遺伝性血管性浮腫(HAE) | こけ玉のブログ

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不惑の年などもうとうに過ぎたのに、いまだに自分の道も確立できていない。
そんな男の独り言。

あなたも時にむくみ(浮腫)が気になることはないだろうか。

一般的には立ち仕事の人の足のむくみや、寝起きの顔面のむくみなどがあるだろう。

むくみは体表の目に見えるところにだけ現れるのではない。

喉に起きれば嗄声(させい:かれ声)や喘鳴、ときには呼吸困難をも引き起こすことにもなり、重大な症状にもなるのである。

このような突発的に体のごく一部に生じる浮腫は「血管性浮腫」とか「クインケ浮腫」と呼ばれる。

19世紀後半にドイツ人のクインケ医師によって最初に報告された。

そのうち、遺伝性が明らかなものとして区別されたのが今回の遺伝性血管性浮腫(以下HAEと略)と呼ばれるものである。
 
 
 
HAEはまぶたや唇、手足、そして時には気道や内蔵に突如として限局した「浮腫」が出現し、突如に引くという症状を繰り返す疾患である。

消化管にその浮腫が現れれば腹痛や下痢を起こし、気道に現れれば窒息を起こしかねないので、発作の管理が極めて重要となる疾患である。

海外では5万人に1人とも言われているようだが、日本での有病率は明らかになっていない。

通常の血管性浮腫がヒスタミンを原因として生じるのに対し、HAEは遺伝子異常により「C1インヒビター」というタンパクの減少・機能異常によって現れるのだそうだ。

「C1インヒビター」というタンパク質に異常があると、血管の外に血液中の水分などが漏れやすくなるため、漏れ出した部位に浮腫が生じることになるのである。

通常の血管性浮腫との識別をまとめると以下のようになる。
 

HAE遺伝性血管性浮腫
C1-INH欠損による)

徴候と症状

血管性浮腫
(ヒスタミンを介する)

通常は、家族のだれかに繰り返す浮腫が見られる

家族の病歴

家族に同様の症状なし

皮膚の腫脹(境界が不明瞭)
舌の腫脹

腹痛発作
喉頭浮腫(ときに致命的である)
蕁麻疹に付随しない

臨床症状

皮膚の腫脹(境界が明瞭)
舌の腫脹
ほかの器官は影響なし
 

多くの場合、蕁麻疹に付随する

小児期または思春期に最初の徴候
(出現消退を繰り返す浮腫)

発症年齢

成人期に最初の徴候

●HAE 1型(C1-INHの機能およびタンパク量の低下)
●HAE 2型(機能的な低下のみ)
●HAE 3型(女性のみ発症、C1-INH欠損でなく
血液凝固第12因子の遺伝子異常?)

種類と原因

特発性(原因不明)
急性または慢性蕁麻疹に関連
●ACE阻害剤(喉頭浮腫を引き起こす可能性もある)
他の薬剤

補体C4濃度が低い
●C1-INH活性の低下(HAE 1型、2型)
●C1-INHタンパク量の低下(HAE 1型)

検査所見
(血漿)

C1-INH活性とタンパク量は正常(極めて少数例ではC1-INH活性の低下がみられることがある)

発作時には、HAE 1型、2型ともにC1-インヒビター補充療法、 予防時には抗プラスミン剤、抗ゴナドトロピン薬

治療

蕁麻疹関連の場合:副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン

(HAE情報センターのHPより転載、一部修正)

 
 
HAEのわかりやすい大きな特徴を見ると、

①家族にも同様の症状が現れる

②皮膚の腫脹の境界線が不明瞭ではっきりしない

③腹痛発作や喉頭浮腫など皮膚以外の器官にも現れる

④蕁麻疹に合わせて発症しない

⑤発症年齢が小児期~思春期と若年である

といったところだろうか。
 
 

HAEは若年期から身体の各所で繰り返し生じる。

発作の引き金になるのは身体的・精神的ストレスとも言われているが、何ら誘因がなくとも生じることもあるそうだ。

境界がはっきりせず、ぼんやりと腫れぼったくなり、一般的には1~3日ぐらいで跡形もなく消失する。

しかし、発症頻度は個人差が大きいようで、ほとんど発作を起こさない人もいれば、多い人では週に1~2回も生じる人もいるという。

半数の患者さんは1か月に1回かそれ以上の発作を経験するとのこと。

HAEは稀な疾患であるがゆえに診断名が付くまで時間がかかることが多いという。

ただし、遺伝性疾患なので、遺伝子検査を行えば正確な診断ができることもその通りである。

突然変異で発症した場合はなかなかたどり着くことは難しいかもしれないが、片親がHAEであれば50%の確率で遺伝することになるので、あらかじめ遺伝子検査を行うことで、まだ症状が発現していない場合でも将来に備えておくことが出きる。

治療法は欠損している「C1インヒビター」の補充療法が中心となるようだ。
 
 
同じ腫れる症状でも蕁麻疹は発赤し、かゆみが強く数時間以内で急速に消えてしまうが、HAEは発赤もかゆみもなく腫れが引けるまでに時間がかかるので、そのあたりも覚えておくと識別に役立つかと思われる。

腫れが体表上であれば見た目が一番の問題となるが、口の中、舌、気道などに現れると息がしづらくなり、窒息の恐れも出てくるので大変危険である。

消化管に発症すると腹痛のほかに嘔吐、下痢などの症状もみられる。

こちらも腫れ自体は2~3日で収まるとはいえ、その間苦痛にさいなまれることを考えれば大変な疾患であることは間違いない。
 
 

209名のHAE患者を調べたところ、131110回(一人当たり約627回の発作回数、なんと多くの発作に悩まされていることか!)の発作のうち、皮膚上と腹部に起きたのが約半数ずつで、喉頭部に起きたのは約1%だったという。

そして、この疾患のほとんどの人は皮膚や腹部での発症を経験するが、喉頭部での発作を経験した人は約半数の108名だったという。

つまり、この疾患を発症すると、窒息の危険性を持つ発作を起こすことは少ないけれども、半数以上もの人が少なくとも一度は経験するという実態が明らかになっている。
 
 
「浮腫む」という症状は中高年の方であればほとんどの人が経験したことがあるのではないだろうか。

たかが浮腫みだが、その浮腫みが命をも脅かすことがあるのである。

たった一つの遺伝子の異常によってもたらされる命の危険。

何ら身体的欠損もなく、何一つ遺伝子に異常なく生まれてくるということは、かくも奇跡に近いものなのだと改めて感じさせられる。

「生きているだけで丸儲け」とは本当に真実なのかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 

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