鹿

 

今は秋

わたしの春は秋だから

 

角をはずした鹿たちの

秋の瞳に

音もなく沈んで行く

はるかな春

はなやかな春

 

・・・(薩摩忠「愛する者たちへ」より)

 

 

今は秋

というから 季節は秋

と思ったら

わたしの春は秋

だという。

 

どういうこと?

わたしは 詩人?

いや、鹿のこと?

 

角をはずした鹿たちの

で、

季節は春だと 気づく。

実りの秋のように、

鹿の角も実って 生え替わる

と いうことか?

 

いずれにしても、今は春の季節だ。

それも

はるかな春

はるかな という表現で、

心は奈良に飛ぶ。

はるか昔 はなやかな 奈良の都。

 

秋の瞳に

音もなく沈んで行く

のは、

詩人の感傷にちがいない。