カナダデーと先住民寄宿学校 | へなちょこ母さん カナダ小話

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カナダ人の夫の山熊さん、息子、保護犬1匹と保護猫1匹とカナダで暮らしています。

昨日、7月1日はカナダデー(建国記念の日)でしたが、今年はコロナが理由ではなく、祝いのイベントがキャンセルになりました。

 

ダイヤオレンジダイヤオレンジダイヤオレンジ

 

もう16年くらい前ですが、私がカナダで事務職を始めた時のことです。

 

当時60歳くらいの方から

 

「外国人でカナダ人の中に入るのは大変でしょう。

私も先住民で白人ではないから、あなたの気持ちがわかるわ。」

 

と言われたことがあります。

 

てっきり白人のカナダ人だと思っていたので驚くと、

 

「あなたには私が白人に見えるかもしれないけど、白人の人が見たら、私が先住民の血を引いているってすぐわかるのよ。

私は小さいときに無理やり家族から引き離されて、先住民寄宿学校に入れられたの。

英語なんて知らなかったから、自分たちの言葉で話すと、それは酷い虐待を受けたの。」

 

と言って、ポロポロと涙を流しました。

 

その方は退職前は会社の重役をされていた方で、バリバリ働くキャリアウーマン。

タイプで言えば土井たか子さんのような強い感じの女性だったので、どれほど酷かったんだろうかと衝撃を受けたのを覚えています。

 

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先月5月27日。BC州のカムループス市にある元先住民寄宿学校の敷地内から、下は3歳からという215人の子どもたちの遺体が発見されたことが ニュース になりました。

 

 



これらのニュースを受けて、今年はカナダ・デーを祝うイベントが中止されたというわけなんです。

 

先住民の方たちはもちろん、カナダ生まれ、ヨーロッパ系か移民かを問わず、誰もが衝撃を受け、先住民の方たちやその地域に同情しています。

 

今朝、マックスを連れてダラスロード沿いのクローバーポイントに散歩に行くと、例年ならカナダデーはカナダの国旗の色と同じ赤や朱色と白の服を着る人が沢山いるのに、私が見たのはたった一人。


午後、湖に泳ぎに行くと、そこにも赤と白の服を着た人はいませんでした。


代わりに、どちらにも、先住民寄宿学校に対して理解を深めるオレンジシャツデーのオレンジの服を来ている人が沢山いました。


中学生の息子も学校でし〜っかりと時間を割いて、ヨーロッパ人がカナダにやってきて先住民の方たちへ行ってきた様々な詐欺まがいの契約、酷い差別や虐待について学んだそうですが、このニュースを受けて、更にその週は追加で理解を深める授業がありました。

 

メディアはもちろんのこと、私の職場でもCEOからと、同じ業界のCEO連名のものと、それぞれからスタッフ全員にメールでメッセージが届きました。


どちらも、先住民の方たちへのお悔やみのほか、先住民の方たちへの差別はけしてあってはならないし、平等な職場を作ってゆくために努力をしていかなければならないことなどが書いてあって、サポートラインのリンクもいくつか貼ってありました。

 

CEOからのメールによると、先住民の地域では、家族や地域の子たちが寄宿学校に行ったのを最後に戻ってこなくなったということは、家族または地域の中で珍しい話ではなかったのそうです…。

 

調べてみると、行方不明は3、4千人から3万人と、ずいぶん開きがありますが、それだけデータがキチンと残っていないということのよう。

本当に、家族を思うと胸が張り裂ける思いがします。

 

幼い子供達をヨーロッパ式の学校に送り、部族や家族との関わりも絶たせ、地域言語や文化の伝承を断つように仕向ける政策で、7世代に及ぶ15万人の先住民の子どもたちがカナダ全土にあった通いと寄宿どちらかの先住民学校(Indian residential school)に入れられたとのこと。


実際の運営はカトリック、アングリカンやユナイテッドの教会が主だったようですが、寄宿は衛生管理面も悪く、心身ともに酷い虐待があったところがだいぶあるようです。

そして、最後の学校が閉鎖されたのは、なんと1996年でした。

 

この何世代にも及ぶ政策の結果、学校から地域に戻っても、自分たちの部族に誇りを持てない、地域に溶け込めない、自尊心が持てない、親子や家族のあり方がわからないなどの問題や、PTSDを抱えたりなどして、自殺や麻薬、アルコール中毒に走る人などの原因を作ってしまったのだそうです。

 

このニュースがあった週は先住民寄宿学校について認知を広げるオレンジシャツデー(9月30日)と同じオレンジシャツを着ることがメディアでも職場でも奨励されました。

 

今BCで誰もが知るBC州衛生管理局長のボニー・ヘンリーさんも、私の職場のCEOにしても、


カナダに住む人々は、このことを嘆いたり恥じたりしてそこで終わるのではなく、先住民差別のない社会に変えるための行動、努力をし、この虐待を生き抜いてきた方たちの傷を癒やすために努力し、尽くすしていかなければならない。

 

という感じのメッセージを発表しています。


現在は先住民の方たちに様々なプログラムやカウンセリングなどのサポートがあって、人々の考え方も昔とは違ってきていますし、このカムループスのニュースよりもしばらく前から、様々な職場でマイノリティー優先採用がかなり奨励されています。

先住民の方たちの為には、特別の連絡先などが添えられていたり、とにかく、あちこちで先住民の方たちを採用してゆく努力が見られます。

 

カムループスの学校の捜索は20年も前から進められていて、やっと見つかったのだそうですが、今回のことで一般にも認知が広まり、国や州をあげて様々な捜索やプログラムが増えていくのではないかと思います。

 

先住民の方たちが誇りを持って生きていける社会になりますように。

そして、また来年からは、すべてを受け入れ、良い方へ更に変わっていくカナダの建国記念日を皆が胸を張って祝えるようになりますように。

 

下はノバスコシア州エスカソニの先住民地域にあるアリソン・バーナード高校の現役高校生、エマ・スティーブンスが、自分の属するミックマック(Mi'kmaq)という先住民族の言葉でビートルズの「The black bird」をカバーして歌っているものです。

映像は様々な先住民寄宿学校のものです(怖い写真とかではないです)。

すごく素敵なのでぜひ聴いてみてください。


 

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オレンジシャツデーとは。

 

1943年に、フィリスという6歳の先住民の女の子が、先住民寄宿学校に入学した時のこと。

楽ではない生活の中、おばあちゃんが、フィリスが入学する日の為に、綺麗な新しいオレンジのシャツを買ってきてくれました。

ところが入学した日、その綺麗なシャツを着て学校に着くと、着ていた服は全て取り上げられ、二度と戻って来ませんでした。

この体験から、9月30日はオレンジシャツを着て先住民寄宿学校について考える日となっています。