ぬしさまへ | お役に立ちません。

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本・漫画・映画のレビューブログ。
本は月に10冊ほど、漫画は随時、
映画はWOWOWとTSUTAYAのお気持ち次第(笑)

ぬしさまへ/畠中 恵
¥1,365
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しゃばけシリーズ第二弾。

あいも変わらず、風に当たれば寝込み、外に出ただけで風邪を引く、激弱若旦那。
しかし、頭脳は冴え渡り、見えない仲間に恵まれ、今日も事件を解く。
手代に掛けられた殺人疑惑を晴らす、他短編集。

丁寧に、丁寧に、文章を、話を描いていた前作とは打って変わった短編集。
『時代物を何が何でも書くぞ』よいう堅苦しさ、意気込みが抜け、
時代考証をうまく消化できず、ところどころわかりにくい。
また、おそらく生来のライターでない(文章センスがない)せいで、妙な比喩表現が顔を出したり、
全体的に文章が不味く、何が言いたいかわからない。
とはいえ、謎解きで物語を引っ張り、己の持ち味=キャラクターの良さを存分に生かし、
読者が読みたいものをよく書いている。
作者が書きたいもの=時代小説、ミステリーも頑張って、誠実に書いているのは分かるので、楽しく読める。

主人公側の登場人物は基本的に善意で成り立っているところや、
主人公と妖怪の関係が、ドラえもん×百鬼夜行抄といった印象。

若旦那が徹底的に周囲に愛される、その構図が変わらない安心感、
基本キャラクターの妖怪たちの魅力で、もっと読みたい、もっと読みたい、て気持ちになる。
ストーリーに大きな変化はもたらさない、脇役がとにかくいい。
家鳴り、屏風覗き。
むしろ、ちょっとはた迷惑くらいのキャラクターが、生き生きしていて、そこが好き。
基本の人間関係が、若旦那を慈しむようにできているから、
悪気はないけど、若旦那に悪影響も及ぼしかねない存在がいいスパイス。

そして何度もいうけどイラストがいい。
この表紙じゃなかったら、ここまで人気じゃなかったと思う。