報道が決して国民に伝えないもの(5) 節約の必要性 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

報道が決して国民に伝えないもの(5) 節約の必要性 (10/27)




報道が国民に伝えないものの中でも、事実そのものではなく、解釈などがあります。私が良く国の委員会に出ている頃、私がなにか発言すると横にいた「大新聞の論説委員」のような人が「武田先生、それはこういうことなのですよ」ととても重要なことをそっと耳打ちします。



そんなとき、私は「へえ!そうですか!」と相づちを打ちますが、心の中では「そんな重要な事、なんで新聞に書かないの?」と疑問になり、気分は良くありませんでした。民主主義で、国民に情報を提供する立場にある大新聞が、情報を優先して受け取り、自分たちが隠しておきたいものを隠すという姿勢なのです。



その一つに「節約の必要性」があります。国が節約を呼び掛けなければいけないのは、


1)戦争の前、

2)通貨の安定、


の時で、今の日本のように「国を衰退させるために節約する」などということはなく、それは論説委員、解説者は知っているのですが、政府に遠慮して言いません。「日本が世界でもっとも対外資産が多く、お金持ち」というものですが、これも絶対に報道されないものです。日本人に「貧乏だ」と思わせて、増税するのが目的です。


(平成24年10月27日)




--------ここから音声内容--------




「報道が決して国民に伝えないもの」第5回でありますが、こういうことを言いますとね、また最近の報道はその…揚げ足を取るということをしてくるんじゃないかなと思ってますが、それも含めて議論が深まるのでいいかなと。で、4回までは具体的な例を挙げてきましたが、今回はですね、報道の中で…事実を示す報道もありますけど、論説委員とかがですね、自分の意見を言ったり、それから社説なんかがありますね。こういったものでですね、決して触れないものは何かということをちょっとお話をしたいと思いますが。





私はですね、ずいぶんこういうことを経験しました。よく国の委員会に出ますとね、隣に新聞の論説委員とか偉い人がいるわけですね。で、議論してる時に私が割合と原理原則的なことを言いますとね、隣の新聞の論説委員が気を利かせてですね、私に「武田先生、これはこういうことなんですよ」と、こういうふうに説明するわけです。僕はその時「あぁそうですか」、「へぇそうですか」と…こう言うんですけど、その内容は、もう驚くべきことが多いんですね。非常に重要なんですよ。





で、私はその時に…相手が新聞の編集委員ですからね、いつでも物を書けるわけですから、「なんでそんな重要なことを新聞に書かないの?」っていうふうに疑問になるんですね。つまり今の新聞っていうのは、重要なことは影響も大きいですから、新聞に書かないんですよね。





私がここで言ったように、ある温暖化の会議に出たら、ある人がですね、「先生、温暖化するなんて、こん中で誰も思ってないんですよ」と、それ、温暖化の会議でですよ。まぁそういうようなこと言ったりするんですね。ですから、日本の指導者が、ある事実をですね、占有してるという…これは昔はそういうことあったんです。王様がいる時代はあったんですけどね。ほんとは今ないはずなんですが。





そういうものの現代版の一つに「節約の必要性」ってのがあるんですね。日本人は節約好きな民族なので、節約は美徳であるということあるんですが、ここで書いたように、現代の貨幣社会では節約ってできないんですよね。30万円使うところを3万円節約した、と。タクシーに乗らないとか。その3万円でケーキを買ったっつぅんじゃ、これは使い道が違うんで(違うだけで)節約になりませんね。





銀行に預けたってことになると、預けた途端に銀行が(他の人に)貸し出しますし、それを(いずれ)下ろして使いますから、これも節約になりません。貨幣経済でなければ…山から薪を切ってきて、それを節約すれば長く使えるんですが、貨幣経済における節約はですね、30万円をもらって27万円使った後の残りの3万円ですね、一万円札3枚。これをね、破かなきゃいけないんですよ。それはまぁできませんからね、事実。ですから、節約はできないんです。





これはまぁ個人の節約ですね。これは将来に備えて老後のために貯金するってのは別にいいんですけど、これは節約にはなりませんね。環境とかエネルギーの使用とか、そういう面じゃ、CO2とかそういう意味じゃ節約になりません。銀行に預けた時点で、銀行から中小企業に貸し出され、そこでCO2出しますから量は同じなんですね。





つまり貨幣っていうのはもう出してしまったら、その分だけ使われてしまいますから、これはもう仕方のないことですね。じゃあなんで国が節約を呼びかけてるのか。国が節約を呼びかける時は、戦争の前ですね。例えば明治時代にソ連がずーっとこっち来たから、これと戦わなきゃいけない、ということで国民は節約をして軍艦を買う、と。これは軍艦を買うために節約してるわけですね。





それから通貨が不安定になった時。例えば、ソ連が崩壊した時にルーブルがタダみたいになる。そうするとこれを立て直さなきゃならないんで、いったんですね、貨幣と活動の関係を切るという意味で節約をすると、こういう場合があるんですけど、それ以外にはないんです。





現在の日本のように、国を衰退させるために節約するなんていう国はありませんからね。現在の日本は戦争もしないし、通貨も安定しとります。むしろ対外純資産…対外純資産ってのは対外資産から対外負債を引いたもんなんですけども、これはですね、250兆もあって世界でダントツの1位である、と。従ってカネ余りである、と。しかも円高である、と。戦争もしようとしない、と。





だから絶対に節約しちゃいけない時期なんですよ。これ日本が今節約していけない時期なのに、節約してるから不景気から抜け出せないわけですね。日銀が通貨を刷らないとか色んな問題があるんですが、そういったことになるわけですね。じゃあこれらは解説者とか論説委員はみんな知ってるんですよ、この原理は。しかし説明しません。なぜかっていいますと、政府に遠慮してるからですね。





このような、報道が決して国民に伝えないっていう中でですね、一つが「事実そのものを伝えない」という場合と、それから「国の政策に反すること言わない」っていうことですね。これはかつでですね、まぁ良いか悪いかは別にしまして、自民党と社会党のようなものが非常に厳しく対立している場合は、社会党があることないこと全部言うわけです。この場合でもたぶん言ったでしょうね。「だいたい国は節約なんか呼びかけて、税金を増やして、市民はお金が足りないんだから、もっと景気を良くしろ」と言ったかもしれませんね。





そういった議論の中で、新聞の論説委員とか解説委員もですね、「節約というのは必ずしも必要じゃないんだ」ということを言うはずなんですが、今ではですね、自民党、民主党、それから今度できる更に三極、社会党、共産党、全部同じ政策ですからね。そういうことが出て来なくなったということですね。





実態はですね、日本人に貧乏だと思わせて、増税をするという…そういう一つの役人の作戦なんですけども、それに乗ってしまうということですね。報道が決して国民に伝えないものの中に、こういう解説的なものもあるということを今日は示しました。