- ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)/宮部 みゆき
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実は映画を先に見ました。
今まで平和だったはずの家庭に突如起こった離婚話。
小学生のワタルは、両親を、母を、なんとか取り戻そうと、
異世界へ冒険の旅に出る。
ちょっと一言ある面白さ。
キャラクターの心情描写、人間関係、ストーリーテリングは抜群。
ファンタジーとしてはイマイチ。
まず、主人公ワタルのこころの動きが秀逸。
あと、母。
さすがは宮部みゆき。
映画だと、被害者でかわいそうな母とこどもだったけど、
原作では、実はそうじゃないってことが良く分かった。
親の都合に振り回される点ではワタルは被害者だけど、
旅に出る前、自分が一番可哀相だと思っていたり、
旅に出たあと、エゴに振り回されたり。
母は、いきなり離婚を申しだされた悲劇のひとではなく、実は…という。
怖えぇ!!(何気にこれが一番衝撃)
純粋な被害者、加害者なんてものはなくて、
こどもだとはいえ、人間て複雑だなぁ、と実感できる。
”女神様にひとつだけ願いを叶えて貰える”ルールを、全面的に上手く使用。
旅で出会うひとびと、起こること、含みと深みがあり、
うんうん、そうだよなぁ、と現実的に読める。
現実的、そこがなにげにイマイチポイントだったり。
分類としては、児童文学に入れてもいいようなファンタジーなんだけど、
そのジャンルの他作品(上橋菜穂子とか)に較べると、
ファンタジー的完成度が低い。
メッセージや、旅で出会うこと、起こることの意味が全て明快に言語化されており、
読者が読み解いたり、想像する余地がない。
脇役の性格がデフォルメされすぎて、人間としての深みがない。
世界観はゲームのようだし、
ファンタジーというイメージを借りた、少年の成長物語、っていった方が正しいかも。
ライトファンタジーになるのかなぁ?
世界の成り立ちの秘密や、大陸間、国同士の問題とか、
良く考えられてあるっちゃああるけど、
世の中には守り人シリーズや、ゲド戦記と言うハイファンタジーが存在するもので、
較べちゃいかんが、どうしてもチープに思えてしまうんだよねぇ。
主人公を巡る、現実とこころの問題のリアルさには非常に納得、
だけど、ファンタジー要素の完成度が低い。
ってまとめかなぁ。
つまらなくはないんだけど。
ファンタジー好きには物足りないというか。
デフォルメされた人間物語といえばいいのか。
ワタルのエゴや懊悩、行動、成長は好きだし、
ミツルの悲惨さ、香織の存在の意味とか、物語として深いよね。
分かりやすく深いというか。
もの凄く、明快な物語を書くひとだなぁ、という印象。
文章も凄まじく読みやすいし。
ストーリーテラーだなぁ。