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本・漫画・映画のレビューブログ。
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おまけのこ/畠中 恵
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誰からも嫌われる”コワイ”はなぜ嫌われる?

家鳴りが行方不明?

脇役にも目の配られたシリーズ第4弾。


この作者さんはガッツを感じる。

何が何でも小説家になるんだ!

ライトだ、なんだ、と言われない、きちんとした小説を書くんだ!

という、強い思いを感じる。

実際、書くごとにどんどん上手くなってるし、

小説として、エンターティメントとして、メッセージの発信として、

細部まですごく努力してると思う。

初期のキャラクター小説的な、BL色も薄れたし、

すごく人気の出た家鳴りを主人公にする話を作るとか、

読者が何を求めて読んでいるかにも目が行き届いている。

シリーズ240万部突破だって!すごいねぇ。


一番最初の”こわい2の話と、表題作が好きだな。

”こわい”の話は、誰からも嫌われるアヤカシ、”こわい”と、主人公が仲良くなろうとする話。

いつもは親切な妖怪たちがこぞって、アイツは嫌いだ、イヤだ、というもんだから、

主人公が同情して声を掛け、仲良くなるんだけど、

結局、嫌われる原因は”こわい”の方にあり、その原因を自分で認めず、

ひたすら自己正当化、自己憐憫を繰り返す、というもの。

読後感はちょっと悪いけど、何も妖怪じゃなくっても、人間にすごく良くある話。

特に、いい大人。

ある程度人格形成されて、社会に出て認められると、自分の勝手な部分も、

『これが性格だから』と正当化しちゃって、改めない部分が出てくるから。

ある程度はまぁ、自分に自身をつけるためにも必要かもだけど、

行き過ぎるヒトも結構いるよねぇ。

まだ愛らしい例だと、順番を守らないお年寄りかな(笑)

店とかの列割り込みとか。

フォーク並びを理解していないひともいるけど、”年寄りだから許される”と明らかに思ってる人いるよね(笑)

お年寄りだから、別に全然かまわないけど。

おばちゃん、おじちゃんにやられるとムカつくね(笑)

絶対わかってやってるし。

と、ちょっと生活のグチなども思ってみてしまう短編。


あとは表題作。

まず、ネーミングがすごくいい。”おまけのこ”なんて!

家鳴りの、ちょっと童話のようなかわいらしいお話なんだけど、

ほんのちょっと、外れ者にされた、ちっちゃな孤独とか悲しみとか、

その淡い感情は誰でも覚えがあるんじゃないかなぁ。

ちっちゃな大冒険譚が愛らしくって、すごく好きだな。