http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1202/01/news121.html
首都直下でマグニチュード(M)7級地震の発生リスクが高まったといわれるが、通勤途中で災害に見舞われたらどのように身を守ればよいのだろうか。特に地
下鉄のトンネル内では身動きがとれないだけに、心配も大きい。構造上耐震性は地下の方が高いようだが、大津波が発生すれば一部区間は水没する危険もあると
いう。日頃からの心構えが命の分かれ目になりそうだ。
「お客さまにお知らせ致します。津波警報発令に伴い、避難勧告が発令されました。駅係員の誘導に従い階段をご利用の上、速やかに付近の高い建物の3階以上へ避難していただくようお願いします」
これは大阪市営地下鉄の梅田駅が用意している津波発生時の構内アナウンス用原稿。地下鉄では、地震発生時における最大の敵に対し、こうした準備もしている。
東京、大阪は双方とも津波災害の経験を持つ。大阪では1707年の宝永地震(M8.7)で街に津波が押し寄せ、約7000人が溺死したといわれ
る。東京でも1703年の元禄大地震(M8.1)で1・5~2メートルの津波が到達し、川を遡上(そじょう)した波が周辺に被害を与えたとされる。
政府の中央防災会議は東京湾北部地震(M7.3)が発生した場合、地下鉄など交通機関で200人の死者が出ると想定している。
1995年の阪神・淡路大震災以降、全国の地下鉄で支柱の補強などにより、耐震化は格段に進んだ。昨年の3.11でも仙台市地下鉄は構造物に大きな被害がなかったため、地下区間は地震発生から3日後に運転を再開した。
専門家は「地震が起きると地下の構造物は地面と一緒に柱や壁が動くため、地上の建物より揺れに対してはるかに強い」(地震工学者)とみており、トンネル崩落の恐怖はほとんどないようだ。
東京の地下鉄では、かつて「集中豪雨があったときに一部のトンネルが水没する被害に見舞われた」(民鉄関係者)という事故があった。幸い、終電後
のトラブルだったため死傷者はなかったが、水に対する弱さがあらためて浮き彫りとなった一件だった。相手が高さ数メートルの津波なら、各出入り口の止水
板、防水扉では太刀打ちできない。
大津波の発生時には、一刻も早い地上への避難が求められる。脱線などで電車が動かなくなると、乗客は乗務員と最寄りの駅から駆けつけた係員の指示
に従い、列車の最前部か最後部の貫通扉から仮設の階段を降り、約1.5メートル下の線路上に脱出する。都営地下鉄を運行する東京都交通局は、「最も近い駅
まで、比較的安定して歩けるレールの間を落ち着いて通っていただく。非常用の電灯は数時間持つので暗闇にはならない」(安全対策推進課)という。
列車が走行可能なら、速やかに近くの駅まで移動させる。東京メトロでは「列車が地震で緊急停止した後、時速5キロの最徐行で近くの駅まで走行し、乗客を駅から避難させる」(広報部)。都営地下鉄も25キロ以下の徐行で最寄りの駅まで列車を動かす。
その後は駅員らの誘導に従い、地上へ出てから高い建物に避難する。前述のように大阪市営地下鉄では「3階以上の建物」への避難誘導をマニュアル化している。
多数の商店が軒を並べる地下街でも注意が必要だ。単独の地下街では日本一の面積(約8万2000平方メートル)を誇る大阪市のクリスタ長堀では、
「非常電源があるので突然真っ暗になることはなく、館内放送も継続できる。津波の避難勧告が出れば、お客さまを近くのビルへ誘導する」(管理担当)。ま
た、東京の八重洲地下街も「非常灯は通路で1時間点灯する。避難誘導を含め、年間を通じて防災訓練を実施して備えている」(保安部)と、態勢は整ってい
る。
ただ、通勤ラッシュや買い物客が多い混雑時に順序よく避難できるのだろうか。阪神・淡路大震災、東日本大震災はともにラッシュ時外で発生。わが国では混雑時間帯を直撃した大地震に対応した実績がないだけに、不安は大きい。
地下鉄内での自己防衛について、災害救援に詳しい日本セイフティー災害研究所の伊永勉所長が解説する。
「まず、津波の到達までには時間があることを認識し、慌てないでほしい。宝永地震のとき、大阪に津波が達するまで2時間かかったといわれる。15
分や30分で水没することは絶対にないのでとにかく落ち着くことだ。焦って地下鉄の車外へ飛び出すのはご法度。路線によって高圧電流が流れるレールが線路
脇にあり、非常に危険だ。駅に着いても階段に人が集中し、すぐには地上に出られないだろう。でも、待っていれば必ず上がれて助かる。パニックになって将棋
倒しを起こす方がよっぽど恐ろしい」
津波の力は東日本大震災でまざまざと見せつけられた。しかし、到達には時間的な余裕がある。どんな混雑のなかでも皆が整然と動けば、身は守れる。