- 猫―TOKYO WILD CATS 武田花写真集/武田 花
- ¥5,040
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東京の路地裏を中心に、
空き家や荒地の隅で逞しく生きる
野良猫写真集。
武田花さん。
有名な猫写真家のひとり。
だけど、あんまり好きではない。
写真としては好きだけど。
猫写真の最高峰は岩合光昭だと思っている。
猫の見せる表情の和やかさ、毛並みの柔らかさ、
背景の明るい美しさ。
この花さんの本と似たようなテーマの、下町の猫でも、
牧歌的な、のどかな雰囲気が漂う。
対してこれは、まさに、”都会に生きる猫”。
それも、崩れかけたような家、捨てられたごみなど、東京の影のような場所ばかり。
猫の顔も鋭く、警戒心が溢れている。
中には、狭い場所に上手く収まってひなたぼっこしてる、THE・工夫猫もいたりするけど。
生きる厳しさ、みたいな雰囲気が充溢しているのに対し、
何故か、センテンス的にはさまれる言葉が、調子っぱずれなのも気になる。
どう見ても鋭い目、警戒心丸出しの猫ばかりなのに、
「ひなたぼっこあったかくていいねぇ」「こんにちわ」みたいな、
よくある、猫写真集みたいなものばかり。
アイドル写真集のような、ただ猫が可愛ければいい本とは随分内容が違うと思うんだけれど。
全編モノクロで、猫がメインだけども、
同時に、都会の光に収入や、美しい家を持っていかれた、影のひとびとを映し出している気がする。
”お金がなくてもたくましく生きています”じゃなくくって、
色々と足りない生活に、若干の麻痺を起こしながら、工夫して生き延びている生活。
また、ソファや家など、残されたもの。
こんなものを捨てていってしまったひとは、どこへ行ったんだろう?
どうなったんだろう?
しゃしんはやっぱり、視点だな、と思う。
写真家という、世界の観察者の鋭い視点を、分かりやすい画としてみるものだと思う。
そして、巻末におまけのごとくエッセイが付いているが、
これが非常に秀逸。
文才もあるが、やっぱり、視点が鋭い。
牧歌的な猫写真を求めていたから評価は低いけど、
東京漂流、そして猫。
なイメージならば、とてもいい写真集。