ここのところ、御代替わり・改元にともない、あちらこちらで皇室と皇位継承に関する世論調査があったりしたわけですが、先日、新聞(産経新聞5/15大阪6版)に、こんな見出しの記事がありました。

 

〈女系天皇と女性天皇「違い理解せず」過半数〉

 

そして、リードはこう。

 

〈産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が11、12両日に行った合同世論調査で、皇統伝統の一代転換となる女系天皇について「賛成」との回答が64.2%に達した。女性皇族が結婚後、宮家を立てて皇族として活動する「女性宮家」の創設についても64.4%が賛成した。ただ、女性天皇と女系天皇の違いに関しては「理解していない」との回答が半数を超え、問題の所在は国民に十分周知されていない〉

 

 

・・・えーと、笑うとこ? 理解してないのに、賛成とか反対とか言っちゃうの?

 

 

具体的にどんな質問と回答だったのか、同じ日の紙面から拾うと・・・

 

 

【問】天皇制について

 

《天皇の在り方について、どの考えに最も近いか》

今の象徴天皇 86.9

政治的な権能を持つ 4.7

天皇制は廃止した方がよい 6.4

他 2.0

 

《女性天皇と女系天皇の違いをどの程度理解しているか》

よく理解している 10.6

ある程度理解している 33.4

あまり理解していない 31.6

まったく理解していない 20.3

他 4.0

 

《女性天皇に賛成か》

賛成 78.3

反対 13.1

他 8.5

 

《古来より続いてきた男系の伝統をやめることになる女系天皇に賛成か》

賛成 64.2

反対 21.4

他 14.4

 

《女性宮家の創設に賛成か》

賛成 64.4

反対 16.3

他 19.3

 

《戦後に皇籍を離れた旧宮家の皇籍復帰を認めてもよいと思うか》

認めてもよい 42.3

認めない方がよい 39.6

他 18.1

 

 

・・・ということだそうです。

 

 

いやあ、困りましたね。

 

以前から、この種の世論調査はあったし、回答結果もあまり変わっていないのだけれども、はっきり言って「為にする調査」もしくは「それを聞いてどうする調査」だと思います。

 

 

例えば「女性天皇に賛成か」と問われれば、大抵の人は愛子内親王殿下を思い浮かべ「愛子天皇? うん、賛成」という反応をするでしょう。

 

あるいは「女性宮家の創設に賛成か」についても、眞子内親王殿下、佳子内親王殿下をはじめ、女性皇族の方々が「つまり、ご結婚された後も皇籍に留まり公務をこなすってことですよね。ほほ〜、それは素敵」とか素朴に考えてしまいます。

 

 

実際、自分だって、いずれも賛成しちゃいそうです。ソコだけ切り取れば!

 

そう、ソコだけ切り取れば、です。何しろ皇室の若い世代、悠仁親王殿下以外、皆女性なんですから。

 

 

 

※宮内庁:皇室の構成図

http://www.kunaicho.go.jp/about/kosei/koseizu.html

 

 

愛子天皇も、そりゃ確かに良いでしょう。でも皇位継承に係る本当の問題点は、愛子天皇の、その次を継ぐのは誰なのかってところにあるわけで。

 

〇〇宮眞子殿下、△△宮佳子殿下だってアリかもしれませんが、こちらも、だったらその宮家を誰が継いでいくのか、を考えなければいけない話です。

 

 

ここで「女性」と「女系」の違いというのが猛烈に重要になってきます。

 

と言うか、そもそも「女性」と「女系」を並べて論じること自体オカシナ話なんですよ。メディア関係者の皆さん、わざと話を難しくして何かちょろまかそうとしてますねって感じです。

 

 

 

そこで以下、実は「人並みに」解っていなかったウチの娘達相手に、ワタクシが熱弁ふるった内容・・・

 

 

「女性」とは即ち「個人の性別」のことで、男性か女性か(あるいはLGBTとされる方々か)しかありません。

 

一方「女系」とは、つまり「系統」もしくは「血統」、要するに代々続く「血筋」の話です。

 

 

「女系天皇と女性天皇の違い」も何も、元々別個のイシュー、カテゴリーなわけで、それを、あえてごっちゃにして提示するマスメディアってのは、そりゃ、何か意図を持ってしてるんじゃないかと勘ぐられても仕方ないですよねって気がします。

 

(女性天皇、女系天皇を認めようというのは、必ずしも皇室の存在意義を認めているからではなく、むしろ女性が天皇となり、いずれ女系で皇位が継承された途端に、それは天皇ではないと言い出す策略だろうと指摘する人は少なくありません)

 

 

再度強調しますが、女性天皇というのは、その天皇個人が女性である(男性でない)という、唯それだけの話です。

 

「女系天皇」と並べて論じなければならないのは「男系天皇」であって、つまり、前者は母方の血筋(のみ)を遡っていくことで天皇と繋がるという意味、後者は父方の血筋を遡っていくことで天皇と繋がるという意味です。


 

仮に、天皇となった愛子内親王殿下が❏❏さんと御結婚され、やがて子をもうけ、その子が御位を継ぐとするなら、日本史上初めて父方で皇統に連なることのない天皇が誕生することになります。父は❏❏さんですから。それが(男性であれ女性であれ)「女系天皇」です。

 

「女系天皇に賛成」というのは、下世話に申せば、何処の馬の骨とも知れない❏❏さんの子が天皇になることに賛成の意味です。それでも構わない、という人も勿論いるのでしょうけど、率直に言って、ワタクシは嫌です。

 

 

「女性宮家の創設に賛成」にしても、ほぼ同じことです。宮家と言う以上、例えば☓☓さんとの御結婚を前提としているわけで、その子が父方で皇統に繋がることはありません(父は☓☓さん)。それじゃ「宮家」として意味がないじゃないですか。

 

 

ここで確認しておきますが、

 

歴代の天皇はもちろん、皇室の方々、いわゆる旧宮家も含め、全て男系(父方の血筋)で初代神武天皇と繋がっています。良いも悪いもなく、ただ、そうなっている。皇統とは、そういうものなんです。

 

126代、2000年以上にわたり「日嗣の御子」は男系のみで継いできたという厳然たる事実を前に、男女平等・男女同権等今日的価値観との整合性とか、あるいは世界の王室(皇室ではない!)との比較とか、そういうことを得々と語る人々の、その知識の何と薄っぺらに見えることか。

 

 

 

 

 

※宮内庁:天皇系図

http://www.kunaicho.go.jp/about/kosei/keizu.html

 

 

しつこいようですが「女系天皇」というのは、母方の血筋(のみ)で天皇に繋がる、すなわち、父方の血筋で天皇に繋がることがない天皇のことです。人としての天皇が女性か男性かというのとは次元の違う話です。

 

「女系天皇」はこれまで存在しませんでした。これからも存在しないでしょう。と言うより、女系(のみ)での繋がりでは「天皇」にはなれないのです。

 

 

・・・はい、以上、「女性」と「女系」は全く別次元の話ですよ、というところから、「女系天皇」―それは既に天皇とは呼べない。感情としても、歴史的事実に照らしても― について、娘達に説いたことを改めて書いてみました。
 

 

 

最後に、皇位継承についての私見ですが、世論調査(移ろいやすい国民感情)におもねったりなどせず、実際に皇統を継いでいく可能性のある、すなわち「男系」で神武天皇と繋がっている方々に知恵を出してもらい、政府(と国民)は、それを是認して法律とすれば、それで良いんじゃないかと考えてます。

 

 

「菊栄親睦会」というものがあるそうです。

 

先述した昭和22年の臣籍降下によって、11宮家はそれぞれの宮号をそのまま姓とし、国民の籍に入られました。 
このとき、戦前は「皇族親睦会」と呼ばれていた皇族および旧皇族による組織が「菊栄親睦会」と改称され、11宮家51人がそのままメンバーとなっています。今も、その子孫や結婚によって皇籍を離れた元内親王、結婚して皇族妃となられた方がこの菊栄親睦会の会員、その家族、親族が準会員となり、皇室と最も近い親戚筋として交流を持ちながら、皇室を支える役割を担っています。

 

※日本文化振興財団:皇室とは

https://www.nihonbunka.or.jp/knowledge/about

 

 

ワタクシの勝手な思い込みかもしれませんが、旧宮家の方々にしても、御自身がいきなり皇籍に復帰、皇族となるようなことは考えておられないでしょう。

 

ただ、御子息をいずれかの宮家に「特別養子縁組」させるとか、あるいは、いずれかの内親王殿下と「政略結婚」させるとか、男系維持のため様々な方策を立ててくださると信じてます。皇統を継ぐ方々として、女性天皇はともかく、前例のない「女系天皇」を認めるようなことはないと思います。

 

 

 

かつて西行法師が伊勢神宮を訪れた際、

 

なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる

 

と詠んだそうですが、我が国における天皇という存在も、本来そのようなものなんだし、そのようなもので良いんだろう、ワタクシ思っております。

 

 

こちら、別のところ(旧宅)で書いた、皇室関連の記事です。よろしければ。

#299 平成から令和へ・・・御代替わりの宿題