令和2年、ちゃんと明けました。

 

 

初日の出、初詣、ワタクシと(ウチの)奥様双方の実家を訪ね仏壇でご先祖様に感謝申し上げ・・・という具合で、無事、新年のお約束行事を一通り済ませました。

 

 

一般的には、ここらで年頭の抱負とかって展開になるのでしょうけれども、三河一宮砥鹿神社のおみくじに曰く「平凡な事を静かに続けて、運を天にまかせておく雰囲気です」とのことだったので、そしたら天任せの人任せ、1月初っ端から「人の口を借りてモノを言う」記事で行くことにします。

 

 

 二人の人物が意見を戦わせていて、一方が明白な事実や数字を示して相手の誤りを指摘するが、提示された側はそれを全く意に介さず、結局は議論が平行線をたどる――そんな場面をSNSで目撃したことはないでしょうか? 議論の対象が政治であれ、健康問題であれ、趣味であれ、そうした光景は今ではとくに珍しくないようです。〜〜〜

 

 普通に考えると、明白な事実を示されても意見を変えない人たちは、恐ろしく頭の固い人物か、論理的に考える能力に乏しい人物のように思えます。まともな人なら、専門家が調査を重ねて導き出した事実や数字を目の前にすれば、自説を完全に曲げるとまではいかなくとも、方向修正くらいは考えるはずです。そんなことすらできない人は、ごく一部の偏狭で不合理な人物に違いない……。ところが驚くべきことに〜〜〜

 

これは『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』という本の巻末、白楊社編集部による「本書について」の一節です。

 

どこかの書評か何かを見て、これは面白そうだと思ってうっかり買ってしまい、この年末年始に読み始めました。

 

コチラの本でして・・・

 

 

人はいかにして他者に影響を与え、他者から影響を受けているのか?

教室や会議室といったリアルな場所からネット上のSNSまで、私たちはみな、毎日何かしらのかたちで他者に影響を与え、また受けながら生活をしています。

しかし、私たちはその重要な行為についてどれだけ自覚的なのでしょうか?

もっと上手に他人の意見を変えることはできないのでしょうか?

 

本書では、「客観的な事実や数字は他人の考えを変える武器にはならない」など、認知神経科学が近年発見した数々の驚くべき研究結果を示し、他人の説得しようとするときに私たちが陥りがちな罠と、それを避ける方法を紹介します。

イギリス名門大学教授が教えるとっておきの「説得の技法」、ぜひご一読ください!

 

※白楊社:事実はなぜ人の意見を変えられないのか

http://www.hakuyo-sha.co.jp/science/influentialmind/

 

・・・とのことです。

 

 

ちょびっとだけ引用しておきましょう。まず〈はじめに〉から。

 

 実のところ、今日の私たちは押し寄せる大量の情報を身に受けることで、かえって自分の考えを変えないようになってきている。マウスをクリックするだけで、自分が信じたい情報を裏づけるデータが簡単に手に入るからだ。むしろ、私たちの信念を形作っているのは欲求だ。だとすれば、意欲や欲求を利用しない限り、相手も自分も考えを変えることはないだろう。(P.14〜15)

 

 

お次は〈1 事実で人を説得できるか?(事前の信念)〉から。

 

 新しいデータを提供すると、相手は自分の先入観(「事前の信念」と呼ばれる)を裏づける証拠なら即座に受け入れ、反対の証拠は冷ややかな目で評価する。私たちはしょっちゅう相反する情報にさらされているため、この傾向は両極化の状況を生み出し、それは時を経て情報が増えるたびに広がっていく。(P.24)

 

 矛盾しているようだが、豊富な情報が得られるようになると、人は自分の意見にもっと固執するようになる。なぜなら、自分の考えを裏づけるデータを簡単に見つけ出せるからだ。これはたとえば、自分の属する人種が他の人種よりも遺伝的に優れているといったような極端なものの見方にも当てはまる。私たちは自分の見解を支持するブログや記事は注意深く読むが、別の考え方を示すリンクはクリックしようともしない。(P.27)

 

 

いやいや、色々身も蓋もないですな。

 

で、この後〈2 ルナティックな計画を承認させるには?(感情)〉から〈8 「みんなの意見」は本当にすごい?(他人 その2)〉までで、「事実や数字」以外の様々な「人を変える方法」を示し、〈9 影響力の未来〉で結ぶ、という内容です。

 

まだ、全て精読したというわけではありませんが、著者のターリ・シャーロットさん、認知神経科学者なんだそうで、各種実験に関する記述が出てきたりして興味深いです。挿絵(図)とともに示されている「こうしてみよう」なんかも、まあ分かり易いですね。

 

副題に「説得力と影響力の科学」とあるとおりの本です。

 

 

それにしても・・・

 

自分もそうですけど・・・

 

ブログなんかで、何とか自分の意見を分かってもらおうと、できるだけ正確な引用をしたり、各種リンクを貼ったりしてるのに、ほとんどの人は読みもしないし、クリックもしないんだと考えると・・・ちょっと虚しいですね。

 

 

それでもせめて・・・

 

自分の意に反する事実や数字を示されたら、立ち止まるくらいはしよう。何か新しい情報があったら、それが自分が知りたいものであれ知りたくないものであれ、一次情報かどうかだけは確認するようにしましょう。

 

その辺りが年頭にあたっての“お願い”でしょうか。

 

 

あ、イカンイカン、変に自力でなんて考えずに、天に任せるんだった。

 

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参考までに。目次も引用しておきます。

 

 

はじめに――馬用の巨大注射針

 

1 事実で人を説得できるか?(事前の信念)

データでは力不足/賛成意見しか見えない/グーグルはいつもあなたの味方/賢い人ほど情報を歪める?/なぜこうなってしまったのか/投資と信念/新しい種をまこう

 

2 ルナティックな計画を承認させるには?(感情)

同期する脳/感情という名の指揮者/カップリング/気持ちを一つに/インターネットの扁桃体/あなたの心は唯一無二?

 

3 快楽で動かし、恐怖で凍りつかせる(インセンティブ)

手洗いと電光掲示板/二人の主権者/接近の法則と回避の法則/進むべきか、止まるべきか/期待が行動を導く/「死んだふり」/いますぐちょうだい!/未来はあてにならない/脳の自動早送り機能

 

4 権限を与えて人を動かす(主体性)

恐怖vs.事実/コントロールを奪われて/納税はなぜ苦痛なのか?/「選ぶこと」を選ぶ/選択の代価/健康で幸福な老人/自分で刈った芝生は青い

 

5 相手が本当に知りたがっていること(好奇心)

ギャップを埋める/情報は気持ちいい!/良い知らせ、悪い知らせ/知らぬが仏/頭の中の巨大計算機/知らずにいることの代償/エゴサーチが怖い

 

6 ストレスは判断にどんな影響を与えるか?(心の状態)

プレッシャーが招く悲観主義/弱小チームはなぜ安全策を選ぶのか/リスクの冒し方/扁桃体を手なづける/晴れの日とギャンブル

 

7 赤ちゃんはスマホがお好き(他人 その1)

生まれた日から始まる社会的学習/シンク・ディファレント?/メルローを注文する奴がいたら俺は帰る!/アマゾンレビューを操作する/他人の意見と記憶の改変/最初に飛び込むのは誰?/心の理論

 

8 「みんなの意見」は本当に正しい?(他人 その2)

多ければ正しくなる?/人間体温計/わが道を行くことの難しさ/個人の中の賢い群衆/雪だるま式に膨らむバイアス/平等バイアスにご用心/びっくりするほど人気の票

 

9 影響力の未来

二つの脳をつなぐワイヤ/私の思いがあなたを動かす/私は私の脳である

 

謝辞

訳者あとがき/本書について

付録/註/索引

 

 

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そんなわけで、どれくらいクリックしてくださる方がいらっしゃるのか、とんと不明なんですが・・・ここ3年の、ワタクシめの年頭抱負です。

 

#282 「他郷にでもいるような」・・・私的、寝(るしかなかった)正月な話。