保江邦夫さんが理論物理学者としての本領を発揮した、驚くべき自己実現法です。
保江さんの本は神さまから依頼を受けて何かの儀式を行ったりする、というほとんど宇宙人的なぶっとんだ日常の話が多いのですが、理論物理学のスタンスで語った本書はすごいです。
まず時間は、過去が出発点で、数珠つなぎで未来へ向かって流れてゆくのではない、というのが、最新物理学の時間論。
過去→現在→未来 という古典物理学の因果律は、ふつうの世界では一応矛盾なく機能するけれども、ミクロの世界や、特殊な状況、あるいは宇宙のようなマクロの世界では、量子論を入れないと説明できない。
その段階で従来の時間論から
「未来は過去の延長ではなく、未来と過去が今を決める」(アーサー・エディントン 1882-1944)
ということになったそうです。
エディントンは天文学者。
えっ————「挟み撃ち」ってことでしょうか。
①未来に起きる出来事が決まり、
②過去の出来事も決まっていると、その二方向からの影響で今が決まる。
つまり「未来と過去と今は、一つのパッケージになっている」というのが、本書のメイン・テーマです。
そうとうにとまどいますが、後半で、この「パッケージ手帳」を作ることによって、自分の望むパッケージ時空間に入ってゆく方法が示されています。未来をさきに決める・・・・・・
⭐️この未来と過去のサンドイッチ作用で現在ができている、というのは————ホント? と最初は保江さんも思っていたけれど、ある事件をきっかけにエディントンの主張そのものを体験し、どうしてもこれは真実なんだ、と納得してしまった、というのです。
細かにそのエピソードが書いてあります。ある日保江さんは朝、大いに上機嫌で起き出し、仕事で京都へ移動することになります。ところが移動のタクシーや電車の中で、思ってもいない毒舌や悪口や文句が自分の口から出てくる。過去の何かを思い出しての憤慨ではなく、そのとき目にしたものに対して、いちいち突っ込むような心理状態になってしまっている。
おかしいなぁ、と保江さん自身思った。
昨日までの過去をふりかえっても、うまくいっていて楽しい気分だったのに。
しかし、夜、食事をしているときに、メールが届いて、それには秘書たちが「鬼のボス(保江さん)のいないあいだに、こっそり」と無断で東京で新年会をしたことと、そのときの楽しげな写真がのっていた。
保江さんはこれに怒り、そのとき、わけのわからない日中の憤懣は、この「未来の出来事」のせいだったのだ、と悟ったといいます。
「未来と過去の言動が今の言動を規定している」。エディントンの言葉は真実だったのだ。
⭐️保江さんは学者なので緻密に考え、もしもこれがいわゆる「予知」だとしたら、予知とはいま現在の不安・不快な気分から、外挿的に予想するものだから、そうではない、と推理します。
何か胸騒ぎがすることで、いやなことが起こるかも、と感じるのが予知ですが、保江さんはハッピーな気分でいたのに、なぜか口をついて出てくるのは辛辣な言葉ばかりだった。
これは「未来において、そのような言動に走らせるようなことが起きたから」。
(もちろんもっと綿密な能力者なら、現在のこの異常な気分から未来になにかが起きた、と読みとれるかも、とも言っていますが)
⭐️これが理論物理学上の
「未来・今・過去」が三点セットで影響しあっている、という「パッケージ理論」(保江さんの名付け)です。
こういうイメージ↑
正確にいえば、シュレディンガーの方程式も、未来と過去が決まっているなかでは正しく働くけれど、無期限にいつでも適用できるというものではない、という話も次に出ています。「確率のどこにおちつくか」という「状態の収縮」の問題は、パッケージ理論でなくては記述しにくい。
それをうまく回避して説明できそうなのが、多世界解釈つまりパラレルワールド理論ですが、これは広義にスピリチュアル的に解釈されすぎている・・・・・・うえ、観測結果問題が解決しない。
(さらに量子とは波か粒子かについても、やっと腑に落ちる説明もありました。本来、波なのですが、量が整数倍で加算されるので、粒子という定量イメージで考えたほうがわかりやすいこともあってそのように説明されたりする。)
⭐️このあたりはおもしろいのですが、あまり長い(カンタンに書いてありますが、さすがに難しい)のでワープします。要するに「未来→今←過去」のパッケージを作ることによって、その中に入って、自分の運命をいくらでも生み出す、乗り換えることができる、というのが本書の教え。
タイムライダーになれ
です。
「未来(ゴール)が決まれば、過去(出発点)と連動した今がもたらされ、確定された未来が確実に今にやってくる」(p.43)
これはなんとなく実感できます。未来日記を書け、という啓発書もいくつか読んだことがありますが、説明としては、この保江理論(量子力学)が一番しっくりくるかもしれません。
これだと自由意志の問題もうまく説明できます。(パッケージの中では過去・今・未来が決定されているが、別のパッケージを作り、乗り換えて移動するという自由意志がある)
⭐️時間という概念がどうして生まれたかについても、著者の専門の素領域理論での説明がほどこされています。宇宙の始まりは————いくつもの泡宇宙が「自発的対称性のやぶれ」から生まれるけれども、その外側は完全調和の振動の世界であり、そこには時間がなく、お互いの振動が一瞬に同期する。その情報のやりとりを逐一書き記すと、時間があるように見える……
⭐️このあたり、まことに摩訶不思議な宇宙観ですが、とりあえず「パッケージ手帳」の書き方へ行きます。
「まず未来を決める」というのは————保江さんは、未来を過去の延長や持続の結果としてはとらえないので、学生時代でも名古屋大学の編入試験に合格する前なのに、ふと見つけた下宿をその場で契約してしまったりしています。
この「ふと」「ワクワク」な思いつきをそのままつかんでしまって、未来にする。
⭐️もちろん、未来として設定できるのは、うっすらとでも「願望がある」状態。全く関心のないことは設定できません。
たとえばフェラーリが欲しい、とすると、「それ以外アフターのこともビフォーのことも考えずに、3年後にフェラーリに乗っているという自分を想定して生きる。そうすると、このパッケージが現実化する」(p.81)
たいていの人はいまの初期条件から、これは無理だとか、きっと未来は悪くなる(特にいまはアフターコロナについても、暗い見通しが世をおおっています)と考え、あいまいな好ましくない未来を無意識に設定してしまっている。
そうすると、そういうパッケージに入った時間が生じてくるのです。
⭐️直観的にパッと思い浮かんだ(スパンは短いほうがわかりやすい)未来を設定すれば、「完全調和の側」からの支援が入ってきて、奇跡のように、物事がころがっていく。
保江さんは死線をさまよった過去がありますが、「パッケージを作り変え」、いまではこの理論にもとづき、ミリタリーオタクとして、戦闘機まで手に入れてしまいました。自由な想像の世界で、実現は「天使にゆだねてしまおう」(ここらへん急に用語がスピリチュアルです(笑))。
⭐️パッケージ手帳には、設定する「未来」を先に書き込みます。まずは一週間くらいだとわかりやすい。その実現する日付をコンプリートデーとして設定。
そしてそこにいくまでに、なんとなくそれにからんだ、あるいは関係はないかもしれないが不思議なことが起きたりすると、その日付に丸をしたり、線をひいて書き込んだりします。その手帳を毎朝、あるいは暇なとき、かならずボーとながめる。
すると、コンプリートデーの一日前などに意外な人がおくりものをもってきてくれたりして実現。手帳にそこにいたるまでの流れが「見える化」される。
(これを「パッケージの積み木習慣」と称して、保江さんは長年続けて、奇跡につぐ奇跡を起こしてきたといいます。予祝とも近いけれど、パッケージ理論だとなぜそうなっていくのかが、目に見える)
⭐️他にも、ミニクーパーを手に入れて、東京で使うチャンスが訪れるまでの紆余曲折なパッケージ論の奇跡についても語られています。神さま(天使)は保江さんにとっては、夢もシンクロもあらゆるものを使いまくって実現してくれるサポーター。
うまく活用するために必要なのは
「自分が大好き」
「ワクワクするような物語やマンガに自在に入りこむことができる」
パッケージは自分だけの空間で、外部や他人は関係ないなので、どんな不思議なことでも無理そうなことでもコロコロと展開して起きてしまう・・・・・・
⭐️ひとつ注意したいのは「魔がさす」ということの意味。
多くの人は未来をふくめて「きちんとパッケージにしていない」ので、不本意な望ましくない結果に陥ってしまいます。だから、魔がささないような時間軸を「パッケージ」として作って把持しておくことが大切。
それは五次元手帳でもある、と書かれています。
⭐️未来を決めることの意味を初めて宇宙物理学的に解き明かしてくれたのが本書です。
予祝やパラレルワールド理論の「ふわっと実現」感を超えて、ガチに「望ましいパッケージを作れ」。
設定した未来がかなり大きくて大変そうな場合は、「未来から来る波」を現在に受けて、大変になることがあるけれど、最終的にはすべてその未来へ導かれる・・・・・・
すでに「予祝」やドクタードルフィンの「パラレルワールド理論」の感触が手に入っている読者には、その確信をびしっと固めてくれる黄金の公式ともいえます。
これからの世界は
「現在から発想してこうなるだろう、ではなく、未来を設定して、こうなるのだ、を実現する・・・・・・」
※BIO出版 2021/7/21刊