京都旅行最終日(5月16日)は、奈良国立博物館で開催されている「超国宝展」を観に行った。ひとえに有名な「百済観音」(正式には観音菩薩立像」)が見たいがためであった。かつて2020年に法隆寺展が東京国立博物館で開催されることになり、僕はわくわくしていた。しかし、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、開催中止となってしまった。その報に接したとき、もう観られないのではないか、とひどく落胆したものだ。それにしても、何故それほど惹かれるのだろうか。やはり、他の仏像とは、一線を画する姿が、謎に満ち満ちているからだ。
![特別展 超 国宝―祈りのかがやき―|奈良国立博物館|奈良県観光[公式サイト] あをによし なら旅ネット|奈良市|奈良エリア|イベント・体験](https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/contents/images/0000002454/event/trxaap8jzc/660147e31832f4b7407db194795ab790.jpg)
この国宝展示約110件という大規模な奈良国立博物館開館130年記念特別展の開催を知ったのは、京都旅行に出かける、一か月にも満たない時だった。2月に、京都のホテルに宿泊予約する時点では全く知らなかった。観る機会を与えられたこと、本当に神様に御礼を言いたい気分であった。やっぱり無理とは思っても、実現したいという願いは諦めたり、捨ててはいけないのだ。
奈良を訪れるのは、高校の修学旅行以来だから、ほぼ半世紀ぶりだ。どこへ行ったのかも、奈良公園以外定かでない。そのころは、飛鳥時代や奈良時代への関心も薄かった。その程度も、普通の高校生より劣っていたように思う。もし古代史に関心があったら、記憶に残る神社仏閣や仏像があったであろう。
京都から奈良は、JRの快速で1時間もかからない。奈良の駅舎もすっかりモダンになっていた。駅からは市内循環バスに乗る。10分ほど行くと、車窓から、鹿の姿が多数見える。奈良に来たことを実感する。「氷室神社・国立博物館」バス停で下車。ここにも鹿がいた。多くは、芝生内に群がっているのだが、えさをもらおうと通路に出てくる鹿もいる。丸い小さな球のような黒いフンがあちこちに落ちていて、歩くとき、注意しなくてはならない。鹿の発するにおいは特に感じられなかった。
遠くからも、博物館に入場しようとする長い行列が目に入った。200‐300mほどあっただろうか。9時に開館だから、まだ15分ほどしかたっていないのに、この混雑。だが、諦めて並んだところ、意外に早く入場できた。年配の方がやはり多かった。外国人客はそれほど多くはなく、意外だった。順に列をなして観るのだと思っていたら、そうでもなく、比較的人がすくない展示を選ぶことができた。人が多い割には移動し易かった。
入り口の割と近いところに、お目当ての百済観音が展示されていた。初めて見た時の第一印象は、像の高さで、2mを超す、長身であったこと、そして、側面から見て、極めて細身というか痩身なことであった。どうして、こんなにすらりとした姿に造ったのだろう。頭も小さく、八頭身に近い。表情は柔和で、いわゆるarchaic smileをたたえているといわれるが、僕の眼にはわからない。従来は、百済観音と通称されるように、外国伝来とされていたが、師溶剤は像身がクスノキの一木造だが、水瓶と蓮華台が国内産のヒノキであることから、国内で制作されたという。僕には表情がどこか朝鮮人風に見えて仕方がない。作者も不明で、制作に関しても、謎めいている。
実物を観て、本当に良かったと思うのは、印刷物やネットの画像だと、暗く黒々としていて、いかにも古代のものという感じだが、実際は、照明光を浴びているいるせいか、着色が剥げたところなどが、微妙な色合いをしていて、味わい深いのだ。とくに光背の一部がオレンジ色の光彩を帯びるところが、何とも言いつくしがたいほど素晴らしい。しかし公式図録では、像の写真は暗い色調が支配していて、実際に見た時の感動が味わえない。
それにしても、あらゆる角度から、ゆっくりじっくり観られたのは、予想外で本当に嬉しい。もうかなり昔に、東京国立博物館での特別展で、興福寺の阿修羅像を観る機会を得たが、たしか二列に並ばされて、立ち止まることも出来ず、ただ観たことは観た、としか言えない印象が残っている。関西で開催されたから、満足のいくまで観ることができたのではないかと思う。どうも東京の方は、規制が厳しく、観覧者を第一に考える発想が欠如しているように思えてならない。関西は、やはりお客様を大事にする精神が息づいているのだろう。
とにかく、一回では観きれないほど、国宝の連続だった。印象に深く残ったものを、2,3挙げるのみにする。
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金剛八角燈籠火袋羽目板 音楽を奏でる菩薩の表情と身にまとう衣が流れるようになびく
軽やかさ

、重源上人坐像 東大寺蔵。まさに生き写し。これほどリアルな表情をしたものは見たことがない
大日如来像(若き運慶の作。瑞々しい精神にあふれている
出口にちかいところに、今回の「超国宝展」の目玉のひとつ、謎の神宝「七支刀」があり、人が群がっていた。僕はこの神剣のこと、全く知らなかった。それが蔵されている石上(いそのかみ)神宮という日本最古の神社についても全く無知だった。この刀の左右に3本づつ枝のように突き出た形も特異だが、銘文も、日本最古の史料であり、宝物としての価値ははかりしれない。京都から1時間ほどで行けるという石上神宮には、ぜひ参拝したい。
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今回の京都旅行(5月13-16日)の三日目までは、別ブログ「軒端の梅は我を忘れるな」に記しました。
6月3日、昭和の高度成長期日本を代表する大スター、長嶋茂雄氏死去の日に記す。僕も、昭和半ばに生まれた者として、この昭和の巨星が亡くなったのは、言い知れぬ悲しみを覚えます。
