森絵都さん『カラフル』の感想です。


画像お借りしました


1998年に刊行された『カラフル』を加筆修正したものらしいですが、そんなに前の小説とは思えない。今読んでも新しい。思春期の悩みって普遍的なものなのかもしれない。



(あらすじ)


物語は、主人公が死んで魂になり漂ってるところから始まる。

自分が何で死んだのか、何歳で誰だったのか、男か女かももう記憶にない。

そんな主人公の前に天使が現れる。

「おめでとうございます!抽選に当たりました!」


主人公は罪を犯して死んだので、魂は消滅することになる。しかしミッションを達成すれば、晴れて輪廻転生の輪に戻れる、とのこと。


そのミッションは、ランダムに選ばれた死んですぐの人の肉体に入って、ホームステイすること。その過程で自分の前世の罪を思い出すこと。思い出し悔い改めた時点でミッションコンプリート⭐︎


主人公は思い出せないが「生きてきたこと」に疲れていて、消滅してもいいと思っていた。断ろうとしたが断ることが許されない。


ミッションは始まってしまい、目が覚めたら病院のベッドの上。自殺して心臓が止まったばかりの中学生の男の子の身体に入っていた。

さて、主人公はうまくミッションを達成することができるのだろうか?



(感想)


すごく読みやすい文章だった。

設定がファンタジーだし、コミカルタッチ。

しかし読み進めていくにつれて、幸せな家庭だと思ったホームステイ先のあれこれが分かるようになり、入れ物の中学生男子が何を苦に自殺したのか分かるようになる。この過程はまあまあ気が滅入る。

しかし、もっと読み進めるにつれてさらに色々なことが分かってくる。


人間はいろんな面があって、一概にいい悪いは判断できない。

思春期ならではの視野の狭さ、純粋な思い込み、自己嫌悪。どれもみんな一度は通った道ではないか。客観的にみたらもっと気が楽になるのに、当事者はそれが出来ない。


ある驚きが仕掛けられているので、ネタバレできないですが…

何も状況が変わったわけじゃないのに、そのカラクリが判明した瞬間、読者もストーリーの世界にパァッと色がつく体験ができる。

まさに『カラフル』、タイトル通り。鳥肌が立ちました。


読後感としては、憑き物が落ちたみたいに爽やか。

誰でもない自分の人生。

なんでもない普通の人生。

最後まで生き切ろう。悔いがないように。

パッとしない人生でも、尊いものだと心から感じさせてくれる作品に初めて出会いました。素敵な作品でした🥲


子どもたちにもぜひ読んでほしい!と思って勧めたけど、読んでくれんかった💦

もし読まれた方がいたらコメント待ってます⭐︎