「うへぁ……面白かったけど……何か間違った感が否めないわ……名古屋城行けなかったし、シャチホコォ……」
電車に座るなり、日和が唸った。
「城なんてどれも一緒だろ? シャチホコだって金ピカの魚が海老反りしてるだけだし」
徹夫はドライなコメント返した。
「徹夫……嫌い……」
「はぁ? どういう意味だよ」
日和はロマンがないとでもいう目で徹夫を睨み返した。
「確かに名古屋名物は全く食べなかったわね」
「でも人生で一度くらいしか食べないものは食べたと思うよ~」
ハヤセとユイが話す。
反応はいろいろだが、みんな楽しんだようだった。
食事に体力を使った僕らは今日の宿泊場である静岡に着くまでしばし、夢の中に入っていった。
「寒い……」
静岡駅に着いた。
「ヨシキタ! 静岡、何食べる? 桜えび? お茶? ひつまぶし?」
「ひつまぶしって名古屋じゃなかったっけ?」
「え? でもあれ、ウナギでしょ? ウナギなら静岡……?」
また日和と徹夫が討論している。意外に仲がいい。
今度こそ、名物を食べるぞという話になり、駅周辺を探索することになった。
初めて見る町を歩くのは何だかワクワク感がある。
みんなでああだこうだ言って歩く。
そして……やはり何を食べるのか決まらない。
そんなこんなしているうちに日が暮れた。
ここで再びシズが提案を。みんなは何だろうとゴクリを息を呑む。
すると、この季節にぴったりの静岡おでんというものがあるらしい。
今度はハズレがないだろうと確信し、みんなでおでん屋を探した。
「うひー、ビール、ビール!」
「日和、お前、そんな酒豪だったか?」
「彩音姉さんに鍛えられましたん」
「ねー」
あのクリスマスに一体何があったのか……
出てきたおでんを早速頂く。
「あ、美味しい」
「うん、これはうまい!」
今度は外れ無し! みんな昼間の分を取り戻すかのごとく、食いに走った。
「うぃっく! もう一件行くぞー!」
「こら、日和。おっさんか、お前は」
幼馴染みガード。どこかにフラフラ消えていこうとする日和の髪をがしっと掴む。
「痛い、痛い痛い、やめてよ、ハルぅ~」
「……」
完全に酔っ払っていた。
「そう言えば、今日の夜はどうするの?」
「ふっふっふ、今夜はネットカフェで宿泊だー!」
僕が聞くと、日和がにまーと笑って答える。
しかし、全員からブーイングの嵐。だが、日和はブーイングの嵐に怖気ず、力説する。
「ネットカフェ宿泊の魅力を説明しよう、諸君。あ、ちなみに漫画喫茶もほぼ同じ意味ね。部屋が狭いのは確かにそうだ。しかし、漫画がたくさんある! ナイトパックがホテル一泊より断然安い! ジュース飲み放題! インターネットし放題! 最近はシャワーがあるところだってある!」
何故か、異様に詳しかった。日和は経験者のようで。
メンバーは日和の話を聞くうちに、ネットカフェでもいいかも……という雰囲気になり、十時以降に早速、ネットカフェに赴いた。
僕を初めとして、ネットカフェ初心者が多かったので、日和から説明を受け、まずは会員証を作った。
自分の分を持っていた日和は……なんとかプラチナカードだった。
一体、今までにどれだけネットカフェを利用していたのか……
その後はみんな別々の部屋。同時に入店したので、同時に集まって駅に向かい、次の目的地へ行く感じだ。
「おー、まじで漫画いっぱい、やべぇ!」
徹夫が感動している。
「うぅ……箱みたい……」
ハヤセが部屋の狭さに嘆いていた。
「ホモ漫画、ホモ漫画~」
日和はもう漫画狩りに出かけていた。
「ここなら気兼ねなく、少女漫画読めるからいいね」
ユイがそんなことを言って嬉しそうに大量の少女漫画を持ってきた。
「お前のその顔だったら問題ないだろ?」
「えー、やっぱ僕も恥ずかしいよ」
徹夫の最もらしい意見に、ユイが顔を少し赤らめた。
「ジュース、おいちい、あんまり冷えてないのもあるけど」
愛子が飲み放題の虜になっていた。お腹壊さないといいが……
各自、自分の好きなように時間を過ごした。
そして、朝。
「お……はよ……」
死にそうな人達が約半数。
漫画やネットに夢中になり、ついつい徹夜してしまったらしい。
「うぅ、外、寒い……」
ブルブル震える夜ふかしの方々。
「……」
僕は言葉もなかった。
「と、とにかく、東京を目指そう。電車に入ると暖かいから」
夜、ちゃんと寝た組みが先導して、メンバーを電車に導いた。
案の定、電車に乗るや否や、夜ふかし組みは夢の世界に旅立っていった。
僕はそんなメンバーを見守りつつ、クスッと笑ってしまった。