神なる北斎————「博士ちゃん」のボルテックス! | hermioneのブログ  かるやかな意識のグリッド(の風)にのる

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バシャーリアン。読むことで意識が変わるようなファンタジーや物語に出会ってゆきたい。

 

この番組、若くして1つのジャンルに通じてしまった少年(通称「博士ちゃん」)がその世界を探訪しにゆく、という趣向ですが、13日の分は凄かった。

 

物心ついたときから、北斎に魅せられた14歳の少年が、幕末に海外に密輸された北斎作品を見に、オランダのライデン博物館や、大英博物館の門外不出の倉庫を訪れる、という、TV局も渾身の制作。

 

「大好き」「全身ではまっている」だけでなく、「ものすごく関連書籍や情報」に通じている、だけでなく。

 

 この目黒龍一郎くんの語り口に聞き惚れてしまいます。何かで学んだことをしゃべる、のとはまったくちがいます。考えながら、しかし流麗にしゃべっている彼自身が「北斎」に化身しています。

 

 彼は日常から矢立を持っていろいろなところでスケッチをしています。ロンドン塔も描いたり。みずから北斎になりたい。

 

🌟「大英博物館側が日本のバラエティ番組としては異例の許可を出してくれ、通常は入ることのできない収蔵庫での撮影が実現することに。小学3年生のころから、いつかは大英博物館を訪れたいと願ってきた龍一郎くんは大感激。ここでは、“本来あるはずのない幻の北斎作品”に出会う」(マイナビニュース)

 

🌟この龍一郎くんは、ほとんど自分と北斎が重なって分身化しています。この作品は画号が○○のころですね、この色使いは全体の中で、どういう意味合いをかもしだしているか、この西欧技法の絵には少し違和感がある……などを、すらすらと、本当に「自分の感じること」として、語り明かします。

 出会った老練な学芸員の人たちが、みんな舌を巻いて、きみは一流の北斎研究者になれる! と激賞。知っている、ではなくて、北斎の魂そのものに分け入っている少年。

 

🌟で、上の引用記事にある、この世にあるはずのない北斎の絵とは、なんと、版画にする時点で(上書きされて削られ)消費されてしまう「下絵」

 龍一郎くんでなくても、私も、鳥肌が立ちました。

 北斎の魂……ここに残っている。

 

この回は大評判だったようです。

🌟ほんとうに、バシャールのワクワクの純粋形です。

読んだり書いたりする人間としては、こう、ありたいもの。その究極を見せてもらいました。

 

🌟彼の心意気に打たれたオランダの研究者が、「北斎漫画」の本が入っていた封筒(古道具屋でもらったそう、北斎が描いていますが、道具屋にとっては反古)を一部、龍一郎くんにプレゼント。どうしてもあげたくなったことが、よくわかります。

 

また、当時幕末の日本では浮世絵がめずらしくなくなり、さほど評価されていなかったのを、シーボルトのような文化人がこっそり密輸。ばれないように、わざと落款を入れてもらわずに持っていった……という話も「世界の北斎」を感じさせます。みんな、神なる北斎を愛していた!

 

 うちの近くに「北斎美術館」があります。

 小さめの瀟洒な建物で、ちょくちょくいろいろな展示が行われ、外国人が多く訪れます。いまも新たな展覧会が開催中。改めて、北斎の凄さを「全身で観に」行ってみよう、と思いました。

 

(龍一郎くんの目に清められた思いです)