「えっ」
「ほれほれ」
「うわわぁっ!」
 首周りにもさぁっとした毛の感触があった。毛の塊を首に押し付けられているみたいだ。しかし、それは次第にスピードを増し、これは……こそ……ばゆい……
「あはは、や、やめっ! あははは」
「ダーメっ! 約束破ったから! ほれほれ、くすぐり地獄じゃ~!」
「あははは、ちょっと、ほんとに、これは、あははは、くすぐったい、あははは」
 おそらく、シッポなのだろう。毛玉が首をくすぐって、僕は笑わされることしかできなかった。


「はぁ……はぁ……」
「どうだ、思い知ったか! あたしを怒らせると怖いよ。ニシシ」
 僕はしばらくくすぐりの刑を受けた。日和はしてやったりの声で愉快そうに笑う。
「思い知りました……そろそろ頭が重いんですけど」
 日和はいつでもくすぐり攻撃を仕掛けられるように、まだ僕の頭にしがみついている。
「しょうがないなぁー、降りてあげよう。あたしもこの体勢ちょっち疲れたわ」
 ストっという着地音と共に、頭が軽くなった。
 日和は僕の後方に着地した。
 僕は自然に音のした方を振り返る。


 そこには――


「うえー、髪染めたところがやっぱり、変身してもそのままだ」


 ――小柄な耳の大きな動物がいた。


「あ、アキ、あたし見てる? えへへ、この姿では始めまして。動物姿の狐塚日和です」
 薄暗くてハッキリとはわからないが、シッポが右へ左へとブンブン揺れているようだった。
「あ、暗くてよく見えないか」
 日和はそう言うと、前足を使って、赤い軌跡を自分の周りに描き始めた。
 ぼぅっと怪しげな光の中で、今の日和の姿が映し出される。
「日和……?」
「うん?」
 日和は僕の言葉に首を傾けた。
 本物だった。目の前にいる小動物は日和が変身した姿なのだ。


「本当に変身できるんだ……」
「そうよ、本当でしょ。あたしが見せたんだから、アキも変身してよ」
 日和はそう言って、ビシッと前足で僕のを指した。
「……できない。変身なんかしたことないよ」
 日和は言う。僕は変身できるはずだと。わからない。僕は変身したことがない。
「……」
 僕が返事を返すと、日和は無言になって何か考えている様子だった。シッポの動きもぴたりと止まっていた。
「変だなー、変身できると思うのになー。アキは特殊なケースなのかな」
 ブツブツ何か呟いている。


「……」
 僕は動物姿の日和と対面して、視線に迷った。
 気になることは気になる。しかし、後ろに着ていたものはすべて脱げているし、そう考えてみると今の日和は、その……
「か、考えるな」
 自分自身に言い聞かせる。また鼻血が出そうになった。
「まぁ、いっか。あたしら、もう友達だもんね! これからアキの謎をじっくり紐解いていくことにしましょ」
 開き直った日和はそう言って、四つ足でトコトコこちらに向かって来た。
「そろそろ人間に戻らなきゃ。集合時間に遅れちゃいそう」
 日和はそう言って、僕の足元を通過する。近くで見ると、本当に小さかった。


 人間が小動物になるなんて、質量保存の法則はどうなっているんだ? とかいろいろ考えてしまう。
「アキ。今度は見ちゃダメ。後ろ向いてて。動物姿は別にいいんだけど、人の姿で全裸っていうのはね……あたしも年頃の女の子だし、たはは。あ、それともアキはあたしの裸に興味あるぅー?」
「なっ……な、無いよ!」
 鼻に温かい気配がした。
「ちぇっー。あたし、こう見えてもこのバディ、すごいんだから!」
 どこかで聞いたことがあるようなセリフを動物姿でポーズ取りながら言う。
 ちょっと面白かった。


「ほら、後ろ向く! 見たら警察に突き出すからね」
「そんな無茶苦茶な……」
 無茶振りが多い日和。しかし、僕は惹かれ始めていた。
「ん……はぁ……はぁ……」
 後方から日和の甘い吐息が聞こえる。
 声を聞いているだけでも鼻血が出そうだった。
「すぅー……はぁー……ふしゅー……んんっ」
「……」
 邪な事は考えてはいけない。
 僕はしばらく、本能と孤独な闘いを強いられた。



「あんがーっと」
 しばらくして、ぴとっと背中に柔らかなものがくっついてきた。
 いいニオイがする。でもちょっと汗臭い。
「日和?」
「戻ろう、遅れたらヤバいよ。あたし、お金そんなに持ってきてないし」
 僕が聞くと、日和はすぐにそう言って離れた。
「う、うん……」
 小悪魔・日和。僕は心の中で彼女をこっそりそう命名した。


 二人で洞窟を抜ける。
 外は真夏の海と太陽が煌々としていた。
「行こ。抜け駆けしたってみんなに思われちゃう」
「う、うん」
 日和はそう言いつつも、顔ははにかんでいた。
 二人で宿泊所に向かいながら話をする。


「日和が何の動物に変身したのかイマイチわからなかったなぁ……」
「えぇー! 嘘! もう、しっかり見ててよ!」
「耳が大きいのはわかったけど……」
「うんうん、当ててみて」
「耳が大きいから……ウサギ?」
「ブー」
「うーん、他にいたかな」
「いるよ、いるよ」
「うーん……耳が大きな動物……ゾウ?」
「阿呆!」
 日和に頭上平手チョップを喰らった。
 その後、いろいろ動物の名前をあげたが、一つだけ「惜しい」と言われて全部外した。


「ギブ」
「くすぐりの刑決定」
「……。わかった、くすぐりの刑受けるから、何の動物に変身してたのか教えてよ」
「んー……」
 日和は人差し指を唇に当てて、考えている仕種をした。
「フェネック」
「えっ?」
「フェネック」
「フェネック?」
「そう、フェネック」
「フェネック……?」
「ちぇっ、知らないか。かわいいのに……」
「ご、ごめん」
 初めて聞く言葉だった。僕はズボンからケータイを取り出して早速、ネットで検索してみた。
「……」


 日和が無言で見つめてくる。
 ネットでは小柄の狐の画像が無数にヒットした。
「これがフェネック……かわいい……」
「でしょでしょ! あたしもああいうかわいい姿になれるんだよ!」
 日和は喜ぶ。
「日和も……かわいいよ……」
「うん?」
「な、なんでもない」
 なんでもない。
 ネットで調べているとフェネックは日本には分布していない哺乳類のようだ。どおりで聞いたことが無いはず。
 ここでふと疑問が生じた。


『日本に分布しないはずのフェネックの姿に日本人である日和がどうして変身できるのか?』


 それは一つの。それは一つの矛盾
「……」
 実は生まれは海外なのだろうか?
「日和って実は海外で生まれてたりする?」
「うん? 海外なんて行ったことないよ。生粋の日本人だよ。どうしたの急に?」
「いや、特に深い意味はないけど……フェネックは日本にいないのに、何で日和が変身できるのかなーって」
「うん、それ、あたしも思ってた。でも今のところわかんない」
 日和も気付いていたらしい。本人もわからないとなると、ますます謎だ。
 歩きながらネットで検索していると、気になる言葉を発見した。


『テレポーテーション・アニマル』

テレポーティング・アニマル、テレポート・アニマルとも呼ばれる。これは例えば、オーストラリアにしか分布していないカンガルーが日本の山奥で多数目撃されるなど、本来の分布域ではない場所で動物が突然目撃される超常現象だ。
 様々な説が唱えられているが、動物園なり、ペットなり、人為的にその動物を他の場所に移動させたという説が有力。
 しかし、僕は思った。
 もしかしたら、その中には、日和のように動物に変身することができる人々が目撃されてしまった例もあるのではないかと……

 冗談を言っているようにはやはり見えなかった。
 日和は変身なんてできるのだろうか?
 そもそも何者なのだろうか?
 僕の中でわからないことが膨れていく。


「うーん、真っ暗ってのもムードがないなぁ。でも外で変身するには明る過ぎる……ちょっと描いちゃうか」
 日和は独り言を言って、空中に赤い軌跡を描き始めた。
 赤い軌跡は洞窟の闇の中で妖しげに発光する。
 日和はくるくると回転し、自分の周りに何重も赤い軌跡を描いた。
 それはさながら、魔女が魔法陣を描いているかのようだった。
「これでよし」
 赤い軌跡は仄明るく日和の姿を照らす。表情が見えるようになった。


「見てて……」
 僕はこの状況をどう解釈すればいいのかわからず、ただ突っ立っているしかなかった。
「すぅー、はぁー」
 日和は大きく深呼吸を始めた。
「んんっ!」
 少し呻き声を発し、体が小刻みに震えた。
「……嘘……だろ……」
 信じられなかった。日和の体が変化していく……


 耳が三角の形状に伸びながら大きくなる。
「はぁ……はぁ……すぅー、はぁー」
 赤い光の中で照らされる日和の体。
 ハッキリとは見えないにしても、体の形が変わっていくのはよくわかる。
 日和の耳は徐々に大きくなる。
「なんだよ……これ……」
 SF映画でも見ている気分だった。
 少し怖さを感じる。しかし、同時に好奇心もあった。
 心霊現象などの怖い話は聞きたくないけど気になるもの。
 日和の耳は顔と同じくらいの大きさになったところで止まったようだった。
「すぅー、はぁー、えへへ、どう?」


「すごい……変身なんて……」
「どう?」と聞かれてどう返せばいいのかわからないが、「すごい」としか出なかった。
「えへへ、すごいでしょ? ほら見てみて。この耳、左右に動かせるんだよー」
 日和が言うと、本当にその大きな耳は左右に動いた。
 小動物が耳を小刻みに動かすみたいに。
「最近の男の子ってこういう状態好きだよね。ケモ耳の女の子。最近のアニメでだいたい一人はいるもんね」
「……」
 好きか嫌いかと聞かれたら、嫌いではない。


「あ、そっか。あとシッポも付けてるのが多いよね」
 日和はそうだったと思い出したように言った。
「シッポ、出してあげようか?」
 日和は赤い光に照らされる中で、小悪魔のように微笑む。
「……」
 僕は応えられなかった。
 しかし、僕の反応はお構いなしで、日和は僕の方にお尻を向け、穿いていたスカートを少しズラした。
「ちょっと! 何をするの!」
 女の子がお尻をこちらに向けてスカートをズラすなんて……なんて……ダ、ダメだ!
「うふふ、アキはピュアね。ドーテーでしょ」
「むぅ……」
 日和は僕が口を塞ぐと嬉しそうに笑った。


「ごめん、ごめん。そんな真に受けないで。見てて……」
 日和はそう言うと、また小刻みに体を震わせ始めた。
「ふぅー……はぁー……」
「!?」
 日和のお尻の付け根が盛り上がってくる。肌色の突起物は徐々に伸びてきて、獣のシッポのような形状になってゆく。
「シッポ……シッポだ……」
 僕は視線を逸らせない。初めて見る、ヒトがシッポを生やす現象に釘付けになった。
「くはぁっ」
 日和が喘ぎにも近い吐息を漏らす。
 肌色の肉シッポは装飾するかのうように、徐々にふさふさの毛で覆われていく。
 僕はふと、早回しビデオで見た、植物の種が樹に成長していく様を連想した。


「はふぅ……どう? 可愛い?」
 シッポを生やし終えたのか、日和は肩越しに僕の方を見た。
「うん、ま、まぁ……」
「ちゃんと言って。可愛い? 可愛くない?」
 聞いているこっちが恥ずかしい。答えなければならないのか?
 日和の感情を表すように、シッポは上下左右に揺れる。
「ねぇ、どっち?」
 僕は日和に回答を強いられた。
「か、かわ……いい……です……」
 もしかしたら、可愛いなんて言葉、人生で初めて使ったかもしれない。
 それくらい僕の人生で無縁な言葉だった。
「本当? やったね! えへへー、気になる? 触ってみたい?」
「……」
 日和は次々に難題をけしかてくる。あんまり女の子耐性無いって知ってるのに……


「ちょっとだけなら……いいよ。私のシッポ……触っても……」
 日和がそう言って、僕に視線を投げかけた。
 これはもうほとんど、触れと言っているようなもの。
 僕は日和の性格がわかり始めていた。
「……」
 シッポに触る。女の子のシッポ。人間の女の子のシッポ……
 考えれば考えるほど動悸がする。頭がクラクラしてしまう。
 お尻の延長線上にあるこのシッポという部位は……その……触ると感じちゃったりするのかなとか変なことを考えてしまった。
「ほらほら、早くぅー! 早くしないと引っ込めちゃうぞ!」
 強いられている。僕はシッポに触れることを強いられているんだー!
「えいっ!」
「ひゃぁっ!」


 僕は勇気を振り絞って、日和のシッポを掴んだ。獣だった。日和のシッポはふさふさのケモノのシッポ。
「くおらぁっ! アキ! そんなに急に強く掴まないでよ! ビックリしたし、痛かったじゃない! シッポはデリケートなんだから、女の子を扱うように優しく触らないとダメだよ。めっ!」
 怒られた。シッポの触り方なんてわからない。
「ご、ごめんなさい」
 僕は掴んでいた日和のシッポを放した。
 他人に怒られることもあまりなかったので、ショックを受けた。


「シッポはね、こういう風に優しく触るのがいいの。良い子良い子って感じでそっと撫でる感じ。まぁ、アキは初めてみたいだから、今のは許す!」
 日和は僕と対面して、腰からお腹側に向かって曲げたシッポを手で優しく撫でていた。シッポの扱い方のお手本。
 こうして見ていると、日和のお尻から生えているのに、シッポはもこもこした別の生き物のように思えてならなかった。
「シッポの触り方教えてあげる。ほら、手を出して」
「えっ、い、いいよ」
 僕は遠慮した。手加減がわからないので、また強く掴んでしまうかもしれない。


「遠慮しちゃダメ。あたしが良いって言ってるんだから。何でも消極的にしていれば良いって思っていたら大間違いよ。最近の男の子はみんなそんな感じ。女の子的には刺激が足りないの」
 僕は心に会心の一撃を喰らわされた。
 日和が積極的過ぎる。最近の言葉で言うなら、僕は草食系だと思う。日和は間違いなく肉食系……僕は日和に食われ始めているのかもしれない。
「ほら、シッポの触り方もわからないままでいいの? この先、今回みたいな状況になったらどうするの? シッポをいい加減に扱って、次は女の子に嫌われちゃうかもしれないぞ」
「わ、わかったよ。触る……触るから……」
 今回みたいな状況が今後来るのかは甚だ疑問であるが、日和が何か一生懸命だったので、僕は日和の言うことに従うと思った。


「こうやってね、優しく撫でるの」
「……」
 日和が僕の手を取り、シッポに触らせる。手を重ねてシッポを撫でる。
 ドキドキがヤバい。日和が近過ぎる。そして、このシッポも日和の体の一部なのだと意識してしまうと……僕は頭が沸騰してしまう思いだった。
 洞窟で良かったのかもしれない。明るいところで今の僕を見られると、顔はトマトみたいに真っ赤なことだろう。
「そうそう、良い感じ」
 日和が目を細める。このシッポは日和の体と繋がっている。言わば、シッポを撫でることは日和の頭をよしよししていることに等しい。
「何も……考えるな……何も……考えるな……」
 僕は日和に聞こえないような小言を言って、自尊心を保った。
「わかった?」
「う、うん。な、なんと、なく……」
 変に緊張してしまった。


「うふふ、良かった。撫でてくれてありがとう。その……ちょっと気持ち良かった……」
 日和が少し照れた。この一言で、僕の顔は一気に噴火した。
 もう無理だ。恥ずかしくて日和を直視できそうにない。
「変身はまだ終わってないよ。見てて……」
 僕に考える隙を与えないかのように、日和は次々と攻撃を仕掛けてくる。
「んくっ! むぁはぁー!」
 日和がブルッと大きく震えると、おかしなことが起こった。
 日和の胸の下からむくむくと複数の隆起ができた。それはまるでおっぱ……
「へへっ! どうどう? おっぱいがいっぱいー! なんちって」


 台無しだった。
 日和が茶化すことで、今までの妖艶なムードが砕け散った。
 日和は何を思ったのかジャンプし始める。
「!?」
 揺れる。弾力を思わせる複数のソレが。日和のジャンプに合わせて上下にたゆんたゆんと揺れる。
 僕はまた日和を直視することが難しくなった。
「あー! アキ、鼻抑えて……鼻血? んもー、これくらいで鼻血出さないでよー。くすくすくす」
「そ、そんなこと言われても……」
 血が上った。もうダメだ。日和は刺激が強過ぎる。
「これ以上、アキを刺激すると死んじゃいそうだから、一気にいくね」


 日和は笑うと、また甘い吐息を漏らし始めた。
 僕は最近見たテレビ番組を必死に思い出して、変なことを考えないように必死だった。
「はふぅー……はぁ……見てて。ふぅ……目を……逸らしちゃダメ……」
 この状況で日和は僕に見ろと言う。
 僕は平常心を保つように頭の中で違う事を考えるのに必死になりながら、日和の要求を飲んだ。
 鼻血は少し治まったようだ。
 日和の体がまた変わっていく。ヒゲが伸び、鼻先を中心にして顔が突き出て、手足の指は太くなる……
 動物。日和が何かの動物に変身していく。


 僕は再び、日和の変身に釘付けになった。今は、怖さ以上に好奇心が勝っていた。
 獣人と言うのだろうか。日和の姿はヒトの形を模した獣のような姿になっていた。
 ハッキリとは見えない。しかし、その体の輪郭は艶めかしく形を変えていった。
「んきゅー」
 日和の体が少し小さくなった。服がよれよれになり、ストンと地面に何かが落ちた。
「!!」
 薄暗くてよくは見えない。しかし、スカートの中から落ちた事とそのT字型の形状を考えれば……
「何でもない、何でもない、何でもない……」
 また鼻血が溢れ出そうだった。ツーと冷たい液体が鼻を押さえている手の間から流れる。
 僕は少し日和から目を逸らした。
 そして、視線を戻すと……日和の服だけが地面に脱げ落ちていて、日和は消えていた。


「あ、あれ……日和……?」
 僕は一瞬焦った。
「こーら! ちゃんと見ててって言ったのにぃー!」
「あぐっ!」
 後方から頭に何かがしがみ付いてきた。
「もー、だらしない。アキはもう少し女の子耐性付けることが必須だね」
 頭にしがみ付いてきたソレは呆れたような声を出す。
「日和?」
「そうだよ。あたしじゃなかったら何なのさ?」
 そう言われても……僕は日和が最後、どんな姿になるのか見ていなかった。
「ちゃんと見ていなかった罰としてシッポでくすぐりの刑を処す」

「変身……? 何の事?」
「とぼけてもダーメ! できるでしょ、変身?」
 僕はとぼけていない。しかし、日和も冗談で言っている感じではなかった。
「日和は……変身……できるの?」
「もち! この背中の痣を持つ子はみんな変身できるんだから!」
「……何に?」
「え?」
「何に変身できるの?」
 僕はわからなかった。変身なんてしたことない。


「……」
 僕が質問すると、日和は窺うような視線を向けて、ブツブツと小言を言い出した。
「隠してる? ……って感じでもないなぁ。本当に変身できないのかな? いや、そんなはずはない。超能力と違って、出会った子はみんな何かしらの動物に変身できていたもん……本人が気付いていないだけかも……」
「?」
 日和は腕を組んでうんうん唸っていた。


「本当に変身できないの?」
「わからない……変身なんてしたことない……」
 じーっと僕の顔を見つめた後、日和は少し呆れたように、照れたように言った。
「そっかぁ、そういうこともあるのかな。それじゃあ、人間が動物に変身するところとか見た事無い?」
「映画とか……なら……」
「リアルで! なるほどねー。それじゃあ、見てみる?」
 日和は気軽に言った。
「えっ?」
「あたし、女だから。男の子に見せるのはやっぱりちょっと恥ずかしいけど、アキは変態さんじゃないぽく見えるから、特別に見せてあげても良いよ」
 その後、日和はこう付け足した。
「あたしが変身するところ」

「狐塚さん」
「あー、そのよそよそしい呼び方! そろそろやめにしない? 日和でいいよ。その代わり、あたしもアキって呼んでいい? いいよね?」
「……」
 合宿二日目。出会って一日しか経っていないのに、親密度?はジェットコースター並みに加速していた。
 いや、何と言うか、積極的なのは日和の方からなのだが。
「じゃ、じゃぁ……ひ……より……」
「うふふ、なぁに?」
 日和は僕があまり女の子と話したことがないのを見抜いたようで、時々色目を使って話し掛けてくる。
 正直これには困った。


「……。ぼ、僕の他にも背中に羽のような痣があって、幽霊が視える人がいるって昨日話していたけど、どれくらいいるの?」
「うんとねぇー、アキで108人目
 そんなにいるのか!
 いや、驚きべきところはそこでは無い。そんなに見付けたのか?
 何かそういうグループでも存在するのだろうか?
「あたしね、子供の頃から仲間を探しているんだ。だってさ、あたし達って普通じゃないでしょ? きっとこの世界を救う使命を任された能力者達なんだって!」
「……」
 少し残念なことに、日和は妄想癖があるようだった。俗に言う、中2病ってやつか。
「あ! 今、呆れたでしょ? ふーん、いいんだいいんだ。あたしは二次元の世界に生きるんだから!」
 ぷいっと拗ねる。
 出会って早々、感情表現豊かな日和は僕にとって少々刺激が強い。
「日和ー! ビーチバレーやろうよー!」
「うん、いいよー! それじゃあ、アキ、また後で話しましょ」
 日和は男女関係なく同級生の間で人気があった。同じ空間で生活していたはずなのに、僕は今までそれに気付かなかった。



 三日目。合宿最終日。
 本当に作家の生まれ育った町を見て回るだけの気楽な合宿だった。
 昼間ではフリ―タイム。
 と言う訳で、日和とアドレス交換した僕は、早速彼女に呼び出されることになった。
 彼女が指定したのは、宿舎近くの海岸の洞窟。
 彼女はいつの間にかそんなマニアックなポイントまで見付けていた。
 僕が少し迷いながら洞窟に辿り着くと、日和はヤドカリをつんつんして遊んでいた。


「あ、来た来た! おはよう、アキ!」
 僕に気付いた日和が笑顔になった。
 その笑顔に少しドキッとする。
「中に入ろう」
「……」
 どういう理由で呼び出されたのかはわからない。
 まさかと思うが、襲って来たりはしないだろうな……
 草食系男子よろしく、やや不安を抱えながらも、僕は日和に先導され、洞窟の中に入った。

 洞窟の中は暗く、少しヒンヤリした。
 暗闇の中で幽霊はどうなっているかと言うと……よく漫画であるような人魂のように輝いてはおらず、やはり透けている。ただそれだけだった。
 だから幽霊は日の当たる所の方がよく視える。


 闇を占める割合が強い場所で、彼女は立ち止った。くるりと反転して僕と向かい合う。
「アキはどんなことができるの?」
「えっ?」
「超能力」
「超能力?」
 日和は他にも何かできるのだろうか?
「超能力って、幽霊が視えること? どっちかと言うと、超能力より霊能力って言った方がしっくりくる感じだけど」
「ううん、違う。コレが視える以外」
「これ以外……?」
 僕はわからなかった。幽霊が視える以外に特別な能力を持っていると自認したことはない。
「隠してる……感じじゃないね。気付いてないだけなのかな」
 日和はブツブツと独り言を言った。


「まぁ、細かい事はいっか。それじゃあ、あたしの超能力を見せてあげるよ! あたしね、こんなこともできるんだ」
 日和はそう言って、人差し指を立て、空中に滑らした。
「なに……これ……」
 日和の指先から赤い光が放たれ、指が移動した軌跡を空中に残した。
「すごいでしょ? あたし、空中に文字が書けるんだ! メモいらず! 超便利!」
 彼女は僕が驚く様を見て、得意気になり、空中にいろんな赤い軌跡を残した。
「ケータイの写真モードで見てみて」
 日和に言われて、僕がケータイで覗いてみると……赤い軌跡は映らなかった。
 しかし、自分の眼で見ると確かに見える。
「わかった? これはあたし達しか視えないみたいなの」
 超能力。これこそまさにその言葉にふさわしい御技だった。
「すごい……」
「えへへー、これでテストのカンニングもばっちりだね!」


 超能力の使い方を間違っている気がしてならないが、初めて目にした不思議な能力に見惚れていた。
 僕にもこんな能力があるのだろうか……?
「明るいところでも視えるけど、暗いところの方が光って綺麗だから。妖艶な光でしょ? あたしはこれを〝鬼文字〟って呼んでいるんだ」
 日和はそう言った後、空中に描いた軌跡に手で触れた。
 すると、赤い軌跡は初めから存在しなかったかのように消失した。
「鬼文字は書いてからあたしが触れると消えちゃう。でも触れないでおくとずっと残っているみたいなんだ」
 日和は自分の能力の特性を把握しているようだった。
「アキはまだ自分の能力を知らないの?」
「うん……」
 日和に当然のように聞かれると少し心が痛かった。


「まぁ、視える子でも超能力がわかっている子は少ないからねー。そうだ、一緒に超能力開発しようよ!」
「えぇっ!?」
 そんなことできるのだろうか?
 だけど、それは少し楽しそうな提案でもあった。
 僕の日常が壊れていく……漫画の主人公達もこんな心境だったのではないだろうか?
 好奇心と引き換えに、平凡さを失う。等価交換。
「うん! いいね! 面白そう! やってみようよ、超能力開発!」
 僕よりも日和の方が楽しそうだった。
「うふふふ。さてさて、余興はこれくらいにして、そろそろ本題に入るね」
「!?」
 これまでが余興? それは予期しない言葉だった。
「まどろっこしいのもあれだから、ストレートに聞いちゃうよ。アキは……何に変身できるの?

「えっ?」
 一泳ぎして疲れて突っ立っていると、彼女の方から声を掛けてきた。
 初対面でイキナリそんなことを言われたので、僕はキョトンとするしかなかった。
 しかし、彼女は繰り返す。
「あなた、もしかして、他の人と違う能力を持っていない?」
「……」
 二回言われてハッと気付いた。
 彼女は普通の人とは違う……僕の直感が告げていた。
「あれ~、おかしいな? 背中の模様……絶対、能力者だと思うんだけど……ねぇ、これ、視えているでしょ?」
 彼女はそう言って、空中を浮遊している幽霊を人差し指でつんつんした。
「!?」
 それは僕にとって衝撃的な出来事だった。
 彼女は視えているのだ。人生で初めて会う、同類だった。


「……」
 しかし、漫画的なセオリーで言うのであれば、こう言った特殊な事情を持ち合わせた者同士の出会いは必ず、平凡な生活を破壊する。
 僕は彼女の問い掛けにどう答えるべきか悩んだ。
「おーい、聞いてますー? うぅ……名前がわからない……あたしは狐塚日和(こづかひより)。あなたは?」
「狸居アキ……」
「なんだ、ちゃんと答えられるやん」
 名前を聞かれ、条件反射的に返してしまった。
 これはマズイ……
 僕はこの場から離れることにした。


「あ、ちょっ、ちょっと待ってよ!」
 僕が彼女に背を向けて波打ち際を歩き出すと彼女が追い掛けて来た。
 今まで僕に積極的に話しかけてくる女の子はいなかったから、正直ドキドキもしていた。
 僕は少し早足にした。彼女も歩調を合わせて早くする。
 しばらくそうして、気まずくなった僕が俯いて立ち止まると、彼女は正面に回り込んだ。
「ねぇ、何で黙っているの? 視えているんでしょ?」
 僕が顔を上げると、彼女は宙を漂う幽霊を指差していた。
「……」
 本物だった。彼女は視えている。
「う~ん……何か話してくれないと話が進まないよぉ……」
 元気そうな彼女も、僕のだんまりに少し困った様子を見せた。


「いつから?」
「えっ?」
「いつから視えるの、ソレ……」
 彼女の困った顔は僕の心を動かしてしまった。
 僕は慎重に彼女に話し掛けた。
「やったー! うんうん、コレ? いつからと言われると困るけど、気が付いたら視えていたね。あたし、みんなも視えるものと思っていたから、いろんな人にコレについて聞いて回って、よく変人扱いされたなぁー」
 僕が話し掛けると、彼女は笑顔になってハハハと笑った。
 僕と話せたことがそんなに嬉しいものだろうか。
「ねぇ、もっと話を聞かせてよ。お友達になりましょ! ケータイ持ってるよね? 番号とアドレス交換しよ」
 それからは彼女の怒涛の質問ラッシュだった。
 僕はあまりにも積極的過ぎる彼女にたじろぎながらも、彼女に親しみを感じていった。


 ――西暦2010年 狸居アキ 大学一年生。


 僕は狸居家の長男としてごく一般的な家庭に生まれ、多くの人が歩む平凡な人生を歩み、生涯を終えることだろうと信じていた。
 ただ一つ、特異体質を除いては……


「『幽霊』が視える」


 自分の眼がおかしいことに気付いたのは物心がついてからだった。
 他人とは同じ景色を見ていても、視えている世界が違っていた。
 そう、それは両親でさえも。
 僕だけが幽霊を視れた。僕の他に同じ視界を共有する人はいなかった。


 よく漫画では、特異体質の人はそれ相応の使命を背負っているのがセオリーだ。
 そんなの困る。
 だから、平和主義の僕は努めて平静を装い、ある時期から自分の視えているモノについては誰にも話さないようにした。


 幽霊はいつも視えている訳じゃない。
 その日の体調によって視えたり、視えなかったりした。
 しかし、ソレは明らかに宙に浮き、向こう側の景色が見えるように透けていた。
 僕にとっては幽霊なのだが、他人に説明すると、ソレは幽霊と言うよりも、魂と言った方が想像しやすいかもしれない。


 いろんな色がある。炎を切り取って宙に浮かべたような不安定なソレは、どこでも漂っていた。
 昼でも夜でも、地上でも海中でも飛行機の窓の外でさえも。
 幽霊が襲ってくることとかはなかった。
 ただこの世界に漂っているだけ。
 他に意味など無いようだった。


 おそらく、記憶ある限りでは、生まれた時から視えていた。
 だから、ソレがいることは当たり前で、ソレが一体何なのかなんて考えたこともなかった。
 人は当たり前の事については気付かない。例えば水はどうして不定形なのか?
 イチイチ考えていると頭がおかしくなってしまうだろう。

 事実は小説よりも奇なり、とは昔の人はよく言ったものだ。
 僕は当たり前に視えていたソレの意味を考えさせられることになる。
 彼女と出会ってから……



 僕は大学生になった。大学は志望していた尾天大学が通った。
 尾天大学は奈良・大阪・京都の三県の県境にある尾天地方に建設される日本でもトップクラスの大学だ。
 元々、この地方で生まれた僕は子供の頃から大学を見てきて、いつしかその大学に入ることを夢見ていた。
 尾天大学は数十の学部を包括するメガキャンパス。
 他の大学のように他の地方に特定の学部を置くということはしていない。
 こんなに大きくしてどうやって管理できるのかは謎だが、とにかく、この大学に入れば、いろんな可能性と出会うことが可能だった。
 
 何となく、物語を読むのが好きだったので、文学部に入った。
 高校と全く異なるシステムに戸惑いながらも、僕は少しずつ大学に馴染んでいった。
 彼女と出会うことになったきっかけは、夏休みの合同ゼミ合宿だった。
 文学部なのに、サークルも入っていないのに、夏休み真っ只中なのに、文学部入学者全員で2泊3日の合同合宿が強行された。
 この合宿は必須科目に指定されているため、卒業したければ、拒否はできない。
 僕は面倒臭いと思いながらも、必然的に参加することとなった。


 合宿は国語の教科書にも載る有名な作家達の生まれた、育った町を肌で感じとろうというコンセプトの企画だった。
 単に旅行好きの著名な先生の都合に合わせられただけという噂もあるが、言うなれば単なる旅行のようなものだった。
 これで単位が出るのはむしろラッキーだったのかもしれない。


 宿は海が近かった。
 当然ながら、僕らは水着に着替えて海で遊ぶことになった。

 海で泳ぐこと自体は嫌いでは無い。
 しかし、背中を他人に見られるのは少し抵抗があった。


 何故なら、僕の背中には、羽のような葉のような奇妙な模様の痣がある
 母が言うに、この痣は僕が生まれた時からあり、僕の成長と共に形状を変えていった。
 感覚としては、まるで『育っている』かのようだった。


 上着を着たまま泳ごうか、脱ごうか迷った末、上着を脱いで泳ぐことにした。
 背中を海側に向けていれば、特に注目されることもないだろう、そう思った。
 幸か不幸か、僕のこの行動は彼女の目に付いたらしい。
 僕は彼女のことを知らなかった。
 だから、出会いは彼女の方からやって来た。



「あなた、もしかして、他の人と違う能力を持っていない?」


 有史以前においても有史においても、ヒトは自我に目覚めてから己の種を存続・繁栄させるために、常に未来を占ってきた。
 彼等の中には突然変異で霊性を帯び、神託を受け取る者(シャーマン)が少なからず存在した。
 それが本当に神の導きかどうかは神託を受ける者にしかわからないが、この世界に産み落とされた神託は未来へと繋ぐ〝預言書〟として伝えられた。

 預言書は後世の者達によって、様々な方向に解釈された。
 ある者は世界滅亡を警告し、ある者は世界平和を約束した。
 しかし、預言書の記述が的確に当たる事は無かった。

 それは、今、これを読んでいるあなたの存在が証明している。
 中には奇跡に近付いた者もいるだろう。
 しかし、それは必然ではなくただの偶然。
 預言書は神のよって創られたものではなく、ヒトの手によって作られたものであると……

 ならば、預言書はこう解釈できる。
 未来に向けた、個人的な日記のようなものであると。
 この未来日記を読み解く者が、心の広き人であればいいのに――
 ――カリンの身に起きた部分獣化性転換現象

 ――ベテラン刑事と部下が迫る謎の人類動物化現象

 ――獣の数字時に獣化スレに降臨するクスクスサマ

 ――尾天書紀を解読し続けるコタロー

 ――社会の陰で暗躍する人獣ハンティング


 多様に広がる群像劇。
 解答に結び付かないフラグ。
 ヒトとケモノの境界は薄れ、♂も♀も「性の外」へ……

 すべてが一つになる。
 その時は近付いている。
 明確な人類史の中に刻まれた人類大量消失現象、星の消化とも呼ばれる世界最大の謎「ガイア・ダイジェスト」――

 かつて起きた地球規模の怪現象。
 その現象自体は社会の教科書にも載っている。
 しかし、どうして引き起こされたのかを知る者は極わずか。
 来たるべき予兆は既に始まっている。
 怪現象は再び起こるだろう。

 しかし、現世のヒトは怪現象を回避する術を既に得ている。
 来たるべき災厄を回避するためにはかつて起きたイベントを詳細に知る必要があるだろう。
 当時、一体何が起こったのか?
 時は先代憑きモノ達の生きた時代……数十世紀前、21世紀に遡る――
――コノハ達が病院に行く前、虹幻世界。

600.萌王
下手なTF絵はヌけない そんな絵を晒すくらいなら転生して出直してこいm9(^Д^)プギャー

601.本当の萌王
》600 おい、お前! 俺のHNを使って荒らすな!!

602.真・萌王
》601 おまいこそ偽物だろ!!

603.MOEOH
》555-602 嘘を言うな!! おまいら全部偽物だろうが!!! 

604.ケモノになりたい貴方
なんだ、久々に見に来たら何があった?

605.ケモノになりたい貴方
》604 他人のHNを使って言いたい放題言う奴が現れて、馬鹿どもがお祭り騒ぎしているのさ

606.ケモノになりたい貴方
》605 ログ遡って理解

607.ケモノになりたい貴方
下手な絵は確かにたまにイラッとすることはある 上手い人は何描いても上手いからな でも上手い人はそれ相応の絵を描いてきたわけで 下手な人はもっとがんばってほしい……とROM専のおれが説得力のない言葉でいう

608.ケモノになりたい貴方
》607 わかる

609.本当の萌王
》603 接続先を特定した! おまいこそが荒らしの元凶……複数名前を使いやがって偽物めええぇぇぇぇぇー!!!

610.ケモノになりたい貴方
もう萌王も絵の話もいい。それより情報をくれ!

611.アルティメット萌王
》609 おまいこそが偽物

612.ケモノになりたい貴方
なんだこの板は……定期的に荒れるにもほどがある

613.ケモノになりたい貴方
ttp://www.ロリケモ

614.ケモノになりたい貴方
》613 あなたが神か

615.ケモノになりたい貴方
》613 僕はあなたのファンです! もっと……もっと描いてください

616.萌王DX
》613 すばらしひ

617.本当の萌王
》613 私もそんな風に描けるようになりたい GJ!!

618.ケモノになりたい貴方
》613 おっきした

619.ケモノになりたい貴方
》613 ブログとかやってないんですか?

620.ケモノになりたい貴方
絵の良し悪しで謎の統一性を見せるおまいら

621.ケモノになりたい貴方
絵はある程度まで上手くなったら、その後は個性と、個人の絵柄の好みによる しかし、確かに万人受けする絵を描く人もいるのだ

622.ケモノになりたい貴方
またこの流れか…

623.ケモノになりたい貴方
メスものばかり……オスはないの? オスは!!!

624.ケモノになりたい貴方
》623 この界隈はオッサンが多いのよ

625.ケモノになりたい貴方
TF好きのおにゃのこは一般的な腐女子と違ってホモホモ言わないし、シャイだからな

626.本当の萌王
男もたまにはオスケモが見たい時がある

627.ケモノになりたい貴方
》626 お前はやっぱ男だったか

628.ケモノになりたい貴方
》627 触れるな

629.ケモノになりたい貴方
そろそろ獣の数字が近くなってきた…

630.ケモノになりたい貴方
例の現象はまたこのスレでも起こるのか…

631.ケモノになりたい貴方
》613 すばらしい!! やっぱりTF絵は一枚絵よりシーケンスじゃないと! ビフォーアフター、そしてなんと言ってもその獣化途中がたまらなくかわいくてヌケル 食える食える! オカズをありがたう!!

632.ケモノになりたい貴方
》630 クスクスサマのことか

633.ケモノになりたい貴方
》632 なにそれ?

634.ケモノになりたい貴方
》633 二つ前の獣化スレから突然現れた謎のロリ声。レス番号も付かない。666番の獣化願望を叶えて変身後の写真を添付してくれる。幼女のクスクス笑う声がよく聞こえることから、信者が発生して神格化したもの

635.ケモノになりたい貴方
》634 説明乙。でも結局よく意味がわからないお……

636.ケモノになりたい貴方
》635 獣の数字になればわかる

637.ケモノになりたい貴方
クスクスサマ……私を獣に変えてください

638.ケモノになりたい貴方
クスクスサマ……私こそ獣に変えてください

639.ケモノになりたい貴方
クスクスサマ……私だけ獣に変えてください

640.ケモノになりたい貴方
クスクスサマのあれは……合成写真と思うんだけどなー…

641.ケモノになりたい貴方
》640 夢がない

642.ケモノになりたい貴方
》641 現実を見ろ

643.ケモノになりたい貴方
》642 ケモライフやりなさい

644.ケモノになりたい貴方
現科学で一体どこまで獣化できるものか

645.ケモノになりたい貴方
》644 将来、体がボロボロになることを考えなければ、結構体は改造できる。この前も海外の人が体のパーツほぼサイボーグ化してかなりケモノに近づいた形態をしていた。シッポは義足やる要領で尾てい骨付近から神経持ってきて繋げたらいいし。ボディペイントと組み合わせれば獣人にはなれる。しかし、一度改造した体は元には戻せないが…

646.ケモノになりたい貴方
》645 想像して萌えた

647.ケモノになりたい貴方
実際、ほとんどのTF好きは妄想好きで留まる。獣化願望がありながらも、頭のどこかで現実を考えて、自分の改造してまで獣化したいとは思わない。

648.ケモノになりたい貴方
》647 確かに。自分が獣化できるとしたら、やはり人間に戻れることが前提にある。他人なら不可逆の方が断然萌えるけど。

649.ケモノになりたい貴方
そろそろ666が近づいてまいりました。

650.ケモノになりたい貴方
クスクスサマ! 我にチカラを!!

651.ケモノになりたい貴方
》647 結局、みんな妄想して悶々するのが好きなのさ。もし、簡単に獣化できたら、ここまで信者は集まらない

652.本当の萌王
》651 そうだな

653.ケモノになりたい貴方
》652 荒れるから出てくんな

654.萌王
下手なTF絵はヌけない そんな絵を晒すくらいなら転生して出直してこいm9(^Д^)プギャー

655.ケモノになりたい貴方
ほら、言わんこっちゃない…スルースルー

656.ケモノになりたい貴方
》623 わかる。オスケモもっと見たいお…

657.ケモノになりたい貴方
絵師的には漫画もいいけど、妄想できるから小説も読みたい

658.ケモノになりたい貴方
》657 物書きは老舗が多いけど、ちょこちょこ新人増えているよね

659.ケモノになりたい貴方
絵師や物書きが増えてもTFゲームにはならないのであった

660.ケモノになりたい貴方
TFゲー誰か作って…おまいらの技術なら簡単にできそうなんだ

661.ケモノになりたい貴方
TFゲーあったらほしいお

662.ケモノになりたい貴方
豚女と猫男。次は誰が何になる? クスクス

663.ケモノになりたい貴方
TFゲー作る妄想はあるんだけど、体が動かない…

664.ケモノになりたい貴方
クスクスサマ! 狼にしてくだせぇ!!

665.ケモノになりたい貴方
クスクスサマ! ウサギにしてくだせぇ!!

666.ケモノになりたい貴方
クスクスサマ! トラにしてくだせぇ!!

》666 クスクスクス……トラになりたいんだね いいよ

668.ケモノになりたい貴方
ぎゃあぁぁー! 一足遅かった

669.ケモノになりたい貴方
これがクスクスサマ…

670.本当の萌王
クスクスサマはAIなのかな?

671.ケモノになりたい貴方
う、嘘……流れに乗って発言しただけなのに……毛が…毛が!!

672.ケモノになりたい貴方
始まったか

673.ケモノになりたい貴方
何だろうな、この妙な緊張感

674.ケモノになりたい貴方
くそおぉぉぉぉ! 仕事のせいでクスクスサマにアクセスできなかったあああああ

》674 わたしはいつでもここにいるよ 


676.ケモノになりたい貴方
嫌あぁっ! ぐげごおぉ…ハァハァ…あぐぅ……痛い痛い痛い…痛いイイいいいいいいいい井伊

677.ケモノになりたい貴方
急に、お、女の悲鳴が!!

この子、カメラ持ってるね ムービーも見たい? クスクスクス

679.ケモノになりたい貴方
見たいか見たくないかって言われたら見たい

》679 わかったよ、お兄さん。見せてあげる www.tigermovie.

681.ケモノになりたい貴方
熱…痛…はぁはぁはぁはあ……亜グルるるるる んはぁーっ、はあぁぁっ

682.ケモノになりたい貴方
なに…これ…

683.ケモノになりたい貴方
リアル過ぎる動画……

684.ケモノになりたい貴方
女が痙攣しながら、トラ化してる…ヤバい…リアルすぎてすぐおっきする…

685.ケモノになりたい貴方
え、これ、誰が作ったの?

686.ケモノになりたい貴方
クスクスサマが…進化…してる…

クスクスクス。花崎美雨はトラ女になちゃった♪ 動画は荒いから高画質もあげるよwWw.TiGErTf.jP
「とりあえず、店長の研究室に行こう」
 コノハはそう言って、カリンをテンリと引き連れてエレベーターに乗った。
 渡り廊下を通って、隣の建物へ。
 病院の清潔な雰囲気とは相反して、実験所は暗いオーラが漂っている。扉にはレベル

が書いてあり、進入禁止を促す警告マークも少なくない。
 誰が来てもここは危険な場所だということがわかるだろう。
 ここにはあまり長居したくない。
 コノハ達が実験所内を歩いていると、反対側から全身フードに被った従業員?二人が

こちらに向かって歩いてくる。
 何となく、実験所の人とは目を合わせない方がいいような気がしている。
 しかし、フードを被っているとなると、逆にどんな容姿なのかが気になるもの。
 コノハは擦れ違い様にフードの人らをチラ見した。
 一人は女性。もう一人は……
「イルカの……」
 見覚えがあった。いつか、めえと海水浴に行った時、イルカに変身できる外人の少年

と出会った。今、コノハが擦れ違った男性はその少年に似ている気がした。
「ドル……フィー……」
 そう、確かそんな名前だったはずだ。
 しかし、二人は何も聞こえなかったのか、すぐ曲がり角を曲がり、視界から消えた。
「見間違い……だったのかな。そうやね、こんなところにいるはずないし……」
 しかし、コノハの心の中のモヤモヤは消えなかった。


 コンコン
 店長の研究室をノックする。しかし、返事はなかった。
「あれ、留守かな? どうしよう」
 コノハ達が店長の研究室の前で困っていると、ここの従業員の女性がたまたま通りか

かり、店長の居場所を教えてくれた。
 店長は今、入院患者のところにいるらしい。
 何か事件でもあったのだろうか……患者さんがいるところに入っていくのもどうかと

思ったが、カリンをいつまでもこうしている訳にもいかないので、コノハは教えてもら

った部屋に入った。

 ノックして扉を開けると、店長がすぐに見つかった。それともう一匹、いやもう一人

、入院患者と思われる女性がベッドに横たわっていて店長と話をしている風だった。
「トラ……」
 しかし、さっき搬送されてきた女性とは別人物だった。
 こちらの女性はさっきの搬送されてきた女性と違い、生物的な形をしている。ヒトの

部分とケモノの部分が入り混じっているが獣人に近い感じ。
「!」
 扉を開けたコノハ達を見て、店長は驚いた顔をした。
「君達! こんなところに一体どうしたんだ?」
 店長の驚きっぷりに、逆にコノハ達が驚いた。
「え、いや、その、カリンのことで、少し相談がありまして……」
「カリンちゃん? ……わかった。僕の研究室で話そう。それじゃあ、君も安静に。何

かあったら、ナースコールを」
「了解しました」
 店長はベッドに横たわっているトラ化した女性に言って、コノハ達を引いて研究室に

向かった。

「一体何があったんだい? 急に来るからビックリしたよ」
 研究室に入って、開口一番に店長が言った。
「すみません……」
 少し怒っている雰囲気があったので、コノハは謝った。
「抗癌獣化剤の受け渡しは前もって連絡しているでしょ。無くなった場合もここに直接

来る前に前もって連絡が欲しい。これには理由があるんだよ。ここは本来、君達のよう

な子が来るべきところじゃない。もし、誰かに捕まって実験材料にされても僕は責任を

取れないからね」
 そんな恐ろしい場所だったのか……
「君達が働いている風俗店やアニマル喫茶と違って、ここは厳戒な場所だ。時には命を

落とす研究員もいる。気楽に来ては行けない」
「すみません……」
「まぁ、僕もここについて詳しいことを言っていなかったけど、よっぽどのことが無い

限りはここに来てはダメだ。コノハちゃん達はここ所属の従業員じゃない。アルバイト

をしていてもこことは別なんだ。ここに所属するにはある誓約を結ばなければならない

……」
 店長は一呼吸置いて言った。
「ここで働くには……要約すると〝いつ動物にされてもいい〟という誓約が必要なんだ


 それは、命を握られているということだろうか……
 ゾッとした。会社に命を握られている。
「コノハちゃんと、他二人には覚えておいてほしい。僕達は無償で君達に抗癌獣化剤を

提供している訳ではない。こう言うとアレだけども、僕らは君達を要保護サンプル、実

験対象としているんだよ」
「……」
 タダほど怖いものは無い。
 そう、コノハ達はこの会社から見れば面白い一サンプルに過ぎない。
「まぁ、でもそんなに悲観する必要もない。君達の保護・管理はすべて僕が行うことに

なっている。上にも報告していない。僕の目が黒いうちは、君達は安全だ」
 店長がそう言って笑ったのを見て、ようやくホッとした。風俗店では見せない一面を

知った。
「でも忘れないでほしい。君達はこの会社にとってサンプルなんだ」
 だから、迂闊にここに近づいてはならないのか。コノハはそう察した。
「それで、カリンちゃんがどうしたって?」
 話はようやく振り出しに戻る。
「え、あ、はい。それが……」
 女から男性に向かって、この話はやりにくい……
 しかし、コノハは意を決した。
「カリンが男になったんです」
「?」
 店長が首を傾げる。当然の反応だ。ビーストトランスでも性転換の薬は無い。
「実際に見てもらった方が早いかな……テンリ、カリンを押さえてて」
「はいはいー」
「いやん//// あぁ、脱がせないでやぁー////」
 カリンが気持ち悪い声を出す。しかし、手錠をしているので抵抗はできない。
「!!!!?」
 カリンの下着をすべて勢いに任せて一気に降ろす。
 その露わになった股間を見て、店長は固まった。
 店長でも驚くということはよっぽど珍しい現象なのかもしれない。
「やん……店長、そんなにまじまじ見ないで////」
 カリンがキモい。体をくねくねする。しかし、アソコは興奮しているのかボッキする

。ヒトでない動物のアソコ。
「……これは……一体……」
 店長は興味深そうにカリンのソレを観察する。
「やぁ、やーん/////」
 カリンが異常に恥ずかしがる。しかし、恥ずかしがれば恥ずかしがるほど……ソレは

大きくなる……
 異様な光景だった。
「カ、カリンも何でこうなったのかはわからないみたいです」
 コノハは話を進めるために、こうなった状況を店長に話した(カリンに襲われたこと

は伏せて)。

「獣化によって性転換する話は聞いたことがないことはないが……股間だけというのは

初めて見たよ……」
「店長は何でこうなったと思います?」
「うーん……」
 珍しく、悩みこむ店長。
「ん?」
 しかし、カリンの髪を見て、何かに気付いたようだ。
「ふむふむ、ふーむふむふむ」
 一人で納得している。何か合理的な見解が得られたのであろうか?
「股間だけじゃないね、獣化しているの」
「えっ?」
 店長はコノハ達にそう言った。
「カリンちゃんの体をよーく観察してみると、動物……犬かな……の体の一部が交じり

合っている。ほら」
 店長がそう言ってカリンの髪を掻き分けて耳を晒すと、耳は犬耳のように垂れ下がっ

ていた。
「あれ? それはうちも気付かなんだ」
 カリンにとっては、股間のインパクトが強すぎたようだった。
「カリンちゃんは確か……動物と融合する体質だったよね……僕が推論するに、その体

質がちょっと変化して発現してしまったのではないかな……」
「え……それじゃあ、わたしもまた誰かを変身させてしまったりするん?」
 テンリが店長に聞いた。
「わからない……体質が改善されたように見せかけて、実は今まで変異していたから何

も起きなかったのかも」
「そんな……」
 テンリは絶望の淵に立たされた。顔が暗い。
「テ、テンリ……」
「あ、そういえばうち、この前、わんこと触れ合っていたら体が熱くなったような……

オスかメスかは確認してへんけど……」
「それや! それが原因や! 早く体から出したり!」
「い、いや、そう言われても……動物を取り込んでいる時の動物の意思が感じられへん

ねんもん……」
「……」
 現状として、どうしようもなかった。
「カリンちゃんをうちで預かってもいいかな? どうしてこうなったのか興味がある」
 店長のメガネが怪しく光った。
「……いいです」
「えっ!」
 コノハが即答してカリンは驚いた。
「また彼氏ができなくなる……」
 テンリはブツブツ言っていた。
「前々からカリンちゃんの体ヲ調ベタイとオモッテイタンダヨ」
 店長がカタコトの言葉で話す。この人も危険人物か?
「大学に来てもその状態じゃあれだから……徹底的に調べてください」
「ちょっ、コ、コノハあぁぁぁー!」
 カリンがショックを受けたような顔をしている。
「ギョイ」
 店長がパチンと指を鳴らす。すると、どこからともなく黒い服の人が現れて、カリン

をどこかに運んで行った……
「……」
 コノハはその手際の良さに驚いた。
「まぁ、安心してくれ。変なようにはしないから。カリンちゃんの体の謎が解けると、

僕らがメスケモに変身できたり、女の子がオスケモに変身したり、新しい可能性が開け

るかもしれない」
 店長の目は輝いていた。
「よ、よろしくお願い致します……あ、あと、その、抗癌獣化剤ももらえたら……」
「はいはい、そういう頃だと思って用意しておいたよ。今までは注射による投与だった

けれども、今回は新しく経口用のカプセルが開発できたんだ。試してみない? 一応、

両方渡しておくよ。カプセルがうまくいかないときはすぐに注射に戻して」
「ありがとうございます。わかりました」
 コノハは店長から薬の入った袋をもらった。
「テンリ……それじゃ、帰ろうか……」
「また彼氏デキナイ、デキナイ……」
 テンリはまた根暗キャラが再発しそうだった。コノハが無理やり肩を押して店長の部

屋を出る。
「あ、そうそう。テンリちゃんの協力のおかげでね、ローションタイプの動物変身薬が

開発できたんだ。塗った部分だけ獣化できるの、これで中途半端な変身も簡単にできる

ようになったよ。ありがとう」
 しかし、今のテンリにとってはどうでもいい情報だった。
「コノハちゃん、また何かあった場合には、前もって連絡をね」
「は、はい。わかりました」
 店長に念を押された。それほどまでにここは危険なのだ……
 コノハは暗いテンリを慰めながら、病院兼研究所を後にした。

「性外……セイガイ……まさか……な」
 コノハ達が去った後、店長は一人思案した。