中にある複数の目的間の葛藤
■今の自分と未来の自分とのあいだの葛藤
■あえて無知でいるほうが合理的な場合もある
■無能や非合理でいることが合理的な場合
■考えることや訊ねることがタブーとされる場合
■道徳は合理的な根拠をもちうるか
■理性の誤りも理性で正すことができる

第3章 論理の強さと限界はどこにあるか

■論理の力で論争は解決できるか
■「もし」や「または」の論理学上の意味は通常と異なる
■形式論理のよくある誤用の例
■論理の飛躍や誤謬に気づく方法「形式的再構成」
■非形式的誤謬のさまざまなバリエーション
■論理が万能でない理由―論より証拠
■論理が万能でない理由―文脈や予備知識の無視
■論理が万能でない理由―家族的類似性
■ニューラルネットワークで家族的類似性を扱う
■人間の理性は家族的類似性も論理も扱える

第4章 ランダム性と確率にまつわる間違い

■偶然と不確実にどう向き合うべきか
■ランダム性とは何か。それはどこからくるのか
■「確率」の意味は複数あり混乱の元になっている
■利用可能性バイアスで確率の見積もりを誤る
■「大衆の怒り」はバイアスだけでは説明不能
■ジャーナリズムがバイアスを増幅させる理由
■連言確率、選言確率、条件付き確率の混同
■確率にまつわる誤謬は専門家でも気づきにくい
■〈AまたはB〉の確率と〈Aでない〉確率の計算
■条件付き確率の計算は混乱しやすいが重要
■〈AのときのB〉の確率と〈BのときのA〉の確率
■後知恵確率を事前確率と取り違える誤謬
■人間の「かたまり」を見つける能力が誤謬を生む
■それでも人は幸運の連鎖に魅了される

第5章 信念と証拠に基づく判断=ベイズ推論

■ベイズ推論は全人類が学ぶべき理性の道具
■基準率無視と代表性ヒューリスティック
■基準率無視が科学の再現性危機の根源
■基準率を無視するほうが合理的である場合
■ベイズ推論を直観的に使えるようにするには

原注
 
■下巻目次
第6章 合理的選択理論は本当に合理的か

■悪者にされ嫌われてきた「合理的行為者」の正体
■合理的行為者が満たす7つの公理
■「限界効用の逓減」と保険とギャンブルと大惨事
■共約可能性・推移性の公理違反を犯す場合
■非合理と言い切れない、独立性の公理違反
■「プロスペクト理論」による公理違反と合理性
■合理的選択が本当に合理的なことはやはり多い

第7章 できるだけ合理的に真偽を判断する

■不完全な情報を基に合理的な決定を下すには
■信号とノイズを見分けるのはなぜ難しいか
■反応バイアスを最適に設定する方法
■測定の感度を上げればミスも誤警報も減る
■法廷における信号検出の精度は十分か
■科学研究の「再現性の危機」と信号検出理論

第8章 協力や敵対をゲーム理論で考える

■ゲーム理論なしでは社会の重大問題に向き合えない
■じゃんけん・ゼロサムゲーム・混合戦略・ナッシュ均衡
■猫に鈴・非ゼロサムゲーム・ボランティアのジレンマ
■待ち合わせ・調整ゲーム・フォーカルポイント
■チキンゲームとエスカレーションゲームへの対処法
■囚人のジレンマの克服法「掟」「しっぺ返し戦略」
■囚人のジレンマの多人数版「共有地の悲劇」

第9章 相関と因果を理解するツールの数々

■違うとわかっていても混同する相関と因果
■相関があるかどうかは散布図と回帰分析でわかる
■特異な現象の繰り返しは少ない「平均への回帰」
■実は答えるのが意外に難しい「因果関係とは何か」
■因果をつなぐのは一本道ではなくネットワーク
■その相関は因果関係か――ランダム化と自然実験
■その相関は因果関係か――マッチング、重回帰など
■「主効果」「交互作用」で因果を賢明に考察する
■あらゆる手段を駆使しても人間は予測しきれない

第10章 なぜ人々はこんなに非合理なのか

■理性の衰退を懸念させるデマや陰謀論、迷信の流布
■たわごとの蔓延に関する説明にならない説明
■望ましい結論に誘導する「動機づけられた推論」
■党派性に侵された議論「マイサイドバイアス」
■非合理な両極化を引き起こす原因は何か
■陰謀論は「神話のマインドセット」の信念
■人はなぜ疑似科学・超常現象などに騙されるのか
■エンタメとしての都市伝説・フェイクニュース
■陰謀論が蔓延しやすいのには理由がある
■社会から非合理を減らすためにできること
■「合理性の共有地の悲劇」を防ぐ制度も必要

第11章 合理性は人々や社会の役に立つのか

■理性は人生とこの世界をより良いものにするか
■合理的に判断することは人生の役に立つのか
■世界の物質的進歩は合理性の成果だ
■道徳の進歩も合理性によりもたらされたのか
■道徳を進歩させた合理的で健全な議論の数々

参考文献
原注
誤謬の索引・人名索引
 
この本でも、やはり総じて言えば、科学のチカラとか人の進歩とか、総体としての人類に対する、ピンカーさんの篤い信頼が伝わってきます。
 
 
が、ワタクシ的に「うん?」と感じたところも多々あり。
 
というか『21世紀の啓蒙』においても、トランプさん嫌い、民主党好き、の気配はどことなく漂っていて、そこはちょっとなあ、と思っていましたが。
 
以下、その中から(ちょっぴり悪意を自覚しつつ)少しだけ引用しておきます。
 
 
第10章 なぜ人々はこんなに非合理なのか  
 
理性の衰退を懸念させるデマや陰謀論、迷信の流布 から
   この原稿を書いている今、理性の歴史において画期的といってもいい出来事が起こりかけている。致死性のパンデミック、新型コロナウイルス感染症の発生から1年を待たずにワクチン接種が開始され、これが終息の決め手になるかもしれないという事実のことである。(P.175)
 
「この原稿を書いている今」がいつのことなのか分かりませんが「理性の歴史において画期的といってもいい出来事」は、実際には起こりませんでした。
 
残念ながら、ワクチン接種は「終息の決め手に」なったとは言えませんしね。そういう見方に固執している人はいるにしても。
 
何より、新型コロナに関して言えば、デマや陰謀論、迷信とされたもののうち、いくつかは逆転真実となってます。
 
 
第11章 合理性は人々や社会の役に立つのか  

世界の物質的進歩は合理性の成果だ から
   だとすればわたしたちも、今直面している試練、なかでも「炭素の共有地の悲劇」(第8章)に対処するために、いっそうの創意工夫を重ねなければならないだろう。そして知恵を注ぐべきなのは、クリーンエネルギーを安く生産する技術、ダーティエネルギーを高くする価格づけ、党派の対立が対策の邪魔にならないようにする政策、これらのための費用負担をグローバルで公平なものにする条約ということになるだろう。(P.243)

 

あれま。クリーンエネルギーとダーティエネルギーという二元論ですか。

 

「党派の対立」「グローバルで公平」・・・

 

人を啓蒙すること、人が啓蒙され得る存在だと信じ、科学的態度や合理性を称揚するピンカーさんにしても、そういう「言葉遣い」をしてしまうのですね。

 

 

なるほど、書籍案内にあるとおり、

 

人間はつねに合理的なわけではなく、注意を怠ればたちまち非合理に陥る

 

ということのようです。

 

 

ため息。

 

もちろん「新型コロナパンデミック」自体については、その後、見方、考え方が変わっているかもしれませんが・・・