最近、身内の方に先天性の障害を持つ方から、
こんな話を聞きました。
その家族の背景は、父親がかなりの遊び人でほとんど家に帰ってこず、
働いたお金も家に入れることもなく、当然、家もかなりの貧乏でした、
そんな中、3人目の子供が生まれたのです。
病院だったのか、どういう場所だったのか詳細は分からないのですが、
3人目は助産婦さんにお願いして生んだらしいです。
生まれてすぐに先天性の欠陥(二分脊髄症)があることが分かり、
助産婦さんは父親に相談し、最終的には助産婦さんの薦めで、
父親が了承し母親には会わせずに、そのまま闇に葬られる運命でした。
お母さんは生まれてすぐに赤ちゃんも抱けず、
赤ちゃんはそのまま食事も与えられず5日間放置されていたのでした。
納得のいかないお母さんは、赤ちゃんを捜して我が子を抱いて
施設から抜け出しました。
この子は必ず育ててみせる。
そういう強い愛情と信念がその行動を取らせたのです。
通常この病気は生まれて二週間以内には手術をしなければ、
細菌に感染し、脳にまで細菌が回り死亡する確率が非常に高いのです。
施設を飛び出したけれども、
どうすれば良いのか分からなかったお母さんは、数日間は家で普通に育て、
生まれて二週間後に大学病院に飛び込みで診察を受けに行きました。
診察をうけると、もちろんこれはすぐに入院だということになり、
詳細な検査の後に、その赤ちゃんは手術をしました。
幸い感染もなく、無事に終わりました。
この病気は手術をしても臓器に障害が出ますし、
脳内の髄液量がコントロール出来ないために、頭が膨らむ水頭症にもなります。
水頭症を防ぐ為に、脳脊髄液を一定量に保つために、
開頭手術をし、
頭に管を通し脳内を一定の圧力に保つ手術をしないといけない、
それも成長に合わせて管を取り替えていかないといけないので、
五年ごとに手術をしないといけない、
あまりにも可哀想だと思ったお母さんは、その手術を拒否し、
子供を出来るだけ普通の子供と同じように育てることを選択して育て始めました。
その後水頭症にもならず、走ることは難しいですが、
ゆっくりとなら歩くこともできるまでになりました。
母親の愛情と、信念と、その子の生きたいという気持ちが起こした奇跡です。
その後4人目となる弟(障害はありませんでした)も生まれました。
お母さんは普通に育てることを強く望んだので、
小学校も普通の小学校に通わせることを望みました。
養護学校をすすめられましたが、お母さんの強い気持ちで、
学校もお母さんが同伴することで登校を許可しました。
その子は普通に勉強し、できることはなんでもやりました。
下半身が不自由なので、
排泄障害があり中学校までおむつをしておりましたので、
その子はそのことでよくいじめられたそうです。
でもそれにも負けず、中学、高校と進んだそうです。
高校になって、高熱が続くことが多くなり、
検査をすると、腎臓が5才で成長がとまり、
片方はほとんど機能していないことがわかったのです。
要するに腎不全です。
これは二分脊髄症の症状の一つです。
そこからも普通に暮らすことを本人も望んだのですが、
命に関わることなので、人工透析をすることになりました。
盆、正月関係なく一日置きに。
それからは体調を崩すことも多くなり、
高校卒業から20代半ばまで入退院を繰り返していました。
ある正月に病院から一次帰宅の許可が出ましたので、
家に戻り、正月ということもあり、気分も盛り上がって、
少しだけ贅沢な食べ物を口にしたそうです。
その夜には体調を崩し、
解毒できなかった毒素が全身に回り身体が黒色になったそうです。
すぐに大きな病院に運ばれて、集中治療室で治療を受けることになりました。
そこで生死の境を彷徨い、一命を取り留めたのですが、
予断を許さない状況なので、
なにかあったときの為に家族が交代で寝泊まりしていたそうです。
この病に戦っている方をここで仮にA氏とします、
A氏は自分の身の上に起きた間近に死を感じる出来事にパニックに陥り、
死への恐怖から、
「俺は生きたい、死ぬのは嫌だ、俺は絶対に生きたいんだ」と、
ベットの上で注射や薬をする度に暴れまくったそうです。
「頼むから、兄貴じっとしていてくれ」
とパニックのA氏を必死で、弟がなだめて押さえつけたのでした。
あまりにもたまらなくなって押さえつけながら弟は泣いたそうです。
今も人工透析を受けながら、
A氏は40才を超えて今も明るく元気に生きておられます。
20才以上は生きられないと医者から言われた年を遙かに超えています。
自分は絶対に生きる。この気持ちが今もA氏を支えています。
そんなA氏を近くで見ていた弟さんから話を聞きました。
そういう状況を体験したからこそ、
命を粗末にしようとするやつは信じられないと言っていました。
簡単に死ぬということを口にするんじゃないと。
死にたいヤツは本当に本気でがんばったのかよく考えて欲しいと、
生きたくても生きられない人がいるのだから。
そんなに命がいらないのであれば、その命を譲って下さいと。
僕はその話を聞いて、身が引き締まり、生きることをもっと真剣に。
一瞬一瞬を大切に、明るく生きていきたいと思いました。
死ぬことを考えている人はその前によく考えて下さい。