どこかのホテルで不貞を働いた男女と女の夫の三角関係。
あらまし
難解さで知られる作品です。あらすじ以上の筋書きはありません。すべてが妄想なのか夢の中にいるようなシーケンスが続きます。
雰囲気は予告編参照。まあ、終始こんな感じです。
佐野元春「コンプリケイションシェイクダウン」の歌詞に登場していたりします。
「ドルチェビタ」はこれもまたフェリーニの難解作品「甘い生活」。シャレオツな歌詞ですね。
作品概要は、ウィキペディアから引用します。
かんそう
難解さを好んで観るいじらしい若者時代。早稲田松竹で「気狂いピエロ」と二本立てで観た記憶があります。バローズの小説みたいなカットアップ。サッパリ分からんかった。
今回、デジタルリマスターで上映されるというので出向いてみました。今回は肩の力を抜いて、分からんこと前提で観ました。なかなかエキサイティングな映画体験が出来ました。面白かったのです。
時系列ごとに書いた脚本をランダムに並べてる印象。最初の30分くらいはサッパリ分からない。映像美と劇伴を楽しむ他ない。
それでも似たようなセリフとカットが繰り返されるからだんだんと、不倫をしてる男女と女と夫の三角関係模様がみえてきます。
登場人物たちの言い分はすれ違い、時間も特定しにくく、とりわけヒロインの言動は曖昧模糊としています。こりゃ、黒澤明「羅生門」をオマージュした作品じゃね?(実際、脚本のロブグリエはそのように言ってます)だから最後まで観ても何が起こったのか分からないままじゃね…?
そう予想してストーリーを追うことを降参。このねじれた時空作品世界に心を委ね、自由解釈の海に出航すると楽しく観ることが出来ました。
自分の解釈ではこのホテルは不貞に迷える人々ココロの中を具現化した入れ物。人々はここから抜け出したいし、抜け出したくない。特にヒロインは駆け落ちでもして外気にさらされれば恋情が終わることを予期しているかのよう。自身の言動を曖昧にし、不貞の温もりから離れたくない深層が見え隠れします。
恋情はもとより有限。「ずっと一緒にいられない環境」というのが前提条件。同居したり結婚して生活を共にするうちに恋情は変動していく(必ずしもワルイ状態になるわけではありません)…というのが定説ですよね。
中でも不貞は行き着くところのない出口のない恋愛。親しく愛し合い、嫉妬して、その閉塞感からいがみ合い、また認め合う。その繰り返し。まるでこのホテルの回廊に象徴されるようです。冷たさの伴う様式美、ささやき合う人々。気づかないうちに自分自身が不貞のヌルい温もりの中にあるような錯覚に陥っていました。それはとてもエキサイティング!コーフンして魅入ってしまいました。
何度かココがエンディングだろうというカットがあったりします。そのたび、この不貞を終わらせるのが惜しいような、しかしホッとするような気分になります。
ついに二人はホテルから抜け出して駆け落ちしたかのようなカットがあります。だけどもそれも妄想。どうせ、戻ってきて駆け落ちなどなかったかのように振る舞い始めるのだろう。こいつらは永遠にこの退廃から抜け出せやしない。高を括って観ている自分がいます。そう。恋愛の美味しいとこどり。駆け落ちも単なる刺激的な肥やしで娯楽にも思えてきて、嗚呼、よかった、自分はコイツらじゃなくて、と思うのでした。