――虹幻世界。

620. 獣化したくてもできない洩れ 
 日本て惨事のCG絵師少ないよな

621. 獣化したくてもできない洩れ 
 アニメ大国だから仕方ない

622. 獣化したくてもできない洩れ 
 女の子の獣化CG写真結構好きなんだが

623. 獣化したくてもできない洩れ
 アニマルペイントとかもいいよね

624. 獣化したくてもできない洩れ
 おまいら、誰か特殊メイク習得しろよ

625. 獣化したくてもできない洩れ
 あー、そういえば、来月TFオンリーか

626. 獣化したくてもできない洩れ
 ジューカももう開催600回になるのか、すごいなぁ

627. 獣化したくてもできない洩れ
 おれ・・・ジューカ行けないんだ・・・報告よろしく

628. 獣化したくてもできない洩れ
 何故かジューカにはケモライフの会社も出店するらしいぞ。
 グッズ販売らしいがな

629. 獣化したくてもできない洩れ
 企業が参加するのは珍しいな

630. 獣化したくてもできない洩れ 
 着ぐるみをもふもふしたい

631. 獣化したくてもできない洩れ 
  着ぐるみより、特殊メイクしている人を激写したい

632. 獣化したくてもできない洩れ 
 ジューカの特殊メイクしている人、ほんとすごいよね
 まさに理想的なリアルにいる獣人って感じ

633. 獣化したくてもできない洩れ
 シッポ下げているだけじゃなくて、皮膚にファーうまく貼り付けて、部分TFしてるように見える人も結構滾るお

634. 獣化したくてもできない洩れ 
 東京遠いお……

635. 獣化したくてもできない洩れ
 <速報> ケモライフ、アップデートで変身できる動物の種類が増えるらしい

636. 獣化したくてもできない洩れ 
 ≫635 キタコレ!

637. 獣化したくてもできない洩れ
 あああああジューカ行きたいいいいいいい

638. 獣化したくてもできない洩れ 
 恐怖の大王再来の噂を知っているか?

639. 獣化したくてもできない洩れ
 ノストラダムス2だっけ?

640. 獣化したくてもできない洩れ 
 ≫639 それそれ
 たぶん、信じてもらえないだろうが、俺さ、海でアンモナントみたいな生き物見たんだお・・・

641. 獣化したくてもできない洩れ 
 それがさ、海で泳いでいたら、一匹の魚が急にビクンビクン体震えだして、目の前でアンモナイトに変わったんだわ

642. 獣化したくてもできない洩れ 
 ≫641 それなんてホラー?

643. 獣化したくてもできない洩れ
 ジューカのイベントでアダルトコーナーできないだろうか
 全裸でリアルにTFしているみたいな感じで、特殊メイカーの本気をみたい^p^

644. 獣化したくてもできない洩れ
 ノストラダムス2は恐怖の大王が空からまた降ってくるって話だけだろ?
 それと641の話が噛み合わないんだが 

645. 獣化したくてもできない洩れ
 ≫644 それが再来の前に、現世にあるものを過去にあったものに変えて世界を混沌に落とし入れるらしい

646. 獣化したくてもできない洩れ 
 巷で噂になっているよみがえりなみたいな話だな

647. 獣化したくてもできない洩れ
 ケモライフ楽しすぎてどうにかあちらの世界に行けないものかと

648. 獣化したくてもできない洩れ
 実際に目の前でTFが起こると結構ビビるのな
 これその時の写真 www.123456

649. 獣化したくてもできない洩れ
 写真撮るとか精神的に余裕あんじゃんwwwwwwww

640. 獣化したくてもできない洩れ 
 おー、本物みたいにすげーリアル

651. 獣化したくてもできない洩れ 
 ≫640 本物だお

652. 獣化したくてもできない洩れ 
 おい、おまいら気付いているか、そろそろ獣の数字が近付いている

653. 獣化したくてもできない洩れ
 豚、猫、虎、今度は誰が何になってくれるのかwktk

654. 獣化したくてもできない洩れ 
 クスクスサマ、鹿にしてくだせぇ!

655. 獣化したくてもできない洩れ
 クスクスサマ、豚にしてくだせぇ!

656. 獣化したくてもできない洩れ 
 クスクスサマ、ライオンにしてくだせぇ!

657. 獣化したくてもできない洩れ
 恒例のが始まったな
 ここから一気に加速するぞ!

658. 獣化したくてもできない洩れ 
 クスクスサマ、猫にしてくだせぇ!

659. 獣化したくてもできない洩れ
 クスクスサマ、狼ににしてくだせぇ!

660. 獣化したくてもできない洩れ 
 クスクスサマ、何でもいいから獣人にしてくだせぇ!

661. 獣化したくてもできない洩れ 
 クスクスサマ、鳥にしてくだせぇ!

662. 獣化したくてもできない洩れ
 クスクスサマ、メスの熊にしてくだせぇ! 

663. 獣化したくてもできない洩れ
 クスクスサマ、チーターにしてくだせぇ!

664. 獣化したくてもできない洩れ 
 クスクスサマ、ウシにしてくだせぇ!

665. 獣化したくてもできない洩れ
 クスクスサマ、犬にしてくだせぇ!

666. 獣化したくてもできない洩れ 
 急に掲示板が加速したから何事かとおもた テラワロスwwwww

667. 獣化したくてもできない洩れ
 クスクスサマ、馬にしてくだせぇ!

668. 獣化したくてもできない洩れ 
 クスクスサマ、アメーバにしてくだせぇ!

669. 獣化したくてもできない洩れ
 あれ? もう獣の数字超えてなくね?

670. 獣化したくてもできない洩れ
 まじだ! 今回、クスクスサマ来てくれなかった…なんでだろ

671. 獣化したくてもできない洩れ
 クスクスサマもきっと忙しいのよ

672. 獣化したくてもできない洩れ
 過去から見てきた経験として、666がお願いしなかったから反応がなかったのかも

673. 獣化したくてもできない洩れ
 おいー、666の奴、ちゃんとお願いしろよー

「ねえ、あなた、中国のどこから来たの?」
「教えない」
「んー! それじゃあ、なんで日本に来たの?」
「教えない」
「えー……じゃあじゃあ、家族は?」
「教えない」
「もー! うーん、じゃあ、何歳?」
「教えない」
「うきー! 名前は?」
「教えない」
「ああああん! もうこの子、何にも教えてくれないいいいいー! わからないいいいー!」
 狐塚家に居候を始めた少年は、毎日毎日、めえからの質問攻めを受けていたが、個人情報を晒すことを一切拒否していた。


「まあまあ、めえちゃん、気長に、気長に」
 ナナミが床に転がって暴れ回るめえを宥めた。
 ナナミは結局、めえのことが心配で、親を説得して、しばらく少年を監視する目的で、同じく、めえの家に泊ることにしたのだった。
 家族が増えたと妹のけえは大喜びだった。
「うわあああああー! 名前くらい教えてくれてもいいのにいいいいいー!」
 めえは子供が駄々をこねるように、床に大の字になって、手足をジタバタ動かしている。
 めえの気持ちもわからなくないが、少年はまだ自分たちのことを警戒しているのだろう、とナナミは思った。
 しかし、それも時間の問題だ。
 一緒に暮らしていると綻びが出てくるもの。
 さりげない会話を拾って、少年からこぼれ落ちた情報を集めて繋ぎ合わせていくといいのだ。
「名前くらい教えてよおぉぉぉおぉおお! うわああああ! うわああああ!」
「……」
 めえがジタバタ床で暴れまわる様子を見て、少年は無言になった。


「うわあああ!」
 めえが暴れていると、けえがひょこっと顔を出した。
 けえは楽しそうにめえと一緒になって、床に転がって「うわあああ、うわあああ」と叫び始めた。
 けえはまだ子供なので、めえの事情は知らないが、楽しそうだったので混ざった。
 しかし、声はめえと同様の音量を出して叫ぶので、騒音は二倍。
「……」
 少年は暴れまわる二人に、難しい顔をした。
 さすがにナナミはめえのようにはできないが、微笑ましく二人を見ていた。


「美」
「え?」
 少年が何か短い言葉を言った。
「美」
「めえ?」
「めえじゃない、美。名前だ」
「めえ? 一緒の名前?」
 めえはジタバタを止め、少年の言葉に目を輝かせた。
「美!」
「わーい! めえと同じ名前だー!」
 めえは少年の発音がどうしても「めえ」に聞こえるので、自分と同じ名前だと思い込んで喜んだ。
「……もういいよ、それで……」
「わーい! 超親近感!!!!」
 めえは今度は喜んで床で手足をジタバタさせる。
 けえはめえを真似して楽しそうに、手足をジタバタさせた。
 少年はそれを見て、眉根を寄せた。
 ナナミはそんな光景を見て、優しく見守っていた。


「あ! 漢字は? どんな字を書くの? めえはね、ひらがなでめえって書くんだけど、中国なら漢字でしょ?」
 めえはそう言うと、床から飛び上がって、紙と鉛筆を少年に渡した。
 めえは期待の眼差しでじぃーと少年を見る。
 言葉にしなくても、視線がほら書けよと言わんばかりに差してくる。
「……」
 ここで書かないとまた暴れられると察した少年は、しぶしぶ、紙に「美」と一文字書いた。
「うつくしい……これでめえって呼ぶの?」
「ああ」
「へー……////」
 めえはなんだか照れたような笑みを浮かべる。
「めえ……美しい……へへっ」
 めえは中国で自分の名前が美しいと書くと知って、照れながら喜んだ。
「……」
 めえが照れる様子を見て、少年は複雑な心境だった。
「あ! でもめえが二人もいると呼びにくいなぁ。うーん……年齢わからないけど、たぶん、めえの方がめえ君よりも年上だと思うから、めえ二号ね」
 少年の名前は『めえ二号』になった。


「おい、ちょっと待て!」
「ふにゅ?」
「何でめえ二号なんだよ」
「じゃあ、二号」
「ダメ」
「せかんど」
「英語にしただけで同じじゃないか!」
「えー……だって、名前被っちゃうと……ね?」
「ね? じゃない! 妖魔に名前を決められて、しかも二番目なんて許されない……」
 少年はわなわなと震える。
「二号がダメなの? わがままだなぁ……でも一号は譲れないから……それじゃあ、めえはひらがな表記だから、君はカタカナ表記でメエにしよう!」
「何だよ、カタカナ表記って!!!?」
 めえと被ってしまった少年の名前をめぐり、めえと少年はしばらく口論を続けた。

「んはー! やっぱ空はキモチイイー! 悶々としたら、空を飛ぶに限るわー!」
 路地裏から空へと躍り出たオトハは、空中から町を見下ろして満足げに言った。
「空を飛ぶのは運動不足にも良いんだよね~」
 常に羽を動かしていないと落ちるので、ダイエットにはもってこいだ。
 空を飛びながら尾天の町を見下ろすオトハ。
 風に乗り、ご機嫌でいると、後ろから鳴き声が聞こえてきた。
「カァー! カァー!」
「ん? カラス? アタシに何の用よ?」
 一話のカラスが尾行してくる。
「あ……ははん、これはオスね。アタシと交尾したいのかしら。クスクス」
 オトハは急激に飛ぶスピードを上げた。
「アタシの速さに付いてこられたら、交尾してあげてもいいよ」
「カ……カァー!?」
 オトハのカラスらしからぬ飛翔速度に、カラスは驚いている様子だった。
「クスクス。やっぱ無理か。交尾……最近そういうのやらずに健全な生活しているから何だか久々にムラムラしてき

ちゃったなぁ。そこらへんの適当な男引っ掛けてヤっちゃうか……ん?」
 自由気ままに空を飛ぶオトハは、何かの気配を感じて、尾天山の方を見た。
「〝気〟が……集まっている……」
 オトハは空中で羽ばたきながら驚いた。
 山の頂上に向かって、周囲の気が収束し、細長い柱状のものを形成している。
「あれは……〝セイガイ〟の覚醒と関係があるのかな……」
 凄まじいエネルギーの塊を視たオトハは、体がゾクリとした。
「カァー! カァー!」
 尾天山の気柱に魅入っていると、後ろから再びカラスの鳴き声がした。
「何? アンタ、さっきのカラスね。そんなアタシがいいの?」
「カァー! カァー!」
「ふーん。ナンパしてきて、ヤらせろとは、アンタ、サイテーな男だね。でもまあいいわ、アタシも今、そういう気

分だから、相手をしてあげる。たまには路上でもいいかな。ふふ、アタシは激しいわよ」
「カァー! カァー!」
 オトハとカラスは地面に向かって下りていった。


 日が傾きかけた逢魔ヶ時。
 誰も尾天山の気柱に気付いていなかった……

「あー、生活に不自由がないにしても、待つだっけってのはツライんだよねー」
 オトハの背中の皮膚がいくつも棘状に盛り上がり、盛り上がった棘は無数の細かい羽毛を纏う。
「はぁ……はぁ……変化するのはいつもながら……ふふっ……ゾクゾクする……」
 路地裏でまさか女性が全裸になっているとは誰も思わないだろう。
 オトハは誰かに見つかもするかもしれない緊張感と体の高揚感で変化に酔いしれる。
「はぁはぁ……鵺のばあさんは全く……律儀だよな。狐塚家の者に助けられた恩義を守るって、一体何十世紀前のことだよ……はぁはぁ……」
 ガクガクと震える体。背中から生え始めた羽は、そのままの勢いでお尻の方へ。


「あはっ」
 お尻の皮膚が細長く棘状に伸び、棘の周りを細かい羽毛が覆っていく。
「んいいっ! はぁはぁはぁ……尾が生える時はどうも変な声がでちゃうよね」
 オトハは恍惚した表情で一人呟く。
「うはっ、ヨダレが出てた。ははっ」
 気分が高揚している。鳥への変化は心身ともにトランス状態に陥る。
 太ももがむくむくと著しく太くなる一方、足先は著しく細くなりまるで皮膚が骨に吸収されていくようだ。
「あはははっ……イイ……イイ感じ……あああぁぁぁぁ
 オトハは理性が崩壊しそうなほど笑う。
 それほど人の姿から鳥の姿に変化するのは痛みや苦しみを伴うのだ。


 しかし、その変化の苦痛は慣れる。そしてクセになる。
「ハァハァハァ……上でから先も翼に変えようかな……ふぅ……」
 オトハはブルブル震え、前かがみになった。
 腕のあちこちの皮膚が棘状に伸び、背中同様に羽毛を生やしていく。
 手も同じように皮膚が棘状に伸び、指の感覚が失われる。
 その代わり、腕を軸として幾重にも重なった羽と一体化した感覚がある。
「――っは。はぁ……はぁ……正味、腕から先を翼に変えたら服が脱ぎにくいんだよなぁ。指で摘むってことが

できなくなるから。その点、獣タイプに変化する子らはいいよな。前足でも曲げやすいし、爪で引っ掻くこともできるから……んぐぃ……ああああ足があああああ


 足の指が伸び、そのうち一本が真逆に移動する。
 皮膚が完全に吸収された足の部分は黒色化し、硬くなる。
「んあぁっ! ふひぃ……いぎぃ! あー、この足が……逆に曲がる感覚がまた……」
 バキボキと関節が鳴る。気持ち悪い。
「はぁはぁはぁ……本来の姿に戻るのも楽じゃないな」
 今のオトハの姿は……両腕が翼、下半身は鳥の姿、しかし、体の主パーツはヒトの……まさにハーピーそのものだった。



 オトハは不来方から遣いを受け、地上に出てきた音菜の子孫だ。
「本来の姿っても今はカラスの羽にしているけどね……あーあ、なんで地上の街中には地味な色の鳥しかいない

のかなぁ。不来方にいる鳥だったらもっと綺麗な姿してるのに……」
 オトハはこれから黒色一色の姿になることを少し嫌がっている。
 しかし、そうしないと空を飛んでストレス発散ができない。
 ここは我慢だ。
「ふぅ、それじゃあ、本格的に変化しますかねー」
 オトハはニヤリと笑う。


「はぁ……はぁ……」
 口先が伸び始める。口先が伸びる中で歯と皮膚が一体化し、唇はすぐに消失。
 鼻が突出する皮膚に飲み込まれ、嘴として黒色に染まり効果する。
「ピギャー、あー、あぃー、はぁはぁ……嘴になると……人の言葉がカァー……話しにくいんだ……はぁはぁ」
 素肌のまま露出していた腹側も羽毛に覆われ、ヒトの女性としての胸の膨らみは徐々に消えた。
「ん……カアァァァァああああああんっ!」
 ヒトの喘ぎ声とカラスの鳴き声が混ざり合う。
「顔の周りに羽が生えるのがちょっと気持ち悪い……はふぅー、まあすぐに慣れるんだけどさ」
 オトハの全身は羽毛に覆われた。
 しかし、人の体に鳥のパーツを組み込んだような姿であるので、誰かにこの姿を見られると化物と言われるであろう。


「もうひと踏ん張り……はぁはぁはぁ……」
 体が縮んでいく。少しずつ少しずつ。人の数十分の一のサイズに……
「カァー! カァー! あぁー! あいー! あいうえおー!」
 オトハはすっかり小さくなり、どこからどう見てもカラスにしか見えない。
 発声練習して人の言葉も話せるようにしておく。
 何らかのアクシデントで傷を負った時、人の言葉を話せると何かと役に立つからだ。
「うーん、全身黒一色はやっぱ冴えないなぁ。でもまぁ、目立つのはあたしも避けたいし、飛べたらいいから仕方ないか」 


カラスに変化したオトハは羽を広げ、全身をチェック。
 飛ぶことに問題なしと判断した。
「あっ、服は脱ぎ散らかしたままだった……」
 最近流行りの消失事件のようにパンツやブラジャーが道端に転がっている。
「しまったなぁ。体がこのサイズだと服を集めるのがしんどいけど……このままにしておくわけにもいかない」
 オトハはトテトテと歩いて嘴で服を咥え、一箇所に集めた。
「ふぅー。このサイズだと人間の服って意外に重さあるのよね~。よし、それじゃあ、空でストレス発散だー!」
 オトハは羽をパタパタ羽ばたかせ、路地裏から空へと躍り出た。

「ねえねえ、もう不来方から尾天に出てきて丸二年になるんだけど」
「嗚呼、そうだね」
「〝百八家〟からの接触は全く無いんだけど」
「そうだね」
「まあ、都会は刺激的だから別にいいんだけど、ちょっと飽き始めたっていうか」
「そうだね」
「……。アンタはどう思うのさ。〝セイガイ〟の覚醒は近いんでしょ?」
「私は支持されたことを守るのみです」
「うぅ……はいはい。わかりました。つか、狐塚の家とか調べてあるのに何でこっちから行ったらダメ

なの? こっちから接触した方が早くない?」


「それはダメだ。おおばあ様から言われている。時が来れば巡り合う。それまで待てと」
「うーん……鵺のばあさんはそう言うけどさー……私はそんな気が全くしないのよ」
「待つのです。私にはもうすぐその時が来る予感がする」
「そうかなー……あー、ちょっと気分転換に空飛びたくなった。行ってくる」
「空を飛ぶのはいいけど、都会にいる種類の鳥に変身して。タカやワシは目立ちすぎる」
「わかってるって。カラスとかがいいかな。それじゃあ、ちょっと行ってくる」
「気をつけて」
 オトハはカフェを出て、人気のない路地裏に足を運ぶと、服を脱ぎ、背中から羽を生やし始めた。

「コタロー……その姿は……!?」
「ふー、ふー……羽紋が開いた……聞いたことあるだろ、姉さん。霊獣だよ」
「霊獣!? うそ……」
 血涙を流しながら変化したコタローは人間よりも一回り大きいタヌキの化物になっていた。
 背中には光り輝く痣であった羽紋が浮かんでいる。
 いや、まるで本物の羽であるかのように位置している。
「はぁ……はぁ……この姿は……すごく疲れる……まだ慣れていない……」
「そんな、霊獣なんて、伝説上の生き物の話じゃなかったの・・・」
「違うよ。かつてこの尾天には本当に霊獣がいたんだ。僕ら羽紋を持つ者はみんな霊獣形態になることができる」
「……」


 コタローは息が荒く、今にも倒れそうだ。
「大丈夫?」
「うん……鍛錬……しないと……〝気〟の取り込み方がまだうまくない」
 ポタポタと目から流れ落ちる血涙。
 コヅチはコタローを見ていて痛々しかった。
「僕が霊獣変化できたことには大きな意味がある。大いなる災いが近付いている。早く尾天書紀をすべて解読してみんなに教えないといけない……」
「コタロー……」
 コヅチは思い詰めるコタローの表情に不安が募った。

「よみがえりぃ? なんだそれは?」
「は、はい! 死んだと思われていた行方不明者が最近突然帰還してくる現象のことです」
「生き返ったということか?」
「そうですね……そんな感じです」
「人間を動物にする施設があったり、死人が生き返ったり、この国は一体どうなっているんだ?」
「わ、わかりません!」
 ベテラン刑事は部下からの情報に怒鳴った。
「あ、刑事。あまりにも奇っ怪な情報なだけに慎重に検証を進めるため、報道規制をかけております。他言無用でお願いします」
「何? それじゃあ、国民は知らないというのか?」
「ええ、一部を除いては」
「今も昔も変わらんなぁ。まあ、いい。わかった」


「話は変わりますが刑事。本当に乗り込むつもりですか? 例の施設」
「嗚呼、事実を確かめないことには埒が明かないだろう? 現場は足を動かすんだよ」
「上からの圧力がかかっている極秘施設……」
「上が何らかの形で関わっているのは最早疑いようもない。一体何をしているのか。俺は真実を知りたい」
「……。わ、私は、刑事に付いていきます!」
「ありがとよ」
「場所は関西。研究所と病院が隣り合った施設だ。ビーストなんとか?」
「ビーストトランスです」
「そうそう、それ。俺は英語は苦手なんだよ。その風俗店も怪しいらしいな」
「へい」


「まずは客として足を運んでみるか?」
「は、はい……」
「おめえは若ぇんだ。行ってこい。俺は外から見ている」
「え! 一人は心細いです! 刑事も一緒に……」
「馬鹿野郎! 風俗に男二人でくっつき合ってたら怪しいだろう」
「うっ……で、ですが……」
「大丈夫だ。お前ならうまくやれる。この俺が言うんだ」
「刑事……」
「化けの皮を剥いでやる。乗り込むぞ!」
「りょ、了解です!!」

 ガツガツガツガツ
 腹が減っては戦はできぬ!とばかりに少年は飯にがっついた。
 中国から日本に来て、毎日山篭りでさすがに限界に来ていた。
「よく食べるね~」
「こんだけ食べられると逆に気持ちいい」
 少年のがっつく姿を見て、顔がほころぶめえとナナミ。
 めえとナナミを襲った少年は、力を使い果たし、空腹のために倒れたのであった。
 めえがとりあえず、放っておくのも可哀想だから家に運ぼうという提案で、少年はめえの家に寝かされた。
 夕食時、食卓の匂いに引き寄せられた少年の出現によって、事情を把握。
 少年は好戦的であったが、目の前に出される料理に負け、今に至る。


「まさか妖魔に飯をもらうことになろうとは……」
 少年は文句を言いつつ食べる。
「だ~か~ら~めえ達、妖魔じゃなーい! 何度言ったらわかるの、この子……ふにゅ~」
 めえは少年に言い返す。しかし、その顔は楽しそうだった。
 本気で一戦交えたことで、何か情が芽生えたらしい。
「めえちゃん、本当にこの子、家に泊めるの?」
「んー、家がないって言うし、めえの家、部屋が空いているし」
「危ないよー」
「まあ、大丈夫だよー、飯は食わせたし」
 ひひひと恩を着せる黒めえ。
「何か困ったことがあったらすぐに知らせてね」
「ありがと、ナナミちゃん」
 かくして、少年はめえの家に居候することになった。
「まあ、妖魔がこの家の人に手を出さないか監視するのに好都合だ」
 少年は未だめえが家の人を騙していると思い込んでいる。
 めえはため息を吐いた。

――ドックン ドックン
「みゃあああああ、ああ、あああああああ」

――ドクドクドクドク
「ア、あああ、あああ、亜ああああああああ」

――ドドドドドドドドドドド……
「ああ、ああああああああ、ああああああ」

 高熱にうなされているかのように全身が熱い。
 今まで途切れていた記憶が黄泉返る。
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
 思い出す。記憶、知識、すべて。意識を失って途切れたあの瞬間から。
 私は――

「きゃああああああああああ!」
 近くで女性の叫び声が聞こえた。
「猫……猫が……猫が……人になった……!!!!!」
「はぁ……はぁ……?」
 熱くて苦しくて今は女性の人を相手にしている場合ではない。
 しかし、私は戦場に向かっていたはず。
 ここは一体どこなのだろうか……?




――これが、世界で最初の〝黄泉人〟の確認例であった。




 最近、ネットのオカルトスレで話題になっている現象があった。
 〝よみがえり〟
 既に他界しているはずの――年齢的に生きているとおかしい――人々がこの世に蘇っているというのだ。
 しかし、ニュースでその手の話題は一切取り上げられない。
 それが逆に怪しいというものだった。
 報道規制をかけられているのではないかと。
 最初の事例は熊本。
 第一の事例を中心に、よみがえり現象は世界各地に生じるようになっている。
 最初に書き込んだうp主はどうも警察関係者らしい。
 スレの最初に『今、世界で起きている真実を伝える』と真面目臭いことが書かれていたという。
 初期のスレは何かの圧力により削除されてしまった。
 しかし、バックアップを取っていた者が繰り返し、データを還元するが、うpした瞬間にすぐ消去されるらしい。


 よみがえった人々は〝黄泉人〟と密かに呼ばれるようになった。
 黄泉人には一つ、大きな共通点があった。
 それは過去の何らかの事件により〝行方不明〟と判断が下された者達だった。
 突然消失し、姿を消した者達。いわゆる〝神隠し〟だ。
 スレの住人による考察では、〝タイムスリップ〟したのではないかという見方が強まっている。
 しかし、それならば、何故、現世に飛ばされてきたのか?
 これから一体何が始まるというのか?
 不穏な空気が流れている。
 目撃者らしい証言によると、〝黄泉人〟は動物が変身して人になったという事例もいくつか報告された。
 それが何を意味しているのかは全くわからない。
 本当かどうかもわからない。
 しかし、増えている。
 何かが起ころうとしている……

 カリンを店長の実験所に連れて行ってから数日。
 カリンは大学に姿を見せなくなった。
 メールを送っても、電話をしてみても返事がないのが少し気がかりではある。
「まさか本当に実験材料にされちゃったとか……?」
 コノハは嫌な予感が過ぎった。
 しかし、カリン的にはそれが本望なようも気もするが……
「コノハ、ちょっとちょっと」
「ん? あ、テンリ?」
 大学の講義が終わると、テンリに呼び出された。
 テンリが部室に行こうと言うので、二人で部室に向かう。


「ふぅ~、カリンから何か連絡あった?」
「いやー、それがさっぱり」
「そっかぁ……」
「テンリ……何かあったん?」
「いや……今のところなんもあらへんけど。コノハは獣化する体質残っているし、カリンも融合する体質が戻ったし。となると、わたしもまた他人を獣化させる体質に戻るんかなーって」
「テンリ……」
 コノハとカリンの体質は自分も獣化するデメリットを負うものであるが、テンリの場合は、触れた相手を獣化させても自分は獣化しない。
 言うなれば、相手に迷惑をかけることでしかない。
 今はテンリは他人に触れても何も起きないが、カリンの体質が元に戻ってしまった以上、テンリもまた体質が戻ってしまう可能性はある。
 この前、店長にも似たようなことを言われた。
 テンリはそれが不安なのだろう。
 今は付き合ってる彼氏がいる。ある日突然、その彼氏を獣化させるようなことがあれば、わかっていたとしても、テンリは大きなショックを受けることだろう。


「わたし……怖いんだ。今度、人を獣化させてしまったら、もう二度と他人に触れないかも」
「テンリ……」
 コノハのケースとはまた違う獣化の悩み。
 自分が変身してしまうよりも、相手を変身させてしまう方が精神的負荷は大きいのかもしれない。
 テンリをどう慰めたらいいのか……難しい。
「ん? 壁が剥がれている」
「え? あ、ホントだ」
 この大学も数百年の歴史がある。建物にボロが出ていてもおかしくはない。
「あれ? 剥がれたところに何か書いてある」
「え?」
「狐塚日和、狸居アキ……? これって……」
「めえとコタローくんと同じ苗字やね……」
 テンリの気を逸らすことができたのはいいが、気になるものが出てきた。
「知り合い……かな? 剥がれた壁の中から出てきたってことは昔の人?」
「そうかも。あんまりない苗字だから先祖の人とか?」
「今度会ったら聞いてみよう。そういえば、最近、めえんとこも遊びに行っていないね」
「せやなー」
 めえもカリンも今はどうしているのだろうか?