「あわわわわ、はわわわわわ」
あまりにも驚き過ぎて口が震えてしまう。
ある意味、動物に初めて変身した時以上のインパクトがあった。
「うち……今まで女やと思ってたんやけど……実は男やったみたい。ほら、オリンピック選手とかで体調べると実は男だったっていうのがたまにあるやん。まさかこの年になって出てくるとは思わなんだけど」
カリンは顔を赤らめてそんなことを言う。
「ま、まぢか……い、いや、嘘やろ!?」
コノハは目の前の光景が信じられない。
「だだ、だだだだ第一、ソレ、に、人間のとちゃうやん!!」
カリンの股間にあるブツは明らかに動物のソレだった。どこかで見た記憶がある……イヌっぽい。
「そんなんどうでもええやん。生えてきたもんはしゃーないで」
「全然良くないわー! 新年早々R-18やないかー!」
「人間じゃないから全く問題無いで!!!」
「嘘や!! こんなカオス設定でいいんですか! いいんですかー!!!」
両者混乱してそんな内なる話をぶちまけた。
「コノハ……うち、我慢でけへん……」
「はい?」
「お、男の人ってその……愛する女の人の……入れたくなるもんやろ?」
「はぁ!?」
なんか違う方向にがんばっている。
明らかに余計な知識入れすぎだ。エロ漫画の読み過ぎ! 危険危険!
「コノハも……脱いでやー」
「阿呆!! 何で脱がなあかんねん!!」
とにかくここから抜け出さなければ……
「うぐぅ……」
体はいつでも変身していいよ言わんばかりに疼いている。
体の疼きに身を委ねてもいいだろうか?
抗癌獣化剤は今、持っていない。
暴走してキメラ化してしまったら自分もどうなるかわからない……
究極の選択肢。変身するか、しないか。
まさか大学の女子トイレでこんな選択を迫られることになろうとは。
しかも腐れ縁の幼馴染が敵になるなぞ……
「う、うちはいつでもかまへん。コノハ、さぁ、早くぅー」
カリンさんはヤル気満々のご様子。
コノハは混乱して激しく泣きたかった。
カリンが一歩一歩にじり寄ってくる。
コノハは下がるが、広い個室と言えど、すぐに壁に追い詰められてしまう。
興奮しているのか、カリンのソレはビンビンに元気になっていた。
「ひいいいぃぃぃぃー」
恐怖以外の何物でもない。B級エロホラーでさえなさそうなこの展開。
ドクン。
体がざわつく。抗癌獣化剤で押さえていた第三遺伝子が活性化している……
どうすれば……
「コノハ、一つになろう……」
カリンが迫る。長身のカリンはこの場で見ると、本当に大男のように見えた。
「へ、変身はやっぱあかん! こ、これでもくらえ!!!」
コノハは変身しない方の選択を選んだ。
そして、究極の手段として、カリンのケモチンを両手で思いっ切り掴んで力の限り握った!!
「ふぎゃん!!」
不意を突かれたカリンは初めての刺激に体が痺れた。
前のめりになり、はぁはぁと痛みを堪える。
「うえぇぇぇ、気持ち悪ぅ……で、でも、い、今や!」
生々しい感触があった。しかし、すぐに思考を切り替えた。
コノハは小さな体を生かしてカリンの横を擦り抜け、個室の鍵を開けて女子トイレから涙ながらに脱走した。
幸いにもトイレには誰もいなかった。
「テンリ、テンリ! ヘルプ! まぢヘルプっす!」
心で思っていることがそのまま口から出る。
「待~てぇ~コぉ~ノぉ~ハぁ~!」
無駄に身体能力が高いカリン。すぐに追ってきた。ホラー、まじホラー。ズボンはちゃんと穿いているがやっぱりもっこりしてる!
「いやああぁぁぁー、来んといてぇぇぇー!」
逃げるコノハ。追うカリン。
今度捕まったら本格的にヤヴァイ気がする。二人きりは危険だ。少なくとも第三者が必要だ。
コノハは必死になって大学内を逃げた。すでに第二講義の時間になっていたので人は少ないのは幸いだ。
「や~ら~せ~て~や~」
「っく、処女のくせして……いや、童貞? と、とにかく生意気な……」
とか心で思ってみたが、そんなことをカリンに言っても何も効果がないことはすぐに察した。
「あかん。急に走って疲れた……熱い……」
熱い。体が熱い。これは良くない感じがする。
「うわっ、腕の毛が濃くなってる……」
コノハの獣化が始まってしまった。
早く部室に置いてある抗癌獣化剤を取りに行かねば。
「ははっ、追い付いた。コノハ、一発でええから」
コノハが止まって呼吸を整えていると、カリンが背後に迫っていた。
「何エロ男っぽいこと言うてるねん! このドM! ほんまに男言うんやったら、ヘンタイにはこれをお見舞いや!」
コノハはくるりと反転して、カリンの股間を思いっきり蹴った。
「●×△◆★@」
カリンはコノハの一撃を喰らい、身動きが取れなくなった。
「わ、悪いのはそっちやからなー」
カリンはうずくまっている。
逆にコノハは罪悪感を感じてしまったが、尻尾が出てきそうな気配がしたので、とにかく部室に急いだ。