駅前広場に立っていると
ライオンがあらわれて
ぼくに言った

(おれはライオンだぞ)

たしかに ライオンだったから
ライオンだなと思って黙っていた
動物のことよりも
あたまのなかの
二百メートルくらい前方の
さしせまった未来のことを
かんがえねばならなかったのだ

(おい おれはライオンなんだぞ こわくはないのか?)

こわくは
なかったから
ふるえるわけにもいかなかった
ぼくがこわいのは そうだな
いつのまにかこころ朽ちて
野暮なライオンにも
おびえるようになっちゃうこと
おまえの - そうきみのこと
しっぽよりも
もっとながい
ながいものでぐるぐるまきの
コヅツミみたいな男になっちゃうこと

それから それから

なんだろな?

腕組みして
かんがえているうち

歩き疲れて お酒をのんで
駅前広場で途方に暮れてる
いまのぼくがかなしくなって
思わずライオンのあたまをかかえて
泣いてしまった

(おれはライオンで 猛獣なのだが こんな立場になったのははじめてだな)



(辻征夫さん 『ライオン』)



この頃 辻征夫さんという方の詩集に出会っている

最初は 句読点のないスペースを使った表現方法に
ハッ とさせられ
続いて その優しい内容に感動した
心の病を 抱えている俺の心に スーッと 入ってきた



みんな 悩みや 苦しみを抱えてるんだなあ

会社をサボったり

明日を覗こうとして 魂を抜かれてしまったり

ホントに大変だ

でも こんなに優しい目で 人間を見てくれている人も いる

こんな人に なりたい



と 当時の日記に書かれている

当時 辻征夫さん の詩集を探したんだけど
全然見つからなくって
あきらめてしまっていたのだが
日記を読み直してみてよかった

もっかい探して みようかな ??
-裸木となる 太陽と話すため-



アルコール依存症治療専門病院を退院して
DNC(デイナイトケア)センターという中間施設へと入所した 俺は



俳句を勉強 し始めた

精神疾患が認知(考え方)の修正によって 治療出来るのなら
精神疾患とは 考え方の病気と 言えるのではないか と考えていて
自分の考え方を 簡潔にまとめて人に説明する訓練に

俳句は ピッタリだ

と思い 取り組みはじめた



図書館に行き 好みの俳句関連書籍を探したり

歳時記を ハシからハシまで 読み込んだり(なんせ時間は無尽蔵にあった)

下手くそなりに 俳句を作ってみたり



したり していた

新聞に 盗作が投句されていたら すぐに気づくほどまで 俳句好きになっていた



そんな ある 2月のこと

フ と西の空を見上げたら

夕焼けの赤い空をバックに 裸木が たっていて

あんまり キレイだったので 涙が流れた

その時 高野ムツオさんの俳句が 頭をよぎり さらに感動を盛り上げる



-裸木となる 太陽と話すため-



これか ! このことを詠んでいたんだ !!

他の人も 同じことを感じるんだ !

俺は ひとりじゃないんだ !!



といったような 感動だったように 思う



これを見ていた DNCセンターの川代さん(仮名)という先輩が

『うんうん キレイな景色に気付けるようになるんよね』

と優しく声をかけてくれ

『回復しよる証拠よ !!』

と はげましてくれた



川代さん は統合失調症と アルコール依存症との合併症で 大変ご苦労なされている方なのだが
いつも冗談を言って まわりを はげましたりしている

世の中から 社会不適合と烙印を押された者どおしが 寄り添いあって生きる

ホントに不思議な世界が あったもんだ



・・・その後 仕事をし始めてから 俳句が サッパリ
つくれなくなってしまったのだが・・・

あれは あの無尽蔵にあった
ヒマな時間の産物だったの だろうか

新しいことを覚えるハシから
いろんなことを 忘れてしまう

例え どんなことを 忘れようとも
ハミダシモノ達と いたわり合った あの時間だけは いつまでも 忘れないように したい

強く そう思 う
アルコール依存症治療専門病院を退院させてもらい
俺はDNC(デイナイトケア)センターという中間施設に入所した のだが



身元引受人の母と 3週間ぶりに面会した

この日 母は

『小川をイメージして、そこに葉っぱを浮かべて流すっていうやり方なんだけどね』

と いきなり話しはじめた

『その葉っぱの上に、不安要素をひとつずつ乗せて川に流していくんよ。そしたら最後に不安が無くなるの』

不安の解消法を俺に 教えてくれているのか
不安を抱えていて やり切れないと訴えているのか わかりかねたが



なんじゃ そりゃ

やはり 女性だから心気的なものに支配されやすい ということか

理解は難しいが 理解しようとする姿勢が 大切かなあ



と 思い



『不安とは将来に対するネガティブな感情のことで 今 起こってることに対する感情じゃないんだよ』

そう 返して

『何も起こってないのにクヨクヨするなんて おかしいよ』

と 俺は 母に対して助言した なんとも えらそげに



母が 抱えている不安



そんなもの 俺が また飲みだしたら どうしよう
というもの以外 他にあるわけないじゃないか
ふり返ると とても恥ずかしい

が 彼女の不安は 今 現在 なんとか かんとか 裏切られてきている
喧嘩できるのも元気で いてくれてるうちだけだ
せいぜい あのクソババアの不安を裏切り続けていきたいものだ



明後日(2013年2月2日)は いっしょにランチに行く予定です
殺し合いを覚悟したことすらある 二人が いっしょにランチです

いまだに 待ち合わせ場所で いきなり刺されたらどうしよう と不安になることも ありますが
飲んでない姿を見せてこようか と思っていま す