もう、かなり前(?)のことですが、参議院予算員会(NHK全国放送あり)、一民間人の名前を上げ、確たる証拠もなしに、
「国家公務員だったら、あっせん利得、収賄で刑罰を受ける」
と言い放った方がいらっしゃいます。森ゆうこ(新潟選挙区:野党統一候補→自由党→国民民主党)さんです。
※参議院インターネット審議中継
→https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
(2019年10月15日、2:47:20 くらいからの「国家戦略特区」に関する質問で、ご丁寧にも顔写真をつけたフリップを示しつつ。上の放言は 2:56:50 くらい、質問時間終了間際の最後っ屁です。抗議も訂正要求もできやしない、というか、そもそも当該民間人は、その場にいません)
はっきり言って、誹謗中傷、名誉毀損の類です。国会外でこんなこと(証拠もなしに犯罪者だと決めつける)をしたら、間違いなく裁判沙汰です。
何故にこんなことが許されるのかと言うと、
〈両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない〉
と、日本国憲法第51条にあるからですね。議員の免責特権というやつです。
こんな解説があります。
両議院の議員は、議院で行った演説や討論、表決について、原則として法的な責任を負いません。 ただし、負わない責任は法的な責任であって、政党から処分されたり、社会的な批判を浴びたりといった、 政治的、社会的な責任は別です。
なお、地方議会の議員には、このような免責特権はありません。
※日本国憲法 逐条解説:第51条
→http://law.main.jp/kenpou/k0051.html
なるほど、確かに法的責任は負いませんが、政治的責任(議院や政党による処分)や社会的責任(メディアや世論の批判)は有り得ますよ、ということですね。それが一定程度の歯止めになると期待されているわけです。
がしかし、
議院(参議院)は与野党国会対策委員による密室取引に引き摺られ、所属政党(国民民主党)も組織としての機能不全全開中につき、政治的責任が追求される気配なし。
マスメディアは(生中継のNHKはもちろん)「国会で〜〜〜という質問があった(メディア自身が言っているのではない)」というスタンスで、むしろ議員との結託が疑われるくらいのもんで広範な批判が起きるはずもなく、社会的責任も有耶無耶。
こうなると、後は、発言する議員ご本人の「節度」や「良心」に頼るしかないわけですけれども、それは、ねえ・・・
結局、ネット情報で自らウラを取ろうとする人達だけが、森議員の悪辣さを知って「問題」にしているのだけれども、ご本人は屁の河童というね。
そんなわけで、
平日の昼日中から国会中継を視ている暇な(主に)お年寄りや、それを無批判に垂れ流す新聞・テレビだけが情報源の(主に)年配の方々は、「そんなケシカラン話があるのか」と思い込む、の図です。
ああ、何だか「桜を見る会」関係の「疑惑」もほぼ同じ構図ですね。野党議員の皆さんは質問というカタチで言いたい放題、マスメディアはそのウラを取るどころか批判もせず、むしろ後押しし応援するかのような編集を加えて伝える始末。
そう言えば「モリ・カケ」もそんな感じでしたか。
「免責特権」とは、つまり国会内での「言論の自由」を担保・保障するためにあるということですが、それはもちろん「無制限に何を言っても許される」という意味ではないはずです。
「表現の自由」においても言えることですが、たとえ(法律で)書かれていなくても、限度というものが自ずと(!)あるでしょう。
この「自ずと」というのは、けっこう大切でして、それは、いわゆるマナーとかエチケットとか常識とか言われるものです。
確かに、それらが時として「同調圧力」とか「抑圧装置」とかに変貌することもあるわけですが、かといって「書かれていないもの」を全否定してしまうと、個々の人間関係はギクシャクするし、その人間関係の集積たる社会は大変に住みにくいものになっていきます。
「ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)」が禁じているのは「本邦外出身者」に対するヘイトであり、日本と日本人に向けられた言動については「書かれた法律がないので」ヘイトには当たらない、という(津田大介さんや大村秀章愛知県知事の)理論なんかが、ズバリそういう傾向を示しています。
そこら辺を理解せず、やたら「免責」だの「自由」だのと叫ぶ人は、やはり相当に迷惑です。
ただ、迷惑には違いないのだけれども、そして、往々にして他者の自由を脅かしていたりするのだけれども、そうね、淋しい人達なんだな、とも思います。
そうでもして、常に目立つ存在でいないと、自分の存在に自信が持てないんですね、たぶん。
あ、何か、こう書いててお隣さんの大統領のこと思い出しました。あの方もやっぱり迷惑であり、何なら面倒でもあり、悪しからず放っておくのが一番、みたいなところがありますもん。
おっと、話が跳んでしまいましたが、つまり、今の日本は「自由がいっぱい(過ぎる)」ということを言いたいのでした。
それと、
にも関わらず、「表現の自由」がどうとか「検閲」がこうとか、そんなことを憂い顔で言う方々は、自分達こそが、他者に向けて「間接的な圧力・レッテル貼り」をし「過度な自粛・自主規制」を求めているからなんでしょ、ということも合わせて言っておきましょうか。
無制限に保障され安全なところで安心してやりたい放題、が、ではなく・・・
時代や社会といった様々な制約の中で、それでも自ら不断の努力によって保持しようという姿勢こそが「自由」と呼ぶべきものなんですのよ。
えーと、前回の記事が、我ながらあまりに長くなり反省しましたので、今回はここまでで。
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で、良いのだけれども・・・以下、補足です。スミマセン。
森ゆうこさんの何処らへんが「悪辣」なのか、今ひとつ分からないという方のために、事の経緯について「被害者」ご本人の仰ることを。応援の意味を込めて。
NHKが中継する国会質問で、森議員は、私の顔写真を掲載したパネルを掲げ、私を繰り返し名指しした挙句、「国家公務員だったら、あっせん利得、収賄で刑罰を受ける」と発言した。事実無根の誹謗中傷だ。
経過をご存じない方が多いと思うので、簡単にご紹介しておく。発端は、6月11日付毎日新聞の一面トップ記事だ。「特区提案者から指導料」「200万円、会食も」との見出しのもと、私の顔写真が掲載された。私は、政府の国家戦略特区ワーキンググループの委員を務めている。記事は、私がその立場で「200万円」を受け取り「会食接待」を受けたかのように示すもので、「原氏が公務員なら収賄罪に問われる可能性もある」との識者のコメントも掲載された。
そんな事実は全くない。直ちに反論を公開したが、毎日新聞はその後も連日一面で続報を掲載した。他紙の追随はなかったが、毎日新聞だけは1カ月で11回の記事を掲載する大キャンペーンを展開した。
なぜこんな虚偽報道がなされたかは、いまだによくわからない。私は特区や規制改革に関わってきたから、既得権益の担い手や関係省庁から恨みを買っていることもあろう。おそらくどこからかガセ情報が提供されたのかと思うが、ここではそれ以上は触れない。
ともかく、虚偽報道を放置するわけにはいかない。毎日新聞社には訴訟を提起し、係争中だ。訴訟では同社は、こんな弁明をしている。
・見出しの「200万円」も「会食」も私のことではない。
・この記事は、一般人の普通の読み方では、私が金銭を受け取ったと理解されるはずがない。
・「公務員なら収賄罪」のコメントは事実を断定したわけではない。
それならなぜ私の顔写真が掲載されたのかと思うが、少なくとも現時点では、報道内容の根幹部分は事実上撤回されたに近いと受け止めていた。
そんな中でなされたのが、森ゆうこ議員の質問だ。
「国家公務員だったら、あっせん利得、収賄」との発言は、要するに「私が金銭を受け取った」ということだ。今や、ネタ元の毎日新聞もそんなことは報じていないと言っている中で、この発言はあり得ない。
※Web論座:国会議員の免責特権は人権侵害したい放題のためか
→https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019111100009.html?page=2
こちらは、憲法51条に関する別の人の記事。何事も「無制限」なのは良くないよ、という内容です。
しかし、国会の場では国会議員にいかにひどい誹謗中傷をされても、名誉を毀損され、人権を侵害された側に名誉回復の機会が与えられないという憲法第51条の規定は、特に2つの現実を踏まえると、明らかに今の時代に合わなくなっているといえます。
1つは国会議員の資質です。今の国会審議、特に多くの野党議員の質問内容を見ていると、骨太な政策論争はほぼ皆無で、森友だ、加計だ、特区だと、政権のスキャンダル追及ばかりに終始しています。これらの週刊誌レベルのスキャンダル追及は、憲法第51条が目指す民主主義の維持とはまったく関係ありません。
もう1つは政策決定に関わる民間人のリスクです。どの役所も政策の立案過程における審議会などでの民間有識者による議論を重視しているため、今は多くの民間人が政策決定に関わるようになっています。しかし、変に目立つことをやってメディアに目をつけられたら、事実無根の誹謗中傷の記事を書かれ、野党議員に国会審議の場で免責特権を濫用して名誉を傷つけられ、その名誉回復の機会も与えられないとなると、御用学者以外の心ある民間人ほど、政策決定に関わるリスクが大きくなってしまいます。
※DIAMOND online:国会議員による民間人への誹謗中傷を招く「憲法51条」の異常
→https://diamond.jp/articles/-/218444
※この問題は、与党も野党も関係ありません。誰もがその渦中に放り込まれる可能性のある話です。
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こちら旧ブログ、国会議員から地元の市議まで、政界の、あの人やこの人について書いた、テーマ「政界人間模様」の一覧です。
→https://blog.goo.ne.jp/kawai_yoshinori/c/a6a4d95787cad7743803fca63c674d91