一人で女の子が女の子に密接しているのは怪しいが、テンリと二人で、カリンに手錠

をしているのを周囲の人にバレないように隠しながらなんとか移動することができた。
「ちょうどいいからまたお薬もらっておこうかな」
 コノハそう言って、田舎には不釣り合いな大きな建物の中に入っていく。
「わたしは久しぶりに来たなぁ……コノハの変身が止まらなくなったあの時以来やね」
 そう、ここは人里離れた山の中に建てられたビーストトランスの病院兼研究所。動物

変身薬の開発とその開発過程で実験中の人達や治療中の人達がいる。
 二年前、第三遺伝子が癌化して変身が止まらなくなったコノハはここに入院していた

のだ。


 外装はわざと廃墟的な装飾をしているが、中は最新の医療機器が揃う高レベルな医療

機関である。きれい。
「えーっと、今日は店長、ここにいるはずだから……」
 コノハは何度も来ているが、未だに迷いそうになる。
「うぅ……まぢで、うち、連れて行かれるんか……」
 珍しくカリンが蒼褪めている。観念したのだろうか?
「コノハ……実験所はまぢでヤバいって……」
 カリンが訴えかけるような目で見つめてくる。
 確かに、風俗店の雰囲気と違って、ここは狂気めいた雰囲気がある。動物変身薬の安

全性を試すため、世界中から犯罪者達を集め、新薬の実験に使っているとか。社会的に

必要でなくなった犯罪者達はどう扱われようが世間は気にしない。
 しかし、風俗店やバイト先のアニマル喫茶に行ったところで、カリンがああなった原

因を調べるにはここに来ると考えられるので、ダイレクトに連れてきた方が手間が省け

る。


「カリンはドMやろ。何されてもええやん」
「がーん。コノハぁ……」
「あはは、普段からロクなことしてないからコノハに見捨てられるねん」
 テンリがクスクス笑う。カリンがそれに対して吠えていた。
 いつもどおりと言えばいつもどおり。


「緊急! 緊急! 道を開けて下さい!!」
 コノハ達が病院のエントランスで話していたら、救急隊のような人たちが突然エント

ランスに現れた。
 担架に誰か乗せられている。
「!!?」
 ソレは異形だった。獣化途中と言うにはあまりにも複雑すぎる姿。ムネがいくつも膨

らんでいたことから、女性ということはわかった。
「な、何……ヒト……?」
 テンリも驚いている。今まで自分たちが見てきた変身とは種類が違う。ヒトと動物が

モザイク状に組み合わさったような……そんな感じ。運ばれてきた人に対していう言葉

ではないが、グロかった。
「トラ……」
 カリンが呟いた。そう、変身した部位はトラの体のようだった。
 病院内でだったら、まだわかる。しかし、女性は外から運ばれてきた。
 一体何があったというのか……?
「実験中の犯罪者が逃げた?」
 ありえそうで怖い。噂は噂なので真偽はわからない。
 余計なことには首を突っ込まない方がいいだろう。
「……」
 三人でしばし呆然としてしまった。


「あれ? 君らはいつかの……?」
 コノハ達が呆然としていると、男性の声がした。
「あ!」
 コノハ達の前に見たことある四人衆がいた。
「いやはや、あの時はエッチな研修に付き合ってもらって悪かったね」
 そうニコニコ優しいスマイルを送ってくるのは……確かエツジだ。
「おうおう、そういえば、こんな子らいたな」
 この中で一番雄々しいのは……確かキョウ。
「懐かしい、また会うとは」
 インチキマジシャン的な人は……確かリー。
「あ、どもども。僕はたまに会うよね、アニマル喫茶の方で」
 最後の中性的な男の娘はユウ。ユウは時々、アニマル喫茶に派遣されてくる。
「なん……だと……おい、ユウ。何で黙ってたんだ!」
 リーがユウに怒鳴りかけた。
「え……黙っていたも何も関係ないじゃないですかー」
「おい、関係ないってどういう意味だよ」
「言葉のまんまです。じゃあ、話したらどうするんですか?」
「……いや、それは、その……ああ、もういいっ」


 ユウは精神的に強くなっていた。
 当時、ユウはビーストトランスのお客としてやって来たのに、男性従業員の人数が足

らないからとこの三人組に拉致され……結局、その後、ビーストトランスに就職するこ

とになったらしい。何でも、草食性男子好きな女性客から人気があるのだとか。
「僕は風俗店の方は向いてないですよー、女の子の裸をみちゃうと今でも緊張する。ア

ニマル喫茶の方で動物としてお客さんにもふもふされる方が楽しい」
「何、腑抜けたこと言ってんだよ、男ならズバーッと女を愉しめてやれ」
「ほほー、でも僕、リーさんより指名ランク上ですからね」
「ぐぬ……」
 リーとユウの軽いからかい合いで、この四人は今も当時も変わっていないのがなんと

なくわかった。


「君らがまだここと関わり合いを持っていたとはちょっと驚いたね……ああ、えーっと

、カリンちゃんは根っからのTFスキだったかな」
 エツジがニコリと微笑む。紳士~。
「それにしてもここを知っているということは、うちらの関係者か?」
 キョウは鋭い質問をしてきた。
 二人の話からすると、コノハがここで入院していたことはこの人たちは知らないよう

だった。だったら、話すべきではない。
「えーっと、そうです。ユウさんも知ってのとおり、私達、アニマル喫茶でバイトして

いるので……その関係で……」
「あー、なるほどね。あっちはあっちでそれなりに人気らしいね」
 コノハは適当に言ってみたのだが、何とか誤魔化せたようだった。
「エツジ、そろそろ行こうぜ。俺らも店に戻らないと」
「ああ、そうだね。それじゃあ、また会う機会があったら」
 キョウの言葉に頷き、エツジがコノハ達に別れの挨拶をした。
「また機会があれば!」
「また今度ねー」
 リー、ユウも挨拶をして、病院の外に出ていく。
 コノハはホッとした。
「世間は狭いなー。んで、コノハ、場所はわかるん?」
「あ、うん、たぶん大丈夫。せやな、テンリはここ来るの久々やもんな」
「……うぅ……」
 カリンは何を考えているのか妙に大人しかった。

この世界における生命の3タイプ。


純血・・・地球上で進化を繰り返し、特定の種の形態に固定されて遺伝的変化が起こらなくなった究極体。 ガイア・ダイジェストをも拒絶する。


混血(未発現)・・・現地球で一般的に生息する種。様々な種の遺伝子プールを保有しつつも未発現のまま生涯を終える。


混血(発現)・・・現地球で一般的に生息する種。何らかの刺激で他種の形態に変身することが可能。動物に変身するヒト、他種に変身する動物、ヒトに変身する動物はこれに該当する。


他血(動物限定)・・・純血や混血と同じ体組成をしているが、原始地球での進化過程において、核とミトコンドリア以外の第三遺伝子(総称)を獲得した種。第三遺伝子が眠ったまま生涯を終える個体が多いが、何らかの刺激により、特異体質に変わることがある。他血には純血と混血(発現・未発現)の両タイプがいる。

「大変です! また同じような事件が」
「! 大きな声を出すな。どこで聞かれているのかわからないだろ」
「ハッ! そうでした。すみません」
「外に出るか」
 ベテラン刑事の部下が慌ててオフィスに入って来たので、それを制して外に出た。例の事件となると、ブタ化した女と関連性のあるものだろうか。ベテラン刑事は信頼できる部下にはこの件を話し、極秘に調査を行っていた。


「何があった?」
「へい、また今川優奈と同じような事件が発生したんです。今度は男が猫化したみたいです。私は直接見ていません。上の話を立ち聞きしました。田中秀雄、三十歳。サラリーマンです。自宅のパソコンでインターネットをしていたところ、急に体が熱くなり始め、みるみる間に猫化してしまったそうです。身元は生体チップから判明。彼もまた前回同様某掲示板に描き込んでいたみたいです。第一発見者&通報者は田中の恋人。仕事から変えると、田中が体の一部が猫になった状態で横たわっていたそうです。会話は可能。」
 二件起きたということは、偶然に起こった事件ではない可能性が高い。上が情報を隠そうとしていることからも、何か嫌なニオイがプンプンする。


「よくやった。ふーむ……共通点は掲示板か」
 ネットサーフィンはあまりしない主義だが、その掲示板をやはり張る必要性があるかもしれない。
「他に情報は?」
「はい、ブタ化した女と同じ病院に搬送されたそうです」
「!」
 同じ病院。ピンと来た。怪しい。前回、刑事が立ち会ってブタ化した女を保護したが、その後、すぐに上層部の者がやってきて、どこの病院に送られたのかは曖昧にされたままだった。
「その病院、怪しいな。被害者の搬送された病院と掲示板の張り込みをしていてくれないか?」
「わかりました」


 署内の事件簿を検索していると、もう一つ気掛かりな事件をいくつか見付けた。それは服を残して消失する人々だ。もし、もし仮に、その消失した人々が小さな動物に変身していたとしたら、衣類をその場に脱ぎ捨てて消え去ることが可能ではないか……
 現実的ではないが、既に体の一部が動物化するという非現実的な症例を目の当たりにしている。固い頭を引っ叩いて拡大解釈する必要がありそうだ。
「一体、何が起きているんだ……」
 ベテラン刑事を言い知れぬ嫌な予感が襲った。

「『月狂の赤狼』に完敗です。逃げられました」
 事情徴集をしていた店長は、開口一番の一言に衝撃を受けた。
「な……死亡者は?」
「負傷者はありますが、死亡者は出ていません」
「それは奇跡だな……どうしてそんな状況に?」
「人獣ハンティング中、赤狼の方から攻撃を受けました」
「くそっ、昨夜は満月だったのか……」


 事の発端は虎女がいるという情報が入ってからだった。この店が一番現場に近いとのことで、その虎女の真偽を確かめて来てくれと本店から連絡があった。店の男性従業員にと動物変身薬、小型麻酔銃を備えて現場に向かうと、情報通りの虎女がいた。人と虎とでは虎の方に近い形態だが、雌虎にしては体が細く、乳房も一対しかなく、髪も生えていた。虎女は傷付いていた。麻酔銃を打ち込んで捕獲する前に会話を試みたところ、ビーストトランス従業員ということが判明。近くに完全獣化して倒れている仲間がいるとのことで、急いで専属の病院に送る形になった。


「ハンティング実行中なのは聞いていたが、範囲は?」
「近畿合全域です」
「赤狼はまだ近畿にいるのか」
「おそらくは……」
「……攻撃はどんな感じで?」
「夜中に嗅覚だけ獣化させて、ターゲットを捜索中、子供の男の子がどこからともなく現れ、少し会話し、絵に返そうとした時に半人化しました」
「聞いていたとおりだな。赤狼はショタに化けるのを好む人獣だ。奴は伝承になぞらえて満月の夜だけ人を襲う。まさに狼男そのものだ。日本の狼は復活種しかいないから海外からやってきたという話を聞いた覚えがある。人獣は厄介だ。完全人化すると俺達と全く区別が付かない。それに特定の人間の姿になるのは稀で、様々な姿に化けるものが多い」


「不意を付かれて噛み付かれたり、爪で引き裂かれたりしました。あまりに突然のことだったので、動物変身薬を飲んでいたとは言え、反応が遅れました。最悪、死を覚悟して交戦しましたが、ビーストトランスの者と知ると、「捕まえられるものなら俺を捕まえてみろ」と言葉を残して逃走していきました」
「くそっ、完全に舐められているな……赤狼は数十年前から捕獲できていないレベル5以上の人獣だ。」
「数十年前?」


「そう、人獣は俺達が獣化するのと逆で、寿命が通常の獣より遥かに延びるんだ。九尾の狐もその類。特にレベル5以上は同種の仲間を操ることができる。まさに妖怪だよ」
「……私のミスです。いつ何が起こるかわからないのに」
「自分を攻めることは無い。人獣は突如出現する神出鬼没な奴らだ。俺達も手を焼いている。しかし、全員が生きていることが奇跡だ。聞いた話では男は引き裂かれて食べられ、女は犯されるという」
「……」
「ああ、すまんすまん。君は風俗の担当ではなく、捕獲の担当だったな」


「ああ、いえ……それより、薬の効果は切れているはずなのに、八割獣化したまま元に戻らない気がするのですが」
「しばらくは元に戻らないかもしれないね……体がショックを受けて変身が止まってしまったんだ。変身中に体を傷付けられると動物変身薬が変に働いて元に戻れなくなることがある。原因はよくわからないけど、今までにも何人か見たことがある。でも心配はいらない。全員、傷の治療後に元の姿に戻っている。獣化したままの四肢じゃ物を食べたり持ったりするのは不便だろうけど、傷が治るまで我慢してほしい。やりたいことがあるのにできない場合はナースコールで呼ぶといい」
「わかりました」
 店長が病院のベッドで話していると、扉を叩く音がした。


 コヅチは深夜、こっそりと練習をしていた。自作のタヌキ耳とシッポを体に見に付けて、鏡を見て顔をタヌキのようにメイクする。体を倒して四つん這いになり、ケモノになるイメージを膨らませる。
「きゅぅ」
 鳴いてみる。しかし、それは本物のタヌキからはほど遠かった。
「……なんで……」


 コヅチはタヌキに変身するコタローの姉。しかし、タヌキに変身することはできない。しかし、一度だけタヌキに変身できたことがあった。
 自分にも変身する能力がある。コヅチはそう確信した。変身能力がもっと自発的に活用できれば、コタローの心に近付ける……
 しかし、泣いても笑っても変身できたのは一度だけ。しかも、タヌキになったその時に限って、めえがコタローに告白を見せつけたのだ。コヅチはタヌキになって人間の言葉がしゃべられなかった。憎きめえ。可愛い弟を自分のものにして……


「姉さん……」
 みんな寝ていると思っていたものの、コタローの声が後ろからした。
「姉さん、またそんなことをやっているのか」
「そ、そんなことって、な、何よ。わ、わたしだって、へ、変身できるんだから」
 コヅチはタヌキのフェイスメイク、コスプレをしたような状態を見られて急激に恥ずかしくなった。
「できないよ。姉さんの背中には生まれた時から『羽紋』が無い」
「……」
「姉さんももういい歳だろ、恋人作りなよ」


な! ななななななななに言って――!!」
 コヅチは予期せぬことを指摘されて赤面した。
「姉さんの気持ちは嬉しい、けど、僕はもうめえと付き合っているんだ」



――僕はもうめえと付き合っているんだ


――めえと付き合っているんだ


――付き合っているんだ



 コヅチの頭の中でコタローの言葉は響き渡った。かなり強い衝撃を受けた。
「……コタローは……コタローは泣き虫で……ひっく……弱虫で……うぅ……」
「昔の話だろ」
「私が、私が守ってあげないとダメだった、ダメだったんだから!!
 コヅチは泣いていた。泣いてメイクしたタヌキフェイスがぐちゃぐちゃになる。
「大丈夫。僕はもう大きくなった。姉さんに守ってもらわなくても大丈夫」
「コタロぉ……ぐすっ、ぐすっ……いかないで……」
 コヅチが泣きながらコタローに縋り付いてもコタローは顔を横に振った。
「僕はめえが好きなんだ」


うわあぁぁぁーん……
 聞きたくない言葉を面と向かって言われ、大声で泣くしかなかった。
「でも、姉さんが嫌いになったわけじゃない。姉さんは姉さんだ。今度は僕が姉さんを守る番だ」
「こたろぉ……えぐっ、うぇぐっ」
 コタローは泣いているコヅチに向かって言った。
「僕ら憑きモノはもう十年も生きられない」
「そんなの迷信よぉ……」
「迷信ならいいんだけど、どうも迷信じゃないみたいなんだ」
「何で……そうわかるの?」
「僕が書庫に籠っている理由は、前に姉さんに話しただろ。誰にも、めえにも言わない約束だって」
「う、うん……」
「僕は『尾天書紀』から学んだ。見せてあげるよ。これも誰にも言わない約束」
「え……見せる……?」
 コヅチはコタローの言っている意味がわからない。
「憑きモノの本当の姿を――」
 そう言ったコタローの瞳には、血の涙が流れていた。

「――めえ」
 コタローはふとめえの事を思い浮かべた。
 何か、直観的なようなものを感じた。
 何故か嫌な予感がした。
 めえとはもう一年以上逢っていない。
 連絡も取っていない。
 めえは今頃、ものすごく拗ねているはずだ。
 めえと逢わないと決めたのは自分からだった。
 適当な口合わせをするようにめえの姉のねえにも頼んでいる。


 嫌いになった訳ではない。
 こうしなければならない理由ができてしまったからだ。
 これはめえを救うためでもあり、自らの一族を救うためでもある。
 事の発端は、一族の本家である××の屋敷掃除に駆り出されたことだった。
 コタローは書庫を担当し、『尾天書紀』という昔の本を偶然手にしたことから始まった。
 何となくパラパラとページをめくると、不思議なことが起こった。
 書かれている文字は古語で読めないのだが、それと重なるように赤い文字が浮き出ているように視えた。
 気のせいかと何度もまばたきして本をめくってみたが、紛れもない事実だった。
 近くにねえがいたので、見てもらうと、ねえには視えなかった。


 しかし、同じ『羽紋』を持つ獅子尾はコタローと同じく赤い文字が浮き出て視えた。
 その後、何人かに見てもらったところ、どうもこの浮き出る赤い文字は、動物に変身する体質を余儀なくされた『羽紋』を背中に宿す憑きモノの子らしか視えないということがわかった。

 他のみんなは不思議がったが古くて厚い本なので読もうとは思わなかった。
 しかし、コタローはこの不思議な文字の内容に興味が湧いた。
『尾天書紀』は全部で108冊あった。


 赤い文字も古語で書かれている。
 最初はコタローもわからなかったが、古文書翻訳を片手に読み始めると、驚くべき内容が書かれていた。
『尾天書紀』自体はこの地、尾天に関する逸話、神話、寓話など、主にこの地にまつわる動物に変身する人々の物語がたくさん収められている。
 しかし、それと重なって浮き出ている赤い文字の内容は異なった。


 赤い文字は『羽紋』を持つ者についての情報が記されていたのである。
 コタローは過去からのメッセージのようなことを感じた。

 赤い文字は本自体の文字と重なっていて読み辛い。
 古文も高校で適当に授業を受けていただけだったので、赤い文字の内容を正確に理解するには時間がかかる。


 一族の噂では、『羽紋』を持つ者は三十年で寿命が尽きると言われている。
 もしこれが本当なのだとすると、もう自分達の寿命は十年を切っていることになる。
 しかし、もしかしたらこの赤い文字の内容にその打開策が記されているかもしれない……


『尾天書紀』は108冊ある。
 一刻も早く読み解かねばならない。
 そう感じたその日から、コタローは自宅の書庫に籠り始めた。

「コタローくん、どう、調子は? あまり無理矢理ならないようにね」


「はい。大丈夫です。ありがとうございます。ねえさん」
 コタローは屋敷掃除で現場に居合わせたねえにはすべて内容を伝えている。
 しかし、他の一族の者には一切話していない。
 本家から本を持ちだしたとなると、何と言われるかわからない。
「めえは元気ですか?」
「うん、元気元気。コタローくんに逢いたいと毎日うるさいわ」
 ねえはそう言って笑ってから少し顔を曇らせた。
「何かありましたか?」
 コタローはすぐにねえの異変に気付いた。


「うん……最近ね、めえを付け狙う変な人をいてね」
「変な人?」
「わたしもめえから聞いただけでよくわからないんだけど……外国の少年が、短剣を持ってめえを襲ったんだって」
「! 本当ですか?
「お、落ち着いてコタローくん。めえには家の外に出ないようにきつーく言ってあるし、その一件以来、その少年は現れていないから」
「……。そうですか……」
「あと、もう一つ……」
 ねえがまた躊躇ったような顔をした。


「言って下さい」
「……めえと鹿目家のななみちゃんが『血涙』を流したの」
「!!?」
 コタローはねえの予期せぬ言葉に驚いた。
「そんな……じゃあ、『鬼界』は視えているんですか?」
「ううん。そこまでハッキリとは視えていないみたい。でも……『魔刻』の時が近付いているのかもしれないわ……」
「『全ての性を超え、全ての生を越え、この星のあらゆる時代から生命がよみがえり、一つになる』」
「それは?」
鬼文字で書かれていました。あ、この赤く浮き出ている文字、鬼文字って言うらしいです……って視えないんでしたよね」
「鬼……か。わたしも視えたら読み解くの手伝ってあげるんだけどね。めえと一緒の方がコタローくんは楽しいかもしれないけど、あの子、そういうの読むの苦手だから。邪魔するくらいならコタローくん一人で集中してやった方が良さそうだからね。でも、めえに逢いたくなったらいつでも逢いに来てくれていいんだからね」
「ありがとうございます。でも、僕はこれを読み終えるまでめえとは逢いません。早く読まないと……『羽紋』のステージがアップしている。嗚呼、他の『羽紋』所持者も手伝ってくれたらいいのに、でもあいつらはこういう作業絶対興味ないからなぁ……」
「ふふ、そうね。憑きモノの子は、みんな体育系が多いから。本が好きで真面目なのはコタローくんくらいだし。あまり根を詰めないようにがんばって」
「はい、ありがとうございます」
 コタローはねえにめえの姿を重ねて、少し元気になった。

 ミャンは犬のふぐりにトラウマを持っていた。
 何故なら子供の頃、親戚のはじめがミャンに行為を持ち、犬に変身しては無邪気に全裸になってミャンを追いかけ回していた。
 ミャンが猫に変身しても犬の方が速いため、ミャンはいつもはじめに必ず捕まってしまう。
 はじめが無邪気にミャンに飛びつくと、自然とはじめのtnkが目に入る。
 犬猫姿でぺろぺろされたりした時には、tnkが顔に当たる時もあった。
 物心が付き始めた時から、はじめのソレは恥ずかしくて見るのが嫌だった。
 はじめがミャンにアタックし続けた結果、大人しい性格だったミャンはつんつんした性格に育ってしまった。
 子供の頃に植え付けられたトラウマはなかなか拭えず、今でも犬のふぐりを見ると変にドキッとしてしまうのだ……


「うにゃぁ……」
「あ、ミャンちゃん起きた。大丈夫?」
 コノハが自分の着ていた服の中でゴソゴソ動き始めたミャンを心配して聞いた。
「あれ……私は何を……」
 ミャンは何で意志を失っていたのか記憶が抜けていた。
「コノハちゃん、カリンちゃんのソレを隠して。ミャンちゃん、犬の……は苦手だから」
「えっ? あ、う、うん」
「いやーん////」
「カリンは少し黙っとき!」
 コノハはカリンのパンツとズボンを上げた。
「それにしても、カリンちゃんの話を聞いてもよくわからないねー」
 サキが眉根を顰めて困った顔をした。もう人の姿に戻って服も着ている。
「うん……でも、このままはいろいろ問題が……夏は泊まりで実習とかあるし……」
 コノハはカリンが実習所で、今の状態のままで普通に女風呂に入ろうとしている姿を思い浮かべて戦慄した。
「うちはもう、男なら男で……///// その時はコノハ……」
「イヤ」
「ガーン! 心に会心の一撃!」


 カリン本人はそれほど悩んでいないようだ。人間の男性器は恥ずかしがる癖に、動物のはそうでもないらしい。
「あれ、えっと、何で私は猫になっちゃってるんだっけ?」
 ミャンは記憶が抜け落ちている。
 サキはコノハに目配せして、思い出させないようにしようという雰囲気になった。
「あ、えっと、確か、今日はまだ変身していないから部室で変身するーって変身してて、眠くなって今起きた感じかな、あはは」
「そ、そうそう、眠い眠い言ってたよ」
「あれ……そうだったっけ……?」
 ミャンは記憶を探るが記憶は不明瞭だった。

「うーん……私、とりあえずカリンをビーストトランスに連れて行くわ」
「えっと、いつもお薬もらっているところだっけ?」
「そうそう」
 コノハ達三人は憑きモノの子らにビーストトランスについての詳しい話はしていない。
 興味を持たれると双方にとってあまりよくないような気がしていた。
「そうだね、変身を抑える薬が開発できるところなら、カリンちゃんのソレも治す手段があるかも」
 サキがうんうん頷いた。


「ソレ?」
 ミャンが妙に鋭いところを突いてくる。
「ななななんでもない。ほら、カリン、いくで! 腕は縛ったままな」
「いやん、コノハ、拘束主義/////」
「……。そ、それじゃあ、サキちゃん、あとはよろしくな」
「うん、わかったよ~」
 パタン
 コノハはカリンを引いて部室を出た。



「サキ、私……」
 部室に残った二人。
 ミャンは思い出そうとしている。
「え、ええっとー……そうそう聞いた?」
「うん?」
 サキは話題を逸らした。
「えーっと……あ、思い出した」
 サキはコノハ達が来る前にミャンに聞こうとしていたことを思い出した。
「めえが……死んじゃったって……」
「……うん」
「やっぱり本当なの?」
「本当らしいよ……」
 一気に空気が重くなった。
「可愛くて好きだったのに」
「うん」
「どうするのかな……」
「……埋めるか、食べるか」
「そんな、食べるだなんて!!」
 サキが驚いて言った。
「冗談よ。でも美味しそう」
「もう、変なこと言わないで!!」
 サキは猫姿のミャンを叱ると、ミャンは前足をペロリと舐めた。
「めえ……」

 ドンドン ドンド――
「おわっ? おぉぉぉー」
 案の上、カリンが中に倒れこんできた。
 しかし……
「ぶげっ!?」
 扉の正面で構えていたミャンにノックしようと突き出したカリンの拳がクリティカルヒット!!!
 ミャンは顔面にカリンの鉄拳を受ける形になった。

「ムキ―! にゃにゃにゃにゃにゃー!」
 不意に殴られ、キレたミャンはネコパンチ乱舞。
「いっ~~~たぁ~~~い!!」
 後ろにいたサキにも当たり、サキは涙目。
「えぅー、何もしてないのにー。もおっ!」
 衝動的に動いたサキの右手(前足)がミャンにヒットし、ミャンの体がカリンにぶつかる。
「……」
 部室がめちゃめちゃになり、ミャンとカリンが伸びた。
「フーッ、フーッ」
 サキは荒ぶるケモノとなり、近づくのは危険。
「サ、サキちゃん、もう大丈夫。大丈夫だから……」
 予想外の展開となったが、なんとかカリンは捕まえることができた。



「痛い痛い痛い」
 ミャンはもふった獣毛に覆われていたが、顔面に怪我をしていたので消毒を。
「ごめんごめん」
 コノハがそう宥めていると、カリンが吠えた。
「うちも痛かった! うちも痛かった!」
 甘えているご様子。手は後ろでロープで縛ってある。
「完全に変身しちゃったけど、そろそろ戻った方がいいかなー」
 サキはブンブン前足を振り回す中で、完全にクマになっていた。
「さぁ、何でこんなことになったのか、説明してもらおうか」
 ミャンがコノハを睨む。
「う~、元凶は全部カリンやのに……」
 コノハはとばっちりを受けた気分になった。
「まぁ、百聞は一見に如かずってことで……触るの嫌やけど、これ見て……」
「あっ/////」

 カリンが気持ち悪い声を出したが、気にしないようにしてカリンのおまたを露わにした。
「「!!!???」」
 カリンの股間を見たミャンとサキが白く固まる。
「なぁ、いろいろおかしいやろ」
「ふにゃああぁぁぁぁーん!」
 カリンのkmtnを見て、ミャンはショックのあまり、一気に獣化して、脱げた服の中に倒れた。
「うおぉぉ、ミャンちゃん、わかりやすすぎるリアクション」
「ど、どうしたの、そ、それ……」
 サキがカリンのソレを見て恐れている。クマも怖がるカリンの凶器。
「そういえば、ちゃんと話を聞いてなかったなぁ。カリン、それはいつからなん?」
「今日の朝起きたらこうなってた/////」
 本人も原因はわかっていないらしい。

「部室開いてるかなー」
「!!?」
 突如、部室の扉の前で男子の声がした。この声は龍王寺!
 龍王寺は人が動物に変身することを信じていない。
 それに、部活のメンバーが変身することを知らない。
 猫になって気絶しているミャン、おまたに危険なものを宿しているカリン、完全なクマになっているサキ。
 今、部室はカオスな状況にある。扉を開けられたらいろいろヤバい……
 コノハはとっさにスカートの中にあるケータイを取り出して電話した。
「ん? コノハ先輩から?」
 龍王寺はケータイに出た。

『もしもし、突然だけど、今日部活ないから』
『……先輩。エスパーですか。今まさに部室の前にいるんですけど』
『そそそそそなの? ごめんやでー、カリンが鍵を持って帰ってしまったらしくて』
『そうなんですか? 部室の中から声が聞こえるような気がするんですけど』
『ききききき気のせい気のせい』

 しばし沈黙があった。
 コノハの心臓はバクバク。

『わかりました。それじゃ、今日は部室寄らずに帰ります』
『りょ、了解……』

 扉の前の気配が消えた。
 コノハはホッと胸を撫で下ろした。
 こうなったら、カリンを部室に入れた瞬間に捕獲する!
 カリンが部室に入ってきたところを猫獣人になったミャンに引っ掻いてもらい、よろけたところを熊獣人になったサキに抱き締めても

らい、その隙にコノハがカリンの手をロープで縛るという作戦。
 うまくいくだろうか、しかし、このアイデアしか思い付かない。
「な、なんで半獣化なの?」
「完全獣化されちゃうと、ミャンちゃんは小さすぎるし、サキちゃんは大きすぎるねん」
「……服、少し脱ごうかな」
 サキは協力的であった。
 めえだけかと思っていたら、憑きモノの一族はみんな一日に一回は獣化しないと落ち着かないらしい。
 もちろん我慢することもできるが、体が気持ち悪いとのことだ。

 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン

 扉の殴り方が強くなる。扉を破壊される……ことはないだろうが、傷が増えたり凹んだりすると部室を没収される可能性がある。
「ホラホラ、早く」
 コノハはそう言って、近くにあったねこじゃらしを手にした。
「ハッ! なんでそんなところにねこじゃらしが!!」
 ミャンは衝撃を受けたように固まった。
「自分で変身しないなら私が変身させてやる~~」
「うぅ……コノハ……」
 ミャンはねこじゃらしに弱いことは既に判明済みなのだ。
「ほらほら~、楽しいで~」
「や、やめてー、私は猫じゃない!」
 しかし、変身する動物はネコだった。
「ほらほら~」
 コノハはミャンの目の前でねこじゃらしを揺らす。
 ミャンは目を瞑ろうとしたが、気になってねこじゃらしを注視してしまう。
 ぴくぴく。
 ミャンの顔に髭が生えてきた。
「あーん。変な癖付いてる私ヤダー」
 ミャンの体中からオレンジがかった獣毛が生えてきた。
 ミャンの耳が髪からぴょこんと出ると、ぴくぴくと好奇心旺盛に動く。
 スカートからはしっぽが伸びてきた。

「ほれほれ~」
「えぅー」
 強制的に獣化させられる、しかし、ミャンはねこじゃらしの誘惑に勝てなかった。
 体の露出している部分が獣毛で覆われると、少し顔が前に突出し、いくつかの歯が牙になった。
 手には肉球ができ、爪は鋭く伸びる。
 体が一回り小さくなり、着ている服が緩んだ。
「はい、おしまい」
「もぉー、お気に入りの服……帰ったら抜け毛取って洗わないとダメじゃない」
「ごめんやでー」
 ミャンはグズっていると、サキは着ているものをほとんど脱ぎ、パンツ一丁にブラジャー付けた半裸状態になっていた。
「い、いや。そんな見ないで。だ、だって、私……ちょっとでも変身すると、体、おっきくなっちゃうもん……」
 サキは自分で自分に困った顔をしていた。
「お、オッケー。サキちゃんは自分で半獣化できたんやっけ?」
「うん。ちょうど今日は大学来る前に変身できなかったからウズウズしてたんだ」
 サキはそう言って変身を始めた。

「はふぅ」
 全身から獣毛が生え、耳の形が変わっていく。
 そういえば、サキはいつも獣化した後ばかりで、変身過程を見るのはコノハは初めてだった。
 むくむく。
 獣毛が生えるにつれ、体も少しずつ大きくなっていく。
「なんでねこじゃらしで変身してしまう癖が付いたんだろ……つか、誰がここに置いたのか……」
 半獣化してしまったミャンは困った顔をしながら自分でねこじゃらしを掴んで見つめていた。
「あぅぅっ! やっぱキツイ……コノハちゃん、脱がせて、ブラもパンツも」
 獣化中のサキが着ている服に締め付けられて苦しそうな表情をした。
「わ、わかった」

 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン


 こちらもイライラしているのかノックが激しくなる。
 コノハは、体が大きくなる中でブラジャーとパンツに締め付けられて苦しそうなサキを助けるため、すぐにサキの方に向かい、脱がし

に取り掛かった。
「パンツいくでー」
「はぁ……はぁ……あ、うん……私……変身し始めたら戻せないから……」
 コノハはまず、今にも破壊されそうなパンツを救出した。股間は毛で覆われているので恥ずかしいところは見えない。
 続いてブラジャー。こちらも今にもホックが壊れてしまいそうな勢いだった。
「はうぅぅぅぅぅ」
 むくむくと大きくなるサキ。既に二回りほど大きくなっていた。
 手足はすでに熊の手足に近い。肉球もできている。お尻にはかわいらしい丸いしっぽができていた。
 大きなヌイグルミみたいで、コノハは抱き締めたい衝動に駆られたが、何とか我慢した。
「すぅーはー、すぅーはー」
 サキが深呼吸を始めると、獣化がストップした。
「コノハちゃん、こんな感じかな?」
「うん、いいでいいで!」
 準備は整った。


 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン
 ドンドン ドンドン


 うるさい。近所迷惑にもほどがある。
「それじゃあ、扉を開けるで。ミャンちゃんはカリンを引っ掻いて、サキちゃんはそのあと、カリンを抱き締めて。細かいことは後で話

すから」
「わかった!」
「なんかわからんけど、仕方ないね」
 コノハがロックを外して、扉を開けた。
「はぁっ……はぁっ……」
 コノハは部室に辿り着いた。
 幸運にも鍵は掛かっていなかった。
 中に入るとコノハすぐに扉を閉め、鍵を掛けた。
「ふぅー。これで一安心」
 コノハが額の汗を拭っていると、正面にポカンとしているミャンとサキがいた。
「ど、どうしたの、コノハちゃん?」
 サキが目を白黒させてコノハに聞く。
「な、なんか大変なことに」
 ミャンはコノハの状況を察して聞いた。
「えーっと……」
 コノハはどう話したらいいものか、そもそも話していい内容なのか判断に迷う。
「あのなぁ――」

 ドンドン

 コノハが部室にいる二人に話をしようとした矢先、扉が叩かれる。
「うわあぁぁ、もう来おった。蹴り喰らわしたのに回復早すぎるわ」
 コノハはもっと扉の前に何か妨害する物を置こうとして物を掴めないことに気が付いた。
「うわぁっ! 体もヤバい! 手が蹄化してるやん!!」
 コノハは自分が獣化し始めていることを一瞬忘れていた。
「ヤバい。自分じゃ打たれへん……サキちゃん、お願い、その棚にある注射器取って私の腕に打って」
「えぇぇっ! そ、そんな、わたし、注射何か打ったことないよ」
 サキが動揺してオロオロする。
「じゃ、じゃあ、ミャンちゃん、お願い」
「わ、わかったわ。私も注射何か打ったことないけど」
「痛くても我慢するからお願い!」
「う、うん」
 ミャンがやや緊張した面持ちでコノハの抗癌獣化剤を手にした。
「うひゃー、何か悪いことしている気分になる」
 ミャンが注射器の針を見ながら言った。
「あ、コノハちゃん……何か、ムネがすごい出っ張ってる……?」
 サキに言われて胸元を見ると、乳首が著しく伸びていた。ウシに変身しようとしている!
「ミャンちゃん、早く」
「は、はい」

 ドンドン

 コノハの緊急事態を顧みず、カリンが外から扉を叩く。
「今は構ってられへんていうのに……だいたい、カリンのせいで変に変身するイメージ湧いてこんなことになっとるのに」
 コノハは怒りが溜まってきた。
「コノハ、打つよ」
「うん」
 ミャンが注射器をコノハの腕に射し、抗癌獣化剤を投与した。
「……っ。ありがと……」
 自分で打つ時よりも痛かったが、耐えた。
 効果はすぐに現れた。コノハのムネがしぼんでいく。
「コノハちゃんは本当にいろんな動物に変身できるんやねー」
 サキが不思議そうな顔でコノハに言った。
「サキはクマやもんね」
「こらぁ! ミャンちゃん、言わないで><」
 サキは大人しい性格なのに、変身すると巨大なクマになってしまう自分の体質にコンプレックスを感じている。
「いいなぁー、ミャンちゃんは可愛い猫になれてー」
 サキが羨望の眼差しでミャンを見る。
「……ま、まぁね」
 少し返事に間があった。

 ドンドン ドンドン
「アケテアケテ」
 カリンのホラーチックな声が聞こえる。
「それで……外のアレはなんなの?」
 ミャンが少し飽きれ気味にコノハに聞く。
「何か怖いよー」
 サキは怯えた。
「あ、よかった。薬が効いてきた。えー……率直に言うとカリンなんだけど、男になってるねん今」
「「???」」
 案の上、二人はわかっていない様子だった。
「うー、説明が難しい……つか、私もわけわからんねんけど……」

  ドンドン ドンドン
「アケテアケテ」
 このままカリンを外に放置しておくわけにもいかない(他の人に迷惑が)。
 コノハは二人を見てパッと良いアイデアが浮かんだ。
「そうだ! 二人とも半獣化してや!」
「「え?」」