- 三雲 岳斗
- M.G.H.―楽園の鏡像
恐怖を覚えるほどに澄んだ、赤い球体が無数に浮かぶ。
宇宙ステーション、漂う男の死体は”墜落死”したようにしか見えなかった。
真空に包まれた孤独な人工建築物の中、不可能犯罪の真実は?
うーん。
主人公に感情移入できない。
最大の欠点。
頭の良さに引きこもってるような主人公。
自分で招いた孤独。
うーん、心理は詳細に説明されるんだけども、原因よりも実際的な冷たさが気になっちゃうよ。
表層的に他人と対応する人格、それを”高みから見下ろし”別のことを考える人格。
その差異に苦しむから、他人と上手く関係が築けない。
って…単に他人を馬鹿にして受け入れられないといってるようなもんでは?
そして、美人で、絶対的に主人公を愛してるヒロイン像も痛い…
無愛想な主人公が唯一心を許す幼馴染、元気で明るくて強引で主人公が大好き。
だけど、幼い頃は病弱で主人公にだけ頼ってきた、という儚い一面もある。
要するにこのヒロインが現実的なことを全て引き受け、
主人公は推理だけするような小説です。
キャラクタ的なことを言えば。
だって、ヒロイン、医者の卵で、格闘術を学んでいるという設定、
検死、バトル、ぜーんぶ引き受け。
女の子になんでもやらせすぎなのでは?
と、主人公の悪口ぺいぺいですが、お話は良くできています。
奇妙な謎でぐっとひきつけ、未来の宇宙旅行描写や、アプリカントなる、人工知能でSF味をがつっとつけ、
漫画的わかりやすいキャラクタ群と矢継ぎ早な構成でぐんぐん読ませる。
そこにメインテーマとなる、思考の存続を貫かせ、帰着も綺麗におさまれば、
まぁなんともよくできている。
発想のザンシンさはそれほどでもないけど、うん、よくまとまってる。
なんだけども。
うーん。SF,ミステリを読み込み、「こんな風味ね」でとてもうまくまとめられてしまったかんじかなあ。
職人技というか。
メインテーマの思考の存続と人格についての考え方、ミステリ要素が微妙に分離してるんだよね…
冷静に考えると、結構尻切れトンボでどれも終わっていたり。
人格についてはちょっと納得いかなかったなあ。
確かに人間、色んな人格を持っているけども、それは「こういう人格です」と、
とって見せられるものではないと思うんだ。
ただの、別の側面、サイコロの片面のもんだい。
職人的構成、ストーリテリングは抜群だけど、
漫画的キャラクタ設定、
中でも頭が良くて孤独で人を見下している主人公像が好きになれず、
うーん、三雲岳人、惜しい存在。