みんなが知っている食品添加物「乳化剤」のもう一つの顔

私たちが美しく健康でいるためには、腸内環境を良好に保つ マイクロバイオームが必要不可欠で、これらを元気な状態に保つには「食物繊維」が鍵であるというお話を先日させて頂きました。(https://goo.gl/DMURJ8 )今日は、腸内の善玉菌を減らし、マイクロバイオームに悪影響を及ぼす要因についてお話したいと思います。この要因についていくつか例を挙げると、抗生物質や砂糖が豊富に使われている食品、精製された炭水化物、加工食品、慢性感染症、ストレスなどがありますが、今年発表された動物実験(出典1)によると、何千種類もの加工食品に使用されているある食品添加物が消化器系の炎症を引き起こし、さらには体重増加やメタボリックシンドロームにも関連しているということが判りました。

その食品添加物とは、最も頻繁に使われているものの一つ、「乳化剤」です。乳化剤は、本来混じり合わないものを均一な状態にする、または賞味期限を延ばす目的で安価なアーモンドミルクや市販の卵焼き、マヨネーズにアイスクリーム、焼き菓子やドレッシン...グなど、驚くほど多くの加工食品に使用されています。化学成分的には界面活性剤と類似しており、乳化剤は腸内に生息する粘液層を破壊し、腸内マイクロバイオームのバランスを乱す働きがあります。

同実験では、乳化剤がメタボリックシンドロームや重度な炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性結腸炎など)の発症率を上げるということも判っています。そして、メタボリックシンドロームは2型糖尿病や心疾患、肝臓病などを引き起こす要因となるのです。特に20世紀半ばから、この炎症性腸疾患とメタボリックシンドロームの発症率は著しい増加傾向にあります。

この実験で乳化剤を与えられていた被験動物の症状として、腸内に軽度の炎症が見られた他、食欲増進や体重増加だけでなく、脂肪沈着を引き起こし、さらには血糖値が乱れるというものがありました。そして、腸内マイクロバイオームのバランスが乱れ、代謝機能に懸念すべき何らかの悪い影響を与えることも明らかになりました。こうしてマイクロバイオームのバランスが乱れると、薄くなった腸内粘液層に病原菌が侵入しやすくなるため、感染症や病気を引き起こしやすくなってしまいます。裏を返せば、厚い粘液層を維持すること、すなわち、健康なマイクロバイオームを維持することが腸官免疫を向上させ、結果として私たちの美と健康の維持に繋がるのです。

もちろん、食べ過ぎ(特に過度に加工されたGI値の高い食品)や睡眠不足、運動不足などの生活要因が肥満やメタボリックシンドロームの主な原因ではありますが、この実験結果は、乳化剤をはじめとする様々な食品添加物もこれらの病気を引き起こす要因となることを示しています。ちなみに、最近行われた動物実験とヒト実験では、人工甘味料(サッカリン、スクラロース、アスパルテームなど)もマイクロバイオームのバランスを乱し、耐糖能障害を引き起こすということも判っています。

私たちが口にしているものすべてが腸内菌のバランスに強く影響しています。そのため、食品添加物を含む食品を食べるということは、腸内菌のバランスを乱し、炎症を起こしやすくしているのだということを覚えておいてください。そして、商品パッケージに書かれているカロリー数ではなく、原材料欄をしっかりと確認するようにしましょう。過度に加工されていたり、添加物が多く使われている食品はなるべく避けることをお勧めします。あなたの健康と明るい将来のために、出来る限りナチュラルな食品を摂るように心がけてください!

Lots of Love, Erica

(出典1) Benoit Chassaing, B., et al., “Dietary emulsifiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome,” Nature, 2015, vol. 519, pp: 92-96.

“混ぜ屋”と呼ばれる食品添加物メーカーがある。混ぜ屋は、添加物の原末(原料)を化学薬品メーカーから仕入れ、それぞれの加工食品に適した食品添加物を製造して販売する業者のこと。東京都内の混ぜ屋の社長に「今、添加物で気になっていることはありますか?」と聞いたところ、社長は即座に「pH調整剤です」と返答した。

「弊社では、コンビニエンスストアチェーンと取引のある製パン業者の注文を受けてpH調整剤を製造していますが、サンドイッチに添加するpH調整剤の量が非常に多いのです。そこで、製パン業者に『もう少しpH調整剤を抑えて使ったほうがいいと思いますよ』と進言したのですが、『コンビニチェーンからの要求ですから』と受け入れられませんでした。pH調整剤は“日持ち向上剤”ともいわれ、食品の腐敗を防ぐ役目があるのですが、あんなに多量に添加すると、食べた人の健康保持に不可欠な腸内細菌の善玉菌まで殺しかねないと、心配しています」

 pH調整剤は食品のpHを弱酸性(60~65)になるよう調整することで、食品の腐敗を抑える添加物。クエン酸、フマル酸、重合リン酸塩など複数の成分が配合されているが、一括して「pH調整剤」と表示される。したがって、消費者は具体的な添加物名がわからない。しかもpH調整剤は、対象食品も使用量も制限がないため、コンビニチェーンや食品メーカーにとって非常に都合のいい添加物となっている。

 通常、食中毒防止に保存料を添加した場合には、「保存料(ソルビン酸カリウム)」などと具体的な使用成分を表示しなければならない。昨今は保存料に発がん性などの不安を感じている消費者が増えており、コンビニや食品メーカーとしては、売り上げに響くので保存料はできるだけ使いたくないのが本音だ。こうした理由から、pH調整剤は添加物メーカーが心配するほどの使用量となっているのだ。

 pH調整剤に使われている添加物の中で、特に問題なのはリン酸塩である。リン酸塩の過剰摂取は、ヒトの腸管から血液中にカルシウムが吸収されるのを妨げてしまう。血液中のカルシウムが不足すると、血液のpHを保つために骨からカルシウムが溶け出す。そのカルシウムが神経細胞内に溜まると、イライラや神経過敏を引き起こすといわれている。いつもイライラしたり、突然キレる人が非常に目立っているのも、リン酸塩の過剰摂取が一因にあるとの指摘も多い。また、リン酸塩はカルシウム以外のミネラル(微量元素)の吸収も阻害する。特に亜鉛を体外に排出してしまう。亜鉛は脳が正常に働くために必要不可欠なミネラルで、亜鉛不足もキレる現象につながっているともいわれている。 健康な食生活を送るには、食品の成分表示欄にリン酸塩の記載がないことを確認してから購入することが大切である。

 しかし、食品メーカーのリン酸塩隠しが巧妙化している。pH調整剤として使用することもその一例だが、ここ数年非常に目立っているのは、「調味料(アミノ酸等)」の中にリン酸塩を使用するケースだ。一般的に、「調味料(アミノ酸等)」と食品表示があれば、グルタミン酸ナトリウムなど複数の化学調味料が含まれているが、最近はこれにリン酸塩を加えることが多くなっている。

「pH調整剤」や「調味料(アミノ酸等)」に隠されたリン酸塩に要注意だ。
(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)