なぜ日本人は子どもをひばくさせたか?(4)必死の注水の理由 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

なぜ日本人は子どもをひばくさせたか?(4)必死の注水の理由 (1/24)




2011年3月12日、原発事故が起こった時、日本中が青くなり、自衛隊がヘリコプターで必死に上空から水を掛けた. その後も必死の防御作業をした。あれは何だったのだろうか? どんな事が起こると思ったのだろうか?



以下、政府、原子力安全委員会、保安院、東電などが、今まで言ってきたことと、事故後、発表したことが事実なら、「たいした事が起こらないことがわかっているのに、大げさな防御を必死でした」という実に奇妙な結論になる. これは原発の安全性と再開問題に大きな課題を残す.



福島原発は軽水炉で、水で中性子を減速している。だから原子炉の温度が上がり水が蒸発すると水蒸気になるので、減速せず核分裂は止まる.これを「固有安全性」といって政府や電力がくり返し原発が安全だという理由に使っていたことだ。



しかも地震の時に緊急停止して制御棒(ホウ素)が入っている。だから制御棒が中性子を吸収するのでまったく核分裂はしないはずだ。



そうすると、大きな危険は、水と金属が接して金属が腐食して水素を発生することによる水素爆発だけである. 原子炉内は次々と水素が発生するので、それを建物内に抜いている間は、建物上部で爆発する可能性があっても、原子炉は爆発しない。



そして、1,3,4号機が水素爆発し、2号機からの大量の放射線が破れた窓からでたのだから、核爆発が起こらなければ、福島の状態が軽水炉における「最大の被害」ということになる。この「最大」というのは政府や電力がこれまで言ってきたことが正しいとすれば最大になるという意味だ。



ところが、爆発後に政府はスピーディーの結果を発表せず、福島県は1年100ミリまで大丈夫と言った.つまり、原発は冷やしもせず、必死の防御をしなくても、問題は無かったということになる。それなのに首相は福島の東電社員に事故後、「命をかけて***を守れ」と言った。何を守れと言ったのだろう???



第一に「軽水炉は水が無くなり、制御棒が入っても核爆発する」ということなら、他の原発は絶対に再開できない.



第二に「1年100ミリシーベルトまで大丈夫」と言うのがウソなら、政府、自治体などの責任が問われるし、再開に当たっても基準を合意しておかなければならない。



その他の理由もあるだろう. でも今の所、この二つが主である.マスコミが騒いだ「メルトダウン」というのは水素爆発より軽い事故になるので(スリーマイル島事故はメルトダウン)、マスコミは言葉にとらわれて誤解しているが、メルトダウンは福島事故より1000分の1ぐらいのことしか起こらない.



そうすると、政府などのうろたえぶりは何を怖がったのだろうか? まして、福島県や日経新聞の論調から言って、日本の中枢部は「今回の福島原発では健康被害はでない」と考えているらしい.そうすると、あの事故の時に何を恐れたのだろうか?



くり返すが、現在の状況以上のことが起こるということは、「核爆発」だが、チェルノブイリ以来、日本の原子力関係者は「チェルノブイリと軽水炉は違う。制御棒が入らなくても固有安全性があり、制御棒が入れば万全だ」と言ってきたが、事故が起こったとき、何が起こると思ったのだろうか??



もし、日本の原子力専門家が「もっと恐ろしいことが起こる」と恐れたとしたら、原発再開はできない。もしあるなら、まずは「何を恐れたのか?」をハッキリさせて欲しい。私は「水素爆発すると1年1ミリを超える」と考えたので避難を呼び掛けたが、1年100ミリならゆっくり避難しても大丈夫だからだ.



事件直後、あらゆるマスコミが連日、トップで報道した.それが2年たって全くといって良いほど報道されていない. その間に何が変わったのか? 今こそ、「原発を再開する」ことに抵抗のない原子力科学者、電力関係技術者が自らの信念をもって社会に「なぜ、あれほど苦労して注水したのか?」を明らかにすべき時である。



おそらくは事故直後は「1年1ミリ以上の被曝になるから大変だ」と思い、それを防ぐことができなかったので、「1年100ミリ」と言い出したと思います。そんなウソつきなら原発は全くできません。


(平成25年1月24日)





--------ここから音声内容--------





えーと福島原発事故は、もうすでに政府の調査委員会報告なんかも出て、ま、ケリが付いたようになっておりますが、まぁ全くおかしなことがいっぱいある訳ですね。これを解決しておかないとですね、まぁ次の、再開とかそういった問題に我々考えられることができない訳ですね。で、ちょっと思い返していただきますと、2011年3月12日に原発事故が起こった訳ですが、日本中が青くなりましたですね。大変だと狼狽えたわけですね。まぁそりゃあ、あの爆発を見たらそう思いますね。





しばらくたってテレビにはですね、自衛隊がヘリコプターを上空に飛ばして、被曝をしながら…自衛隊員が被曝しながら、必死に上空から水をかけておりました。ま、その他もですね、消防署なりなんなりが突撃してですね、防御をしました。あれは何を防御したんでしょうかね。どんなことが起こるから何をしなきゃけないと思ったんですかね。主には『冷やす』っちゅうことをやってますけど、なんで冷やさなきゃいけなかったんでしょうか。





これについてですね、この記事では、政府原子力安全委員会、保安院・東電などが今まで言ってきたこと、一応ですね事実として考えますとですね、『大した事が起こらない事が解っているのに、大げさな防御を必死でした』という実に奇妙な結論に到達する訳ですね。もしそうであれば、原発の安全性、若しくは再開問題に大きな課題を残すことになりますので、この問題はですね、原子力技術者を中心にして、よくよく考えて、国民にあきらかにしておかなければいけない問題だと思います。





まずですね、福島原発は実は軽水炉という形でですね、普通の水で中性子を減速しております。中性子を減速して初めて核爆発が、核反応ってのが連続する訳ですね。ですから、原子炉の温度が上がって水が蒸発しますと、水がなくなって水蒸気になります。水蒸気はもう中性子を減速しませんので、ここで核分裂が止まる訳ですね。だから、『この軽水炉は安全だ』と言ってた訳です。





なぜ安全かというと、暴走して温度が上がれば中の水が蒸発する、中の水が蒸発すれば、核反応は止まるから、自動的に止まるんだと・・・。これに対して黒鉛炉とかですね、その他の炉では暴走することがあるんだと・・・。ま、これを『負のボイド効果』とも言ってましたし、または全体としては、『固有安全性』と言ってた訳ですね。これで、日本は『軽水炉』やってんだと、だから安全なんだと言うことを、政府や電力は繰り返し主張してた、主な理由だった訳です。





で、しかも今回の場合ですね、地震の時に緊急停止して、『制御棒』、これはまぁ、ホウ素を中心としたものですが、これが入っております。したがって更に『制御棒』が中性子を吸収しますので、第一に水が蒸発してしまう、まぁ、蒸発しなくても『制御棒』が中性子を吸収する・・・。どっちでも核分裂はしないんですね。そうしますと次の危険性は、今度起こった様な水と金属が反応して、ま、金属の側に水素が、酸素が付きますからね、腐食して水素が発生する。これは水素爆発するということですね。





しかし、原子炉の中では元々空気はありませんし、それから水素をどんどん発生しますから、気体ですからね、気体っつうのはそんなに原子炉の中にどれもこれも入れとくってことできませんから、酸素が少なくなりますから、ま、水素爆発しませんよね、ほとんど、まぁ、原子炉中には酸素無いと思うんですね。そうすっと、それを水素がうんと原子炉にたまりますと原子炉の圧力が高まりますので、それをなんとか方法で抜く訳ですね。





抜きますとそれは建物の上部で溜まれば爆発する可能性があるんですが、原子炉は爆発しません。だから、亀裂が例えば入ってもですね、空気中の酸素が逆流するってことは、あまり無いですね。っつうのは、原子炉の中は圧力が高いですから、だから、圧力の低いっていうか、1気圧、大気圧の建物の中の酸素が原子炉の中に入るってことはほとんどありません。だから原子炉は爆発しないってことになりますね。で、実際には1号機、3号機、4号機は結構大きな爆発をして、それから2号機も窓が破れてたので大量の放射線が漏れましたね。放射性物質が漏れました。





だから、今回の問題はですよ、核爆発が起こらなければ福島の状態って言うのが、軽水炉における最大の被害ということになりますね。つまり、これをですね、今まで政府とか電力が言ってきたことを考えれば、今回の漏れですね、80京ベクレルの漏れが最大になってしまうんですよ。ところが、最大漏れたにも関わらずですよ、政府はスピーディに結果を公表しなかったですし、福島県は1年100ミリまで大丈夫だと言ってるんですね。





そうしますと、原発は冷やさないほうが良かったっちゅうことになるんですよね、えぇ。防御なんてしなくてよかったと、言うことになる訳で、そうすると、首相が福島の原発の東電社員に、事故の後ですね、『命を懸けてなんとかを守れ』なんて言ってた訳なんですけども、その『なんとかを守れ』って、なんとかってコレ何なんですかね。何を守るんですかね。






まず『第一に軽水炉は水が無くなって制御棒が入っているので核爆発しない』と。ま、嘘だとこれは。軽水炉は水が無くなって制御棒が入っても核爆発するということであれば、もちろん今まで言ってたことは全部嘘で、これは科学的には無いと思いますけど、他の原発は絶対に再開できない訳ですね。





もう一つは、『1年100ミリシーベルトまで大丈夫』ってのが嘘であると。どっちかが嘘じゃないとですね、えー、爆発・・じゃ・・その、事故後、あんなに必死になって人が近づく必要はないんですよ。どうなるか解らないなんてことはありませんからね。原子炉が、その、水が切れたらどうなるかなんてことはもう、充分に、シビアアクシデント検討で、研究でやってる訳ですから。だから、この位になるって解ってた訳ですよ。





私は、『1年1ミリシーベルト』以上に被曝しちゃいけないと思いますので、必死に防御しなきゃいけないと思います。特に『1年100ミリシーベルト』って言うならですね、別に、あの、危険を冒して自衛隊とか消防署が近づかなくったっていいんですよ。そのままにしときゃいいんですから。





それから、一時東電の社員が、原発から逃げたいと言ったって言うんですけど、逃げる必要ないんですよ。水素爆発しかしないんですから。あれ、『核爆発する』っていう可能性があるんだったらば、絶対逃げなきゃいけないんですけど、だけど、それは『ない』と繰り返し言ってるんですからね。





現在その検討している…再開の為の検討している規制委員会の基準でも、『核爆発はしない』事が前提になってるんですよね。だから、どう、何を騒いでるんですかね。この『メルトダウン』ってのはマスコミが騒ぎましたけども、これは大したことはないです。で、スリーマイル島事件が『メルトダウン』ですけどね、典型的な。これはもう、水素爆発よりかはずっと軽いんですよ。要するに一番ひどいのが『核爆発』、『原子炉の核爆発』、次が今度の様な『水素爆発』、・・ずーと軽いのが『メルトダウン』ですね。





なんか、『メルトダウン』っていうのが、まぁ、文科系の人はよく解らないんでしょうかね、なんか大騒ぎになるもんですから、なんか、『地球を抜ける』なんていうのは、んなことは嘘ですからね。嘘を本当のことのように言っちゃいけないんですから。




そうすると問題は、政府がなぜ狼狽えたのか・・・っちゅう事ですね。『なぜ狼狽えたのか』、今に至っても福島県とか日経新聞はですね、『1年100ミリまで大丈夫』だと言ってる訳ですから。何を恐れたんですかね、えぇ。チェルノブイリの様な事は起こらないと今まで言ってきた訳ですね。じゃあ心配無いんですよ。『1年100ミリ』ならもう全然『100ミリシーベルト』の被曝なら全く問題ないですよ。100ミリシーベルトまで行きませんから、爆発しても。『水素爆発』ならですね。普通はいきません。





どうしてでしょうか、あの当時、マスコミが連日のように報道し、しかも、報道統制で4号機の爆発映像まだ公開されてないという・・・。こんなことしたら恐ろしいから、国民が反原発になっちゃうからって、隠しに隠さなきゃなんないほどの事故であれば、なんで、『大丈夫』なんでしょうか。『大丈夫』だということと、あれだけ必死にやったっていうことの関係は、どういうことなんでしょうかねぇ。





私はですね、えー、私は原子力をやって、もうこりゃダメだと、あの映像を見てもうダメだと思いましたけど。我々は間違ったと思いましたけど。今でも原発を再開するということに進んでいる原子力の科学者、電力関係の技術者はおられるんですけど、やっぱり、この方々はですね、日本国に住んでおられるんですから、やっぱ国民のためにですね、自らの信念に基づいて、『なぜあれほど苦労して注水する必要があったのか』 、『どういう事故が起こると思ってたのか』、1年100ミリですからね、今、いいんですよ、1年100ミリまでいいってみんなが言ってるんですからね、私、全然自分のことは関係ないんですけども、『武田は1年1ミリと言って危険を煽る』なんて言われてる訳ですから、ほかの人は別の基準なんですよね。





で、別の基準の時に、福島(原発)になんであんなに必死になって水をかけなきゃいけなかったのか、『核爆発』、『水素爆発』、『メルトダウン』以外に何が起こると思っていたのか、っていう事ですね。何か起こると思ってなかったらあんなに必死に水かけませんよ。別に普通にほっときゃいいんですから。じゃ、ほっといたらどうなったのか。例えばですね、窓を破るってことがあった訳です。2号機がそうですね。窓を破ればそっから水素が出ていきますから、水素爆発の危険性が大幅に減る訳ですけども、窓を破りゃぁよかったんですね。そしたら水素が次々と空気中に出てくだけですから・・・。





だから、あの時私たちは何を防ごうとしたのか。私は恐らくね、あの『1年1ミリ』っていうのは解ってたと思うんですよ。だから、それ以上になることを防ごうと思ったんです。ところが防ぎきれなかったので、今度は嘘ついて、『1年100ミリ』と言い出したんじゃないかと思うんですね。もしそうだったら、これはもう国民に対する裏切りです。もし、こういう裏切りをやるんだったら、原子力はもうやる資格がありませんね。





だからどっちなのか、何が問題だったのかを、やっぱりこれはね、批判する方が言うのではなくて、推進する方がやっぱり口を開くべきだと思います。それによって、原子力は信頼を得られるかもしれません。


(文字起こし by SANBO)