夜は短し歩けよ乙女 | お役に立ちません。

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本・漫画・映画のレビューブログ。
本は月に10冊ほど、漫画は随時、
映画はWOWOWとTSUTAYAのお気持ち次第(笑)

森見 登美彦
夜は短し歩けよ乙女
トップランナーセレクション出てたね。

純朴、純粋、天然培養の黒髪の乙女。に、恋する主人公。
いつの間にやら彼女の視界に入り、気になり、恋される、図式を実行せんがため、
乙女を追いかけ、京都をひた走る!


面白い!
面白すぎる!
キャラクター、物語のテンポ(短編連作で読みやすい)、
そして何より、抱腹絶倒のギャグ。

気難しそうな文学青年、といった主人公、また、それに見合う堅めの文体。
にもかかわらず、ひた走る妄想、繰り広げられる空回り、
だめんずな行動のギャップがとにかく笑える。
POPでおもろい文体で書かれても笑える超絶ギャグが、
基本的に真面目かつ堅く描かれているギャップがたまらん。

キャラクターも、基本的にまともな人は出てこず、
物語も、えっ?そんなんおかしいやん?な展開になるも、
結構普通に、むしろ面白おかしく読める。
乙女の無敵の魅力もさることながら、
脇役がかなり強烈。

サリオはパンツ番長が好きすぎる。
ばっちい。
ばっちいが、なんとなく、ほんとに京都の大学生にいそうとか思っちゃう。
京都に住んだことないケド。
くるりの岸田さんとか、相当マニアックだし、
電車マニアかつ便器マニアなきっしーを輩出した京都なら、
リアルにいるかもしんない。
いいやつなんだよね、パンツ番長。
激しく間違ってるけど。

ある意味、全員が硬派・和風なアメリみたいな感じ。
恋心をストレートに表すことが出来ず、
非常に婉曲かつ、妄想の暴走により、
あんまり関係ない方向にひたすら頑張ってしまうという。
小心者がやらかしそうな、その発想と行動のねじれの位置に非常に共感。
わかる、わかるよ。
勇気が出ないけど、妄想逞しいと、変な方向いってしまうんだよね!

今でこそ、”妄想が趣味”とか、普通な単語だけど、
なんで市民権を得たかというと、こんな、森見的、男子中学生的、
更に言えばモテない大学生的、恋愛妄想が共感できて笑えるからだと思う。
ちょっと前は、”妄想が趣味”なんていうと、頭のヤバイ人な響きだった。
んだが、ネットなり、ネット世代のこんな本なりで、
おもろい妄想が広まったので、妄想、いいじゃん。的になったんじゃないかと思う。

思ってしまうような、主人公および、モテない男たちの妄想がおもろい。

”パンツ番長”もだけど、
”おともだちパンチ”とか、
妙にインパクトある単語が、上手いところも好き。
キレのあるギャグ、てかユーモアに満ち溢れた作者なんでしょう。

それにしても乙女は可愛い。
理想の女性を上手く描ける人って売れるよね。
歌とかでもそうじゃん。
現実にいないけど、いて欲しい、理想の女性を描くのとか、売れるじゃん。
女性が描くと、リアルすぎて生生しくなっちゃうけど、
男性が描くと、いい部分しか描かないから、本当にキュートな人物造詣になるんだよね。

あー、おもろかった。