ちょっと異色なスピ対談。
ばななさんのスピ本はこれ以外にも出ていますが、小説家らしく、不思議人生体験を語る個人的なニュアンスが強く、「みんな、こうすればいいよ」という宇宙法則指南型ではありません。そこのところ、かならずしも、タイトルが予想させるような、読者すべてに役立つ啓発本ではありません。
大野百合子さんはスピ系の翻訳者、紹介者、ティーチャー(いまは主に古神道)としてのお仕事が多いのですが、ばななさんとは、「同じ輪廻ツアーグループに属していて」何世紀にもわたって、いろいろな体験をともにしてきた盟友とのこと。
本書はそのふたりが、チベットで仲良しの少年僧だった話、エジプトでの話、イタリアでの前世思い出話、あるいはほんとうに一緒に旅行に行って出会ったちょっとホラーな話などを、とりとめなく語るという体裁。
宇宙人とのハイブリッド人はすでに存在していて、足がゴムのようにびろーんとのびる、リュックを背負った少年に池袋の駅の階段で会った話(ばなな)。グラストンベリーで、ガーゴイルのようなものに噛まれた話(大野)そのほか不思議な話が茶飲み話のように、当たり前に語られています。
ばななさんのはひたすら不思議で怖い体験談のオンパレードですが、大野さんがときどき、普通人の読者にも役立つヒントなどを入れてくれています。
・「「寂しさ」と「自分を好きでないこと」この二つが揃うと、いつでも悪魔とつながれる」
・「ワークショップの龍神瞑想 とは、イメージの中で自分の家のすべての窓や戸を開け放ち、龍に入ってきてもらう。龍が行かない場所は気がよどんでいる」
・「豊かさの現実化の4ステップ①浄化・心の戦争を祓う②何がほしいか明確にする③真摯さ④疑わない」
それにしてもばななさんはオカルト体験の宝庫。
・グラストンベリーのお店で何だかいやな気を感じたら、そこにウサギの彫刻があった。夜中に、体じゅうに包帯を巻いた太った叔父さんがとびはねているという怖い夢を見てしまった……
・死んだ恋人にいつも引っ張られて自殺願望を持っている男性とつきあっていたとき、四度も事故で死にかけた話
・小さいとき、いつも「エルドン」という金髪碧眼の人が朝、起こしてくれた。
書いてあることの十倍以上の不思議場があたりに広がっているのを感じます。
・一番、あ、と思ったのはブッダ・フィールドでした。法王やダライ・ラマはそのような強い「拡大した意識」の場を持っているので、その人のいる会場に行くだけで、「自分を深く受け入れることができる」。いっぽうひじょうに狭いタイトな意識の人のそばにゆくと、息苦しくなる……ばななさんはダライ・ラマ十四世に会っただけで、チベット僧だったときの前世がすべて成仏した、と言います。
☆こうした体験が日常的なひとたちの世界って、どんな感じ?
ばななさんはバシャールや気の世界にも詳しいし、大野さんはゲリー・ボーネルの弟子。
しかし、それを超えて、いろいろエネルギーや場を感じたりできるので、ふたり独自の体験になっていきます。前世についても、読んでそうなのかーとただ驚くばかり。
ふわーっっとあちこち拾い読みするだけでも、宇宙とのあいだの薄い膜がさらに透明になってゆく感じです。だから即、幸福感、というのではないのですが、ふと気づきがはじけている(そこが小説家の複雑さと面白さ)
☆特にそれがよく見えたのは……ばななさんが無意識に「自分かわいそう感」のエネルギーを持っていて、それでかわいそうに思える自殺願望の人から離れられなかったり、かわいそうな病気がちの犬を買ってきてずっと世話をしたり————
でもその犬が亡くなるときに、「私、全然かわいそうじゃないよ」と訴えてきた。それでばななさんはかわいそうだ、と思ったら、かわいそうになっちゃうんだ、とブレイクスルー。「かわいそうなエネルギーが好きだったんだ」と気づく。(これはかなり響きました。)
私が「かわいそうだから」と思って何かをしたら、それは全部「かわいそうな存在」になってしまう。「そんなことはやるもんじゃないな」「かわいそうなまま生きていくというのはつまらないな」ということに体で気がついたんです。(p.220)
なお大野さんについてはイラストレーターの娘さんが書いた『スピリチュアルかあさん』(メディア・ファクトリー)のシリーズもお勧めです。
※吉本ばなな×大野百合子『そうだ魔法使いになろう!』徳間書店2019.4
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