夏川草介『神様のカルテ』




神様のカルテ/夏川 草介
¥1,260
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栗原一止は、信州の小さな病院で働く悲しむことが苦手な内科医である。

ここは常に医師が不足している。

専門でない分野の診察をするにも日常茶飯事なら、睡眠が三日取れないもの日常茶飯事だ。

経験豊富な看護師と、変わり者だが優秀な外科医の友人と助け合いながら、日々の診察をなんとかこなしている。

そんな栗原に母校の医局から誘いの声がかかる。

大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間も増える。最先端の医療を学ぶことも出来る。

だが、大学病院や大病院に『手遅れ』と見放された患者達と、精一杯向き合う医者がいても良いのではないか。

悩む一止の背中を押してくれたには、死を目の前に迎えた高齢の患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。





はじめに少し読んだときは「え?森見さんのパクリ?」と思ってしまう、主人公・一止の話口調だったのですが・・・

物語は本当に素晴らしかったと思います。




現代医療への問題提議を、夏目漱石が好きな一止の、あの口調で語るからこそ

ただのお医者さんのお話にはならず

私みたいな普段、医療に関わりのない人にまでより一層伝わったのではないかな、と思います。




医療は難しいですね。



延命を優先し、死ぬまで病院にいるのか

自分の思い出のある自宅にいるのが良いのか


今の医療技術を全てつぎ込めば、心臓をだましだまし動かすことは可能なんでしょうが

それで、果たして命は動いていることになるのか。生きているといえるのか。



作者からの様々なメッセージが詰まっています。

本当の、現代医療の現場を知ってるいるからこそ書ける小説なんだと感じました。




『門出の桜』の最後の描写は素晴らしかったです!

『月下の雪』の手紙のところでは、思わず涙してしまいました。


是非、読んで頂きたい作品です!




キャラクターも全部魅力的で面白かったので読みやすいと思います。




まだまだ先ですが、櫻井翔さんと、宮崎あおいさんでの映画化も楽しみです。

有川浩『フリーター、家を買う』



大学を卒業して就職したものの、新人研修の末「ここは俺の居場所じゃない」と3ヶ月で会社を辞めた武誠司は、再就職もせずダラダラとバイトを転々としフリーター生活を送っていた。
しかし、母が重度のうつ病にかかった事を知り、姉からも自身のだらしなさを容赦なく指摘され、このままではいけないと当座の目標に再就職と貯金100万を掲げ、家族のために一念発起し、バイトに就職活動に母の看病にと奔走する。



面白かったです!


自分のプライドか邪魔し、家族のにでさえも不器用にしか接する事の出来ない父。

そんな父に、まっすぐ向き合い正論で言い負かす娘。

近所付き合いのいざこざを、家族のために一人で抱えこんだためうつ病になってしまった母。

社会からも、口煩い父から逃げ適当に毎日をダラダラ過ごす息子。


就職難の現代には、誠司の様なフリーターや第二新卒と言われる人はたくさん居ると思うし
家族の中にうつ病を患っている方や
近所付き合いが上手くいかない方など
武家のような家族が、本当にたくさん居ると思います。


有川さんファンでなくとも、今の20代の方々に読んで欲しい作品です。



姉・亜矢子と父・誠一の関係が凄く難しいんだけど良い関係だな。と、思いました。


書き下ろしされている最後のお話も、少しベタ甘で素敵だったので、有川さんファンも楽しめる作品だと思います。





10月から、二宮和也さん主演でドラマ化されるみたいですね。
原作と設定が大分違うようですが、有川さんブログによると良い科学反応が生まれそう。との事なので楽しみです!


ただ…香里奈さんの演技が、個人的に三本の指に入るくらい苦手なんですよね…

千葉ちゃんぽくないよなぁ…

『東京タワー』リリー・フランキー




オカン。ボクの一番大切な人。ボクのために自分の人生を生きた人。
四歳のときにオトンと別居、筑豊の小さな炭鉱町で、ボクとオカンは一緒に暮らした。やがてボクは上京し、東京でボロボロの日々。
還暦わ好きだオカンは、ひとりガンと闘っていた。「東京でまた一緒に住もうか?」
ボクが一番恐れていたことが、ぐるぐる近づいて来る。
大切な人との記憶、喪失の悲しみを綴った傑作。




2006年の本屋大賞受賞作品。
ドラマ化も映画化もされている非常に有名な作品です。
私は、ドラマも映画も観た事ありませんが…



最近、文庫化されたので購入し、人気作品なので、楽しみにしていたのですが。
正直、私の心には何も響きませんでした。


文体が苦手だったというのもあると思いますが
内容も結末も想像通りで、もの凄く物足りなかったです。