ビリー・ミリガンと23の棺 | お役に立ちません。

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今年、ミリガンが制作に関わった映画が公開されるそうな。


24人のビリー・ミリガンの続編。

希望叶わず、最も監視の厳しい病院に移送されることになったミリガンはどうなったのか?

彼は、平安を取り戻すことが出来たのか?


前作よりは面白さが半減。

理由は、ミリガンの独善が目立つのと、

作家=ダニエル・キイスがミリガンに入れ込みすぎ、多少公正を欠いているように感じられるから。

勿論、ミリガンに肩入れしすぎず、平等を保とうという意志は、あるようなんだけれども。


前作の続き、

後半にラッシュで描かれた、ミリガンの怒涛の人生の詳細について描かれている。

つまり、ミリガンが希望叶わず、

政治家や、新聞などマスメディアに利用されまくった結果、

最も警備が厳しく、ミリガンを詐病だと考えている医師の下で治療を受けねばならず、

病気が治るどころかどんどん重くなり、精神崩壊を起こしかけ、

自殺を試みるも、なんとか復活し、希望が叶うと言う話。


相変わらず怒涛の人生で、

女にだまされ、看守や一部の医師に憎まれる、酷い扱い。

珍しい病気のために好奇の目に晒され、利用されまくり、自殺にまで追い込まれるのはかわいそう。


だけども、平気で法を破り、罪を犯し、自分を正当化する場面も多々あり、

また、描かれているほど酷い精神状態なのに、

結局はうまく状況に適応し、生き延び、医者と渡り合うため、犯罪を犯しながら取引する頭の良さ。

そこまで頭が働くのに本当に病気なのかな?

と疑ってしまう。


キイスも、だんだんミリガンに肩入れしてしまったらしく、

読んでいると、ミリガンを攻撃する人は悪い人、

擁護する人はいい人に思えてしまう。

最も、キイスが多重人格を信用しないことには、この物語は描かれなかったわけでけども。


結論としては、前作だけで良かったかなぁ、と。

前作の終わりは、悪夢のように転げ落ちる後味の悪いものだったけれども、

かといって、この続編を読んでスッキリ、ということもない。

多重人格者の数奇な運命と言うより、ひとりの男の波乱万丈な人生だし。


”ミリガンは本当はいいやつなんです”て本じゃないけれど、

世間に攻撃されまくる姿を読んでいると同情してしまうし、

それに見合う人格を期待してしまう。


彼の為に、ガンを隠してまで尽力してくれる弁護士や、

事務所で働かせてくれる弁護士、

融通を図ってくれる看護士なんかもいるのに、結局ミリガンは平気で犯罪を犯す。

”自由になるにはこれしかない”とかなんとか言いながら。

そこがどうも、納得いかない。


あ、でも、そういう行動を克明に描くんだから、キイスはやっぱり公正なのかw?


1作目だけ読んでおけば充分な本。