もはやSFではない————パラレルワールドを股にかけるひとたち『超常戦士ケルマデック』 | hermioneのブログ  かるやかな意識のグリッド(の風)にのる

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バシャーリアン。読むことで意識が変わるようなファンタジーや物語に出会ってゆきたい。

 タイトルからして、SF? 著者の名前も映画『日本沈没』に出てくる深海調査艇の名前。

 でも妄想ではなく実証あり。帯どおり、ほんとうにめちゃくちゃ面白い。

 

 まずフィクションではありません。フィクションぽく、すごいヒーラーとか、魔女とか、超常ナースさんとかが、ライアル・ワトソンや、形態場のシェルドレイクや、ラブロックの理論にいりまじって出てきますが、軽くしてあるぶん、逆に「ほんとう感」がぞくぞく。

 

 ★中身は————

 いま徐々に姿をあらわしつつある最先端のパラレルワールド理論や、進化理論、遺伝子理論、古代のシャーマンや僧が使っていた魔術の現代ヴァージョン、遠隔ヴィジョンヒーリング、類感呪術、精神分析(ミラーニューロンまで出てくる)などなど————の世界を使いこなしている、どうやら実在のひとたちの、超常的日常を描いた本、といえば一番近いのでしょうか。

 

 世界は実は穴だらけ————そしてそこにすうすう通う高次元の風。

 

★シンクロ二シティの第一章では、どちらも暗殺されたケネディとリンカーンのそっくりの背景が例として出てきたり、同じ場が何度もくりかえされる例————これを使った魔術とは、「同じ場を作って、その場を修正すると、問題が消える」

 

 子宮筋腫で困っていた女性が、ブタの子宮を買ってきて壜に入れ、タバコの吸い殻を入れて腐らせ、庭に埋めると、筋腫が消えてしまった例など。

 

 「人間社会と形態共鳴しているソフト」と著者はシンクロニシティを定義しています。タロットカードなどもそうですし、ふと悩みに外から答えが来たり(外応)、場をまねることでエネルギーが発生したり……(応用したくなる刺激満載。)

 

★テレパシーの章では、脳をオンラインにする方法(直線ではなく並列思考にする)。テレパシー・トラウマなどいちいち腑に落ちる例が————

 特にすごい「多次元宇宙」の章では、ピーク・エクスピリエンス(至高体験)、先にゲーム感覚でやってしまえば、その災害が起きなくなる話。いきなりガンや脊椎損傷や骨折が消える例、無数の選択肢があらわれる例、記憶が塗り替えられる例など、パラレルワールドに移行したとしか思われない著者の見聞した体験談。

 

 まぁ、よく、あることだよなあ、というのが著者の平然としたスタンス。そのための魔法の言葉は

「この話はなかったことに」(この話=三次元的な常識)

 

★「ホロン」(ホログラム)では身体感覚と外界の転移や、身体で土地の災害を肩代わりする例(民俗学の出発点「金枝篇」の頃から、土地と王は一体だった!)、霊能者に、ある未来の病気を予言されたが、違う未来の線を作っておいたので、かすめただけでそちらへ流れてしまった話。

「未来のビジョンを選ぶとき、世界は別の世界に移動する」

 また進化は、病気の個体の出現とともに進むという理論。蜂蜜の凄い効果。発達障害はあらたにあらわれた神経系の進化(この章、かなり科学的リサーチがちりばめられています)

 

★LSDではないが、脳内のDMTという物質は時空間を超えられるので、アステカの儀式で意識をとばして未来の新聞を読んできた人の話。

「ホリスティック医療」の章もすごいです。いろいろ独自の理論をたてた医師やヒーラーがいて、それでなぜか効果があがってしまう「俺エネルギー」なるもの。

 遺伝子でさえ起動しているのは2パーセントなので、催眠状態でオンオフを書き換えてしまえる……

 世界にある不定形のものナワールに、トナール(言葉)が形を与えるという原理(文化人類学者カスタネダの「ドン・ファンの教え」)のように、実は(科学に限らずさまざまな学術)理論が立ち上がると、その通りの観測結果が世界をおおってゆく……

 そのため「俺」ジナリティの強い人たちは、かんたんに超常的なヒーリングを起こしてしまう。あっけらかんといろいろな例が出ていて、舌を巻きます。

 じつは通常の医療常識では考えられないことが医療の現場でもちょくちょく起こっていて、それは「Bゾーン」(説明がつかないのでブラインドゾーン)と呼ばれているそうな。

 世界はゆるい……

 

★そして最後の章で特におもしろかったのは、「タルパ」を作る話。これはチベット密教の概念で、思念が作る人工生命体。これには式神、妖怪、見えないお友達なども含まれるそうな。これで天使をこしらえて、息子の病気を治した話。(仏陀も、不動明王、菩薩などをこしらえた?? )

 なお、著者にはタルパを作ってきちんとコントロールするワークがあるそうなのですが、このタルパに似た存在は、リチャード・バートレットの本(『マトリックス・エナジェティクス』)の中にも出てきていました。

https://ameblo.jp/hermione3/entry-12356102978.html

 

 

☆ホントかなーと半分眉唾しながら、読みすすめると、しかしこの空間の中には、確かに読んだことがある先端科学者の理論や、秘教のテクニック、民俗学の呪術とかが海藻のように漂い、ちりばめられているので、あっ、あれがそうか、そうすると全体もこうなっているのかもしれない、というか、つじつまが合うから、そうのような気がする……と、どんどん頭が多元宇宙、そしてバーズビュー(鳥瞰的視野)になっていきます。

 

☆「この世界は何でもあり」、と著者は書いています。

 

 ヒーリングのみをむねとしてワークショップをしている著者ではなく、「新しい世界へと誘う語り部」と帯に書かれています。著者はブログではなく、mixiに日記を連載されているようです。ちょっと読んできました。本と同じ軽い語り口のトーンが肩がこりません。さまざまな学問体系を横断しつつ、新たな世界像を提案し、クリスタルボールも演奏する人らしい……

 

 松久正先生や越智啓子さんレベルの不思議さが、使命とか理想とかのテンションなしにざっくり書かれていて————常識の「たが」や三次元的な固さ(ガチ)をゆるめるのに、かなり強烈に効きます。

 さまざまな願望やヒラメキを、「許可し可能にする」ための美味しいドリンク剤。車中で読んでいたら、乗り過ごしそうになりました。

 

※ケルマデック『あらゆる人生に奇跡を起こす不思議な物語 超常戦士ケルマデック』M.A.P  2018.5